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「大阪市の散乱ごみ対策を中心としたまちの美化施策のあり方」(答申)

平成11年 6月18日  大阪市廃棄物減量推進等審議会


 目次

 1 はじめに

2 散乱ごみ問題を取り巻く状況

3 散乱ごみの実態について

4 散乱ごみ対策の現況と今後の課題

5 散乱ごみ対策を策定するにあたって基本となる考え方

6 今後新たに実施すべき対策について

7 終わりに


1 はじめに

 近年、まちに散乱するごみは、まちの美観を損なう大きな要因となっている。このことはまちの魅力や活力をも失う原因ともなり、そのため各都市で様々な啓発を行ったり、ポイ捨て行為に対して罰金を課す条例を制定するなどの取組を行っているが、何れの都市においても未だ根本的な解決を見るにはいたっていない。大阪市においても、これまで様々な取組を行ってきたことにより一定の改善がなされてきたが、依然としてまちの多くの地点でごみの散乱が見受けられる状況にある。

 当審議会では、大阪市がこれまで実施してきた美化対策の取組とごみの散乱の現状について詳細に検証し、その問題点や今後達成すべき課題を見出すとともに、21世紀を間近に控えて、これまでの行政主導、経済効率優先の社会システムの変革が求められる中で、真に豊かで活力ある美しい大阪のまちづくりをめざして、新たな発想に立った美化推進施策について検討した。

 また一方、環境問題が社会の最重要課題の一つとなり、市民や企業、事業者に対して、環境に負荷を与えない責任ある行動が求められている。特に温室効果ガス、オゾン層の破壊などの地球環境問題は、あらゆる事業活動や市民一人一人の日常的な行動に起因しており、大量生産、大量消費、大量廃棄の経済社会システムと快適性、利便性を追及するライフスタイルそのものの結果である。

同様にまちの散乱ごみ問題も、豊かな社会の歩みの中でそれを享受することの責任がなおざりにされてきたことの結果であり、市民がこれまでの行政サービスの受け手としての市民から脱却して、まちの美化や散乱ごみ問題を自分達の問題として考え行動できる市民へと変わっていくことなしには、根本的な解決はありえないと言える。また企業や事業者も、美しいまちは経済的活力の源泉であることを認識し、そのための役割を主体的、積極的に担っていく必要がある。

 今、大阪市では、2008年のオリンピック開催を目指して、市民や企業、行政が一体となって招致活動に取り組んでいる。大阪市はこれまでも、国際都市にふさわしいまちづくり、市民が誇りを持って生活できるまちづくりを目指して、様々な施策に取り組んでおり、ことにまちの美化推進はオリンピックの招致と開催の成否の重要な要件のひとつになっている。そのためにも、まちのごみの散乱防止について、市民、事業者、行政のそれぞれが責任ある役割を果たしながら、主体的に行動していくとともに、三者のパートナーシップで協力し実効をあげて、他都市の範となるような施策を推進されることを期待する。

 

2 散乱ごみ問題を取り巻く状況

問題の背景

 戦後の高度経済成長は、大量生産によるコストダウンに裏付けられた大量消費生活を可能にし、また利便性と快適性を求める市民の要望ともあいまって、缶・ボトル等のワンウエイ容器や食品トレイ、真空パックなどの包装の普及に見られるような使い捨ての流通消費システムを生み出した。また屋外で歩行しながら喫煙したり、飲食するような行動様式が一般化したことにより、市街地等における散乱ごみ問題が顕在化した。散乱ごみはまちの美観を損なうだけではなく、都市衛生や環境の保全面から様々な問題を引き起こすことが懸念されている。このように散乱ごみ問題の背景には、生活の利便性と快適性の享受に伴う責任や費用、さらに環境にかかる負荷についての公共意識や倫理観がなおざりにされてきたことがあると思われる。

環境問題への関心の高まり

 近年、公害問題の発生や自然破壊などの深刻な問題に直面して環境保護、環境保全に対する関心が高まる中で、社会の価値観は経済偏重から環境重視へ、また個人のライフスタイルも量から質の向上へとそのニーズは大きく変化し、都市や居住地域の快適さ(アメニティ)の向上を求めて、まちの美化推進や、散乱ごみ問題へも大きな関心が寄せられている。

 このことから市民、事業者、行政が協調して散乱ごみ対策に取組む機運が高まっており、ごみの減量、リサイクルの取り組みとも連動させ、環境問題のひとつに位置づけて取り組むことが求められている。

