平岡 久のホームページ>
|
A1自治体の例規 |
A2自治体の情報 |
B1国の法令 |
B2国の情報 |
C行政関係判例 |
事業者のごみ減量推進に関する部会報告
大阪市廃棄物減量等推進審議会・事業者のごみ減量推進部会
(平成9年6月)
目次
1.部会による審議の経緯
2.事業系一般廃棄物の排出・処理と大阪市の施策の現状と課題
3.廃棄物の減量化に関する事業者の基本的課題
4.事業者に期待される取り組み
5.行政の役割と期待される施策
6.特別な配慮が必要な個別案件について
7.審議会でさらに検討されるべき課題
あとがき
1 部会による審議の経緯
(1)部会の設置と審議の課題
平成7年8月9日、大阪市長の諮問機関として大阪市廃棄物減量等推進審議会が設置され、同日、大阪市長から審議会に対し、大阪市の廃棄物減量施策のあり方について提言するよう諮問を受けた。
審議会は、この趣旨に沿ってより効率的・効果的に検討を行うため、同じく9日、「事業者のごみ減量推進部会」(以下「事業者部会と呼ぶ)と「市民のごみ減量推進部会」(以下「市民部会」と呼ぶ)の2つの部会を設けることを決議した。そのひとつである当部会は、市長の諮問事項について、事業系一般廃棄物など事業者が主体としてかかわる減量化を検討することを目的としている。
大阪市が処理する一般廃棄物の量は年間214万トン(平成7年度)に達し、とりわけ事業系廃棄物の量は、全体の64%(資料1参照)を占めている。また、事業者の生産・販売する製品は、市民が購入・消費した後あるいはサービスとして提供された後に家庭系廃棄物として排出されていることを考えると、その廃棄物の相当部分に事業者がかかわっているということができる。
現在、大阪市の廃棄物焼却工場はフル稼働を続けており、最終処分地の確保も難しい状況になってきている。こうした背景から、従来のように廃棄後の処理を中心とした廃棄物対策は限界があり、廃棄物の減量化は喫緊の課題となっている。
したがって、今後、事業活動における廃棄物の減量化のみならず、最終的に廃棄物となる製品の設計、生産の段階も含めて廃棄物の減量を推進していくことが重要である。このことは地球環境への負荷の低減や資源エネルギーの効率的活用の観点からも要請されるものである。こうした認識に立ち、当部会では事業活動そのものに焦点をあて、これからの事業系廃棄物の減量化にとどまらず、製品の生産、流通、さらにサービスの提供を通じて排出される事業者がかかわる廃棄物の減量化施策はどのようにあるべきかについて検討を進めてきた。
(2)部会審議の経緯
平成7年12月26日に第1回事業者部会を開催して部会審議の進め方を検討した結果、先ず事業者の廃棄物の減量化への取り組みの実態やその問題を把握する必要があること、また、その取り組みを先進的に進めている事業者の実例を参考にすることが、諮問課題の検討を進めるうえで有効であるという結論を得、平成8年2月2日から約10カ月、9回にわたって主要な業種の代表的事業者を部会に招き、それぞれの取り組みの実情や問題点の説明を受け(資料2参照)、この間、事例報告を中心に審議を行ってきた。これらの事例により、その後の諮問内容の審議に役立つ多くの示唆が与えられた。これらの成果をもとに検討すべき課題を総括し、12月から4回にわたって討議を行い、事業者部会としての提言をまとめた。この取りまとめにあたっては、審議会の事業者代表委員を通じ、広く事業者から解決のための提案を求め参考にした。
2 事業系一般廃棄物の排出・処理と大阪市の施策の現状と課題
(1)事業者が関係して排出される廃棄物
事業者に関係して、廃棄物の排出形態をみると、事業者自身が排出する事業系廃棄物と、事業者が生産、販売した製品を市民が購入・消費し廃棄する家庭系廃棄物に分けられる。事業系廃棄物は、大阪市の一般廃棄物の6割強に当たる137万トン(平成7年度)排出されている。そのなかで事務用紙や包装材などの紙ごみが最も多い。ちなみに、家庭系廃棄物は74万トン(平成7年度)であり、日常排出される普通ごみには「容器包装リサイクル法」の対象となっている容器包装廃棄物が、また粗大ごみには家具類や家電製品等が多く含まれている。
(2)事業系廃棄物処理の現状
大阪市で排出される事業系廃棄物の処理は、大阪市が直接有料収集するものや事業者が直接市の処理施設に搬入するものがあるほか、大部分は一般廃棄物の収集運搬業者が有料で事業者から収集し、大阪市の処理施設へ搬入する(廃棄物処理手数料を大阪市へ払う)。受け入れた廃棄物は、大阪市が焼却処理や埋立処分している。
(3)廃棄物の処理の問題
