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 パチンコ店等の建築規制

                平岡 久     2003年 3月


  <出典−(宝塚市)まちづくり条例研究会報告書(研究会々長・真砂泰輔名誉教授)60〜81頁(2003.03)>


 1 はじめに
 2 法令による規制の現況(1)
  (1) 風営適正化法
  (2) 風営適正化法施行条例
  (3) 兵庫県風営適正化法施行条例
 3 法令による規制の現況(2)
  (1) 建基法

  (2) 特別用途地域
  (3) 地区計画

  (4) 委任条例
 4 市条例の内容的検討
  (1) 市条例の問題点

  (2) 市条例と他都市条例との比較
  (3) 市条例についての神戸地裁判決批判
  (4) 要約
 5 
市条例の改正

  (1) 規制対象の定め方
  (2) 規制の目的
  (3) 規制手法
  (4) 規制対象区域
  (5) 事前手続
  (6) 実効性の確保
 6 おわりに


 一 はじめに
 
現行の市条例〔正式名称は、宝塚市パチンコ店等、ゲームセンター及びラブホテルの建築等に関する条例。昭和5882日条例19号・同日施行〕は、ゲームセンターおよびラブホテルと区別される「パチンコ店等」を風営適正化法「第2条第1項第7号及び第8号に規定する営業を目的とする施設(まあじゃん屋を除く。)」と定義している(21号)。そして、同法第2条第1項第7号及び第8号が定める営業で「まあじゃん屋を除く」ものは、「ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」および「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)」であるので、「旅館業その他の営業」に含まれるラブホテル営業のための施設は除外されるが、「国家公安委員会規則で定める」ゲームセンター類は宝塚市条例にいう「パチンコ店等」の中に含まれていることになる。
 一方、宝塚市条例にいう「ゲームセンター」とは「法〔風営適正化法−平岡〕第2条第1項第8号に規定する営業に該当しない営業で、コイン等を投入することにより遊技をさせることを目的とする遊技設備を備える施設」を意味するので(
22号)、風営適正化法(およびこれにもとづく施行令・県条例等)の適用をうけないゲームセンター類を条例の適用対象にしていることになる。
 しかし、この点については、本報告書、1,はじめに、で述べた理由により、市条例からは削除することとした。したがって、「パチンコ店等」とは「パチンコ店」以外の営業用施設をも厳密には含むことになるが、ここでは、便宜的に、単に「パチンコ店」とのみ表記することにする。


 2 法令による規制の現況(1)
 
パチンコ店の建築または営業に関する主要な関係法律として、風営適正化法(昭和23710日法律122号、最終改正・平成14529日法律45号)、建築基準法(・都市計画法)がある。ここでは、それぞれによる規制内容等を概観しつつ、適宜コメントを付しておくことにする。
 (1)
 風営適正化法
 同法は「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する」ことを目的とするものであり(1条)、この法律において「まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」は「風俗営業」の一種とされている(同法217号。但し、「ぱちんこ屋」なるものについての詳しい定義または説明はない)。
 そして、パチンコ店の営業には都道府県公安委員会の許可が必要とされ(同法3条1項)、申請者の主観的要件、技術的要件および営業内容に関する要件を除いて立地上の基準についてのみいえば、「営業所が、良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内にあるとき」には都道府県公安委員会は「許可をしてはならない」とされ(同法4条2項2号)、立地上の基準を定めることを都道府県条例に委ねている。
 このように、とくに立地上の規制については、都道府県条例に規制区域に関する定めを設けることが授権されており、許可権者も国の省庁の大臣または国家公安委員会ではなく都道府県公安委員会とされている。これらは、いちおう、<地方>の実情を考慮した、都道府県ごとに異なりうる、独自の規制を許容している、ということができる。
 とはいえ、あくまで都道府県までの授権であって、市町村レベルにまでは規制基準の設定(規制区域の指定)や許可を行う権限は委ねられていない。これは、風営適正化法が国家公安委員会(いわゆる「警察」)所管の法律であり、市町村には「警察」関係行政機関が設けられていないことに、おそらく由来するのであろう。
 しかし、パチンコ店営業にせよその他の風営適正化法適用対象営業にせよ、都道府県内ではほぼ一律の規制をさせることが立法政策として合理的であるかどうかは、批判的に検討されてよいものと思われる。
 たとえば、兵庫県は指定市である神戸市の地域、宝塚市を含むいわゆる阪神間地域、姫路市を中心とする播磨地域、日本海沿岸を含む北部の但馬地域、そして淡路島と、特性が異なる多様な地域を含んでいるが、これらすべての地域について基本的にはほぼ一律の規制を及ぼさせることが合理的であるとは考え難い。一般市町村すべてに規制権限を委ねることは困難であるとしても、指定市のほか、中核市程度までは、県公安委員会(・県警察本部)との連携を求めつつ、具体的な規制を各市独自の基準・地域設定にもとづいて行うことを認めてもよいのではなかろうか。

(2) 風営適正化法施行条例
 都道府県条例は上記のとおり「政令で定める基準に従」う必要があるが、風営適正化法施行令(昭和59年11月7日政令319号、最終改正・平成14年8月30日政令282号)6条はつぎのように定めている。
 「(1) 風俗営業の営業所の設置を制限する地域(以下「制限地域」という。)の指定は、次に掲げる地域内の地域について行うこと。
  イ 住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域(以下「住居集合地域」という。)
  ロ その他の地域のうち、学校その他の施設で学生等のその利用者の構成その他のその特性にかんがみ特にその周辺における良好な風俗環境を保全する必要がある施設として都道府県の条例で定めるものの周辺の地域
 
(2) 前号ロに掲げる地域内の地域につき制限地域の指定を行う場合には、当該施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲おおむね百メートルの区域を限度とし、その区域内の地域につき指定を行うこと。
 (3) 前二号の規定による制限地域の指定は、風俗営業の種類及び営業の態様、地域の特性、第一号ロに規定する施設の特性、既設の風俗営業の営業所の数その他の事情に応じて、良好な風俗環境を保全するため必要な最小限度のものであること。」
 これによると、許可しない地域(営業「制限地域」)として条例で定めることができる地域として、@「住居集合地域」とA「学校その他の施設」の周辺地域(付近おおむね
100m以内)の二つが念頭におかれていることになる。
 そして、この風営適正化法施行令レベルまでは、地域指定にもとづく規制といっても、都市計画法上の用途地域制の利用は想定されていない(少なくとも明示されていない)ことが注目されてよい。

