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 大韓民國における土地公概念制度のその後

平岡 久       1994年 3月


  *出典――小高剛・損失補償研究会1993度報告書(1994.03)


 1993430日午前10時に、大韓民國國土開發研究院(*)を訪問し、院長・李相龍氏と短時間の会見ののち、金絃植(キム・ヒョンシク)氏〔元土地公概念研究委員会幹事〕より、<土地公概念法制度の経過>についての報告をうかがった。以下は、当日のメモ(・録音テープ)および配布されたレジュメにもとづいて、その報告の内容をまとめたものである。

 15年前に特別法にもとづいて設置された国土政策に関する(国立の)研究所で、職員数は約240名。

 

 T 土地公概念関連制度の導入の背景

 〇大韓民国の国土は面積が約99,000kuと狭く、さらにその67%は山地、22%は農地であり、都市部(住宅地・工業用地等)は4.4%にすぎない。しかし、土地関係法律は約90、地域・地区制度は約150あるが、地域・地区制度はかなり硬直的であるなど、狭い国土の適切な配分は未整備である。

 〇他の先進国とは違って2020年まで続くと専門家は予測している都市化・産業化による開発圧力により、地価が上昇した。政府が地価を発表し始めたの1968年以後、平均して年23%の上昇である。地価上昇には大きく10年(1968年、1978年、1988年)、小さくは5年のサイクルがあるが、1988年には急速に上昇した。

 〇土地の社会性・公共性などの土地公概念に関する議論自体は、1978年に始まっており、土地に関する「革命」期と感じられていた。ただし、その当時の議論の成果は、日本の国土利用計画法制定(監視制度など)に対応した、国土利用管理法の改正のみであった。当時の「土地公概念」はまだ空虚なものであったとの指摘もある。

 〇1980年代のはじめは、政治・経済・社会の激変期であったが、土地・地価は安定していた。しかし、1980年代後半には経済社会の変化、国際収支の黒字、88年オリンピック、国会議員選挙・大統領選挙等があり、専門家の中には1980年代末にもう一度地価狂乱があると予測するものもあった。

 〇政府は土地公概念研究委員会を設立した。この委員会は39人のメンバーで構成され、4つの分科会に分けられ(1つの分科会会長は徐元宇教授)、2つの任務(@土地公概念の水準による土地問題への効果的対応が十分になされているかの検討、A不十分であるとすれば十分なものにするための具体的政策の検討)をもっていた。

 〇「土地公概念」は、基本的に学問的概念ではない。もちろん、この概念が具体的政策を意味しているのでもない。当時の認識としては、土地の所有・利用・取引・収益に対して国家が公益を前提として土地にかかる財産権に介入すること〔介入するためのコンセプト〕である。

 〇土地の所有・利用・取引・収益の4点について、委員会は既存の制度・政策が適切であったかの検討を行った。18カ月の検討の結果は、土地の利用・取引については、既存の制度・政策で十分なものがあるが、土地の所有・収益については、不十分である、というものであった。

 〇結果としては、第一に、土地の所有については土地所有上限制が、第二に、土地の収益について、開発負担金制度・土地超過所有に対する課税が行われるようになった。

 また、第三に、1970年代末の土地取引指標によれば、林野の取引が最多であり、地価水準は林野の方が農地より低いが、上昇率は、林野が農地を上回っている。このことから、林野が投機の主な対象になっていると判断された。そこで、農地取引証明制度を林野にも適用することとした。

 第四に、企業が、業務用以外の土地を必要以上に保有していると判断された。そこで、30大企業に対して非業務用土地の売却措置がとられた。〔第一〜第四について、レジュメp.1の「土地公概念制度の類型別政策目標」を参照〕

 

 U 土地公概念関連制度の内容、執行実績および問題点

 1 宅地所有上限制1989.12.30施行。但し、自発的な売却を促すために、超過所有負担金は2年間徴収猶予。内容の概要は、レジュメp.2)

 〇負担金の賦課の実績は、1992年において、18,089件、1,444億ウォンであった。

 〇問題点は、つぎのとおりである。

  @一部に硬直的な運用があり、改善が必要である。例えば、危険施設(ガス施設等)に対しても同様に適用されているが、安全性を考慮すると制限面積の拡大が必要である。

  A適用地域が6大都市に限られており、それ以外の地域に土地投機が拡大したときを考えると、機能が限定的である。将来の土地需要は、大都市周辺に広がるであろう。

  Bアパートの場合、一戸建て住宅に比べて共有持ち分が少ない(50坪のアハートでは実際には1520坪くらい)ので、課税対象から除外されることになる。

 2 土地超過利得税制度〔遊休地規制〕(内容の概要は、レジュメp.3)