大阪市には、現在10か所の廃棄物焼却工場(能力6300トン/日)がある。今後とも増加が予測される廃棄物処理に対応する処理施設の増強については、既設焼却工場の建替と建替時の既設工場休止を補完する舞洲工場(仮称)の建設などが計画されているが、予定されている焼却能力の増強だけでは、廃棄物が増え続ければ数年のうちに限界に達すると心配されている。また、埋立処分場については、現在埋立をおこなっている北港処分地はあと数年で埋立が終了する見通しであり、それ以降は大阪市独自の処分場を確保できる可能性はほとんどない。その場合、「大阪湾フェニックス計画」による広域共同処分場に依存することとなる。
(4)排出事業者による減量化の取り組みの推進施策とその問題点
大阪市では、かねてから、事業者に事業系廃棄物の減量化、包装容器の簡素化などを呼びかけ、協力を求めてきた。多量の事業系廃棄物を排出する事業所(「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に定める3000m2以上の事業用建物で約1660件が対象)の事業者に対しては、条例(大阪市廃棄物の減量推進及び適正処理並びに生活環境の清潔保持に関する条例)を定めて、減量計画書の提出と廃棄物管理責任者の選任を求め、事業所を訪問・検査して助言や指導を実施している。
こうした大阪市の減量化推進施策において、次のような問題点が指摘されている。
・事業者は、自ら排出する廃棄物の種類や量を把握できていないことが多い。
・事業者が、どのように廃棄物の回避・発生の抑制に取り組めるのか、その方策に関するノウハウを十分持ち合わせていない。
・事業者は、減量化やリサイクルを達成するべき目標値を設定できていない。
・大阪市は、事業者が達成するべき減量化やリサイクルの目標設定に関する情報提供ができていない。
・大阪市の指導は、リサイクル中心であり、廃棄物回避・発生抑制についての事業者への働きかけが不十分である。
・事業者が支払う廃棄物処理手数料が実質コストを反映して設定されていない。このため、事業者に減量化推進のインセンティブが十分働かないと考えられる。
・大阪市による小規模事業者への働きかけ、指導が進んでいない。
(5)事業系廃棄物減量化問題に対する大阪市の取り組み
以上のような背景から、大阪市は事業系廃棄物減量化施策として次のようなことが課題であると考えている。
@多量排出事業者への減量指導の充実
次のような対応により、多量排出事業者に対する減量指導を充実させる必要がある。
・事業者が自ら排出する廃棄物について、どこから何がどれだけ発生し、それがどこに運ばれどのように処理されているかを自主的に把握できるマニュアルを作成して、それを利用することにより廃棄物の発生から処理にいたる流れを事業者自身がつかむことができるようにするとともに、大阪市としても、減量計画書の確認に活用する。
・業種毎に、どのような種類の廃棄物をどのくらいの割合でリサイクルすることが可能か、研究し、事業者に情報提供したり減量指導に活用する。
・事業者が廃棄物回避・発生抑制のためどのように取り組めばよいか、研究し、事業者に対して情報提供したり減量指導する。
・事業者(廃棄物管理責任者など)のネットワークをつくり、情報を交換・共有したり、上記課題のような研究を進めたり、共同啓発を進める。
・小規模事業者への廃棄物減量の推進や共同リサイクルの働きかけを行う。
A事業者や一般廃棄物収集・運搬業者からの廃棄物処理手数料の適正化など
大阪市処理場に搬入される廃棄物処理手数料は減量化を促進するインセンティブになっていないだけでなく、その処理コストの相当割合が大阪市の支出となっており、結局は市民の税負担でまかなわれている。その適正化が課題である。
3 廃棄物の減量化に関する事業者の基本的課題
事業者は豊富に安定して質の高い製品やサービスを安く提供していくのが責務と考え活動してきた。こうした事業者の社会的使命観が今日の豊かな経済社会と暮らしを築きあげてきた。その背景には資源はいつまでも無限に提供され、排出した廃棄物はいつでも適切に処分されていくという思い込みがあった。しかしながら地球環境問題がクローズアップされたのを契機に、私たちの社会経済活動や暮らしは地球環境という閉じた系のなかで行われているものであり、この閉じた系を健全な持続可能な形で維持していくことが私達人類の存続と繁栄のための絶対的な条件であることが認識されるようになってきている。大阪においてはすでに廃棄物処分の限界が目前に迫り、その減量化が喫緊の課題になってきた。前述のように、大阪市において処理されている廃棄物の大半は事業活動に関連するものであり、いまやその減量化は事業者の重要な責務になってきている。