 (3) 兵庫県風営適正化法施行条例
 
() 風営適正化法422号の委任にもとづいて、兵庫県風営適正化法施行条例(昭和3941日条例55号、最近改正・平成131220日条例第53号)31項は、パチンコ店の営業「制限地域」を「(1)第1種地域 (2)別表第2の左欄に掲げる施設ごとに、同表の右欄に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ同欄に定める地域」と定めている。
 上の(1)にいう「第一種地域」とは、同条例21号によれば、「都市計画法(昭和43年法律第100号)第8条第1項第1号に規定する第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域及び準住居地域(道路法(昭和27年法律第180号)第3条に規定する一般国道又は同法第56条の規定により国土交通大臣の指定する主要な県道若しくは市道の側端から30メートル以内の第1種住居地域、第2種住居地域及び準住居地域であって、良好な風俗環境を保全するために特に支障がないと認めて公安委員会規則で定めるものを除く。)」である。
 これによれば、旧住居地域のうち県公安委員会規則で定める沿道区域を除いて、旧住居地域および旧住居専用地域、すなわち現行都市計画法のもとでの住居系7地域のすべてが、営業「制限地域」である。
 また、上の(2)にいう「別表第2の左欄に掲げる施設ごとに、同表の右欄に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ同欄に定める地域」とは、別表第2をパチンコ店に限り、かつ宝塚市に即して紹介すれば、つぎのとおりである。

   表1

施設

地域/営業所設置場所

第2種地域-商業地域以外

第3種地域-商業地域

第4種地域-なし

学校、図書館又は保育所

施設の敷地から100メートル以内の地域

施設の敷地から70メートル以内の地域

施設の敷地から50メートル以内の地域

病院又は有床診療所

施設の敷地から70メートル以内の地域

施設の敷地から50メートル以内の地域

施設の敷地から30メートル以内の地域

 この表にいう「第4種地域」とは別表第一に掲げる地域であるが(同条例2条4号)、宝塚市域内には該当地域は存在しない。「第3種地域」とは「都市計画法第8条第1項第1号に規定する商業地域のうち、第4種地域以外の地域」であり(同条例2条3号)、宝塚市域内の商業地域すべてについて上のような(70m、50mという)距離制限が生じることになる。「第2種地域」とは「第1種地域、第3種地域及び第4種地域を除く県内全域」であり(同条例2条2号)、宝塚市域内の近隣商業地域、準工業地域、工業地域および市街化調整区域について、上のような(100m、70mという)距離制限が生じることになる(なお、宝塚市域には工業専用地域はない。また、全域が都市計画区域内にある)。
 なお、上の表の施設のうち学校以外の諸施設は風営適正化法施行令には明示されていないものであるが、
兵庫県条例は、同令6条にいう学校「その他の施設」で学生「等のその利用者の構成その他のその特性にかんがみ特にその周辺における良好な風俗環境を保全する必要がある施設」にあたると解しているのであろう。
 前記のように、
旧住居地域のうち県公安委員会規則で定める道路側区域は営業「制限地域」とはされない。これについて、兵庫県風営適正化法施行条例施行規則(昭和60212日公安委員会規則第1号、最近改正・平成788日公安委員会規則第10号)2条は「別表の左欄に掲げる道路の側端から30メートル以内の第1種住居地域、第2種住居地域及び準住居地域のうち、当該道路の区分に応じ、それぞれ同表の右欄に掲げる地域内の地域」と定めている。「別表の左欄に掲げる道路」に該当し、かつ宝塚市域内においても存在するのは、「国道176号」および「県道尼崎宝塚線」である。
 () ところで、上に見たように、都市計画法上の用途地域制を利用した立地規制は、兵庫県レベルになって初めて出てきている(県条例および県公安委員会規則)。この都市計画法上の用途地域制の利用という点では、兵庫県以外の42都道府県においても同様のようであり、かつ基本的には住居系7地域を(幹線道路沿道地区を除いて)規制区域(営業「制限地域」)としているようである(宝塚市環境管理課調べ)。
 しかし、現行の風営適正化法施行令(政令)を前提にすれば、政令上の「住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域」(「住居集合地域」)は、はたして兵庫県その他の都道府県条例が定めるように用途地域のうち住居系7地域に限られるであろうか、という疑問が生じる。かりに都市計画法上は住居系7地域以外の地域であるとしても、あるいはそれらの地域内の一部の区域であるにしても、「…住居以外の用途に供される土地が少ない地域」(「住居集合地域」)は存在すると考えられるからである。そのかぎりで、兵庫県条例等の定めは政令6条1号イが想定している規制対象区域を、その趣旨に反して限定するものであり、違法なものではないか、少なくとも合理的な地域指定ではないのではないか、という疑いが生じる。
 この点に関して注目されるのは、宮城県条例は、商業地域・近隣商業地域・準工業地域・工業地域内であっても規則で定める区域は規制区域にしていることである
宝塚市環境管理課調べ)
 
一方、兵庫県条例は用途地域のうち住居系7地域の一つとして準住居地域をも含めているが、準住居地域における建築基準法による用途規制からみると、この地域は一定規模以下の自動車修理工場のほか一定範囲・種類の工場も許容されている地域であり、一概に「…住居以外の用途に供される土地が少ない地域」とは言い難いように思われる。そのかぎりで、県条例の定めは政令6条1号イの趣旨に照らすと、規制対象区域を過大に広げている疑いもある。
 この点について他の都道府県条例の中のおよそ
3分の1は、(幹線道路沿道地区以外に)準住居地域の一部については営業を許容している(同上調べ。なお、準住居地域のみならず、第二種住居地域についても、さらに加えて第一種住居地域についても例外を認める県条例もある)。
 なお、宝塚市域内において準住居地域に指定されているのは、国道176号の沿道地区の一部にすぎず、かつ、県条例施行規則(県公安委員会規則)において「道路の側端から
30メートル以内」の沿道地区としてパチンコ店営業が許容されている区域とほとんど重なっているようである(宝塚市域内の用途地域指定図を参照)。


 
 法令による規制の現況(2)
 つぎに、建基法(昭和25年5月24日法律201号、最終改正・平成14712日法律85号)による規制内容を概観しつつ、適宜コメントを付しておく。
 
(1) 建基法
 
風営適正化法は営業を規制しているが、営業用の店舗の建築工事を行うためには、建築基準法6条にもとづく建築主事等による建築確認をうける必要がある(同法
48112項の各但書にもとづく特定行政庁による例外的許可もあるが、以下では言及しない)。
 建築基準法
48112項および別表第二によって都市計画法(昭和43615日法律100号、最近改正・平成141211日法律146号)にもとづいて指定された用途地域ごとに建築することができる(またはできない)建築物の用途が定められている。それによれば、「パチンコ屋」を用途とする建築物の建築が許されない(建築確認をうけることができない)地域は、計12の用途地域のうち、第一種・第二種低層用住居専用地域、第一種・第二種中高層用住居専用地域および第一種住居地域の、計5地域である。
 このような(都市計画法上の用途地域指定と連動した)建築基準法上の立地規制と先に見た風営適正化法にもとづくそれとを比較すると、第2種住居地域と準住居地域は風営適正化法上の営業「制限地域」であるのに対して、建築基準法上はこれらの2地域であっても建築が許される、という違いがある。とはいえ、建築確認をうけてパチンコ店用建築物を建築しても営業許可をうけることができないと実際には営業できないのであるから、建築基準法上の第2種住居地域・準住居地域についての許容は、事実上は無意味に等しい。法律上の建築規制と営業規制の間のこのようなズレは、立法政策論としては問題視されてよいように考えられる。