教育をめぐる問題

 一方、最近の都市住民の傾向として、自分たちの生活の場に対して「私のまち」「ふるさと」という帰属意識が持ちにくい状況にあることから、一部に自分の住んでいるところが汚かろうが全く意に介さず、何の罪悪感もなくポイ捨てするなど、平気でまちを汚す行動が見受けられる。また「自分は汚していないから掃除はしない」といった利己主義的な傾向や幼少期の躾の問題等により基本的な公衆道徳が守れないなど憂慮すべき傾向が見られる。この問題は、家庭教育、学校教育、社会教育を含む教育全般に関わる問題であり、環境教育の充実など長期的な取組が必要となっている。

厳しい財政状況

 また散乱ごみへの対応にあたっては、これまで行政当局を中心に、回収容器を設置したり、清掃の頻度を増やしたり、またポイ捨て防止を訴えるキャンペーンを実施したりするなどの取組を重ねてきた。(資料1参照)

 散乱問題は、行政当局が捨てられたごみを多くの経費を投入して徹底的に清掃することにより解決できるという考え方もあるが、財政難の中で散乱対策に多くの財源を振り向けることは困難であり、散乱ごみの発生予防を基本とした根本的かつ効率的な解決を目指していく必要がある。

 

3 散乱ごみの実態について

 大阪市における最近のごみの散乱状況とその問題点について、市政モニター調査、ノーポイモデルゾーンにおけるたばこの吸殻の散乱調査、北区内でのごみの種類別散乱個数調査により、以下のとおり検討した。

市民の印象まちの美化が進んでいる

大阪のまちの美しさについて、平成10年度の市政モニター調査で、5年前と比べてどうかをたずねたところ、主要ターミナルや繁華街については67%が、住まい周辺等では58%が美しくなったと感じている。

また、「ポイ捨てされたごみ」については、主要ターミナルや繁華街では、5割以上が少なくなった、住まい周辺等では「少なくなった」と「変わらない」がそれぞれ約4割となっており、全体としては、まちの美化が進んでいることがうかがわれる。(詳しくは資料2参照)

たばこのポイ捨てー歩行喫煙者の6割がポイ捨て

 一方、ノーポイモデルゾーンにおけるたばこの吸殻散乱調査のポイ捨て率の推移を見ると、平成57月のゾーン設定時には約40%の投棄率であったものが、ノーポイリーダーズの啓発等により数ヶ月後には20%半ばまで激減している。しかし平成612月以降は20%前後で横ばい状態となっており、現状の横ばい状態をさらに減少傾向にするための施策の検討が必要である。

 また平成10年3月に実施した歩行喫煙者に関する調査では、歩行喫煙者が全歩行者に占める割合は約2%であった。これらの歩行喫煙者が吸い殻をどのように始末したかを見ると、「灰皿に捨てた」は42%となっており、残りの6割はポイ捨てしていることになる。これを年齢層別に見ると、正しく灰皿に捨てて処理した人の割合は、3040歳代が最も高く43%、続いて50歳代が40%、20歳代が36%、10歳代が30%であった。(詳しくは資料3参照)

どのようなごみがどこに捨てられるのか

 大阪市北区内で実施したごみの種類別散乱個数調査によると、散乱ごみの比率は、たばこの吸い殻58%、飲料容器4%、紙・包装材23%、その他15%であった。地域の特性から見ると、映画館・遊戯場や飲食店が集まる繁華街において、飲料容器を除くすべての項目で圧倒的に高い数値を示しており、駅周辺が次いで散乱数が多かった。飲料容器は河川敷の遊歩道が最も高い数値を示した。なお駅に隣接する商店街は散乱ごみは少なかったが、出入り口の道路上にはごみが集中していた。

 散乱ごみ数を20mごとのブロックで見てみると、地下鉄・地下街の出入口でたばこの吸い殻、紙類、踏まれて道路に付着し黒くなったガム(以下古いガム)が多く、横断歩道付近で古いガム、ごみ箱のあるブロックでたばこの吸い殻、古いガム、植樹帯のあるブロックでたばこの吸い殻、古いガムが多かった。さらに、記録写真等から、駐輪している自転車の周辺に紙ごみや飲料容器の散乱が多く、不法投棄場所に散乱ごみが集中する傾向が見られた。

 このことから、散乱ごみは人の通行量にほぼ比例するとともに、目立ちにくくポイ捨ての抵抗感が少ないと考えられる植樹帯の中や側溝、既に汚れている駐輪自転車の近辺や不法投棄場所に集中することが確認された。また、禁煙になっている地下鉄や地下街の降り口付近に吸い殻が多く散乱しており、公園のベンチ付近にもたばこの吸い殻の散乱が多く見られた。(詳しくは資料4参照)