(1)廃棄物の処理及び減量化は法的義務であるだけでなく、今日の事業者の社会的責任である
事業者は、一般廃棄物について廃棄物の処理及び清掃に関する法律において、
@事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において処理すること
A事業活動に伴って生ずる廃棄物の減量化に努めること
B物の製造、加工、販売等に際しては、その製品、容器などが廃棄物となった場合適正な処理が困難とならないようにすること
が義務づけられている。このことは、単に法律上の義務にとどまらず、今日の社会における事業者の社会的責任でもある。今日の社会経済活動において、事業活動は、質的にも量的にも大きな役割を担っている。したがって、事業者のすべてがそれぞれ自らの責任において役割を果たしていくことが重要である。
(2)減量化のため仕事のやり方を含めた工夫をすること
廃棄物の排出を減らすには、事業活動に伴って生ずる事業系廃棄物をつくり出さないような仕事のやり方を取り入れること、物をできるだけ長く使用すること、生じた廃棄物は可能な限り再使用すること、やむを得ず廃棄する場合は分別してリサイクル資源として排出することなどさまざまな工夫をすることが重要である。かつてなにわ商人の身上は“始末と才覚”にあるといわれた。こうした伝統がこの分野でも生かされる必要がある。
(3)製品のライフサイクル全体にわたって減量化を考えること
事業活動に伴って生ずる事業系廃棄物の減量はもちろんのこと、事業者が製造、販売等を行う製品やサービスとして提供する製品の減量化についても、事業者自らの問題として主体的積極的に取り組んでいくことを欠かすことができない。
事業者が消費者や市民に提供する製品の大部分はそれを利用し、消費する事業所や家庭などを経てやがて廃棄物として捨てられる。こうしたことを考えると、製品の企画、設計の段階から、製品の長寿命化に取り組むこと、使用原材料の最小化を図ること、容器包装の簡素化に努めること、維持管理さらに廃棄処分時にもリサイクルし易い材料を利用し、また構造とすること、利用者に安易に廃棄されないような情報や、廃棄された場合、それがリサイクル資源として回収、再生されるような情報や市場を提供することなどさまざまな工夫をすることが重要である。
(4)行政もまた事業者であり、消費者である。大阪市は、社会の指導的立場にある機関とし率先して減量化に取り組むこと
行政は、交通、医療、教育などにおいて事業を営むだけでなく、行政活動そのものも社会的視点から見ると一種の事業活動である。行政は、社会の秩序や、福祉、基盤整備や発展に指導的役割を果たす機関である。したがって、大阪市も廃棄物の減量化に率先して取り組み、社会的取り組みの推進役を果たしていく必要がある。
4 事業者に期待される取り組み
事業者が廃棄物減量化の実効をあげていくためには、次のことが期待される。
(1)経営のなかで環境マネジメントシステムを確立すること
事業者自らが環境保全に配慮した事業活動を行っていくためには、環境マネジメントシステムの確立が不可欠である。国際標準化機構(ISO)ではすでに環境マネジメントシステムや環境監査に関する標準規格を制定し、すでに多くの企業による導入の取り組みが進んでいる。ISO規格に基づいて公的認証を取得した企業も少なくない。環境マネジメントシステムの基準は、経営者がまず自ら環境保全に関する経営理念を明確に打ち出し、事業者が自ら行動する計画を策定、宣言し、その実施状況をチェックして見直す(プレッジ・アンド・レビュー)ということである。そのなかに廃棄物の減量化も位置づけされ、実践されることを期待したい。
さらに、事業者の減量化は、経営トップのリーダーシップによって日常の事業活動のなかに組み込まれていくことが重要である。
(2)循環型社会形成への先導的役割を担うこと
21世紀において期待される社会は循環型社会の活力ある、質的にも豊かな市民社会である。前述のように事業者は、今日の社会経済活動において大きな役割を担っており、望ましい社会づくりに向けてグリーンな製品(注参照)を開発し販売していくことが重要である。これらが事業として拡大していくためには、自らグリーンな原材料や消費財を率先して購入することやグリーン製品やサービスの提供者として消費者を巻き込んでいくこと、さらに消費者のグリーンな行動(注参照)推進に企業市民として参加あるいは協力することも重要である。
大阪は、江戸時代から、商人の町として栄えてきた。また、戦後は、多くの企業家が数多くのニュービジネスを生み出し、大阪の活力となってきた。事業者は循環型社会の形成に向けた原動力として中心的役割を担っていく必要がある。
