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大阪市情報公開審査会答申 第111号
平成13年 8月20日
大阪市長 磯村 隆文 様
大阪市情報公開審査会 会長 初宿 正典
大阪市情報公開条例第17条に基づく不服申立てについて(答申)
平成12年12月26日付け大東住総第207号をもって諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。
第1 審査会の結論
大阪市長(以下「実施機関」という。)が平成12年11月21日付け大東住総第187号により行った部分公開決定は、妥当である。
第2 異議申立てに至る経過
1 公開請求
異議申立人は、平成12年11月13日、大阪市公文書公開条例を改正する条例(平成13年大阪市条例第3号)による改正前の大阪市公文書公開条例(以下「旧条例」という。)第8条に基づき、実施機関に対し、「東住吉区駒川1丁目○番○にかかる固定資産税税額変更にかかる過誤納金還付金の支出命令書」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 部分公開決定
実施機関は、本件請求に係る文書を「東住吉区駒川1丁目○番○にかかる固定資産税の税額変更にともなう過誤納金還付金の支出命令書」(以下「本件文書」という。)と特定したうえで、本件文書について、一部を公開しない理由を次のとおり付して、旧条例第9条第1項に基づき、平成12年11月21日付け大東住総第187号により部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行った。
記
「旧条例第6条第2号に該当
(説明)
請求者の住所・氏名・印影・電話番号及び台帳番号並びに領収した者の氏名及び印影については、個人に関する情報で、特定の個人が識別され、又は識別され得るため」
3 異議申立て
異議申立人は、平成12年12月19日、本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法第6条第1号に基づき異議申立てを行った。
第3 実施機関の主張
実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
支出命令書に記載された還付金の請求者の住所・氏名・印影及び電話番号並びに領収した者の氏名及び印影の各情報については、個人の戸籍的事項に関する情報であり、当該情報そのもので、又は容易に入手できる他の情報と照合することにより、特定の個人が識別され、又は識別され得ることから旧条例第6条第2号本文に規定する「個人に関する情報で、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」に該当することは明らかである。
また、還付金の請求者の台帳番号は、各人に対し特定の番号が付されており、番号が判明すれば、他の情報と組み合わせることにより、請求者の氏名が明らかになることから、同様に旧条例第6条第2号本文に該当する。
次に、旧条例第6条第2号ただし書は、「ア 法令等の規定により、何人も閲覧することができるとされている情報、イ
本市の機関が作成し、又は取得した情報で、公表を目的とするもの、ウ
法令等の規定に基づく許可、免許、届出等の際に本市の機関が作成し、又は取得した情報で、公開することが公益上必要であると認められるもの」に該当する情報は、旧条例第6条第2号本文に該当する場合であっても、公開しなければならない旨規定している。
しかし、本件においては、何人も閲覧することができるとする法令等の規定は存在せず、また、公表を目的とするものであると認めることもできない。さらに、本件の場合、人の生命、身体、健康等の保護など本件情報の保護に優越する公益上の必要性があるとは認められないので、ただし書ウにも該当しない。
以上の点から請求者の住所・氏名・印影・電話番号及び台帳番号並びに領収した者の氏名及び印影は旧条例第6条第2号本文にいう「個人に関する情報で、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」に該当し、同号ただし書のアからウのいずれにも該当しないので、非公開としたものである。
第4 異議申立人の主張
異議申立人の主張はおおむね次のとおりである。
1
異議申立人は、本件土地建物に係る固定資産税等の公租公課を、市民の義務として継続的かつ誠実に納税を行ってきた。また、本件土地建物を共有する、他の2名が不払をしたり、共有持分以下の支払しかしなかったときでも、差額は、ひとり異議申立人のみが支払ってきた。
異議申立人は、民法第259条(共有物分割時の債権精算)の規定に基づき、共有者に債権の精算を求めるにあたり、共有者の一人が、納税していない年度分を含め、不当な手段で過誤納金を受領していた事実を知った。当該共有者は過誤納金の受領の事実を隠蔽しており、これらの精算を求めるには、債権の存在とその額を証明することが必要である。また、当該共有者は、一部については時効の援用を主張しており、誠実に納税の義務を果たしてきた異議申立人が、結果的に財産上の損害を受ける可能性がある。
異議申立人は、侵害された正当な権利を回復するため、本件文書の公開を求めたものである。