 (2) 特別用途地域(建基法49条)
 @「特別用途地区」については同法48112項が定めるもの以外の建築物の建築の制限・禁止を自治体(市町村)の条例によって行うことができ、同法49条の2によれば、A「特定用途制限地域」についてもほぼ同様である。もとより、これらの条例による規制には各地区の都市計画決定が先行している必要があるが、これらの地区の都市計画決定は市町村が行うことができる(都市計画法15条)。
 宝塚市においては、現在、3カ所の地域について@のうち「特別工業地区」の指定と当該地区にかかる建築規制条例の制定・施行を行い、当該地区内におけるパチンコ店等の建築を禁止している(面積は各々3ha9.4ha19.8haである)。Aは、都市計画法914号によれば「用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内」において指定が可能な地域であり、宝塚市域内においては指定の現実的可能性はない。

(3) 地区計画(建基法68条の2
市町村が都市計画として指定することができる「地区計画等」のうち地区整備計画等が定められている区域については、当該地区整備計画等の内容に即して、同法
48112項が定めるもの以外の建築物の建築の緩和・制限・禁止を市町村の条例によって行うことができる。
 宝塚市においては、現在、
17カ所の「地区計画」地域があり、そのうち2地区について、建築等規制条例を制定してパチンコ店等の建築を禁止している(面積は各々3.1ha1.9ha2.6 haである。以上、都市創造部都市計画デザイン課資料による)。

 (4) 委任条例
 なお、建築基準法は、その他、若干の事項について自治体の条例によって独自の建築規制を行うことを認めている。同法3941条の各条がそれである。
 ただし、39条にもとづく条例によって可能であるのは、条例で指定した「災害危険区域」内における建築規制であり、40条にもとづくものは「建築物の敷地、構造又は建築設備に関して安全上、防火上又は衛生上必要な制限」の付加であり、41条にもとづくものは「第六条第一項第四号の区域外」、すなわち都市計画区域や準都市計画区域外等における、かつ同法48条にもとづく用途規制を含まない若干の条項による規制の緩和であり、パチンコ店の建築規制をこれらの条項にもとづく条例によって行うことは不可能またはきわめて困難である。


 4 市条例の内容的検討
 (1) 市条例の問題点
 現行の宝塚市パチンコ店等建築規制条例(以下、本条例ともいう)の特徴は、ゲームセンターやラブホテルの建築規制も同一条例の中に、かつ同一内容でとりこんでいることのほか、つぎの諸点にあるであろう。
 (a) 目的としてたんに「良好な環境を確保すること」を挙げるにとどまること(本条例
1条)。
 (b) 目的達成手法の一つとして、すべてのパチンコ店建築について市長の同意を要求していること(同
3条)。
 (c) 同意を与えない立地上の基準として都市計画法上の地域区分のみを利用し、かつ市街化区域内の商業地域以外の地域については同意を与えないこととしていること(同
4条)。
 (d) 同意を得ないままの建築工事等に対して工事中止命令等を発する権限を市長に与えているが(同
8条)、工事中止命令等に違反した者に対する罰則を設けていないこと。


 
(2) 市条例と他都市条例との比較
 上のような特徴を、兵庫県下、大阪府下および奈良県下等の
21市町村の同種の諸条例(宝塚市環境管理課より資料提供をうけた)とごく簡略化して比較してみると、つぎの表のようになる(対象のP=パチンコ店、G=ゲームセンター、L=ラブホテル。なお、Rは1990年に廃止)。そして、おおよそ、つぎのようなことがいえる。
 (a) 目的について、「良好な環境を確保すること」とのみ定めるのは本条例のみである。
 (b) すべてのパチンコ店建築について同意を要求する条例は少なくはないが、条例によって一定範囲の区域等について直接に禁止している条例や、区域を分けて不同意方式と直接禁止とを併用している条例もある。
 (c) 商業地域以外の地域をすべて規制(ないし不同意)区域としているのは、本条例のほか、尼崎市、西宮市、西脇市の各条例、計4条例である。
 (d) 罰則を設けているのは5条例にとどまるが、工事中止命令違反者の氏名の「制裁」的公表を定めている条例が4つあり、ほぼ半数が何らかの「制裁」を予定している。

 
表2

 

対象

目的

不同意か直接禁止か

規制区域

規制関係施設等

手続

罰則

 

@
宝塚市

PGL

良好な環境の確保

すべてに同意要求

商業地域以外

×

×

×(中止命令等)

 

A
尼崎市

PGL

快適な住環境の向上・青少年の健全育成

すべてに同意要求

商業地域以外

×

住環境規制対象施設審議会

×

 

B
西宮市

PGL+α

(安全・健康・快適な暮らし)

すべてに同意要求(確認申請前)

商業地域以外

<駐車施設>

〇不同意建築

 

C
伊丹市

PGL

教育環境の保全

すべてに同意要求

(市長が必要と認める場所)

施設・通学路

公開意見聴取・教育環境審査会

×

 

D
川西市

PGL

良好な生活環境の保全<健全で文化的まちづくり

すべてに同意要求(確認申請前)

住居系7、近商のうち右から50m、調整区域

施設(商業も) <駐車施設>

×

×、中止命令→公表

 

E
芦屋市

PGL

良好な住環境・教育環境の保全<国際文化住宅都市

すべてに同意要求(確認申請前)

住居系7、近商のうち右から50m、調整区域

施設、駅のPF <駐車施設>

×

×、中止命令→公表

 

F
三田市

PG

善良な風俗、良好な教育・福祉・医療等の環境保全<

すべてに同意要求(確認申請前)

住居系7(旧住居に例外あり)

施設

×規制区域外-住民との協議

×、中止命令→公表

 

G
龍野市

PGL

善良な風俗の保持、健全な都市環境の向上

すべてに同意要求

「条例の目的に照らし…審査」

旅館パチンコ店等建築審査会

×

 

H
西脇市

PGL

良好な生活環境の確保、青少年の健全な育成

すべてに同意要求(確認等申請前)

商業地域以外

×

規制対象施設建築審査会

〇中止命令違反

 

I
三木市

PGL

快適で良好な生活環境・教育環境の実現、沿道修景の保全

すべてに同意要求

住居系7+100m
都計43-1-6

施設、道路

(規制対象施設建築等審査会)