(注)グリーンな製品とは製品にかかるライフサイクルの全ての段階で環境や健康に とって好ましくない影響が最小となるよう配慮された製品をいう。また、そうした製品を積極的に購入、使用し、廃棄物減量化を行うなどの環境に配慮した行動をグリーンな行動という。
(3)事業者自らの主体的取り組みを促進するため、経済界、業界、商店会など事業者団体が推進役となること
産業、経済界では多く事業者団体が組織化されており、それぞれの団体において業界の発展、繁栄のために情報の交換、相互啓発や援助、関係機関への提言やアピールなどが行われている。かつて、産業公害が深刻な社会問題となった時代、昭和45年には、関西経済界は産業公害に関する経営者シンポジウムを開催して、“公害の防止は経営者の責任であり、経営の重要な要素である。”という内容の「産業公害に対する経営者の姿勢」というアピールを打ち出した。また経団連は平成3年地球環境問題への取り組みに関して“持続可能な社会、企業と地域住民、消費者とが相互信頼のもとで共生する社会、環境保全を図りながら自由で活力ある企業活動が展開される社会を目指す。”ことを基本理念とする「経団連・地球環境憲章」を発表した。前者は企業が産業公害防除に取り組む大きなきっかけになり、また後者は企業が相次いで環境方針を発表し、地球環境問題に取り組むきっかけとなった。
廃棄物の減量化に関しても、経済団体、業界団体、商店会等が、自らの事業者として減量化に努めるとともに関係事業者の積極的な取り組みを喚起し、その推進役を勤めていくことが求められる。その中で、先進的取り組みを進めている企業が、減量化情報やノウハウの共有化と普及、リサイクルのシステム化などについて中心的役割を担い、取り組みの遅れている企業を積極的に巻き込んでいくことが重要である。
(4)廃棄物の減量化とくにリサイクル等において事業者を中心とした関係者の協力とネットワーク化、社会システム化を進めること
廃棄物の減量化には製品の企画・設計の段階からグリーンな製品、リサイクル可能な製品づくりを進めていくことが基本であるが、一般に製品は最終廃棄処分に至るライフサイクルにおいて多くの人々が関与して使用され、維持管理され、あるものはリサイクル回収に、あるものは廃棄処分されていく。したがって、廃棄物の減量化が実効ある形で進められるためには、製品のライフサイクルのすべての段階でそれに関与する人々−事業者、市民、行政−がそれぞれの立場で役割を果たすと同時に、減量化が推進される社会的システムが形成されなければならない。
昭和52年、大阪では府下産業廃棄物の適正処理処分、再資源化を総合的かつ効果的に推進するため府下の行政機関、産業界が協力して「大阪廃棄物対策協議会」を組織して、産業廃棄物対策を推進した。また、地球環境関西フォーラムは、平成4年、大量生産、大量消費型文明社会を越えて、循環代謝機能を備えた活力ある社会づくりを共通の行動理念とし、関係者が足元から自主的行動を起こしていくための行動指針を策定した。地球環境関西フォーラムは学識経験者、消費者団体、労働界、自治体、経済界などが参加して平成2年設立された組織であり、現在でも継続的に活動している。大阪にはこうした事業者、市民、行政が協力してことにあたる基盤があり、廃棄物のリサイクル回収、再使用、資源としての再生利用など関係者が協力してさらに効果的、効率的な社会システムを構築していくことを期待したい。
(5)廃棄物の減量化は時代の要請であり、ビジネスチャンスを提供する。これに対する起業家の挑戦を期待したい
再生品は高くて品質が悪いというのが一般の認識である。しかし、最近、技術開発や新しい発想で一次原料の製品とほとんど変わらない高い品質の製品やリサイクル原料でなければ出来ない新しい製品が出回るようになってきた。環境ビジネスは環境意識の高い人達だけを対象市場とするのではなく、一般市場にも受けいれられる質のよい製品やシステムが開発されれば限りないビジネスの可能性が拓けてくることになる。廃棄物の減量化やリサイクルは恒久的な社会の要請であり、起業家にニュービジネスの機会を提供するものである。前述のように大阪はこれまで全国に先駆けて多くのニュービジネスを起こしてきた地域である。新しい発想や可能性は異業種の交流や異なる文化との接触から生まれることが多いと指摘されている。そのような基盤をもった大阪から廃棄物減量化へ挑戦する起業家が輩出し、数多くの新しいビジネスが誕生することを期待したい。
このような観点から、リターナブルびんや商品の輸送のために繰り返し使用できる通い函など、再使用ビジネスにも挑戦していくことが望まれる。
