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「情報公開」と自治体行政――情報公開条例をめぐる若干の問題――

                           平岡 久


 <*出典――都市問題研究460123135頁〔都市問題研究会〕(198904)


 はじめに

 情報(公文書)公開条例を制定・施行している自治体数は、1988(昭和63)年10月末現在、26都道府県を含めて 130近くに達している(ほかに35市などが要綱により制度化11983(昭和58)年12月末では10(ほかに要綱 2)、1985(昭和60)年12月末では25(ほかに要綱 5)であったから、1986(昭和61)年以降の増え方が著しく(毎年30以上)、現在ある条例の約5分の4は最近3年間に制定されたものであることになる。

 大阪府下でも、島本町(施行日は1984.1.1施行)、大阪府(1984.10.1施行)のあと、1987(昭和62)年に高槻市・吹田市・箕面市の3市が(いずれも41日施行)、1988(昭63)年に茨木市・大阪市の2市が(それぞれ41日、71日施行)、情報(公文書)公開条例を施行している(以下、大阪府をも含めて大阪府下の自治体・条例という)。

 条例をすでにもつ自治体は、<生みの苦しみ>から<運用(育児?)の苦しみ>の時代へと、本格的に入っていると見られる。本稿では、大阪府下の条例の施行状況の一端を簡単に紹介しながら、情報(公文書)公開条例をめぐる立法論上および運用上・法解釈上の若干の問題について、覚え書き的に言及しておくことにする。

 なお、大阪府下の条例にもとづく請求件数、部分公開決定・非公開決定についての不服申立て件数、それぞれに対する原決定・裁決 (広義、ほとんどが異議申立てに対する「決定」) の結果の内訳は表−1のとおりである。

 

 表−1 大阪府下自治体における公開請求等の件数2) 3a) 3b)  省略Hiraoka

 

  1) 自由人権協会・情報公開はなぜ必要か(岩波ブックレット)29頁(1988)、中島昭夫「情報公開はいま」ジュリスト増刊・ネットワーク社会と法264266頁(1988)、などを参照。

  2) 請求件数には、請求受理後に@請求の取下げのあったもの、A(公開決定と区別される)任意提供により処理されたもの、B(非公開決定ではなく)該当文書は存在しないとして処理されたもの、C(非公開決定ではなく)条例対象外文書として処理されたもの、を含まない。不服申立て件数には、取下げのあったものを含まない。

  3a) 大阪府公文書公開審査会は、審査中であった永年勤続議員専用自動車出動復命書(1日分)部分公開決定について、1989 130日に公開すべき旨の答申をし、そのとおりの認容決定が大阪府知事によりなされた。

  3b) 高槻市長は地下水汚染機構解明調査関連文書のうち8文書についての非公開決定・1文書についての部分公開決定を、不服申立てがあった後198811 7日に職権で撤回し、いずれも公開決定をした(表中の( )内はその後の数)。審査中であった高槻市情報公開審査会はこれら9件につき、実質に関する「意見」を付しつつ、却下すべき旨の答申を198928日に行なっている。

 

 1 公開請求の対象となる公文書等――前提的要件

 (1)  請求対象

 @情報の範囲  条例にもとづく公開(開示)請求の対象になりうる情報の範囲について、諸条例は、a文書・図画・写真・スライド類(以下、文書)に限るか、b磁気テープ・磁気ファイルないしフロッピーディスクに入力されている情報(以下、電子機器情報)まで含めるか、に分かれる(条例の名称が「情報」か「公文書」かとは必ずしも合致しない)。大阪府下では高槻・茨木・吹田の三市が表現・範囲は一様ではないものの後者を含めうる立場をとっているが(ほかに、先発諸条例のうち埼玉県・春日市等)、全国的には現在のところ二割以下の少数派にとどまっているようである。