×

 

J
大阪狭山市

PG

良好な教育・文化環境の確保→青少年の健全な育成

a届出/直接禁止
b
同意

a住居系6+100m、調整区域、bそれ以外

施設・通学路

(審議会設置可)

〇中止命令違反

 

K
枚方市

P

快適で良好な生活環境の実現、青少年の健全な育成

a直接禁止


b
同意要求

a住居系5・工専、二種住居・準住居・準工・調整の一部
b
二種住居・準住居の上以外

aの二種住居・準住居につき道路・駅・施設等

b同意のとき-風俗営業等審査会

×

 

L
高槻市

P

快適で良好な生活環境の保全、青少年の健全な育成

すべてに同意要求

住居系7+25m
(25m
は商業地域を除く)、調整区域、

施設

同意のとき-ぱちんこ遊技場建築審議会

×

 

M
茨木市

P

良好な教育環境その他の生活環境の保全

すべてに同意要求

×

施設、施設に通じる道路

ぱちんこ遊技場建築等規制審議会

×(中止命令)

 

N
交野市

PL

良好な社会環境・教育環境の保全

a直接禁止
b
同意要求

a住居系7+100m

a施設・通学路

b同意のとき-社会環境・教育環境の保全

〇措置命令違反←禁止違反・不同意建築

b上以外-「健全な風俗を著しく阻害すると認めるとき」

O
生駒市

PL

住宅都市としての景観保全、良好な生活環境の確保、青少年の健全育成

a直接禁止

b
同意要求

a住居系7・近商・準工、調整区域
b(
基準なし)

a施設50m
<
外観につき努力義務>

b同意のとき-開発事業審査会

×

P
奈良市

PL

古都としての景観保全、良好な生活環境の確保、青少年の健全育成

a直接禁止

b同意要求

a住居系7・近商・準工・工業、風致地区、都計43-1-6b(基準なし)

a施設<外観につき「求める」こと可>

b同意のとき-…等建築等審議会(諮問可)

〇中止命令違反

Q
當麻町

PG

歴史的風土としての景観保全、良好な生活環境の確保、青少年の健全育成

直接禁止(勧告→中止命令)

住居系5、調整区域

×

×

×

R
今市市

PGL

善良な風俗の保持

市長との協議→中止要請

「文教地区等」

=施設周辺等

旅館等建築規制審議会

×

S
鎌倉市

PGL

良好な都市環境の確保、青少年の健全育成

すべてに同意要求

住居系7・近商・工専(2種住居・準住の商業30mは除外)、調整、

史跡等、施設

×

×、中止命令違反→公表

21
新潟県和島村

PGL

善良な風俗・清純な生活環境の保全、青少年の健全育成

すべてに同意要求→中止要請

住宅密集地、右以外の「その他不適当と認めた場所」

通学路・施設(官公署・診療所)「の付近」

旅館等建築規制審議会

×

                       

 (なお、京都府美山町においては同町美しい町づくり条例により、町内全域についてパチンコ店の「設置は認めない」こととしている(同条例20条)。ただし、届出または申請を要求しておらず、指導・命令に関する定めはなく、罰則もない。)

 (3)
 市条例についての神戸地裁判決批判
ところで、本条例は
神戸地裁平成9428日判決判例タイムズ947115)および同控訴審・大阪高裁平成1062日判決(判例時報166837)において、風営適正化法および建築基準法に違反しているとして違法とされ、本条例にもとづく工事中止命令も違法・無効とされた。これら、とりわけ第一審判決(以下、判決)の理由づけには大いに疑問を感じるところがあるので、以下、簡単に触れておこう。
 判決が風営適正化法および建築基準法(・都市計画法)と本条例の目的について、それぞれ
「相当な部分で」および「一部において」、「重なり合う」と判断していることは、異論もありうるが、承認せざるをえないように思われる。また、本条例がパチンコ店についてこれら法律よりも厳しい規制を加えていることも明らかである。
 問題は、法律と(少なくとも一部において)同じ目的で異なる(より厳しい)規制を加える条例の法律適合性の有無にあるわけであるが、いわゆる「法律先占」論は克服され、少なくともそのような条例がただちに法律違反とはされないことは、最高裁昭和
50910日大法廷判決によってほぼ確立した判例であり(徳島市公安条例事件判決、刑298489)、もはや通説でもある。
 同判決が一般論として述べるところによれば、同じ事項に関して異なる定めをもつ法令と条例の「両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえない」。
 条例の法令適合性判断の決め手を法令の「趣旨」の解釈に求める点にこの最高裁判決の特徴があるが、神戸地裁判決もおそらくこれを踏襲している。すなわち
判決は、関係法律の内容に言及して、「風営法は…、風俗営業の場所的規制について全国的に一律に施行されるべき最高限度の規制を定めたもの」である、と風営適正化法の趣旨を解釈し、また、「地方公共団体の町づくりは、あくまで都市計画における用途地域の決定、変更及び特別用途地区の設定を通じて行うことを予定しており、右規制につき、法律の委任を受けない条例が、地域の実情に応じた独自の規制をなすことを予定していないと解するのが相当である」と都市計画法・建築基準法の趣旨を解釈している。
 かりに上記の最高裁判決にしたがって関係法令「趣旨」の解釈をするとしても、このような解釈以外の余地はないのかが、まずは問題になる。たとえば、委任条例以外の条例をいっさい許さない旨の明文規定がないかぎりは、「普通地方公共団体において、…別段の規制を施すことを容認する趣旨」であるかどうかを関係法令は曖昧なままにしている、その点については「沈黙」している(=独自条例が許容される余地がある)、と関係法令を解釈することも不可能ではないからである。たとえば、判決は風営適正化法の昭和
59年改正によって政令で定める基準の制約内において都道府県条例が具体的に規制地域を定めることとなったことに言及したのち、「市町村の条例に委任する旨の規定は存しない」ことをもって風営法は「最高限度の規制」をしていることの理由の一つとしているが、<市町村の条例を禁止する旨の規定>も「存しない」のである。判決は、このように、結論に直結する上のような重要な判断(趣旨解釈)について、十分に納得できる説明・理由を示していない。このことは、この判決の決定的な問題点であると考えられる。
 もともと関係法令が「普通地方公共団体において、…別段の規制を施すことを容認する趣旨」であるかの解釈を要求することは(明文規定があればともかく)ほとんど不可能なことを強いるようなものであって、最高裁のいわゆる法令の「趣旨解釈」論については、立ち入らないが、学説上も当然に種々の批判があったところである。
 なお、この判決は、風営適正化法に言及する中で、「射幸心の抑制・禁止」という観点からの規制は「国家的規制に馴染む」とまで述べているが、はたしてそうであろうか。
 この判決の(単純な)論理と判断にもとづけば、本条例のみならず、先に簡単に紹介した諸条例のうち、風営適正化法(・同施行令)にもとづく都道府県条例(・同施行規則)が定める営業「制限地域」以上に立地規制対象地域を拡大している条例は−いかにその範囲が小さいものであっても、あるいは距離制限の対象となる施設の種類をわずかに増やしているものであっても−すべて違法・無効となってしまうであろう。
 これまで自治体は、とくに大都市圏の都市自治体は、法令の不備・不十分さを補充するためにいわゆる「要綱行政」を展開し、場合によっては、パチンコ店も含めて種々の独自規制を行う条例を制定してきたところであるが、判決は、そしてこの判決を書いた裁判官は、そのような実態を全く知らないがごとくである。また、この判決にかかる事件の出訴後であるにせよ大きな制度変換・新地方自治法の制定(正確には地方自治法の大改正、
200041日施行)があったが、「地方自治」または「地方分権」という観念・概念はこの判決にかかる裁判官の頭の中にはまるで欠落しているがごとくである。かりに法令の「趣旨解釈」論に立つとしても、法令の「趣旨」は憲法上の地方自治権の保障もふまえて「解釈」されなければならないはずである。この判決には、このような発想はまったくない、と言ってよい。
 あるいは、この判決が、「地方公共団体の町づくり」は、都市計画法・建築基準法またはこれらの明示の委任にもとづく条例を「通じて行うことを予定」している、と断言する部分は、「まちづくり」に関係する国の行政機関(いわゆる関係中央省庁)の考え方に添ったものであるかもしれない。
 