(6)従業員や労働組合の行うボランティア活動を支援すること
最近、事業者においても市民と同様、より良き社会づくりに参加し、役割を果たしていくべきであるというコーポレト・シチズンシップ(企業市民)の意識が高まり、多くの企業において社会貢献活動が活発に行われるようになってきた。その活動は、環境、教育、文化、福祉、国際協力などさまざまな分野に広がっている。
平成7年1月阪神淡路大震災による被災者の救援や今年1月タンカーからの油流出事故による山陰北陸海岸浄化に多数のボランティアが参加して社会の刮目を浴したが、多くの企業もまたこれに協力し、支援した。こうした活動については、単に企業による社会貢献活動にとどまらず、従業員や労働組合員自らの行う資源回収やまちの美化、海浜の清掃などさまざまなボランティア活動を支援、さらにはこれらの活動を表彰するなど積極的に推進している企業もある。また、労働組合のなかには、組合自身の役割として「ユニオン・シチズンシップ(労働組合の市民意識)」を組合活動の理念に掲げ、社会貢献活動を積極的に展開する組合も現れ始めた。
減量化に関しても、従業員や労働組合員の行うボランティア活動に積極的に協力し、これを支援していくことを期待したい。
5 行政の役割と期待される施策
事業活動に伴う廃棄物の減量化には、前述のように、基本的には事業者の責務であるが、事業者の行う減量化への取り組みを支援し、その実効が上がるよう社会基盤を整備することは行政の重要な役割である。また、行政が行う交通、医療、教育、上水の供給、下水道処理、清掃などの事業にとどまらず、一般行政活動もまた社会的視点から見ると事業活動であり、事業者や市民の行動規範の先導的実践者として自らの活動の中で減量化に取り組むことが重要である。
(1)行政トップがあらゆる機会を捉えて、事業者の経営トップに減量化を訴えること
環境問題への取り組みは経営トップのリーダーシップと従業員の活動参加がきわめて重要である。部会で報告を受けた廃棄物の減量化を実践している企業は何れも経営トップが環境方針を打ち出し、その方針の基に体制が整備され、従業員が一丸となって協力し、先進的な取り組みが行われていた。行政トップはあらゆる機会を捉えて、大阪市の廃棄物問題が喫緊の課題であることの周知を図り、経営トップに事業者自らの取り組みを訴えることが重要である。
(2)事業者の取り組みを啓発し、支援すること
廃棄物の減量化は事業者自らの責務である。責務が実効ある形で行われるようにするためには、基本的に業界団体や地域事業者連合会あるいは経済団体が中心的役割を担っていくことが望ましいが、行政もまた、これらの団体と連携し、行政の立場を生かした役割を担って行くことが必要である。廃棄物減量化に積極的に取り組み成果を上げた事業者を表彰することも意義がある。
@環境マネジメントの確立を支援すること
大阪市の報告によると、多量排出事業者においても自ら排出する廃棄物の実態が把握されていないところがあるという。現状の把握はあらゆる環境マネジメントの出発点である。現状と問題点が確認されれば、自ら解決策が見えてくる。行政は、各事業者が自らの現状と問題点を把握し、それぞれに相応しいやり方で環境マネジメントシステムを確立し、廃棄物の減量化がその中で組み込まれていくよう支援していくことが望まれる。
A減量化に関する情報・ノウハウの共有化を支援すること
廃棄物減量化に取り組み、立派な成果を上げている事業者も少なくない。部会における先進的に取り組んでいる企業の報告を聞くとその取り組みの実績や成果は必ずしも一般に知られていない。そこには単に排出されるごみを減らすということだけではなく、マネジメントシステム、従業員のモチベーションアップ(動機づけ)、リサイクルシステムなどさまざまな参考事例やノウハウが含まれている。こうした情報・ノウハウの共有化を図っていくことは事業者の参考となり、また取り組み促進の刺激となるであろう。
なお、行政自らが減量化への取り組みやその実績を公開することも重要である。
B行政行動のなかで事業者のインセンティブを高める工夫をこらすこと
環境への配慮は事業活動の重要な要件である。しかしながら、事業者の間には、そのための投資は企業利益につながらないという考え方も少なくない。廃棄物の減量化への取り組みが何らかの形で評価され、それが企業利益につながることになれば、それは事業者のインセンティブを刺激し、それを高めることになるであろう。例えば、資材の購入や施設の発注において、事業者の減量化への取り組みやその実績を評価すれば、それが事業者にとって減量化への取り組みの大きなインセンティブを与えることになる。行政はその活動の中で直接事業者と関係することが多いが、そのあらゆる行政活動の中で事業者の減量化への取り組みを評価すれば、一般の事業者の減量化推進にも大きな力になるであろう。