2
旧条例第6条第2号本文は、個人の正当な権利を守るために制定されており、特定の者に不当な利益を与え、又は不利益を及ぼすために設けられたものではない。また、同号本文で公開しないことができるとされているのは、「個人に関する情報で、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」と規定され、「正当」の文言はないが、平成3年(行ツ)第18号
行政処分取り消し請求事件「大阪府知事の交際費公開訴訟」で正当性を要件とする最高裁の判例がある。
3
本件文書に記載されている内容は、共有物の維持管理に関する情報で、還付金を受領した共有者にとって、純粋に私生活上の事柄であるとはいえず、また、他の共有者に秘密にすべき正当な理由はない。
さらに、正当な権利を侵害されている他の共有者からの求めがあった場合、市長は説明する責任を有する。
以上のことから、本件文書は個人情報には当たらず、また他人に知られたくないと望むことが正当であるとは認められないため、公開するのが妥当である。
4 仮に、非公開とした情報が旧条例第6条第2号に該当するとしても、 還付金を受領した共有者は、当該共有者が納税していない分を含め不
服申立人が受け取るべき還付金を隠匿、私有しており、不服申立人の 生活及び財産は、不当に侵害されている。
したがって、本件文書は公開することが公益上必要であると認めら れるものであり、同号ただし書ウに該当しており、公開すべき情報で ある。
第5 審査会の判断
1 基本的な考え方
大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号。以下「条例」という。)の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に公文書の公開を求める具体的な権利を保障することによって、本市の説明責務を全うし、もって市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ることにある。したがって、条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から行われなければならない。
しかしながら、条例はすべての公文書の公開を義務づけているわけではなく、第7条本文において、公開請求に係る公文書に同条各号のいずれかに該当する情報が記載されている場合は、実施機関の公開義務を免除している。もちろん、この第7条各号が定める非公開情報のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、当該各号の定めの趣旨を十分に考慮しつつ、条例の上記理念に照らし、かつ公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から、厳正になされなければならないことはいうまでもない。
2 対象文書について
本件文書は、東住吉区駒川1丁目○○番○に係る平成6年度から9年度分までの固定資産税について、税額変更により発生した還付金に係る納税義務者からの過誤納金還付金請求書並びに当該還付金及び還付加算金を納税義務者へ支払った際の支出命令書である。
3 争点
本件文書において非公開とされている情報は、還付金の請求者の住所、氏名、印影、電話番号及び台帳番号並びに領収した者の氏名及び印影の部分であり、その余は公開されていることが認められる。
実施機関は、本件文書について、旧条例第6条第2号を理由に本件決定を行ったのに対して、異議申立人は、この決定を取り消し、本件文書を全面的に公開すべきであるとして争っている。
ところで、旧条例第6条各号を理由として非公開とした処分は、条例附則第4項の規定により、条例第7条各号を理由として非公開とした処分とみなされる。
したがって、本件異議申立てにおける争点は、本件文書の条例第7条第1号該当性の問題である。
4 条例第7条第1号該当性について
(1)
条例第7条第1号本文は、「個人に関する情報…であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」は原則的に公開しないことができると規定している。
ここで、「特定の個人を識別することができるもの」とは、条文に括弧書で規定するように、当該情報そのものからは特定の個人を識別することはできないが、他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる場合を含む趣旨である。
まず、本件文書において非公開とされている情報のうち、還付金の請求者の住所、氏名、印影及び電話番号並びに領収した者の氏名及び印影の部分は個人の戸籍的事項に関する情報として、本号本文に規定する「個人に関する情報」に該当し、かつ、当該情報そのものにより、又は他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることは明らかである。
