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討議期日における紛争解決
トーマス・ヴュルテンベルガー <Prof. Dr. Thomas Wuertenberger>
〔平岡 久 訳〕 1992年 3月
<*出典――松本博之ほか編・法の実現と手続―日独シンポジウム247〜266頁〔信山社〕(1992.03)>
一 はじめに
計画手続およびイミシオン防止法上の許可手続は、地域的に望ましくない土地利用に関して発生する紛争を法的に解決しようとしている。ドイツ連邦鉄道の新線建設に際しての紛争、幹線道路の拡張に際しての紛争、ごみ焼却施設、発電所あるいは産業上の製造工場の許可に際しての紛争、といったものをここでは挙げておく。これらの手続の特徴は、諸利害の顕著な対立が見られることである。すなわち、行政主体は現代産業国家の要求を充足するインフラストラクチャーを用意しなければならないが、同時に、公共の利益にかかわる多様な重要問題をも顧慮しなければならない。申請者は、近代化して競争力を維持し続けることができるように、すみやかに実施可能な許可を得ることに関心をもつ。反対住民および関心ある一般住民は、自然保護や環境保護の重要性を強調する。このように利害が錯綜した状態においては、行政は、発生する紛争を解決でき、そして継続的な一般住民による抵抗あるいは長期間の訴訟手続によってその実現が阻止されたりしないような決定を、追求すべきである。
このような紛争解決(Konfliktschlichtung)という観点は、ドイツの行政手続法においては近年にいたるまで特に強調されてはきていない。そのかぎりで、他の諸産業国家の手続法や手続実務と比較して一定程度補充することが依然として必要である。アメリカ合衆国や日本においては、地域的に望ましくない土地利用に関して協調的(einvernehmlich)な紛争解決を生じさせることのできる手続が、ずっと以前からかつ成功裡に形成されてきている。これらの諸国の手続原理をドイツの手続法へと移入することができるかどうか、およびどのようにしてそうできるかは、現在詳しく議論されているところである。ここでは、これについて再度言及することはしないで、まず第一には原則的問題を考察することにする。すなわち、諸外国の手続秩序に特有な紛争解決という理念をドイツの法治国家的行政手続法へと移入してよいか、紛争解決および行政決定の受容(Akzeptanz)は行政手続法の目的であるのか(以下、二)。
これらの基本的問題を肯定したあとで、紛争解決という目的を行政手続法の中へと統合する課題が設定されることになる。そこではたとえば、討議期日(Eroertungstermin)の問題が現われてくる。重要な計画手続および許可手続に関するほとんどすべての法律上の諸規律は討議期日について定めており、反対住民は計画と提案理由の公告のあとで、この討議期日において異議を述べ専門行政庁と討議する可能性を与えられている。討議期日は、行政が紛争解決という行政に与えられた任務を履行することができる手続法上の地点である。このことは、討議期日の主宰者が彼に与えられた手続にかかる裁量(行政手続法10条)を協調的な紛争解決をめざして行使する、ということを前提としている。そして、討議期日の主宰者は、紛争の題材に関して討議することのみでもって満足してはならず、いわゆる交渉モデルにしたがって、対等の資格をもつ手続参加者間の公開の論争を主宰し、可能なかぎり協調的な行政決定を見出さなければならない(以下、三)。さらに、討議期日における協調的な紛争解決の経済的および手続効率的な観点も当然に顧慮されるべきであろう(以下、四)。
二 行政手続法の目的の一つとしての紛争解決
手続原則は古くから、内容的に正しくかつ妥当な決定への途を示すものである。行政手続法は、実体的な行政法を貫徹し実現することに寄与している。
もとより、行政手続法の目的は行政実体法に対するこのような補助的機能に尽きるものではない。すなわち、行政手続においてすでに、市民の権利保護が、とりわけ行政手続による基本権の保護が留意されなければならない。行政手続は、基本権の衝突を調整する場合に、新たな意義を獲得するのである。行政手続のこのような憲法的な評価は、行政決定を「正当化」するという目的によって補完される。すなわち、市民は、行政決定が正しくかつ合目的的であることついて手続的に納得させられるべきである。これは、手続法のもつ平和創出(friedensstiftend)機能である、と言い換えてもよい。