 

4 散乱ごみ対策の現況と今後の課題

(1)ごみ回収容器の設置及び清掃業務について

 ごみ捨て行動を見ると、ごみが発生するとなるべく早く小さな労力で早く捨てたいという欲求があること、また目立ちにくい場所やすでに汚れている場所に捨てやすいという特徴がある。このようなごみ捨て行動の分析から、人の流れに沿って規則的にごみ回収容器を設置し、また清掃頻度を高くして常にきれいな状態を保っておくことにより、ポイ捨て行為はかなりの部分まで防止することができると考えられる。大阪市においても、主要ターミナルの交差点を中心にごみ回収容器を設置して管理しているが、必ずしも十分な数の回収容器が設置されているとは言えない。また地下街や地下鉄など禁煙区域との境界線になっている階段入口付近に灰皿が設置されていないこともあり、たばこの吸い殻が数多く散乱している。

 しかしながらごみ回収容器を設置しても、そこに家庭ごみやダンボール等のごみが捨てられることが多く、時にはそれが溢れて、かえってごみの散乱を招くこともある。そのために近隣の市民からごみ回収容器を撤去するよう要望が出されることもあり、市当局はその管理や対応に苦慮している。

 また駅周辺や飲食店街などの繁華街は不特定多数の利用者が多く、住居地域と比べるとどうしてもごみが散乱しやすい。さらにこのような地域は、住民の協力が得にくい場合が多く、散乱状態が放置されるためにごみがごみを呼ぶ悪循環に陥っている状況も見受けられる。

(2)美化啓発・美化キャンペーンについて

 ポイ捨ての防止を訴えるような公共キャンペーンは、いわゆる商品広告とは異なり、伝える市民に理解と納得を得られるものでなければならない。また市民生活の中に習慣として定着するまで繰り返し訴えていく必要があり、相当時間がかかるものである。そういう意味で、衆目を集めることのみを目指すのではなく、むしろ地道で継続的なキャンペーンを心がけなければならない。

 また、これまで行政としてどのようなことに取り組んできたのか、これからどのようなことを行うのかというメッセージを伝えて市民の協力を求めるとともに、散乱ごみの処理にどのくらいの経費がかかっているのかを具体的に知らせていくことも重要である。

(3)市民意識とボランティア活動について

 散乱問題を考えるにあたって、市民がまちをどう考えているかということが大きな問題である。身近な公園、河川、海岸等の公共スペースを行政から与えられたものと考えるのか、自分達のものと考えるのかによって状況は大きく異なってくる。一般的に、親しみのある場所は汚さないし、清掃も行き届いている。そういう意味では、市民が自主的に美化活動に取り組めるのは自宅周辺や公園であり、繁華街などはむしろ行政が関わるウエイトが高いと考えられる。

 平成1011月に実施した大阪市一斉清掃「OSAKAクリーンピック98」の呼びかけに、96千人もの市民が参加して居住地域を中心に清掃活動に取り組んだ。このことからまちの美化に対する市民の関心はかなり高いものがあり、うまくきっかけを作り、適切なインセンティブを与えることによって、ボランティア清掃をより広げていくことができると考えられる。

 また一方、阪神淡路大震災をきっかけにして、多くの人々がボランティア活動に関心を持ち、海岸や河川敷などでのビーチクリーンアップ運動など様々な活動に進んで参加している。またサッカーのサポーター(応援団)やサーフィン、スキューバー・ダイビング等スポーツの愛好家が自発的に自分達の活動地域を清掃するなど、個人の意思や趣味・嗜好に基づく活動に伴う美化活動が行われている。このような若者層を中心とした市民による独自の清掃ボランティア活動をいかに普及させまちの美化活動にも広げていくか、そのためにはどのような支援策が有効であるかを検討する必要がある。

(4)罰則等の社会制度上の諸問題について

 一般的に市民は、ごみを出すのは少しも悪いことではない、後は誰かが処理してくれると認識しているため、ごみを処理するには大きな労力とコストがかかっているということを十分に認識してもらう必要がある。そのためには、これまで行ってきた美化キャンペーンや家庭、学校、職場における環境教育だけではなく、新たな社会制度として、デポジット制度の導入を図ったり、ポイ捨て行為などまちの美観を損なう行為に対してペナルティ等を課すといったマイナスのインセンティブを導入することについても検討すべきである。