C大学や研究機関も減量化推進の役割を担っていくこと
減量化が実効ある形で推進されるためには技術面でも、社会システムの面でもさまざまな工夫や解決策が必要である。かつての産業公害問題の解決には学識経験者や研究機関が重要な役割を果たした。廃棄物の減量化にも学識経験者や研究機関の支援は欠かすことはできない。大阪市には大阪市立大学、大阪市立工業研究所、大阪市立環境科学研究所、大阪バイオサイエンス研究所などがあり、また、市域には他に私立大学や公立私立の研究機関が少なくない。これらの機関もまた減量化推進の役割を担っていくことが重要である。そのため、減量化推進を目指した産官学の協力システムを考えるのもその一つである。
(3)行政もまた事業者であり、消費者である。行政体(注参照)自らが事業者あるいは消費者として減量化を実践していくこと
行政体は、事業者、市民など社会を構成する各層の指導的立場にある。したがって、廃棄物の減量化に関してもその模範となるよう自ら率先して取り組み、成果を示していくことは、社会各層、各人の取り組みに対する大きな刺激になり、また啓発になる。
(注)行政上の活動を行う際、行政もまた事業者と考えられる。その場合、ここでは行政体と呼んでいる。
@市民の目に触れる形での取り組み
交通機関、学校、病院、区役所、保健所などは市民の出入りも多く、市民と接触する機会が多い。こうした事業所では減量化への取り組みが市民の目に触れるように工夫する必要がある。
A環境マネジメントシステムの導入
一般事業者に環境マネジメントシステムの導入が期待されると同様、行政の事業場においてもその導入が期待される。とくに、廃棄物焼却工場、上・下水処理場などではISO14000シリーズの認証を取得することが望ましい。取得は事業者への刺激になるだけでなく、その過程で得た知見は事業者の指導に役立つであろう。
Bグリーン購入、グリーン仕様等の推進
行政体が行う資材の購入、工事の発注などにあたって、グリーン条件(注参照)を仕様に組み込むことが必要である。このことは、事業者の資材の納入や工事の受注にあたって、事業者に減量化に対する創意工夫の刺激を与えるだけでなく、グリーン製品などの市場拡大の引き金になっていくことが期待される。
(注)ここでは、再生品の利用や廃棄物発生量の少ない材料や工事方法の採用など、環境への悪い影響を最小にするよう配慮した条件をいう。
C職員や労働組合のボランティア活動を支援すること
最近、民間の労働組合のなかには、主体的に環境問題などに取り組み成果をあげるところもでてきた。先導的役割を担う行政においても、職員や労働組合員に協力を求め、環境問題や廃棄物減量化に対するボランティア活動を支援していくことが必要である。
(4)減量化を促進する社会基盤を整備すること
廃棄物の減量化を促進するには、3.(2)及び(3)に示した工夫が生かされ、社会全体としてそれらが実効ある形で促進される社会基盤即ち循環型社会基盤の整備が不可欠である。
@不用品が社会で長期的に利用されるような社会的機能を拡充すること
事業所においては、一般ではまだ十分利用可能な機器設備が処分されることが多い。一方、機器設備の機能が少々劣っていても安くあるいは無償で入手したいという利用者も少なくない。こうした両者のニーズをマッチングさせ、不用品が長期的に利用されるような情報交換機能(クリアリングハウス)や交換システムとリース市場や中古市場を充実することが必要である。
A減量化を促進する廃棄物収集システムに改めること
現在行われている事業系廃棄物収集システムは本質的に事業者に廃棄物の大量排出を促すシステムとなっている。事業所における廃棄物の排出から、大阪市処理施設の受入までのシステム(2.(2)参照)を、その処理手数料の料金体系を含めて、事業者の減量化を促進するようなシステムとなるよう検討する必要がある。
B静脈系環境ビジネスが醸成され発展する社会基盤を整備すること
廃棄物もまた資源である。したがってこれを生かしていくことはまたビジネスに大きな事業機会を提供する。しかしながら、今日の大量生産、大量消費社会においてはこれをビジネスとして成立させ、発展させるにはさまざまな困難や障害がある。これを乗り越えて行くためには先ず起業家が減量化に取り組み易い社会環境を整備すること、さらに起業家を刺激して静脈系環境ビジネスへの挑戦を促し、起業家が遭遇する社会的障害を1つずつ地道に克服していくことである。そのためには異業種交流の活性化、大学や研究機関の活用、ベンチャーキャピタル(注参照)の充実を図ることが必要である。