行政手続法のいずれの目的が前面に出てくるかは、立法者がいかなる行動の余地および形成の余地を、決定を行う行政に与えているかによって、領域ごとに特有に決められる。
行政庁による決定の適法性および合目的性を手続によって確保することは、法律により条件的(konditional)にプログラムされている侵害行政および社会行政の領域においては、ドイツの行政手続法の伝統的な目的である。このことに役立つのは、とりわけ、職権調査原則(行政手続法24条)および決定に利害関係ある者の聴聞をうける権利であり、これらは行政庁に対して、法律の適用に際して必要な、可能なかぎり広範囲の情報的基礎を保障すべきものである。厳格に法治国家的な侵害行政および社会行政の領域における、行政と市民の間の手続法関係の特徴は、法治国家に特有の隔たりが依然としてあることである。すなわち、市民は、法律によって規律されている行政決定が市民の申請および市民から得られた情報にもとづいて行われるかぎりでのみ、行政手続に関係させられる。手続による正当化はこれに対して、行政活動が民主主義的に正当化された法律の執行であることによってすでに正当化されているために、二次的な役割を果たすだけである。
目的的(final)にプログラム化された計画行政および計画法的な装いをもつ許可決定へと移行するにつれて、行政と市民の間の手続法関係は新たな目的の下に置かれることになった。すなわち、行政の任務は、もはや法律制定者によって抽象的に定められた個別事案に関する適法な決定を見出すことではなく、法律上の多様な目的設定の間で妥協を目ざした(kompromissorientiert)衡量をすることを通じて、合意の得られる(konsensfaehig)方法によって、論議の的となっている土地や自然資源の利用に関する紛争を解決することである。なぜなら、連邦鉄道路線の計画決定あるいは廃棄物焼却施設の許可に際しての便益争いは、立法者ないしは議会によってではなく、行政によって決定されるからである。ここでは権利および義務は、規範から導かれるのではなく、そして個別事案について宣言的に認定されるのでもなく、独自に行政によって設定される。行政と市民間の争いにおいては、もはや法の正しい適用のみではなく、行政に委ねられた多かれ少なかれ広い政策的な行動の余地の、合目的的かつ法的な形成が重要になっているのである。
行政手続に関するパラダイムのこのような変遷によって、多大の正当化圧力が生じている。計画行政およびイミシオン防止法上の手続の領域においてはたいていの場合、多数の住民による異議が手続法によって処理されなければならず、共同契約的な、紛争を収拾する決定を行うことが追求されなければならない。このような行政手続においては、ザッハリヒに正しい決定に関する議論をすることおよび手続によって行政活動を「正当化」することが、ますます重要になっている。この領域においては、行政決定への合意(Konsens)とそれの受容(Akzeptanz)を得ることめざした、手続参加者の多様な利益間の紛争解決が、行政手続においてなされなければならないのである。
行政手続のもつこのような対立解消的機能は、国家や法の理解の変遷と同じ線上にあるものである。すなわち、成人市民が彼にかかわるすべての決定へと参加することを支持する現代の時代精神は、行政手続法の目的が行政決定への合意とそれの受容を獲得することであることの承認を要求している。今日の社会意識の特徴は、強い、ときには根源的にすら増大している環境意識、および新しい能動的な民主主義的意識である。このような時代精神については、ここでは論評しない。現実的には、行政はいずれにせよ、古い法治国家的に社会領域との距離を保って事物に即した法的に正しい決定を追求することはもはやできない、という事実から出発しなければならない。行政の活動の成功は、合意および受容の得られる(akzeptanzfaehig)紛争解決を行うことができるかどうかにも依存しているのである。
この種の紛争解決は、そのほか、伝統的な法治国家の「硬い」行為形式から協働的(kooperativ)で対話能力のある(dialogfaehig)国家の「柔らかい」行為形式への移行を示す目印でもある。協働的国家へのこのような移行は、一方的で超然とした決定による指揮によってはうまく機能しないところで観察される。すなわち、連邦、諸州、および団体の官僚機構の間の法律に関する交渉(Aushandeln)、刑事手続における刑罰に関する交渉、租税の評価根拠に関する協議(Absprachen)、あるいは公法上の契約の締結に際しては、一方的・権威主義的な活動は放棄され、協働と合意形成がとって代わっている。現代産業国家においては、計画行政、配慮行政および安全確保行政も下命と禁止のみによっては作動することができず、市民および社会領域と協働することが必要になっている。協働する場合にのみ、必要な情報が交換され、妥協および補填が取り決められ、個別事案の特性に即した措置を行うことができるのである。