 大阪市のポイ捨て防止条例には、氏名公表等の規定以外には具体的な罰則の規定は盛り込まれていない。一方、最近制定された他都市の条例では、ポイ捨て行為に対して2万円から3万円の罰金を課すものが多いが実際に適用した事例はほとんどなく、威嚇効果が主である。また「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」のほか多くの法律に同様の罰則規定があるが、その法律も悪質な場合を除いて適用されることは少ないのが現状である。ポイ捨て行為のような、通常多くの人が反社会性の程度が低いと考える行為には法律はなかなか適用できないし、刑罰は誰に対しても違反があれば平等に適用するのが原則であり、罰則を課す側にその規定をきちんと適用するための覚悟と体制の整備が必要となる。

 

5 散乱ごみ対策を策定するにあたって基本となる考え方

(1)景観向上の取組としての散乱対策

 散乱ごみ問題は、都市景観の向上を図っていくうえでも重要な課題となっており、町並みや建築構造物、屋外広告物、緑化、違法駐車や駐輪対策などとも関連させて検討すべき課題である。美しいまちをつくるためには、散乱ごみだけではなく、違法駐車や駐輪などを一つ一つ排除していかなければならないし、逆にたたずまいや自然が美しいところにはポイ捨てがないことから、相互に関連付けて、総合的な対策が取れるように検討しなければならない。

(2)市民、事業者、行政に期待される役割とそのあり方

 散乱ごみ対策は、ごみを捨てさせないための対策(散乱防止策)と散乱したものを回収するための対策(回収促進策)の2つに大きく分けられる。この2つの散乱対策をこれまではどちらかと言えば行政サイドが中心となって実施し、市民、事業者がそれに協力するという形で進められてきた。

また廃棄物問題全般にわたって、市民がごみを発生させ、それを行政が後始末するという仕組みが長年続いてきたことにより、市民や事業者がごみについての自らの責任を自覚することができない状態に置かれてきたと言える。このような行政と市民、事業者の関係を根本的に見直し、市民、事業者、行政それぞれが期待される役割を担い、三者がパートナーシップの精神に基づいてまちの散乱ごみ対策を推進していく必要がある。まちの美化は、まず市民が散乱ごみを発生させないことが基本であるが、そのための散乱防止対策やごみの回収等についても、むしろ市民が主役となって対処していくような仕組みを構築していくことが重要である。

@市民・企業市民の役割

まちの美化推進は、市民が自らのまちを自らの手できれいにしようという意思が最も重要である。快適な居住環境は、市民が連帯意識を持って自らの手でつくり出し、守っていくことが基本である。

それを可能ならしめるためには、地域コミュニティの構成員それぞれが自らの地域問題を把握し、連携して問題の解決を図っていくことが重要である。散乱ごみという、日々目にする身近な問題への対応を通して、地域コミュニティがより活性化することが期待できる。

また今日の社会において、企業は企業市民としての役割が期待されている。おりしも環境管理や環境監査などに関する国際規格(ISO−14000シリーズ)が制定され、企業の環境問題への取組が企業活動の必須要件となってきている。企業は、自らの活動の場

である地域を美しくするということは企業の活力を支え、企業の信頼を高めるものであるという認識に立って、企業市民として、地域住民と共に積極的にまちの美化推進に取り組み、地域に貢献することが求められている。

 A 散乱ごみ発生に関わる事業者の役割

事業者は企業市民の立場に加えて、散乱ごみ発生の要因となっている製品の生産・流通・販売に携わる事業者としての責任を果たすためにも、散乱ごみの発生防止に積極的な役割を果たす必要がある。

すなわち、散乱ごみの発生する店舗内やその周辺に回収容器を設置し、清掃するとともに、市民の活動をサポートすることが求められる。また自らの顧客や消費者に対して、ポイ捨て防止のための啓発やキャンペーンを行うなど散乱防止に努めなければならない。

 (事業者の範囲)

 散乱ごみの発生に関わる事業者としては、これまでは散乱ごみとなりやすいたばこ、飲料、チューインガムを製造または販売する企業を指すことが一般的であった。しかし近年公園や人の集まる繁華街などでは、それ以外の紙類や弁当がらなどの散乱が相当見られることから、ファーストフード店、コンビニエンスストア、弁当販売店なども事業者に含めるべきである。さらに禁煙区域を指定している交通機関や地下街は、周辺にたばこの吸殻が散乱していることについて、施設管理者として散乱防止に適切な措置をとることが必要である。また買い物客が訪れる商店街やスーパーマーケット、百貨店などの集客施設においても、その顧客が周辺のごみ散乱の原因となっていることや周辺環境が自らの事業運営の成否に大きな影響を与えることから、事業所周辺のごみの散乱防止に努めることが望まれる。