 現在は文書に限っている諸条例も、将来的には電子機器情報(少なくとも容易に出力・文書化でき可視的になるもの)も含めるよう改正する必要が、おそらく生じてくるものと思われる。電子機器による情報の処理・管理が今後加速度的に進展することによって、情報が直接に電子機器に入力されたり、電子機器情報の元となった文書が廃棄されてしまう可能性が増えていく、と見られるからである。なお、電子機器情報化することによって公開請求の対象となることを回避しようとする<請求逃れ・公開逃れ>の実例がすでにあるとも伝えられている4)

 A文書の範囲  公開請求の対象になりうる文書の範囲についても、諸条例は、第1に、一定の事務手続の終了を要求するか否かにより、大まかには、a「決裁」または「閲覧(供覧)」が終了した文書に限る5)か、b広く「管理」している文書とするか、に分かれる。第2に、文書作成等の時期に関する限定の有無により、a条例の施行日以後に作成または取得(収受・受領)した文書に原則として限るか、b施行日以前の文書も(一定範囲で)含めるか、の分かれもある

 前者にのみ以下言及すれば、大阪府下では島本町・高槻市・吹田市が広く捉えているが(ほかに、先発諸条例のうち神奈川県・川崎市等)、全国的に見ると、決裁または閲覧(東京都条例は「事案決定手続又はこれに準ずる手続」とする)を終了した文書に限定する条例が多くなっているようである6)

 決裁ずみ文書等に限る場合、決裁(または簡易決裁)にかけられるべき文書の範囲について、例えば部局内・公立学校内・審議会類・合議制執行機関等の会議に提出される資料類は事前または事後に決裁を要するのか、決裁があるとしても提出資料類の見出し・一覧のみならず内容全体についても及ぶのか、などの問題が生じうる。また、決裁等の手続を意図的に省略または延期することによる<請求逃れ・公開逃れ>のために利用されるおそれが全くないとは言えない。

  もっとも、決裁文書等に限ることが実際の運用上、請求または公開を制限する大きな役割を果たしているかどうかは、必ずしも定かでないように見える。条例上の「決裁」は実務上のそれ(決裁書への押印)を意味しないとの解釈によって緩和することは不可能ではないが、不明確な場合には、実施機関は公開・非公開に関する実質的判断の方で勝負すべきである、ということになろうか。

 

  4) 批判的指摘として、平松毅「日本的情報公開の特徴」都市問題研究3714647頁など参照。

  5) 川上宏二郎「情報公開制度の現状と最近における諸問題」法律のひろば41380頁注(10)1988)参照。

  6) なお、兼子仁「情報公開条例をめぐる制度問題」兼子仁=関哲夫編・情報公開条例142143頁(1984)、高寄昇三・自治体情報公開の実際92頁(1986)等も参照。

 

 (2)  条例対象外文書

 条例により公開請求の対象とされていない情報(以下、条例対象外文書)についての公開請求は、例えば1988年施行の茨木市・大阪市でもそれぞれ 3件・6件見られ、神戸市では19884月〜8月の間の請求44件のうち14件であったとされている(対象外とされた理由のほとんどは、いわゆる施行日前文書)。

 条例対象外文書について公開請求があった場合の実施機関の対応は、諸条例において明確に規定されているとは言えない。全国的にもおそらくほとんどの条例は、実施機関が「公開しないことができる(してはならない)」等と定めて列記する文書の一つに「〔条例が定義する、又は条例の適用をうける〕公文書でないもの」を挙げておらず、少なくとも形式的には、公開・非公開の決定は条例上の請求対象文書についてなされることを前提としていると見られるからである7)

 将来的には条例上で明確化することが望ましいが、現実の対応として考えられるのは、aそもそも受理しない(公開請求窓口での処理)、b対象外文書であることを理由とする却下の決定(非公開決定とともに拒否決定の一つ)をする、cこの場合も非公開決定を行なう8)、であろう(ここでは任意提供は別論である)。これらのうち、条例対象外文書か否かの認定が条例の解釈を要する微妙な場合もありうることを考えると、bまたはcにより決定にいわゆる処分性を認め、認定の当否を取消争訟(不服申立て・取消訴訟)で争う途を開いておくことが望ましい(なお、aにおいても不受理通知を実施機関名で正式に出せば処分性が肯定されうる)。bとcの差異は、(諮問を要する場合等に関する条例の定め方にもよるが)不服申立てがあった場合に第三者的機関への諮問を要するか否かであることになろう。