最後に、合意と受容の得られる紛争解決という行政手続法の目的は、民主主義理論によっても根拠づけることができる。すなわち、責任ある民主主義の理念からすれば、市民が議会や行政の基礎的な決定の中に「自らを再び見出すことができること」、「彼等が共通して正しいと考えまた意図するものの中に見出すのと同様にそれらの多様な見解の中に自らを再び見出すことができること」が必要である。行政の計画決定も、利害関係ある一般住民の願望、要求および需要とあらためてつねに連結されるべきである。このことはもとより、公共側によって好まれた選択肢を一般民衆が請け負うことであってはならない。そうではなく、法的な所与の範囲内において、市民が秩序ある共同生活の基礎であるとして受容することができる決定が追求されるべきである。行政手続の目的である、合意と受容の得られる紛争解決は、部分的には社会領域からまた部分的には行政によっても決定過程へと持ち込まれる、多様な公共的および私的な諸利害の間の妥協を発見することを要求するのである。
三 討議期日における紛争解決の要件
紛争解決が行政手続の目的であることは、討議期日に関する法律上の規律によって示唆されているところである。行政手続法74条2項第1文および航空法10条5項第2文によれば、討議への参加者の間で合意が生じない場合においてのみ、計画確定決定(Planfeststellungsbeschluss)において異議に関する決定が行われる。このことを見ると、「討議期日」という語は短かすぎる。むしろ「討議および解決(Schlichtung)の期日」と語るべきであろう。このように用語を補充するならば、同時に、討議期日を主宰する行政庁が行わなければならない紛争管理(Konfliktmanagement)という機能が、すべての参加者に対して明確になるであろう。
手続の目的としての紛争解決は、このような目的の達成のための行為戦略を行政がもつことができない場合には、ほとんど機能しない。効率的な紛争管理のためには、手続に関する個別の諸原理の一層の展開が、法治国家的な手続上の義務を越える活動が、そして手続に関する裁量に対する指針の新たな規定が、不可避的に必要になる。決定の余地が制限されないように行政手続を住民参加から可能なかぎり遠ざけようとする行政の伝統的傾向は、法治国家的な行政手続という旧式の観念に対応したものであるにすぎない。これとは異なって行政は、参加者の考え方を行政がどのように活用するか、どのようにすれば行政の決定に対する受容を見出すことができるか、についての考慮をしなければならない。行政手続の実務は、手続の目的のこのような新たな規定および手続の「現代化」を考慮して、大きく変化してきている。すなわち、受容を創出するような対話が行われることなく討議期日において反対住民がその意見を聴き取られるだけにすぎない手続は、早期のかつ包括的な住民参加のあとで合意の得られる妥協を見出すことができるような手続とは対立するものである。
1 紛争解決手続における句切り(Zaesur)としての討議期日
討議期日は、たしかに紛争解決の中心的な地点である。にもかかわらず、紛争解決という観点は、それ以前の段階の手続においてすでに考慮されていなければならない。合意と受容の得られる紛争解決は、申請者と行政庁の間で企画(Projekt)に関する交渉がすでに行われてしまったあとで初めて手続関係者が知らされ、そして討議期日が開催される場合には、大きく損われてしまう。このような場合には、住民参加と討議期日は茶番劇(Farce)になり、克服し難い対立が形成されることになる。
したがって、国土整備あるいは環境影響評価に関して始動している手続においてはすでに、可能なかぎり早期の一般住民の参加が行われるべきであろう。それは、すでにその段階において合意と受容の得られる紛争解決を行う機会をより十分なものにすることができる。
長期にわたる、申請者にとって費用のかかる行政手続においては、もとより、インフォーマルな協議の形式による一定の中間的決定を行うことが放棄されることはない。ここでは、――法的にはたしかに強行的なものでないが受容を促進する――併行的な早期の関係者の参加および一般住民の参加が行われるべきである。
2 紛争解決の前提としての行政庁の中立性