 B 大阪市の役割

 大阪市は総合計画に基づいて庁内が一体となって積極的に美化推進対策を推進するとともに、常に散乱ごみの実態や散乱防止に対する市民ニーズや事業者のニーズを掌握し、三者の連携を図りながら、美化啓発や回収容器の設置、清掃等のまちの美化推進対策を実施していくべきである。また市民や事業者に対して、市の取組みに関する情報開示に努めるとともに、市民や事業者が主体的にまちの美化推進に取り組んで行くための支援体制を整備しなければならない。

(3)総合的な対策と先進的取組の導入

これまで散乱ごみ問題は、主に市民のモラル、マナーの問題であるとの認識のもとにポイ捨て防止のキャンペーンを実施し、回収容器の設置や清掃等の対策を行ってきた。しかしこれまで見てきたように、散乱ごみ問題は地域コミュニティのあり方や家庭における躾や教育問題、環境問題、経済問題、法律問題など様々な問題を包含していることから、その問題の所在や解決方法を多角的に検討し、社会を構成する市民、事業者、行政による三者のパートナーシップに基づいて総合的な対策を実行していくことが重要であり、またその問題の解決にあたっては、先進的、創造的な試みが導入できるよう検討すべきである。

 

6 今後新たに実施すべき対策について

(1)ごみ回収容器の設置及び管理について

 ポイ捨て防止を訴え、ごみの散乱を未然に防止するためには、ごみ回収容器を適切に配置して、ごみが正しく排出されるように誘導しなければならない。

ごみ回収容器は、人の流れに沿って動線上に配置するとともに、通行人にごみ回収容器がどこに設置されているのかという情報を適切に与えるためにも、交差点ごとに規則的に設置する等の配慮を行ったり、周辺の看板や自転車を取り除いて見えやすくしたり、遠くからでも回収容器が設置されていることが確認できるような表示を取り付けるなどの工夫が必要である。また設置されたごみ回収容器がうまく機能しているかどうかを点検し、うまく行かない場合には順次変更を加えるなどのマネージメント・システムを定着させることが重要である。

 さらに今回実施した散乱ごみの種類別散乱個数調査から、地下鉄や地下街の出入り口など禁煙区域との境界にたばこの吸殻が散乱しやすいことが明らかとなったことから、禁煙区域を指定した施設管理者が中心となって、灰皿を設置する等のポイ捨て防止策を早急に検討すべきである。また地域の核となるような商店街やスーパーマーケット、百貨店等の集客施設やファーストフード店、弁当販売店においても、ごみ回収容器、灰皿の設置等の散乱防止策を積極的に進めていかなければならない。

 また街頭に設置されたごみ回収容器は、あくまでも屋外で発生したごみを回収することを目的としたものであり、生ごみなどの家庭系のごみやダンボール等の事業系ごみをそこへ排出することは社会的なルール違反である。このことを市民に十分周知するとともに、罰則の適用を含む何らかの規制措置についても検討する必要がある。

 さらに河川敷や海岸などはいったん汚されればそれを清掃して元に戻すことは非常に困難であり、ごみ回収容器を設置して適切に管理し、不法投棄等を厳しく取り締まるなどの措置が必要である。特に河川敷は市民がスポーツや行楽で利用する機会が多いために、空き缶等の散乱が著しく、増水時に河川敷のごみが海へ流れ出て、深刻な自然破壊を起こしている。このような状況を市民に広く知らせて環境意識を高めることによりポイ捨て防止を訴え、またボランティア清掃を呼びかけることも効果的である。

(2)ターミナルや繁華街等のモデル地域での取組み

 ターミナルや飲食店、遊興施設の集まる繁華街は、不特定多数の利用者が多くどうしても汚れやすいことから、大阪市ではこのような地域をノーポイモデルゾーンに指定して重点的な啓発や清掃を行ってきた。多くのごみ回収容器を設置し、徹底的に清掃すれば、ここを訪れる不特定多数の人々もごみを捨てにくくなり、ポイ捨て行為はかなりの程度まで防止できると考えられる。このようなターミナルや繁華街は、国内外から始めて大阪を訪れる人々に、まちの第一印象を与えることになる、言わば大阪の顔となる地域であり、今後とも行政による重点的な対策が必要である。その際には、交通機関や百貨店等の集客施設など周辺の事業者の協力を求め、連携して取り組むことを検討すべきである。

 まちの美化を推進するにしても、大阪市域全体を一度にカバーするのではなく、地域や期間を限定したモデル地域で集中的に行うほうが「きれいになった」という成果が明らかになりやすいために効果的である。その際には、実態調査で明らかになった数値をもとに、目標値を設定して取り組むなどの工夫を行なうとともに、市民団体やボランティア団体に啓発効果の高いボランティア清掃やキャンペーンに取り組んでもらうよう呼びかけることも効果的である。