 

   7) 条例が定める請求権者以外の者から請求があった場合にも、同様の問題が生じる。

  8) 自治体により対応は一様でないようである。請求件数や非公開決定数の数え方も、自治体により異なることになる。注 2)も参照。

 

 (3)  文書の不存在

 請求対象に関係するいま一つの問題は、公開請求された文書がそもそも存在していない場合の対応の仕方である。この場合の関係規定も諸条例はもっていないと見られ、この点も将来的には何らかの明確化が望ましい。現実の問題としては、関係の文書管理部課長等の名による不存在の旨を示す文書を通知(あるいは手交)するなどして、請求を取下げてもらうのが妥当なところであろうか。但し、請求が続けられる場合は、不存在を理由とする却下の決定(非公開決定とともに拒否決定の一つ)をせざるをえない、と考えられる。

 なお、存在するにもかかわらず存在しないと偽っての<請求逃れ・公開逃れ>はむろん厳しく批判されるべきである。上記の却下決定についての(文書の存否を争点とする)取消訴訟がいかほど実効的になりうるかは疑問であるとすると、多くは自治体の機関・職員の意識・自覚にかかっている、と言えよう。存在していた文書の廃棄による不存在化についても同様のことが言えるが、これらの点は、文書の作成・保存の義務等に関する公文書の作成・管理全般についての法的規律の必要性およびその内容という、別の課題・論点にも連なることになる9)

 

  9) 情報(公文書)公開条例の施行による「非文書化」のおそれを指摘するものとして、阿部泰隆「情報公開制度のアセスメント」ジュリスト増刊・行政の転換期 234頁以下(1983)を参照。

 

 3 非公開文書とその認定――実質的要件

 (1) 非公開文書の類型等

 諸条例は公開請求があったときに実施機関が公開しないことができる(又はしてはならない)情報をある程度類型化して列挙している(以下、非公開文書)。大きくは@個人情報・A法人等事業情報・B法令秘情報・行政過程情報の4種に分類できるが、最後の行政過程情報はさらに、C意思形成過程情報・D事務事業公正執行情報・E国等協力(信頼)関係情報・F公安(社会的障害防止)情報などに分けて列挙されることが多い。その他、G非公開条件つき取得情報(大阪府下では、大阪府・箕面市・大阪市)、H機関委任事務にかかる国の機関による非公開指示情報(大阪府下では、大阪府・茨木市・大阪市、ほかに神戸市等)やI合議制機関による非公開決定情報(東京都・名古屋市等。大阪府下にはない)を挙げる条例もある。近年では、類型数の増加ないし非公開文書の詳細化の傾向がある、と言えようか。

 これらのうちHやIを独立の類型化することは、立法論としてはかなり疑問である10)。なお、Iにつき、東京都環境影響評価審議会部会会議録にかかる東京地裁昭和63 223日判決(判例タイムズ 66049頁、判例地方自治4410頁)11) が出ている。

 各非公開文書のそれぞれを現在の程度以上に詳細に定義することは、おそらく将来的にも相当に困難であろう。もっとも、各非公開文書の差異や関係は、実例の蓄積をふまえて整理されていくことが望ましい。

 表−2は、いかなる種類の非公開文書であるとして部分公開または非公開決定がなされたかを、大阪府について見たものである。合計45の決定についてのものであるが、複数の該当文書が挙げられることの方が多いため(45のうち37決定)、表中の数の合計は決定数を上回る。一自治体についての資料であるが、ある程度共通する傾向を示すものではないかと思われる。

 

 表−2 大阪府における非公開(一部非公開を含む)理由の内訳

 法人等事業情報(81号)   23  協力関係情報(83号)     4

 個人情報(91号)      19  機関委任事務情報(93号)   2

 事務事業公正執行情報(85号)15  法令秘情報(92号)      1

 調査研究等情報(84号)   15  非公開条件付取得情報(82号) 0

                    公共の安全秩序情報(86号)  0

     (施行日から198812月末まで、条・号は大阪府公文書公開等条例)