法治国家原理は、行政手続法のその他の場合でもそうであるように、討議期日における手続に対して適正(fair)な手続形成を要求する。討議期日を主宰する行政庁は、行政庁の衡量された決定の前提となる程度の、内部的な距離および中立性を保っていなければならない(24)。内部的な距離と中立性が欠けているとの外見的印象があることはすでに、行政庁による紛争解決が受容を獲得することを相当に危うくする可能性をもっている。
討議を主宰する行政庁と決定する行政庁の間の、従来行われてきたよりも厳格な分離は、法治国家的な行政手続法からは要求されないとしても、効率的な紛争管理にとっては有益である。決定を行う行政庁ではなく聴聞行政庁が、討議期日を主宰すべきであろう。すなわち、討議期日を主宰する行政庁が独自の決定権限をもっていなければ、手続参加者は、当該行政庁が自分の権限エゴイズムを貫徹しようとはしない中立的な解決機関であることを承認するようになる。
3 情報の均衡に関する論議
すべての手続参加者の間に情報の均衡(Informationsgleichgewicht)があることは、紛争解決のための前提条件である。必要な情報をもつ者のみが、彼自身の利益と立場を適切に紛争解決手続の中へと提出することができ、提案されている紛争解決の内容を了解したうえで自分の意見を述べることができる。
手続法的には、縦覧(Auslegung)手続において、意図されている事業企画案(Vorhaben)に関する最小限度の情報を自由に利用することができる。その際、他の行政庁の意見あるいは事業企画案に関する判断を行うために行政部が求めた鑑定書を縦覧に供することは、法的には要求されていない。しかし、縦覧手続においてすでに包括的で専門的な情報が一般住民に対して与えられ、そのことが事業企画案に関するその後の議論を緊張にみちたものにしかつ促進するとすれば、公的な議論にとって重要性をもつかぎりで、存在するすべての意見と鑑定書が縦覧に供されるべきである。その場合において、考えられうる異議は、縦覧書類においてすでに先取りされているべきであり、また専門的に、場合によっては鑑定意見によって、検討されてしまっているべきである。手続法によって要求されていること以上の多くのことが縦覧手続においてすでに行われている場合にのみ、具体的で適切な議論を行うことができ、受容の得られる紛争解決への途が促進される。
アメリカ合衆国における争訟的ないし事実審型(streitig)行政手続におけると同様に、手続参加者は行政決定の基礎にある事実状態に対して異論を挟むことができ、またそのような目的をもって証拠を要求し、あるいは提出すらしてもよい。疑義ある問題がある場合に、関係者の証拠申請に行政庁は拘束されないと定める行政手続法24条1項を行政庁が援用することは、受容の獲得には役立たないであろう。手続上の機会平等性を確保するためには、反対住民が自ら選択した専門家や鑑定人を任用することができるようにすべきである。得られた鑑定意見が争われている諸見解の明確化に役立つものであるならば、――開示手続における弁護士費用とは違って――そのための費用は推進者ないしは申請者に課せられるか、行政部によって負担されるべきであろう。技術的または科学的な評価に対して正当な疑問が生じている場合には、反対住民が部分的には高い鑑定費用を負担することは、行政庁の事実解明義務と矛盾するものである。反対住民がいわば行政庁の包括的な事実解明義務を履行するための代理人であるとすれば、また反対住民によって望まれた鑑定人の任用が受容の形成に役立つことができるとすれば、行政部が鑑定費用を支弁することに対する実際的な疑もも問はほとんど生じない。
4 反対住民(Buergerprotest)の代表者との対話について
計画手続や許可手続においては多くの場合大量の異議が申出が行われ、その結果として討議期日においてもその他の手続においても反対住民との対話を追求することができなくなっている、という不満が述べられることがあるかもしれない。中間的な紛争段階における計画確定手続や許可手続に関する最近の諸研究は、多数の個別的な異議は職業的な反対者たちによって背後で組織されている、という結論に至っている。このことに対応して、この間に市民的異議(Buergerprotest)のある程度の専制化が見られる。中間的な紛争段階にある手続において、いわば船首像である代表者(Gallionsfiguren)として異議の中心にあるのは、通常は若干の少数反対住民にすぎない。行政手続においては、とりわけ討議期日においては、このような職業的な反対住民と対話するようになること、そして彼らを早期に何らかの決定の発見の方向へと取り込むこと、が試みられなければならない。そのようにして受容の得られる解決が追求されるならば、本質的にはほとんど有益ではない市民的異議の溢出をせき止めることができる。