(3)継続的な美化啓発、環境教育の実施

 美化キャンペーンを実施するにあたっては、単にポイ捨て防止を訴えるだけではなく、行政当局がこれまでどのような取組を行ってきたのか、また散乱ごみ対策のためにどのくらいの経費を費やしてきたのかを積極的にPRし、市民の認識を深めていくことが重要である。

 さらに散乱ごみの問題を環境問題のひとつとして位置づけ、リサイクルの推進や自然保護の観点から訴える新しい取組も推進していく必要がある。例えばミュンヘンの秋祭りは、使い捨て容器を使用しないなどごみを出さないというコンセプトのもとに開催されている。このように大阪市内で実施されているイベントについても、ごみを出さない、自分の出したごみは持ちかえる、また散乱したごみは参加者やボランティアにより清掃するというような取組を計画段階から組み入れて実施することにより、大きな啓発効果が期待できる。

 また「ポイ捨てはいけない」ということを生活習慣として身につけさせるために、子供のころから家庭や学校で環境教育を行うとともに、公共マナーの重要性を体得させるために、学校周辺や地域での清掃活動に積極的に参加させることが効果的である。

 さらに子供の養育者でもある、いわゆる「働き盛り」の成人に対しては、これまであまり啓発や環境教育の機会がなかったが、自治会活動や企業教育などあらゆる機会をとらえて環境美化の重要性を訴えて認識を高めるとともに、それぞれが所属する自治会や企業において美化活動に積極的に関われるようにすることが重要である。ことに企業においては、企業戦略の中で環境保護や社会貢献が重要課題となる中で、自らの社員に対して真の社会性や公共性を身に付けさせるためにも、企業教育の一環として環境美化に取組むことを検討すべきである。

(4)清掃ボランティア活動の活性化

@地域ボランティア活動の活性化

 地域で取り組まれている清掃活動を盛んにしていくためには、あらゆる機会をとらえてボランティア団体の活動を広報媒体でPRするなどして、参加者の意欲の高揚を図ることが重要である。また清掃ボランティア団体相互の交流を図り、互いの活動内容を情報交換できるような仕組みを作るとともに、清掃ボランティアに対する情報提供やリーダー養成のための講習会を開催するなどの支援策を実施すべきである。

 平成10年度に実施された全市一斉清掃の取組は、清掃ボランティア活動のすそ野を広げる取組として効果的であり、オリンピック招致運動と連携させ、美しいまちづくりを呼びかけるイベントとして継続して実施することが望ましい。

A若年層のボランティア活動の促進

 学校教育の中で取り組まれる地域の美化活動をきっかけにして、小中学生が環境美化に関心を示すことが期待できるし、さらに各所で開催されている少年野球大会やサッカー大会終了後には参加者全員がユニフォーム姿で会場の清掃を行うなど、若年層を対象にしたイベントに付随して清掃活動を積極的に取り入れる事も効果的である。

 また高校生をはじめとする青年層に対しては、参加意欲を高めるために、清掃活動に参加すれば単位が取得できたり、就職や進学に有利になるようなインセンティブを与えることも考えられる。学校教育カリキュラムの中で、一定期間学校を離れて社会貢献活動に参加する試みが検討されており、この中に環境美化活動をどのように組み入れることができるのかを学校関係者と協議し、その効果についても検討する必要がある。また若者が多く集まる繁華街などでは、同年齢の若者によるキャンペーンが効果的であることから、若者たちの自由な発想による楽しい清掃活動やキャンペーンが実施できるような方策や支援策について検討すべきである。

B民間非営利組織との連携

 近年のボランティア活動は、これまでの恵まれた人たちの恩恵的、チャリティ的活動から、地域での相互扶助を目的としたものや自己実現のための活動に変化し、活動の分野も社会福祉の分野にとどまらず、環境保護やまちの美化、国際交流、スポーツイベントなどきわめて多様な分野に広がっている。また特定地域に限定されない活動や行政委嘱型の活動だけではなく、市民による独自の活動が増えてきている。このような活動を担い、支えるために、政府や企業とは全く立場を異にする非政府民間組織(NGO)、非営利組織(NPO)が重要な役割を果たしていくこととなる。これらの団体は法人格の取得が可能になるなど社会的な役割は認識されつつあるものの、財政基盤の弱さなど様々な問題点を抱えていることから、その支援を積極的に行うとともに、行政、企業との新たなパートナーシップのあり方についても検討していく必要がある。