 

 10) Hにつき、兼子仁・前掲137138頁、160頁の諸指摘に賛同する。Iにつき、平岡「地方行政判例解説」判例地方自治4686頁(1988)参照。

 11) 川上宏二郎「下級審・時の判例」ジュリスト9116869頁(1988)、平岡・前掲8588頁参照。

 

 (2) 実施機関による判断

 @ 「原則公開」理念との関係  公開請求をうけた実施機関による公開・非公開の具体的判断に関する、今後のいっそうの検討が必要と見られる基本的な問題として、さしあたり、つぎの四点を挙げることができよう。

 第1は、「原則公開」という理念ないし考え方がどの程度・どのように具体的判断に影響を与えるべきか・与えてよいか、である。より具体的に言えば、判断の微妙なケースでは<疑わしきは公開請求者の利益に>というかたちで右の理念は働くのかどうか、である。この問題は、「原則公開」の趣旨が条例からどの程度明らかになるか、条例の立法趣旨について条例制定前の提言・答申・基本計画類の内容をどの程度斟酌できるか、にもかかわっている。

 この点、情報(公文書)公開条例に関する最初の判例である、埼玉県都市計画地方審議会会議録中事務局説明部分についての非公開決定を取消した浦和地裁昭和59 611日判決(判例タイムズ526287頁、判例地方自治42頁)は、条例制定の経過等から公文書は「原則として全部公開するという理念を基本とする」ことが「明らか」であり、その旨は県の「情報公開推進基本計画」でも「明示」されているとしたうえで、法令秘情報に関する条例の規定について、「同条例の右基本理念に即して厳格に解釈しなければならない」との判断を導いている。

 A 「著しい」支障の「明らか」さ(?)  第2は、公開することによる「支障」についての条例の定め方の差異は、どの程度具体的判断に影響を与えるべきか・与えてよいか、であろう。具体的に<事務事業公正執行情報>に例をとると、上の判決にかかる埼玉県条例は「〔公開することにより〕…に著しい支障を生じ、又は…を著しく困難にすることが明らかであるもの」と相当に厳しく絞っているが(先発条例の一つである島本町も同様)、大阪府条例は「目的が達成できなくなり、又は…に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの」と規定して「明らかである」の部分を省き(吹田市も同じ)、さらに現在では後発組になる茨木市・大阪市の条例は「目的を失わせ、又は…に支障をきたすおそれがあるもの」・「目的を損ない、又は…に支障が生じると認められるもの」と規定して「著しく」の部分も省いている。

 こうした規定上の差異は条例制定者の姿勢・考え方の差異を示しているとすると、規定の文言(厳格さの差異)をやはり重視して具体的判断をしなければならない、との考え方が当然に成立しうる。一方、憲法上の「知る権利」や条例の基本的趣旨・目的規定等を手がかりにして、「著しい」支障の「明らか」さ、あるいは少なくとも「著しい」支障が必要であると解釈することも不可能ではない。

 上記の浦和地裁判決は、条例の定め方・原則公開という基本理念等からして「単に実施機関の主観において『…に著しい支障を生ずる』と判断されるだけでは足りず、そのような危険が具体的に存在することが客観的に明白であることを要する」と述べている。かかる理解は、条文中に例えば「…が明らかであるもの」の部分をもたない条例についても妥当するか、という問題があるわけである。

 B 認定における「裁量」(いわゆる要件裁量)(?)  第3は、不確定概念を用いて定義された非公開文書に該当するか否かの実施機関の認定に「裁量」の余地を認めることができるのか、である。

 この認定は、とくに行政過程情報については、実施機関の専門的な知識・経験をも基礎にしてなされざるをえず、公開することによる支障発生の有無や程度について、ある程度の判断の余地・幅が認められるのはたしかであろう。但し、非公開決定についての司法審査においてその踰越・濫用の有無のみが審査されうるという意味での「裁量」を語ることはできず、原則的にはおそらく、裁判所による全面的審査および実体的な判断代置がなされることになろう。先の浦和地裁判決もかかる審査方式をとっていると見られる。但し、非公開文書についての条例の規定の仕方にもよるが、裁判所が実施機関の判断を尊重して自己の判断を多少とも抑制せざるをえない余地・領域が全くないとは必ずしも言い切れないようにも見える。