(注)ベンチャーキャピタル:高い技術力を必要とする新しい産業分野における事業に対して出資および貸付けを専門に行う企業。
(5)廃棄物の多量排出事業者の減量指導、監督のあり方を再検討すること
現在、3000以上の事業用建物で事業活動を行っている事業者に対して減量化の指導、監督が行われている。指導、監督を通じて減量化の問題点は把握されてきており、当面の改善の方向性としては、2.(5)に示されているが、その施策の実効性については定量的な評価が十分行われていないのが現状である。指導、監督の対象を拡げるとか、指導監督を強化すべきであるという意見もあるが、基本は事業者が自らの責務として主体的積極的に減量化に取り組むことである。この基本に則り、減量化指導のあり方を検討することが必要である。
なお、行政体自らの減量化について各事業所現場の実績評価や指導を自ら実施していく必要がある。
6 特別な配慮が必要な個別案件について
オフィス紙ごみ、生ごみ、有害廃棄物については、その特性に基づいて特別な配慮が必要であるため、推進すべき取り組みについて、ここで個別にとりあげる。
(1)オフィス紙ごみの再資源化対策
近年、情報量の増大と情報機器の発達を背景にオフィス用紙が大量に使用されるようになり、年々紙ごみが増加し、一般事業系廃棄物のなかで大きな割合を占めるようになってきている。従って、オフィスで使用される紙の削減と紙ごみの分別・リサイクルは事業者の廃棄物減量化対策の重要な柱の一つである。
前者については、情報の電子化、文書整理によって文書の重複保管をさけることなど仕事のやり方を変えることが重要である。行政においても、このことが期待されると同時に、特に、中小企業者においても、この取り組みが促進されるよう業界と協力して援助することが必要である。そのため、業界関係者とペーパーレスオフィスづくりを目指した懇話会を設置し、その推進策を検討することも考えられる。
後者については、回収ルートにのりにくい中小事業所の対策が必要である。東京都や広島市等ではすでにオフィス町内会という形で地域事業所が連携したオフィス紙ごみの分別回収が始まっているが、こうした例を参考に分別回収の集約化とシステム化を図っていくことが必要である。また、ある地区でモデル事業を実施し、その実施例を参考に普及していくことも考えられる。
(2)生ごみの再資源化対策
従来、多量に排出される事業所の生ごみは家畜飼料として引き取られ、リサイクルされてきたが、家畜業の縮小、転業や環境問題などから引き取られることが少なくなり、一般事業系廃棄物として排出されるようになってきた。これは食生活やライフスタイルの変化にも原因がある。先ず、ごみとしないよう食材として徹底的に利用すること、次いで、加工食品の材料として利用する。加工飼料として利用するなど工夫が重要であるが、少なくとも排出された生ごみが肥料化されることが必要である。生ごみは衛生上の問題があるため、排出された生ごみをそのまま回収、保管した上で加工することがなかなか難しく、排出現場で一次処理して移動保存可能な形で回収ルートにのせることが必要である。
こうした要件を踏まえて、生ごみ再資源化システムの可能性を探っていく必要がある。そのためには多量生ごみ排出者や再生された飼料、肥料の利用者などの多様な業界関係者の協力が不可欠であり、行政はそのシステム化開発推進の中心的役割を担っていくことが必要である。
一例として学校給食残渣の肥料化とその公園緑地への利用を行っていくことなどが考えられる。
(3)有害化学物質の廃棄対策
最近、私達の生活のなかで、日常使われるものの中に、そのまま捨てられると健康上有害な化学物質が使用されている製品が少なくない。
こうした製品には、通常危険な廃棄物として一般ごみとは分けて回収されたり、販売店等で店頭回収されたりしているが、必ずしも十分とはいえない現状である。基本的には有害化学物質を使用しない製品への転換が望まれるが、やむを得ずこうした物質が使用される場合は、製造・販売事業者は製品表示により、有害物質の存在とその危険性を警告することはもちろん、適切に処分方法や回収方法も表示することが必要である。さらに、業界は販売店等における有害物質の危険性に関する知識の啓発を図るとともに、店頭回収が一般に広く周知され、実効の上がるよう工夫することが必要である。また、多量に有害物質を含む製品を使用する事業所では、製造販売店等と連携してその廃棄物を適切な方法で回収することが必要である。