 大阪市において、平成10年4月に「大阪市ボランティア活動支援推進会議」が設置されたところであり、この全庁的組織を核として分野横断的に活動支援を行っていくことが必要である。

(5)景観向上の取組の推進

 美しい景観をつくることは、ポイ捨てを未然に防止するためにも有効な対策である。そのために散乱ごみ対策と合わせて、放置自転車、違法駐車、屋外広告物などの対策を総合的に実施して景観向上に取り組むことが重要である。大阪市で実施する各種の施策も、「大阪市環境美化推進本部」の枠組の中で相互に関連させ、統一性のある総合的な観点から実施すべきである。

 また平成11年に施行された都市景観条例では、一定区域内で市民等は景観形成にかかわる取り決めを行い、協定を結ぶことができることに加えて、協定が適正に運用されるよう必要な技術的支援等を行うという趣旨が盛り込まれている。市民による散乱ごみに対する取組も、こうした景観向上の施策や枠組の中で実施していくことが望ましい。

(6)市民、事業者、行政のパートナーシップに基づく新たな社会制度の導入

@市民、事業者との契約に基づくまちの美化推進制度の導入について

 米国においては、民間主導で様々な社会の問題に取り組んでいるが、その中にハイウェイなどのボランティア清掃活動に大きな成果をあげているアダプト制度(アダプトは、「養子にする」と言う意味)がある。その内容は、ハイウェイなどを美化しようとする市民団体等に対して、管理者が契約に基づいて清掃用具や作業衣などを貸し出したり、保険をかけるなどの支援を行い、「里親」となって清掃活動を行った市民団体等の名前を看板で表示するものである。その看板は市民団体等の活動に対する大きなインセンティブとなっている。

 この制度を参考にして、大阪市においても行政と市民、企業、事業者がパートナーシップに基づいてまちの美化推進を図る制度を導入していくべきである。その場合、継続的な美化推進を図るために相互に契約を交わし、必要な支援を行うための体制整備を図っていかなければならない。またインセンティブとして、清掃活動に取り組んでいる団体の名称を看板等により掲出するなどその活動を社会的に顕彰する方法を検討する必要がある。

その際には、自分たちのまちを自分たちの手で美しくしていくというコンセプトを醸成していくために、大阪版アダプト制度にふさわしい名称をつけて取り組んでいくことが望ましい。

 これまで実施してきた啓発やキャンペーン、また罰則等の規制は外部からの働きかけや圧力によるものであり、さらにデポジット制度も経済的動機付けによる働きかけであるのに対し、この制度は市民や企業の自発性や内生的な動機の醸成により進めていこうとする全く新しい考え方に基づくものである。またこの手法は、これからのまちづくりや高齢化社会に向けた新しいコミュニティづくりに適用できる普遍性を持っていることから、パートナーシップに基づく市民、事業者、行政それぞれの役割、連携の方法、さらには行政の支援のあり方などを検証し、実効性のある制度として様々な分野への導入を望みたい。

Aボランティア活動活性化のための「コミュニティ・マネー」制度の研究

 これまでボランティア活動は「自発的な意思に基づき他人や社会に貢献する行為」であり、基本的には「無償」であるとされてきた。しかし高齢者のデイケア介護などの在宅福祉サービスにおいて、サービスを受ける側と提供する側が対等な関係を保つために、ボランティア活動の実費として低額の金銭を授受するものや、介護ボランティア活動の実績時間を将来自分が介護サービスを受ける時のために積み立てる「ボランティア時間預託」制度も出現してきている。これは地域で暮らす人々がそこで起きる様々な生活問題を自らの問題と捉え、サービスを提供する側と受ける側が互いに支えあって解決していこうという考え方に基づく非営利の活動である。このような考え方を市民、事業者、行政とのパートナーシップに基づくまちの美化推進事業に導入することを研究すべきである。すなわち、清掃ボランティア活動を行った市民等はその活動の実績に応じて「コミュニティ・マネー」の支払いを受けて、地域で提供される様々なサービスを利用できるシステムであり、環境、福祉、文化などの様々な地域活動を含めた普遍性のあるシステムとして展開させることも可能である。「コミュニティ・マネー」は、例えば地域の商店街や企業の提供する品物やサービスの対価として支払ったり、行政の提供するサービスの手数料に充当するなどの活用方法がある。このような「コミュニティ・マネー」はボランティア活動の活性化を促すだけではなく、地域内の経済取引が拡大するために地域経済の活性化をもたらす二次的な効果も期待できることから、電子マネーの普及等の動向も勘案しながら、導入について研究すべきである。