地方分権推進法(平成7519日法律96号)にもとづいて設置された地方分権推進委員会は、平成83月に「中間報告」を発表したが、そこにはじつは、「土地は、地域の最も重要な基盤であり、地域づくりの主体が地方公共団体であることを基本とし、『計画なければ開発なし』という理念の下に諸制度を抜本的に見直す必要がある」という基本理念が、より具体的には、土地の用途区分に関する計画や施設配置計画は市町村が定めることとする旨等が語られていたしかし、「まちづくり」行政、とくに都市計画法分野に関する本格的な検討は都市計画中央審議会に委ねられたのであり、同審議会の第一次答申(平成101月)は、都市計画(法)と条例の関係についてつぎのように述べている(/は原文では改行)。
 「現行法は、国民の財産権に対する強い制約を課すという都市計画についての基本的枠組みを定める都市計画法の趣旨、目的からみて、全国的な公平性・平等性を確保するべきものであるとの観点から、また、その中で地域の実情を踏まえた都市計画が決定できるように、制度が組み立てられている。/したがって、基本的には、法律で規定するメニュー、内容に沿って、都市計画制度の具体的運用がなされることを想定しており、風致地区内における建築等の規制のように、法目的に対応した規制内容について地域的な行政需要の差が見込まれる場合には、条例への委任を法律上明らかにしている。/また、現行法の規定は、法目的に対応して最低限の規制又は規制の上限を定めている規定も多く、この場合には、これら規定と異なる条例の制定は許されないという考え方は、都市計画事務が自治事務と構成されても、変わらないと考えられる。」
 このような部分を含む答申類をふまえた都市計画法の諸改正が「地方分権」の時代にふさわしいものであったかどうかの問題には立ち入らないが、法律(都市計画法)上の「規定と異なる条例の制定は許されない」という上のような考え方は、ここで問題にしている判決もまた、そのまま(あるいはより純粋なかたちで)共有していたように思われる。
 しかし、いわば<法律無謬主義>に立つような上記紹介のような考え方は、とくに、新しい地方自治の基本的制度のもとにおいては、採用されてはならないないであろう。今日においては、いわゆる法定自治事務(「法律に定めのある自治事務」)に関する法令の定めはいわば「標準」規定にすぎず、自治事務であるかぎりは、法令の委任がなくとも、法令の定めを変更する「書きかえ条例」も、「具体化条例」等とともに適法に制定されうる、とする学説すら見られるようになっている。風営適正化法や建築基準法(・都市計画法)によって自治体の事務とされたものではない、いわゆる法定外自治事務(「法律に定めのない自治事務」)の基準としての条例の適法性は、法定自治事務に関する条例以上に容易に肯定されなければならないはずである。

 
(4) 要約
 上で述べたことは、現行の宝塚市条例がそのままで適法かつ合理的なものである、ということを意味してはいない。
 本条例にかかる事案の
控訴審判決(上記の大阪高裁平成1062日判決)は、本条例は「風営法」および「建築基準法」に「明らかに矛盾抵触するのみならず、その合理性も肯定されない」と述べている。このうち、「合理性も肯定されない」という部分は、少なくともある程度は、首肯できるところがある。本条例をより「合理的」な内容にする方向への改正が必要である。


  市条例の改正

 (1) 規制対象の定め方
 現行条例はラブホテルやゲームセンターも対象としているが、ラブホテルについては、建築規制の目的・手法や考慮すべき事項が同一とは限らないので、別の条例を制定するかどうかを検討する余地がないではない。ただし、かりに規制区域等が異なるとしても、少なくとも目的に共通するところがあれば、別の条例とするかどうかは技術的な問題にすぎないであろう。また、「はじめに」において言及したように、(風営適正化法にもとづく規制をうけない)ゲームセンター類の建築規制をなお残すかどうかという基本的な検討課題があるが、そのようなゲームセンター類の実態の把握自体がきわめて困難であるとみられることからすると、規制対象からは除外して差し支えない、と考えられる。
 以下においても、対象を「パチンコ店」(この意味については「はじめに」を参照)に限定するが、検討を要する基本的な事項は、つぎのようなものになりそうである。先に本条例の特徴として記した4点にほぼ対応してもいる。

 すなわち、@目的規定の定め方、A規制の基本手法(一括同意要求方式(不同意→中止命令か直接禁止方式(違反→中止命令)か両方の併用か)B規制対象区域、C工事中止命令等の実効性確保の方法。
 また、同意要求方式を採用した場合において、D同意をするか否かの決定に際して何らかの事前手続を条例上に定めるかどうか、具体的にどのような事前手続とするかも、重要な検討事項の一つであると考えられる。

