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「京都府の土地政策」についてのコメント
1990年11月17日
<日本不動産学会・部会報告、倉林公夫氏〔京都府企画調整局長−当時〕「京都府の土地政策」へのコメンテイターとしての発言原稿>
地価高騰あるいは土地基本法の制定等を背景にしまして、地方公共団体・自治体の中には、土地対策大綱・要綱の類を定めたり、基本構想ないし総合計画類の中に土地対策・地価対策に関するまとまった叙述をとり込んだりするところが出てきております。ご報告のもとになった京都府の総合土地対策大綱および総合土地対策方針は、山梨県の「当面の土地対策について」や兵庫県の「ひょうご緊急土地対策90」などとともに、自治体レベルで早い時期に作られた大綱・要綱類の一つであるということになります。
ご報告は、特定の自治体の、土地政策全般にかかわる施策の実例に関するもので、簡単にはコメントしずらいのですが、以下、4点ばかりコメントいたします。
第一に、京都府の大綱は、他のものと比べて、内容それ自体については種々の評価・議論はありうるところでしょうが、まず、京都府下の地価上昇の要因分析をも含んでいること、またつぎに、例えば熱ざまし・病気の治療・体力回復といった形で表現されるところがありましたように、講ずべき諸施策の目的・位置づけを、整理してかなり明瞭に捉えていること、に特徴の一つがある、といってよろしいのではないかと思われます。
第二に、土地対策方針に書かれてすでに実施された施策の中で興味深いものは、不要不急の需要を抑制するためとして行なわれたものでして、一つは、効果のほどは不明ですが、金融機関に対する土地関連融資の適正化の行政指導です。自治体の権能の範囲・限界に関する法的問題が生じそうにも見えますが、内容・程度にもよるとはいえ、自治体の事務の範囲内であることは法的にも十分に肯定できるのではないかと思われます。
興味深い、また注目されてよいいま一つは、宅地開発・分譲企業に対して行なわれた3年間の転売禁止条件つき・条件違反の場合の買戻し特約つきの分譲の行政指導です。なお、買戻し権の登記のついた物件については住宅金融公庫の融資がうけられないことになっていたのを改めてもらった、とうかがっております。
第三に、土地利用秩序の見直し・形成等に関して、市街化区域の拡大、市街地の有効・高度利用、宅地・住宅の供給促進等々が方向として掲げられ、ある程度はすでに実施されているようですが、これらの中長期的な施策は、国の法令上の諸制度の活用にかかるものが中心であり、また、認識不足かもしれませんが、京都府または府知事としての独自の観点なり方針にもとづくものには、まだ必ずしもなっていないといって差し支えないのではないか、と感じられます。
もっとも、土地基本法の施行の前後以降、国土利用計画法・都市計画法・建築基準法・いわゆる大都市法等々の一部改正がつづき、また生産緑地法とか都市計画法上の用途地域制の改正なども検討されているようでありまして、土地関係法制は土地税制とともに一つの変動期を迎えているように思われます。こうした国の土地政策の変動期あるいは流動期の中では、いわば国側の新しいメニューの理解・吸収から始めざるをえない自治体あるいは自治体の機関としては、独自の工夫あるいは具体的な施策・アイデアがまだ生じにくいのも、かなりの程度やむをえないことであるようにも思います。
今後の、例えば、強化ないし新設された国土利用計画法および都市計画法上の遊休地の利活用の促進のしくみの具体的な活用方法、あるいは、法制の変化が予想される市街化区域内農地の利活用または保全のしくみの具体的な活用方法方などについての、京都府をはじめとする自治体側の具体的な施策の展開に関心がもたれるところです。
第四に、ご報告の内容からはやや離れていえば、土地基本法には土地に関する基本的施策についての国と自治体の権能配分にかかわる条項はほとんどないのですが、中長期的に、計画等を通じて、地域の適正で合理的な土地利用秩序を形成していくことは、自治体こそが中心になって果たされるべき課題であろう、と考えられます。
こうした観点からは、国の多様な土地利用関係法令を、自治体レベルで、自治体としての統一的な政策・方針・基本計画にもとづいて、総合的調整を加えて実施していく必要性・そのための組織・体制の整備の問題とか、また、従来の既成の枠・考え方を超える、土地利用計画等にかかる権限配分の基本的な見直しとか土地利用規制のための条例制定権の大胆な活用の可否、などの問題・課題、あるいはさらに、都道府県・市町村という現行の自治体制度自体の見直しの必要性といった問題・課題があることが指摘できようかと思います。これらは土地政策にかかわる制度的基盤、国と地方の関係にかかわる一般的問題でありまして、指摘だけにとどめます。
以上です。