 C 「できる」規定−公開への「裁量」(いわゆる効果裁量)(?)  第4は、「公開しないことができる」文書に該当するとの認定を実施機関が行なった場合、つねに非公開決定をしなければならないのかどうか、この場合に公開決定をする余地はないのか、である。

 実際には、ほとんどの公開決定はいずれの非公開文書にも該当しないとの認定のもとになされ、いずれかの非公開文書に該当すると認定したうえであえて公開決定をするという二段階の判断を経ることはごく稀れであろう。しかし、「しないことができる」とは少なくとも文理上は「することもできる」余地を残しており、また非公開文書を「公開してはならない」文書と「公開しないことができる」文書に大きく二分類している条例(大阪府下では大阪府・茨木市・箕面市、ほかに埼玉県・春日市等)の趣旨をも考慮すれば、少なくとも論理的には、公開する余地(請求者にとっての授益的裁量の余地)を一切否定しておく必要はないように見える。但し、先に言及した東京地裁判決は、具体的には合議制機関非公開決定情報についての問題であったが、一般論としては非公開文書の種別を問わず、「公開しないことができる」規定のもとでの公開決定の余地を一切否定している12)

 

 12) 平岡・前掲87頁の疑問を参照。

 

 D 微妙なケース−不服申立ての事例  非公開決定(部分公開決定を含む)を請求者が承服せず不服申立てを行なった事例は、公開・非公開の判断が中でも微妙なケースであることが多い、と言ってもおそらく差し支えないであろう。

 表−3は、大阪府下において非公開決定について不服申立てのあった文書と裁決の結果の一覧である(審査中のものは除く)

 なお、大阪府では計13件であるが、このうち11件が、事務事業公正執行情報・調査研究等情報のいずれか又は両者に該当するとして、当初は非公開決定がなされていたものである。

 

 表−3 非公開決定(一部非公開を含む)について不服申立てがあった文書と裁決の結果13)

 

 島本町(4件)

  小中学校主任名簿           (非公開→公開)

  山崎ポンプ場建設にかかる費用分担書  (非公開→部分公開)

  特定施設排水分析結果表        (部分公開→公開部分の拡大)

  消防職員にかかる分限懲戒審査会審査記録(非公開のまま)

 大阪府(13件)

  安威川ダムボーリング調査等覚書二件

  国勢調査にかかるアンケート用紙    (以上、非公開→公開)、

  永年勤続議員専用自動車出動復命書    (部分公開→公開)*

  水道部にかかる会議費支出伝票     (非公開→部分公開)

  安威川ダム地質総合解析評価業務報告書

  国鉄清算事業団用地にかかる意向確認回答文書

  医薬品製造承認申請書副本       (以上、部分公開→公開部分の拡大)

  安威川ダム原石山調査資料・同ダムサイト調査資料**

  知事にかかる交際費支出伝票**     (以上、部分公開のまま)

  水道部にかかる懇談会費支出伝票**

  懲戒処分にかかる教育委員会会議録   (以上、非公開のまま)

 高槻市(2件)

  国鉄清算事業団用地意向確認照会文書  (部分公開→公開)

  同回答文書              (非公開→部分公開)

 吹田市(2件)

  国鉄清算事業団用地意向確認関係文書  (非公開→部分公開)

  学齢簿(転出先市町村)        (非公開のまま)

 茨木市(3件)

  助役・都市整備部長・保健環境部長

   各事務引継書計三件         (部分公開→公開部分の拡大)

             (各条例の施行日から198812月末まで)

                            

 13) * 1989年に入って答申・裁決のあったもの(注 3bに記したものは除いてある)。**は原決定につき取消訴訟が提起され大阪地裁に係属中のもの(3件)。裁決はすべて審査会の答申どおりになされており、ほぼ3分の2が原決定を変更している(全部棄却は計24件中7にすぎない)。