 
(2) 規制の目的
 (a) 市条例1条は「良好な環境を確保することを目的とする」と定めているが、「良好な環境」は、あまりに広すぎ、かつ曖昧であるとみられる。良好な「居住環境」と青少年の健全な育成のための「教育環境」の確保、を基本とすべきではないか、と考える。条例を含む行政法規の制定・改正のためにはいわゆる「立法事実」が重要であることは認識しつつも、パチンコ店の存在が生じさせる弊害または悪影響に関する十分な知識・知見はもっていないが、それらは周辺居住者および成長途上または教育過程にある青少年に対して生じるのであろう、と思われるからである。
 ただし、兵庫県
県公安委員会規則は県条例の委任をうけて政令にいう学校「その他の施設」として「病院又は有床診療所」を挙げているが、これらへの(通院者・通所者はもちろん)入院患者は厳密には「居住」者とはいえないようにもみえることを考慮すると、意味はややあいまいになるが、「居住」環境ではなく「生活」環境とすること、または両者をともに掲げることも考えられる。
 他条例の中には「景観」の保全を目的とするものもある(前掲表のMNO、いずれも奈良県下)。パチンコ店建築物に多く見られるようでもあるハデな色彩・デザイン等が宝塚市またはその中の一定の地域にふさわしくないという観点から「景観」保全を目的の一つとして挙げることも考えらなくはない。
 しかし、目的として明示すればそれを達成するための手段を考えなければなないが、同意・不同意の基準として(建築計画段階での)パチンコ店の外観を審査することは実際上は困難なところがあるであろう。また、宝塚市の自主条例である同市都市景観条例(
昭和63325日条例第1号、最近改正・平成8101日条例第23号)との関係・整合性も考慮する必要がある。すなわち、同条例上の「沿道景観形成地区」または「河川景観形成地区」の指定(11条)・「都市景観形成地域」の指定(16条)、各地区・地域についての「景観形成基準」の作成(告示、12条・17条)、デザイン審査にもとづく行政指導(19条3項)などの手法を通じてパチンコ店の外観についてもある程度の規制(行政指導を含む)を行うことは不可能ではないと解され、この条例によって−パチンコ店建築物についても−「景観」保全を図ることがまずは本筋ではないか、と考えられる。さらにもともと、良好な「景観」の保全は、良好な「居住(または生活)環境」にふさわしい景観の確保、良好な「教育環境」にふさわしい景観の確保、という意味において、良好な「居住(・生活)環境」や「教育環境」の確保という目的の中にすでに含まれている、と理解することもできるであろう。
 なお、 他市条例の中には、福祉施設や医療施設の周辺地への立地規制を意図してであろうが、<福祉・医療環境>の確保を目的の一つとするものもある
(前掲表のF)。しかし、「福祉の環境」・「医療の環境」という語は、なお熟したものとはいえそうにない、と思われる。

 (b) 市条例は「宝塚市環境基本条例(平成
8年条例第23号)第7条の規定に基づき」と記したうえで、「良好な環境」の確保という目的を掲げている。
 この環境基本条例(最近改正・平成
1441日施行)7条は「環境の保全及び創造に関する施策」を講じるうえでの「基本方針」を列挙し、かつ同方針は同条例の「基本理念」(3条)の実現を図るためのものと位置づけている。
 たしかに、パチンコ店の建築規制は「基本方針」として列挙されたものの一部(
3号・7号)を実現するための施策である、ということはでき、また、「基本理念」(3条)の一部に関連しているともいえる。しかし、もともと「環境」という概念は多義的かつ広範な意味を含みうるものであるが、環境基本条例は、主として(従前の公害対策基本法を継承した)環境基本法(平成511月法律91号、最近改正・平成14712日)系列のものとみられ、パチンコ店建築規制条例を環境基本法・環境基本条例を具体的した下位条例的なものとのみ位置づけるのは適切ではないであろう。むしろ、パチンコ店建築規制条例は、宝塚市の諸条例の中では、同市まちづくり基本条例(平成1312月条例36号、平成1441日施行)の前文および第2条が定める「まちづくりの基本理念」を具体化するための条例であると理解すべきではないであろうか(また、国の法令にもとづくものとはいえ、都市計画法18条の2にもとづく宝塚市の「都市計画の基本的な方針」(いわゆる「都市計画マスタープラン」)を実現するための方策の一つとしても位置づけられる必要があるであろう)
 上のような観点から、現行の目的規定中の「宝塚市環境基本条例第7条の規定に基づき」という部分は−別の条例の規定に「基づき」と書くこともやや奇妙であるのだが−、再検討される必要がある、と考える。
 そしてまた、たんに「良好な居住(生活)環境と教育環境を確保するため」と記述するのではなく、<本市にふさわしい…>とか、<本市のまちづくりの理念にのっとった…>とかの形容詞(もっと長くて差し支えない)を付すことが望ましいように思われる。

 
(3) 規制手法
 現行条例と同じく一括して同意を要求する方式(一括同意要求方式)を採用するのでよい、と考えられる。他条例の中には、一定範囲の区域等について直接に禁止している条例(・施行規則)や区域を分けて不同意方式と直接禁止とを併用している条例(・施行規則)もあるが(直接禁止方式、前掲表2のJ・K、N〜Q)、パチンコ店建築のすべてについて同意申請を要求して情報を把握しておかないと、建築工事開始前に行政指導を行う機会がなくなる、と思われるからである(もっとも、直接禁止方式を採用しつつ、パチンコ店建築のすべてについて事前の届出だけは要求すれば、行政指導の機会を確保することはできるであろうが)。
 なお、同意・不同意は、市長の裁量の余地のないものと個別的な裁量的判断の余地があるものに区別する必要がある、と考えられることは、つぎに述べるとおりである。

 
(4) 規制対象区域
 さしあたり、つぎのように考える。
 (a) 現行条例は市街化区域内の商業地域内についてのみ同意する(=市街化調整区域も含めて、商業地域以外のものについては同意しない)こととしているが、都市計画法上の用途地域制を利用しつつも、まず、住居系7地域については、風営適正化法・同施行条例にもとづく県公安委員会規則で指定されている沿道区域を除いて、同意しないこととする。
 このいわば不同意区域は、風営適正化法・同施行令・同施行条例・同施行規則による規制区域と結果的には同じであり、以下に述べるような事前手続を経ることを要せず、市長の裁量的判断の余地のないものとする。
 なお、住居系7地域のうち準住居地域は、宝塚市域内においては県公安委員会規則で指定されている沿道区域とかなり重なっているようであること等を考慮すると、これを除く住居系6地域とし、準住居地域については、つぎに述べるイの地域と同様の扱いにすることも検討されてよい。