行政は有害廃棄物に関する廃棄物回収現場の教育を充実するとともに有害廃棄物が安易に捨てられることのないよう監視していくことが必要である。
7 審議会でさらに検討されるべき課題
すでに述べてきたように事業活動における廃棄物の減量化は社会全体の課題でもある。事業者が自らそれに向けて改善努力していくことは当然であるが、経済社会のメカニズムや消費文化、消費生活もかかわる問題である。これを実効あるものにするためには事業者、市民の観点からだけでなく社会全体の視点からも検討されなければならない。事業者部会で課題になったもののうち、以下の2点は審議会全体として討議されることが望ましい。
(1)廃棄物の処理コストの適正な負担のあり方の検討
これまで廃棄物の処理コストは一般に事業者の経営の効率化や製品の競争力を高めるため、それが廃棄物となったときの処理コストは市場から外部化(注参照)され、行政の処理に委ねられるのが通常であった。こうしたことから、一般事業者や市民は廃棄物処理コストについて関心が薄く、そのことが廃棄物を増大させる大きな要因の1つになっている。そのため、市場メカニズムが働くよう廃棄物処理コストを関係者が適切に負担することが減量化のインセンティブになると指摘されている。製品の製造から廃棄処分にいたるまで多くの関係者が関与するなかで、外部化されているコストの内部化を図りながら、廃棄物減量化のインセンティブが働くような市場メカニズムの確立と、それぞれの関係者がどのように役割を分担しコストを負担するか、などそのあり方を検討する必要がある。
なお、容器包装に関しては、昨年容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)が制定され、その処理に関する関係者の役割などが定められたが、これが処理コストの内部化や減量化のインセンティブとなるような市場メカニズムを生み出す引き金となるとは思われない。さらに、基本的課題である容器包装の発生抑制につながらないなど、多くの問題も指摘されている。こうした問題も含めて、処理コストの適正な負担を検討していく必要がある。
(注)ここでは、廃棄物処理コスト等が企業や消費者が直接的に負担することなく公共の場にまかされていることをいう。
(2)減量化を促進する事業者と市民のよき相互関係づくりの検討
事業はその提供する製品やサービスを受ける市民があって成り立つ。廃棄物の減量化は事業者自身の課題であると同時に、その受け手である市民の動向によって左右されるところも少なくない。近年、安くていい品質の製品やサービスを提供するというだけでなく、社会的活動を含めた事業活動の総体が市民から評価され、事業者の製品やサービス提供に影響を与えるようになってきた。また、リースや中古品、再使用、あるいは再生品などグリーン製品に対する市場ニーズがなければ社会全体としての減量化の実効が上がっていかない。再生品の需要拡大がなされなければ、回収されたものがリサイクルされないことをここに強調しておきたい。
以上のように、廃棄物の減量化は、製品やサービスの提供者と受け手の相互的関係によって相乗的に促進がなされるものである。こうしたよりよい関係をつくり出していく方途を検討する必要がある。そのためには、事業者が市民に対して環境に配慮した活動(環境パフォーマンス)に関する情報を公開し、市民もまたこれを適正に評価して行動に結びつけることが重要である。
あとがき
事業者部会が検討してきた減量化対策は基本的には事業者自身が主体的に取り組んでいく問題である。それは単に廃棄物の流れに焦点をあてるだけでなく、事業者の経営や仕事のあり方を含めた改善が必要である。従って、行政の役割はこれが円滑に効果的に実施されるよう推進することである。そのためには行政と事業者が連携し協力して推進することが期待される。なお、行政体もまた事業者として事業者と同様の取り組みが必要である。さらに行政体は社会の指導的立場にある事業者として減量化に先導的役割を果たすことも重要である。
減量化が社会全体として効率的にかつ円滑に進んでいくためには、製品やサービスの供給者や受け手など関係するすべての人々の減量化に向けた社会意識の高まりと行動、さらにそれを支える社会的基盤の充実が不可欠である。この報告がこうした望ましい循環型社会づくりに役立つことを期待したい。
また、審議の過程で取りまとめた事例報告や提案はその多くが示唆に富むものであり、今後の減量化推進の具体化に参考になると思われるので、本報告書に添付することとした。これが広く活用されることを望みたい。
|
A1自治体の例規 |
A2自治体の情報 |
B1国の法令 |
B2国の情報 |
C行政関係判例 |