 〇3年ごとに賦課するが、今年はじめて課税をした。その実績は、1991年分は4,630億ウォン、1992年分は、地価の安定、課税回避の努力もあって799億ウォンになった。

 〇問題点は、つぎのとおりである。

  @課税対象が企業の非業務用土地・個人の遊休地に限られているので、業務用土地について発生する地価上昇分に対する課税は不十分にならざるをえない。

 もちろん、業務用土地と非業務用土地を区別する基準があいまいであることも問題の一つであり、これにかかわる法的訴訟も増えている。

  A保有段階の、未実現利益に対する課税であることから生じる問題もある。この2年間に、課税を回避するために無分別の建築が増加し、建設景気を過熱化させた(とくに江南地区)。賃貸されていない、空き部屋が50%を超えているような業務用ビルもある。将来的・長期的な開発用地として残しておくべき空間である土地について建築が進められている、という面もある。

 地価上昇を前提としている税であり、最近のように地価下落の状況では、払い戻しをしなければ公平性を欠くという問題点もある。

 3 開発利益還収制度

 〇開発負担金の賦課実績は、19903月から19929月までで、2,724億ウォンである。

 〇問題点は、つぎのとおりである。

  @開発負担金算定の基準となる地価の評価方法が、開発事業の開始時点と完了時点とで異なるので、一致させる必要がある。現在のところ、開始時点では公示価格を用い、完了時点では鑑定評価価格を用いているので、公平性の問題を生じさせている。

 新経済5カ年計画では公示地価の利用を提示しているが、これに関する公聴会では、鑑定士協会からの大きな反発があった。

  A開発利益の算定の基準時を開発事業にかかる許認可の時点にしていることから生じる問題もある。すなわち、大部分の開発事業については開発計画の公表の前に地価が上昇してしまうので、許認可の時点を基準とするのでは実効性がない。

この問題について、用途変更の時点を開始時点にするような改革の方向が提示されている。

  B対象が開発事業に限定されているので、都市地域における一般の用途変更や都市計画区域への編入による地価上昇という開発利益に対しては賦課することができない。これについても改善の方向で検討はしているが、未実現利益に対する課税である、という問題はなお残る。

 

 V 制度導入に対する評価

 〇導入の当時は、直接的で強力なものではないかとの懸念があった。しかし、不動産市場の安定化に寄与した、というのが一般的な認識である。とくに不動産取引・保有の点で段階ごとに投機抑制装置を導入したことによって、不動産投機を構造的に抑制した、といえる。

 〇とくに1992年には、地価神話が崩壊して、地価が下落した。しかし、地価下落が、土地公概念制度によるのか、景気変動による萎縮によるのか国民経済そのものが変わったためか、政治経済の環境の変化によるのかは確信できない。

 〇一方、予測していなかった副作用があったのも事実である。

すなわち、@規制を主目的とする法運用は、正常な取引や利用を萎縮させる凍結効果を伴っている。例えば、農地・林野についての取引を抑制したために、実需要の取引も抑制したという点がある。

  A大部分の不動産法令は実需要用と投機用の取引を区別しているが、両者を明確に区別することは現実には困難である。

  B個々の所有者が実需要用と判定されるために、歪曲した意思決定が見られる(→土地超過利得税を回避するための無分別な建築が2年間の建設ブームを招来した)。

 〇この30年間の大韓民国の土地政策は、需要管理を中心にしていた。土地公概念関連の以上の3つの制度も例外ではない。しかし、土地問題の根本は、土地についての需給の差である。そこで、新経済5カ年計画では、需要管理は従来どおり行いつつも、供給管理に重点を移そうとしている。

 〇土地公概念関連制度について直接的・規制的という指摘がなされることがあった。今後はより間接的・迂回的な方向を考えている(土地公概念制度の緩和を意味するわけではまったくない)。土地関連税制の全面的な改正の作業も行われている。しかし、供給関連制度には、別の土地投機の問題を生じさせるおそれがある、という危険がある。我々は、そのような問題を克服するように努力しているところである。