 (b) 準工業地域・工業地域・近隣商業地域・商業地域については(宝塚市域には工業専用地域はない)、条例の目的と申請のあった場所・地域の実態・実情および住民の意向等を考慮した市長の個別的判断により、同意とするか不同意とするかを決定することとする。
 また、県公安委員会規則で指定されている住居系3地域(旧住居地域=第一種・第二種・準住居地域)内の二つの道路の
側端から30メートル以内の区域についても、上と同様とする。この区域は、風営適正化法上の営業許可はなされる可能性があり(風営適正化法にもとづく「沿道地区」)、第二種住居地域・準住居地域内については建築基準法上の建築確認も得られうる。一方、現行条例のもとでは不同意区域に含まれる。
 これらの個別的判断は市長の裁量を認めることになるが、その合理性・適正性を確保するためにも、のちに述べるような、事前手続を経ることを要求することとする。
 以上の(b)で述べた部分について、なお若干のコメントを付しておく。
 第一に、沿道地区のうち
風営適正化法にもとづくそれではない、@二種の低層用住居専用地域・二種の中高層用住居専用地域およびA準工業地域・工業地域・近隣商業地域・商業地域内の二道路(国道176号および県道尼崎宝塚線)周辺地区についても、市長の個別的判断に委ねることになる。ただし、上の@の住居系4地域内の沿道地区については、(a)のいわば「裁量なし不同意区域」にすることも考えられる。
 
国道176号および県道尼崎宝塚線以外の宝塚市域内の主要道路(例、市道第3636線)の沿道地区についても、主要道路沿道地区という特質や現況等をふまえて個別的判断に委ねることになる。もっとも、上記の二道路の旧住居専用地域の4種の地域内の沿道地区が「裁量なし不同意区域」とされるとすれば、これら以外の道路の沿道地区もまた、同じ扱いにする必要がある。
 いずれにせよ、
風営適正化法にもとづく「沿道地区」における営業の許否、建築基準法上の「沿道地区」についての建築の許否の各範囲と比べて、改正条例による同意の範囲は、個別的判断の運用いかんによって、広くも狭くもなりうる。
 第二に、住居系7地域と接しており、実態が風営適正化法施行令にいう「住居集合地域」と個別に判断することができるような地域も、個別的判断により不同意とすることができる。他市条例の中には、近隣商業地域にかぎって、またはすべての地域について住居系7地域との境界線から一定距離の範囲内の区域を規制対象区域にしているものもあるが(前掲表のD・E・I・L参照)、いささか機械的すぎるように感じられる。
 第三に、
工業地域であっても、商業地域であっても、個別的判断により同意か不同意かを決することになる。これは、前者(準工業地域・近隣商業地域も同様であるが)については、現行条例に比べれば規制の緩和になりうるが、後者の商業地域については、規制の強化になりうる。
 第四に、市長の個別的裁量判断によるのではなく、条例自体によってまたは条例にもとづく市長規則もしくは告示により(例えば別表を利用して)、イのいわば「裁量つき不同意区域」を、個別的判断を集積したようなものとして、あらかじめ、特定の町名・何丁目等を記して、明記しておくことも考えられる。この方が、市長の個別的な裁量の余地を残さず、住民や事業主にとっての予見可能性が高く、また、行政担当部課による条例の適用・執行も行いやすいようにも思われる。
 しかし、この方式を採用すれば、改正条例が(現行条例も同様であるが)風営適正化法や建築基準法にもとづくパチンコ店規制よりも厳しい立地規制を行っていることが条例・施行規則等の規定上明白になってしまうため、将来も生じるかもしれない事業主(同意申請者)による訴訟への対策という観点からは、問題がまったくないわけではないであろう。また、用途地域等が変更される可能性があるのはもちろんのこととして、個別の場所・地区の住居や商店等の立地状況も変化していくものであり、いったん行った具体的な区域指定が時間の経過と具体的状況の変化に対応できなくなり、頻繁な指定替えが必要になることが考えられなくはない。さらに、第一次の指定に限ってみても、アに記した区域以外の「不同意区域」を、個別的判断を集積するとしても、はたしてどのようにして具体的に指定するのか、その指定の結果ははたして適正かつ合理的といえるのかどうか、という重要な問題が残るであろう。
 このようなことを考慮すると、事前手続によって裁量権行使の合理性・適正性を確保しての個別的判断方式を採用による方が、事案に即して柔軟に対応することもでき、よいように考えられる。
 なお、上に最後に述べた、具体的な区域指定の合理性・適正性の問題は、条例立案前または市長規則もしくは告示の制定前に市民参加等の事前手続を丁寧にふむこととすれば、ある程度は解消されるかもしれない。もっとも、このようにするとすれば、条例自体で直接に指定しないかぎりは、宝塚市行政手続条例
(平成9328日条例第22号、最近改正・平成12年条例第5号)は規則・告示の制定手続については何ら触れていないため、規則等の制定手続について、パチンコ店の建築規制にかかる規則・告示についてのみ<突出した>特別の規定を設ける必要があることになるが、他の規則等との関係・均衡上、それでよいのか、という問題が残ることになる。

 (c) 特定施設の周辺  既述のように風営適正化法施行令および同法施行条例(兵庫県条例)は特定施設周辺の区域についてパチンコ店営業を規制している。宝塚市条例も、このような立地規制を導入すべきであろう。
 風営適正化法施行条例は、特定施設として「学校、図書館又は保育所」と「病院又は有床診療所」を挙げている。改正宝塚市条例においては、その目的に即して、これらのほかに、「公民館」、「スポーツ施設」、「(保育所以外の)福祉施設」および「都市公園」を加えることが考えられる。
 これらの施設を各々の関係法律(学校教育法、図書館法、児童福祉法その他の福祉関係諸法律、社会教育法、スポーツ振興法、都市公園法)上のものに限るか、正式(法定)の施設ではないが事実上同様の機能をもっている施設も含めるか(この場合は市長規則または告示によって個々に指定することになるであろう)が問題になる(施行条例上の施設は法定のものに限られる)。後者の施設の存在は、宝塚市の実状は筆者には定かではないが、前述の「裁量つき不同意区域」とするかどうかの個別的判断に際して考慮することにすることも考えられるであろう。
 さしあたり法定の上記の諸施設に限るとしても、それらの敷地からどの程度の距離の範囲内の区域とするかが問題になる。
 このような特定施設周辺区域における規制は商業地域についても及ぼさせるべきであるが、風営適正化法施行条例上、商業地域についても、「学校、図書館又は保育所」の周辺「70メートル以内の地域」が、「病院又は有床診療所」の周辺「50メートル以内の地域」がすでに営業規制区域とされているので、これらの施設についてこれらの距離よりも短い距離を宝塚市条例において定めても、実質的には独自の(より厳しい)規制にはならない。商業地域以外の地域についての、それぞれ「100メートル以内の地域」、「70メートル以内の地域」についても同様である。
 そこで、「学校、図書館又は保育所」および「病院又は有床診療所」については県条例(別表第2)が定める数字をそのまま生かすこととし、これらの施設以外の宝塚市において独自に追加する特定施設については、ほぼ同様の、またはやや短い距離を採用することが考えられる。また、児童または青少年の利用が多いとみられる施設については、県条例の定めに見られるように、「病院」等よりも「学校」等からの周辺区域をより広くすることが考えられるであろう。

