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 「行政法」雑感

                       平岡 久    1993年 4月


  <*出典――大阪農業時報489号〔大阪農業会議〕(199304)執筆者紹介は省略>


  1988年1月時点のやや古い数字であるが、わが国の現行法令の数は、法律・1554、政令・1872、府省令・2464、合わせて5880である。そして、多く見積もれば、これらのうち約9割は、農林水産省・建設省等の行政組織の活動に関するものであろうと思われる。

 このように行政に関係する国の法令は数多く(ほかに自治体の条例・規則が加わる)、筆者の専門領域からすると恥ずかしいことではあるが、名前すら知らない行政関係法令も、おそらく少なくない。

 都市内農地の問題に関心をもつ機会がなければ、特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律(1989年)、市民農園整備促進法(1990年)といった法律の存在を、現在でも知らないままであったであろう。

  右のような事情の背景には、わが国の大学における行政法研究の比重が、法律と行政の関係等についての一般論に傾斜していることがある。

 具体的な行政法令に関する研究も、徐々に増えてはきている。しかし、具体的な行政法令を法的に評価・分析するための基準・観点・方法が行政法学上確立されている、とはいい難いのが現状である。

 個々の行政法令の制定・改正は時代の政治の反映であり、ときどきの政策の実現のための手段・道具にすぎない、といちおうは言える。しかし、行政法研究者は右のように言って済ますことはできないであろう。

  土地基本法(1989年)が示す「適正な・計画に従った土地利用」等のそれら自体はまっとうな理念のもとで、生産緑地法・都市計画法・建築基準法等が改正されてきている。

 近年の法制の動向は土地に関する諸理念に適合しているのか、等を一概に論じることはもちろん困難である。適正な土地利用のみならず、適正な税負担の問題にも生産基盤の適正な配置の問題等にも、そしてわが国の「都市」の今後のあり方にも関係しているからである。

 とはいえ、政策自体の評価にかかわるからといって、また複雑で多面的な、困難な検討を要するからといって、具体的な行政法令から目をそらすべきではないであろう。

 政策目的の選択自体を法的に評価し、また政策目的を実現するための合理的なシステム(制度・仕組み)が法令上用意されているか等を分析・評価できるための基準・観点・方法を探るためにも、農地を含む土地関係法令への関心は継続させたいと考えている。