次に、本件文書において非公開とされている情報のうち、台帳番号は、固定資産税の課税対象となる物件ごとに付された番号であり、還付金の請求者の所有する土地に固有のものであるから、個人の財産的事項に関する情報として本号本文の「個人に関する情報」に該当する。また、台帳番号は物件の所在地及び納税義務者の氏名とともに、固定資産課税台帳に記載されていることから、地方税法(昭和25年法律第226号)第415条の規定による固定資産課税台帳の縦覧により、当該台帳番号からその納税義務者及び物件の所在地を知ることは可能であると考えられる。したがって、本件文書に記載された台帳番号は、「特定の個人を識別することができるもの」に該当すると認められる。
なお、異議申立人は、条例第7条第1号について、「個人に関する情報で、特定の個人を識別され、又は識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」に限定して解釈すべきであるとした上で、本件のように、土地建物を共有している場合において、共有者の一人が代表して税金の還付を受けることは、他の共有者から感謝こそされ何ら不都合なことではなく、その情報を他の共有者に知られたくないと望むことが正当であるといえないので公開すべきであると主張する。
しかしながら、本市の条例は、異議申立人が引用する最高裁判所の判決の事案に係る大阪府の条例と異なり、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であることを要件とするいわゆる「プライバシー型」を採用しておらず、特定の個人を識別することができる情報を原則として非公開とする「個人識別型」を採用しているのであり、条文の文理上、他人に知られたくないと望むことが正当であることを非公開の要件としていない。
また、同条該当性の判断は、何人に対しても公開されることを前提として一律になされるべきものであり、異議申立人が共有者の一人であるから他の共有者の情報を異議申立人に限り公開してよいということにならない。
以上により、本件文書において非公開とされている情報は、いずれも条例第7条第1号本文に該当すると認められる。
(2) 次に、(1)
において条例第7条第1号本文に該当した情報が、同号ただし書により例外的に公開すべきものとされている情報に該当するかどうかについて検討する。
条例第7条第1号ただし書アは「法令若しくは条例…の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」は例外的に公開しなければならない旨を規定している。
異議申立人は、この点について、平成12年12月12日付けで東住吉区税務課長が異議申立人に渡した文書により、還付金の請求及び受領を行った共有者の氏名及び住所が明らかになっており、公にされているので公開すべきであると主張する。
しかしながら、上記の文書は、異議申立人ほか3名の共有名義の土地に係る平成6年度から平成9年度の固定資産税・都市計画税の軽減に伴う過誤納金還付の処理状況について、共有者の一人である異議申立人から照会があったので、共有者に対する回答として異議申立人に渡したものにすぎず、何人にも了知し得る情報として一般に公にされ、又は公にすることが予定された情報でないことは明らかである。
したがって、上記文書の存在をもって、本号ただし書アに該当するということはできない。
また、異議申立人は、共有者のひとりが提出した過誤納金還付請求書は他の共有者に対しても公表が予定されているので、ただし書アに該当すると主張している。
しかし、ただし書アは、広く何人に対しても公表が予定されている情報を規定しているのであり、仮に共有者に公表が予定されているとしても、そのような限られた者に対して公表が予定されているだけでは、これに該当するということはできない。
(3)
条例第7条第1号ただし書イは「人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」は例外的に公開しなければならない旨を規定している。
異議申立人は、要するに、現在大阪地方裁判所において共有者を相手に共有物分割裁判を行っており、自己の財産を保全するため、本件文書を上記訴訟において証拠として提出する必要性があり、ただし書イに規定する「人の財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」に該当すると主張する。
しかしながら、本号ただし書イは、公益保護規定であり、市民一般の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するために非公開情報を例外的に公開することができる旨を規定しているのであり、異議申立人が自己の財産を保全するなど、私人間における民事上の紛争を処理する場合に適用すべき規定でないことは明らかであり、異議申立人の主張は採用することができない。
したがって、本件文書に記載された非公開情報が本号ただし書イに該当するとは認められない。
(4) 本件文書に記載された非公開情報は、公務員の職務遂行情報でな いことは明らかであるから、本号ただし書ウに該当しない。
(5) 以上により、本件文書に記載された非公開情報は、条例第7条第 1号本文に該当し、かつ、同号ただし書ア、イ又はウのいずれにも
該当しないことから、これらの情報を非公開とした実施機関の判断 は妥当である。
5 結論
以上により、第1記載のとおり、判断する。
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