 (追記)**のうち知事にかかる交際費支出伝票部分公開決定の取消訴訟について、大阪地裁は平成1年(1989年)314日、請求認容の判決を下した。

 

 3 むすびに代えて

 大きく前提的要件、実質的要件の二つに分けて若干の問題に言及したが、不服申立て後の手続的な論点としては、ほとんどの条例が非公開決定につき不服申立てがあった場合の諮問機関として設置することとしている公文書(情報)公開審査会のあり方・運営の仕方の問題がある。その答申は裁決機関によってそのまま採用される慣行がほぼ形成されてきており(全国的にはごく一部の例外はある)、判決例が少ない中では個々の答申の蓄積こそが公開・非公開の判別基準を具体的に明らかにしていく機能をもつことが予想され、また期待される。

 但し、基本的には審査会が独立の第三者的裁決機関として設置されているのではないことに由来するが、その審理・調査権能の範囲ないし限界や、行政不服審査法上は裁決機関が行なうとされている審査手続(とくに行政不服審査法22条・23条・25条〜28条・30条・33条(・48条))とその重要部分を実質的に代替していると見られる審査会の審理手続14)との関係・差異、などについて、今後、法的または運用上の大きな問題が生じてくる可能性がないではない、と感じられる。

 その他、本稿では言及できなかったが、請求権者の範囲、文書の特定の仕方 (関連して検索システムの整備) 、原決定に必要な理由付記の程度・争訟段階でのその変更や追加の可否、個別の法令にもとづく公開制度との関係15)個人情報保護条例との関係、あるいは非公開決定に対する訴訟の性格(客観訴訟の主観訴訟化?)等々、情報(公文書)公開条例をめぐっては、立法論上および運用上・法解釈論上の多くの課題・問題があるところである。

 こうした諸問題をかかえつつも、自治体が保有する「情報」の住民への公開へと向かう趨勢は、長期的には動かし難いものと見られる。住民の関心と要求に支えられながら、自治体の担当者や審査会委員の努力によって、情報(公文書)公開条例にもとづく情報公開制度16) が少しずつでも前進し自治体行政の中に定着していくことを、最後に期待しておきたい。

 

 14) 大阪府公文書公開審査会運営要領3条・4条・6条、大阪市公文書公開審査会審議要領2条・3条など参照。なお、申立て人が裁決機関に対する口頭意見陳述(行審25条・48条)をあくまで要求すれば、裁決機関は審査会において実質的に同じ手続がなされることを理由にこれを拒否することはできない、と考えられる。

 15) 公職選挙法1924項は「何人」にも選挙運動収支報告書の「閲覧」を請求することを認めているが、大阪府条例にもとづく「写しの交付」請求に対して大阪府選挙管理委員会は、198892日にこれを認容する公開決定をした。条例の定め方の特徴ある例としては、情報(公文書)公開条例ではないが、法令に個人情報の開示等に関する規定があるときは「その法令に基づく手続を経た後」に条例にもとづく請求を行なうべき旨定めている神戸市の個人情報保護条例10条がある。

 16) 条例にもとづく公開制度は情報公開の一つの手段・しくみにすぎないこと等については、阿部泰隆「情報公開の体系とその総合的整備」ジュリスト 85434頁以下(1986)などを参照。また、情報公開自体も行政における「情報」との多様な関係、その収集、加工・評価・処理、提供の一つの局面にすぎないこと等については、鈴木庸夫「行政における情報管理と国民の権利」ジュリスト85972頁以下(1986)を参照。

 

 *資料を(任意)提供していただいた、大阪府府民情報室・島本町情報政策室・高槻市市長公室市民情報室・吹田市市民生活部情報公開室・箕面市総務部(情報公開担当)・茨木市総務部総務課・大阪市公文書館、および神戸市市民局市政情報室・堺市市長公室総合企画部・高石市電子計算課の方々に謝意を表する。本稿中の諸表は、いただいた資料の一部をもとに、筆者の責任において作成・構成したものである。