5 討議期日の公開性
最後に、討議期日の公開性(Oeffentlichkeit)は、協調的な紛争解決に対して、必要な周知性(Publizitaet)を与えることができる。行政手続法68条1項第1文を準用する73条6項第6文によれば、討議期日はむろん公開ではなく、当事者にのみ公開である。しかし、手続法上の規律を補充することにより、討議期日の公開性が定められるべきであろう。このことは、実務においては第三者の討議期日への参加を排除することができないことから、容易に理解されることであるように思われる。討議期日は当事者にのみ公開であるので、ただ討議期日に個人的に参加するためにのみ、多数の異議の申出がなされている。公開性がもつ統制の機能という古い理念は、討議期日への一般的なアクセス(Zugang)を支持している。これは基本的には報道界によって代表されているので、彼らは討議期日に招かれるべきであり、重要な結果について報道をすべきであろう。このことは、決定発見の過程を透明なものにし、メディアによる具体的な報道を通じて一般住民の受容を獲得するために、緊急に必要なことであるように思われる。
四 経済性と手続的効率性の諸問題
討議期日における協調的な紛争解決には、疑いなく法治国家的な限界がある。最近くり返して強調したこの問題については、ここではこれ以上立ち入らない。むしろ、討議期日における協調的な紛争解決の財政上の限界へと、注意は向けられるべきであろう。たとえば、莫大な費用を必要とするトンネルの掘削によってのみすべての騒音被害が防止されるとすれば、幹線道路法上の計画確定に対する異議は、無意味になるかもしれない。このような要求がある場合において、受容の得られる紛争解決が一方的に公的な予算および他の重要な任務の負担になってはならない、ということは考慮され続けるべきである。行政決定に対する受容を生み出すために便益と費用の間の重要な関係が完全に無視される、ということがあってはならない。しかし他方で、多額の費用を必要とする行政決定からは、たとえば金銭によっては表現されない住居や生活の質の改善といった、大きな社会的効用が生じる可能性もある。
エネルギー供給あるいは廃棄物除去の分野において受容の得られる行政決定が見出されるならば、それは明らかに評価されてよいであろう。推進者はきわめて高価な措置を講じることによって技術の改善に貢献し、有害物質による公害を従来知られていた最小値以下へと引き下げるのであるから。ここでは実際には、地方的または地域的な領域において住民が分担金および対価を支払うことによって、住民が清浄な大気の維持の分野における改善費用を負担しているのである。
私経済の分野については、右とは異なることがいえるかもしれない。ここでは、国内的または国際的な競争圧力があるために、公害を減少させるための新しい技術を試験することは期待することができない可能性がある。このような状況においてはとりわけ、裁判所による事後手続を伴わない、受容の得られる行政決定が推進者にとって大きな経済的価値をもっており、その結果として、反対住民の側が法的手段をとることを放棄する場合にはいわば逆方向において環境への負荷を一定程度削減することが経済的に擁護される、ということが明らかにされるべきであろう。行政は、法律によって定められていない負担が交渉によって課せられるとすれば許可を求める推進者の権利を縮減することになる、という理由によって、従来はこの種の交渉(Aushandeln)を行うことに反対してきた。しかし、これにもちろん対立するのは、いずれの推進者も反対住民と「和解(vergleichen)する」ことができ、それは長年にわたる訴訟手続のあとで行われる行政裁判所上の和解の対象にもなることができる、ということである。