なお、このような特定施設周辺区域は上述の「裁量なし不同意区域」の一つであり、特段の事前手続にもとづく判断を必要としないで不同意にすることができる区域であることを想定している。そうすると、風営適正化法系列の県条例よりも特定施設を増やしていることから、風営適正化法体系によるものよりも厳しい規制を行っていることが条例の条文自体から明白になるが、先に触れた「裁量なし不同意区域」を条例または規則・告示で個々に指定する場合に比べて、特定施設はかなり永続的に存在するとみられることから、硬直的になりすぎるおそれがあるという問題はより少ないのではないかとみられる。また、良好な居住・生活環境および教育環境の確保という目的に照らせば、県条例が挙げている施設の種類は少なすぎると思われ、特定施設を増やすことは十分に合理的である、と考える。

(d) 通学路の周辺  良好な教育環境の確保を目的として、学校への通学路の周辺区域も規制対象区域の一つに加えるべきである、と考えられる。
 通学路の指定は、市長が市教育委員会との協議をふまえて、(規則によって)行う、とするのが一案であるが、市教育委員会の所管対象学校ではない県立・私立の高校や大学への通学路の扱いはなお検討の余地がある。
 風営適正化法施行条例上の「学校」には大学も含まれるが、宝塚市条例においては大学は除外することも選択肢の一つであろう。
 通学路からの距離は、40〜50メートル程度が妥当ではないか、と思われる。
 このような学校通学路周辺区域も上述の「裁量なし不同意区域」の一つであり、特段の事前手続にもとづく判断を必要としないで不同意にすることができる区域であるして差し支えない、と考えられる。
 なお、ウの特定施設の周辺についてもいえることであるが、住居系7地域
(または私見では上述のように準住居地域を除く6地域とすることも考えられなくもない)内はすでにアで述べた「裁量なし不同意区域」であるので、特定施設および通学路の(周辺地域の)指定は、住居系7地域以外の準工業地域・工業地域・近隣商業地域・商業地域内についてのみ行うことも考えられる。住居系7地域については、無意味のいわば二重規制になるからである。しかし、用途地域指定の変更も想定しうるところであり、快適で良好な「居住」環境および「教育」環境(その他「生活」環境)の保全・形成という目的を実現するために、すべての用途地域について特定施設と通学路の指定を行っておくことも、実際上の意味の程度はともかく、考え方としては十分に成り立つであろう。

 
(5) 事前手続
 個別的裁量判断の余地が残されている場合について、すなわち「裁量つき不同意区域」の一つとするかどうかの具体的決定については、一定の事前手続を条例上の必要的手続として要求することが望ましい。
 その内容については、さしあたり、つぎのように考える。
 @パチンコ店の
建築計画の最終案を立案段階において(たとえば、「建築確認申請の30日前までに」と条例に明記することも考えられる)、事業者に「事前説明会」の開催を義務づける。
 A上記説明会における説明・意見または質疑の少なくとも概要を記載した「報告書」作成および市長(実質的には宝塚市条例所管部課・係への)の提出を、説明会の開催後の一定期間内に行うことを、事業者に義務づける。
 B市長(実質的には宝塚市条例所管部課・係)は、諮問機関としての審査会に上記報告書(の写し)を送付し、当該審査会、当該パチンコ店建築を同意すべきかどうかについて審議ないし議論したうえで、市長に何らかの意見を答申する。
 この審査会は、環境基本条例(平成8101日条例23号、最近改正・平成143月)にもとづいて現在すでに設置されている環境審議会またはその部会とすることも考えられる。いずれにせよ、審議会または審査会の特定は必要であり、既存の審議会とは別に新たに設置するのであれば、改正条例上に設置の根拠規定を置く必要があるし、既存の審議会またはその部会を利用する場合においても、改正条例上にその審査会の名称を明記しておく必要がある。
 C市長は審議会・審査会の意見を「尊重」して、総合考慮のうえ、同意とするか不同意とするかを決定する。
 このような手続の中で問題になるのは、あるいは重要であるのは、とりわけ、事業者が行う「事前説明会」の具体的な仕方(参加・出席することができる住民の範囲の問題も含む)、審査会の構成および人選の仕方、であろう。
 なお、審査会の意見および市長の判断は、宝塚市まちづくり基本条例が定める「まちづくりの基本理念」や同市の「都市計画マスタープラン」(現行のものは『たからづか都市計画マスタープラン−2002−』平成14516日決定)が述べている全市的なコンセプト・「都市づくりの方向」および市内の各地域の「地域コンセプト」・「地域づくりの方向」等との関連を意識したものでなければならないであろう。これらをたんなる「作文」に終わらせてはならないからである。

 (6) 実効性の確保
 不同意とした(同意しなかった)にもかかわらずパチンコ店の建築工事を行っている者(事業者=同意申請者のほか建築請負業者等を含む)に対して、現行条例と同様に建築工事中止等の命令を発する権限を市長に与えることになるが、当該命令に従わない者(命令によって課せられた義務を履行しない者)に対する罰則を設ける必要がある、と考えられる。なお、罰則にもとづく刑事告発とともに、違反者(義務不履行者)の名前(法人の場合は代表者の氏名を含む)の「公表」を併用することも考えられる。
 また、条例が事業者に対して要求する事前手続が履践されるように、
「事前説明会」の開催をしなかった者および報告書を提出しなかった者に対する罰則または過料を課す旨の規定を設けることが検討されるべきである(5の@・Aを参照)。
 このような事前手続不履行に対する刑罰または過料の定めは、パチンコ店建築にかかるものではないが、西宮市開発事業におけるまちづくりに関する条例(平成121227日条例16号、最近改正・平成13712日条例7号)において、届出義務不履行および市長との協議の不履行について、すでに見られるところである。

 6 おわりに
 
宝塚市パチンコ店等建築規制条例にもとづく建築工事中止命令に従わない者に対して宝塚市が提起した民事訴訟としての建築工事続行禁止請求訴訟は、最高裁平成1479日判決によって、「法律上の争訟」にあたらないとして却下され、終結した。
 この最高裁判決については種々の観点から論評が可能であり、また、行政処分によって課した義務の履行を求める訴訟が許容されるべきであるとすれば、上記最高裁判決をふまえつつ、その旨をどのようなかたちで(たとえばどの法律の改正ないし追加によって)規定するのが適切であるのか、という立法政策論上の課題もある。
 また、このような訴訟の許容性の問題とは別に、むしろ、行政処分によって課した義務の履行を確保するための、訴訟以外の方法を検討し開発することこそが、今日では重要な課題になっている、と考えられる。この課題は、現行の行政代執行法等の行政上の強制執行制度の抜本的な再検討および改革につながることになるであろう(第3論文、第6論文など参照)。