Bデポジット制度の導入

 空き缶等のデポジット制度(デポジット・リファンド・システム、預り金払い戻し制度)は、散乱防止とともに容器の回収率を上げてリサイクルを推進するための制度であり、これまで日本国内では一部の地域を範囲とするローカルデポジットが試みられている。しかし地域限定でデポジット制度を実施する場合には、他地域からの持ちこみを防ぐためにシールを貼るなどの手間をかける必要があること、小売価格の値上がりにより売上の低下につながることから小売店の協力を得にくいこと、上乗せ額が低い場合は回収促進にならないことなどの問題が指摘されている。このようにローカルデポジットは、製品が全国的な流通システムで販売されている現状から本来の目的を達成することは難しいので、製品ごとに回収システムのあり方を十分検討し、全国規模で実施できるよう検討すべき課題である。

 また早稲田大学周辺の商店街や大阪の天神橋筋商店街では、空き缶等の回収促進や散乱防止を目的として、金券として使用できる「ラッキーチケット」が景品として当たる「空き缶・ペットボトル回収機」を導入して、商店街の販売促進にも効果を上げている事例もあることから、関係者が協議して実施方法等を検討し、大阪市内のモデル施設や地域を定めて、実験的な試みを検討していくことが望ましい。

Cポイ捨て等まちを汚す行為に対する規制措置の導入

 市民、事業者、大阪市が協力して、これまで述べてきた様々なまちの美化推進に取組むにしても、一部の規則を守らない者の行為がそれを阻害したり、まちの美化に取組んでいる人々の意欲を削ぐようなことがあってはならない。そのためにも、美化啓発や回収容器の設置や清掃等をきっちりと行っていくということを前提にして、ポイ捨て等まちを汚す行為に対して何らかの規制措置を設けておく必要がある。残念ながら痛みを伴わない啓発だけでは効果が望めない人々が存在することも事実であり、また自分の行為に対しては自ら責任を負わなければならないという市民社会のルールを徹底させる意味からも、ポイ捨て等まちの美観を損なう行為に対して、原状回復するための処理費用の負担や制裁金を求めたり、また教育的な効果も含めて地域の美化清掃活動に参加させるような仕組みを作ることができないか検討する必要がある。

(7)まちの美化推進に向けた新たな施策の実施と体制整備

 これまで様々な施策について検討するとともに、その有効性についても検証してきた。しかしどの地域においても大きな効果をあげることができる万能の施策があるわけではなく、それぞれの地域特性に即した施策を選択し、組み合わせて全体としてまちの美化を推進していく必要がある。そのためにも市民や事業者に対して、本審議会で検討した施策を含めてできるだけ多様なメニューを提示するとともに、それぞれの地域で最も効果があるものや取り組みやすいものを検討して選択し、主体的に活動できるようにすることが重要である。

 また市民、事業者、大阪市が主体的にそれぞれの役割を果たしていくとともに、三者が意思疎通を図って連携し、相互に協力して取組む必要がある。そのためには、市民、事業者、行政の代表者が集まって全体的な推進体制や支援体制の枠組みについて協議するための推進組織をつくるとともに、あわせて個別の活動内容についてアドバイスしたり、行政機関や事業者との調整を行って継続的に美化活動ができるように必要な支援を要請したりするなど、コーディネーターとしての機能が必要となる。このような取組は、市民活動団体が中心となって実施することが望ましいことから、できるだけ市民主導、民間主導の取組となるように配慮すべきである。

 

7 終わりに

 散乱ごみ問題は、地球環境問題や廃棄物問題と同様に、豊かな社会の歩みの中で利便性や快適性等を享受することの責任がなおざりにされてきたことの結果である。また一方、地域コミュニティのあり方や教育問題、法律問題など現代社会における様々な問題とも密接に関連しており、その解決のために決め手になるような即効性のある施策は見出せない。したがって、対象地域の特性にあった様々な施策を組み合わせて総合的、長期的に取組む必要があり、その際には、どのような対策がどの場所でどの程度効果があったのかを、期間を区切って、目に見える形で明らかにしていくことが最も重要である。そのことにより、市民や企業、事業者等が問題意識を共有することが可能になるからである。

そう言う意味でも、単に対策を検討し実施するのみではなく、その効果や問題点についてフォローアップし、次のステップにつながるように、計画的、継続的に施策を実施することが望まれる。大阪市におけるまちの美化推進施策の実施にあたって、市民、事業者のより積極的な活動を引き出すためにも、この点に十分留意されるよう付言する。


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A2自治体の情報

B1国の法令

B2国の情報

C行政関係判例

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