討議期日における紛争調停(Konfliktmittlung)に対しては経済性の観点のみが二律背反的な役割を果たすのではなく、手続効率性(Verfahrensoekonomie)の観点もまた、きわめて多層的である。協調的な紛争解決および行政決定への受容の獲得をめざして行政が努力することは計画確定手続および許可手続を促進するのか、それとも遅延させるのか、ということを判断しなければならない場合に重要であるのは、中心的な時間の問題である。理解の得られる(einverstaendlich)紛争解決をめざす早期の努力は、手続効率性という究極目的のために役立つものである。想定できる消極的な先行的現象はたしかに、行政手続がより労働集約的になるということ、および可能なかぎり広い範囲の合意を手続的に獲得しようとすることによって行政決定はいくぶん遅延するということ、になる可能性がある。しかし、行政手続における受容の得られる行政決定はたいていの場合において裁判所による事後手続を回避する、ということが、積極的な効果として右のことと対立している。重要な争点は手続法的に取り除かれており、その結果として行政決定はすべてのまたは大部分の手続参加者にとってなお擁護できるものであると見られるに至っているからである。多くの完結した行政手続に関する調査は、計画決定やイミシオン防止法上の許可に際しては推進者、関係行政庁および反対住民によって受容される妥協を見出すことができる、ということを確認している。
一方また、妥協の発見をめざした行政手続のあとで法的争訟が生じる場合においてすら、訴訟は、とりわけ行政裁判所法80条による仮の権利保護の請求は、ほとんどの場合認容される見込みがない。すべての手続参加者の論拠が相互に衡量される適正な手続が行われている場合には、さらには、技術的または科学的な評価に関する争いも鑑定意見によって解明されている場合には、行政決定は裁判所においても維持される。適正な、ほとんど弁論主義的(kontradiktorisch)な行政手続はさらに、行政裁判所による審査の密度をある程度緩和することを可能にする。この点は別におくとしても、計画決定および許可は、ふさわしい手続法的な形成が生じている場合にはたんに行政裁判所的な事実審を必要とするだけである。行政裁判所法48条による上級行政裁判所の第一審的権限に関する目録的な列挙は、そのかぎりで、行政手続と裁判手続の相互依存性を十分に考慮するという正しい方向への一歩でもある。
<もとの書物 (上記) にはある34個の注は、本文中の注番号とともに、ここでは省略――Hiraoka>
<訳者注>
(1) 「討議期日(Eroerterungstermin)」に関する(ドイツ)行政手続法上の関係条項および本論稿において言及されているその他の諸条項(の一部)は、次のとおりである(いずれも1991年1月1日現在、傍点<ここでは下線―Hiraoka>は訳者。行政手続法の訳出に際しては、高木光「西ドイツ行政手続法(2)」自治研究64巻30号89頁以下(1988年)、南博方『行政手続と行政処分』252頁以下(1980年)などを参考にした)。
@行政手続法73条(「聴聞手続」)
1項「事業企画案の主体は、聴聞手続の実施のために聴聞行政庁に対して、計画案を提出しなければならない。計画案は、事業企画案、その動機および事業企画案に関係する土地および施設を明確に知らしめる図面および説明書から成るものとする。」
2項「聴聞行政庁は、その権限の範囲が事業企画案と関連している行政庁の意見を聞くものとする。」
3項「計画案は、聴聞行政庁からの求めにもとづいて、事業企画案によって影響をうけることが予想される市町村において、1カ月の間、縦覧に供されなければならない。利害関係者の範囲がよく知られており、かつ相当の期間内に計画案を閲覧する機会が彼らに対して与えられるときには、縦覧を省略することができる。」
4項「事業企画案によってその利害に影響をうける者は何人も、縦覧期間の経過後2週間以内に、書面によって、または聴聞行政庁もしくは市町村における調書に記載することによって、計画案に対する異議を申し出ることができる。3項2文の場合においては、聴聞行政庁が異議申出期間を定める。」
5項「計画案が縦覧に供せられることになる市町村は、縦覧を行う旨を少なくともその1週間前に、その地域の慣行にしたがって公告しなければならない。公告には、次の各号に掲げる事項を示さなければならない。
一 計画案が縦覧に供される場所および期間
二 異議があるときは、公告において示されている官公署に対して、異議申出期間内に提出しなければならないこと
三 討議期日に関係者が欠席する場合には当該関係者なくしても議論を行うことができること、および討議と決定は時期に遅れた異議を考慮しないままで行うことができること
四 300を超える通知または送達が行われることになるときは、a異議を申し出た者に対して、討議期日に関する通知を公示によって行うことがあること、b異議に関する決定の送達は、公示をもって代えることがあること 〔五項四号の後段、省略〕
6項「聴聞行政庁は、異議申出期間が経過した後に、計画案に対する適時に申出がなされた異議および計画案に関する関係行政庁の意見に関して、事業企画案の主体、関係行政庁、利害関係者および異議を申し出た者とともに、討議しなければならない。聴聞行政庁は、時期に遅れて申出がなされた異議に関しても討議することができる〔以上、第1文〕。討議期日は、少なくともその1週間前に、その地域の慣行にしたがって、公告されなければならない〔第2文〕。関係行政庁、事業企画案の主体および異議を申し出た者に対しては、討議期日に関する通知をしなければならない〔第3文〕。関係行政庁および事業企画案の主体に対する以外に300を超える通知が行われることになる場合は、これらの通知は公示をもって代えることができる〔第4文〕。公示は、第2文の定めにかかわらず討議期日が聴聞行政庁の公報紙においておよびそれに加えて事業企画案によって影響をうけることが予想される地域に頒布されている地域的日刊新聞において公告されることによって、効力を生じる。第2文が定める期間に関する基準となるのは、公報紙における公告である〔以上、第五文〕。その他討議に関しては、正式行政手続における口頭審理に関する諸規定(67条1項第3文、2項第1号と第4号および三項、68条)を準用する〔第6文〕。」
A行政手続法10条(「行政手続の無形式性」)
「行政手続は、手続の形式に関して特段の法規定がある場合を除くほか、特定の形式には拘束されない。行政手続は、簡潔にかつ合目的的に遂行されなければならない。」
B行政手続法24条(「職権探知原則」)
1項「行政庁は、職権により事実関係を調査する。行政庁は、調査の方法および範囲を決定する。行政庁は、関係人の申立ておよび証拠申請には拘束されない。」
2項「行政庁は、関係人にとって有利な事情をも含めて、個別事案にとって重要な一切の事情を考慮しなければならない。」
〔3項、省略〕
C行政手続法74条(「計画確定決定」)
1項「計画確定行政庁は、計画を確定する(計画確定決定)。正式行政手続における決定および決定に対する不服に関する諸規定(69条および70条)が適用されるものとする。」
2項「計画確定行政庁は、計画確定決定において、聴聞行政庁において行われた討議の際に合意を得られなかった異議に関して決定を行う。」
〔2項第2文以下および3項〜5項、省略〕
D行政手続法68条(「口頭審理の進行」)
1項「口頭審理は、非公開とする。監督行政庁の代理人および行政庁において修習のために従事している者は、口頭審理に参加することができる。審理の主宰者は、関係人がいずれも反対をしないときには、その他の者の出席を許すことができる。」
〔2項・3項、省略〕
E行政裁判所法48条(「上級行政裁判所の管轄」)
1項「上級行政裁判所は、次に掲げる事項に関係するすべての訴訟に関して、第一審裁判所として裁判を行う。
一 原子力法7条および9条のa3項の意味における、設置、運営、その他の維持、変更、閉鎖、安全な密閉および施設の撤去
二 原子力法7条において定められている性質の施設以外による核燃料の加工、処理およびその他の使用(原子力法9条)並びに原子力法9条1項第2文の意味における重要な離反または重要な変更並びに国家行政以外の者による核燃料の貯蔵(原子力法6条)
三 〔省略〕
四 1〇万ボルトを超える電圧をもつ架空電線の建設およびその線列の変更
五 廃棄物の燃焼または高熱解体のための一年あたり10万トンを超える業務(実用効率)を行う固定施設および廃棄物法2条2項の意味における廃棄物が全部または一部集積されまたは堆積している固定施設の建設、運営および重要な変更に関する、廃棄物法7条において定める計画確定手続
六 公共の交通に供される空港の設置、拡張または変更および運営
七 市街電車および公共鉄道の新線の建設並びに操車場およびコンテナ駅の建設に関する計画確定手続
八 連邦幹線道路の建設または変更に関する計画確定手続
九 公共の交通に供される新たな内陸水路の建設に関する計画確定手続
第1文は、認可および許可が事業企画案と空間上および運営上の関係がある付随設備に関するものである場合をも含めて、事業企画案に必要なすべての認可および許可に関する争訟に対して適用されものとする。諸州は、第1文が定める諸事項の場合における所有者指定処分に関する争訟に関しては上級行政裁判所が第一審裁判所として裁判を行うことを、法律によって定めることができる。
〔2項・3項、省略〕
(2) 成田頼明「西ドイツの計画確定手続について」同『土地政策と法』(1989年)所収239〜240頁(原論文、1979年)は、「討議期日」における「討議」に関して次のとおり紹介しているので参考に供しておきたい。<省略>