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大阪市公文書公開審査会第74号答申
平成10年4月15日 大公審答申第74号
大阪市教育委員会 委員長 様
大阪市公文書公開審査会 会長 庄谷 邦幸
大阪市公文書公開条例第12条に基づく不服申立てについて(答申)
<市立小中学校通学区域一覧非公開決定事件――Hiraoka>
平成9年1月21日付け大市教委第3590号をもって諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。
第1 審査会の結論
大阪市教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成8年12月19日付け大市教委第3347号により行った非公開決定を取り消し、公開決定に変更すべきである。
第2 異議申立てに至る経過
1 公開請求
異議申立人は、平成8年12月5日、大阪市公文書公開条例(以下「条例」という。)第8条に基づき、実施機関に対し、「大阪市内の全小、中学校の通学区域(住所により)を表す資料」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 非公開決定
実施機関は、本件請求に係る文書を「平成8年度通学区域一覧の送付について」(以下「本件文書」という。)と特定した上で、公開しない理由を次のとおり付して、条例第9条第1項に基づき、平成8年12月19日付け大市教委第3347号により非公開決定(以下「本件決定」という。)を行った。
記
条例第6条第8号に該当
(説明)
本件文書を公開すると、いわゆる越境入学、越境通学につながり、本市の行っている適正な就学事務の支障となるおそれがある。
また、特定の地域を避けて、住所地を設定しようとする資料として利用されるおそれもあり、結果として当該通学区域の住民に対する差別意識を助長することとなり、学校指定のための資料という目的を大きく逸脱することとなる。
以上のことから、本市就学事務の公正若しくは円滑な執行に支障が生じると認められる。
3 異議申立て
異議申立人は、平成9年1月7日、本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法第6条第1号に基づき異議申立てを行った。
第3 実施機関の主張
実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
市町村教育委員会は、学校教育法施行令(昭和28年政令第340号。以下「学校令」という。)第1条により、当該市町村の区域内に住所を有する就学予定者については、住民基本台帳に基づき学齢簿を編製することとなっている。
また、学校令第5条において、就学予定者の保護者に対し入学期日を通知するとともに、当該市町村の設置する小学校又は中学校が2校以上ある場合においては、就学予定者の就学すべき小学校又は中学校を指定することが規定されている。
教育委員会では、学校の指定にあたってあらかじめ学校ごとの区域を設定しており、この設定した区域が通学区域といわれるものである。
本市においては、大阪市教育委員会の事務の委任等に関する規則(昭和28年大阪市教育委員会規則第9号)第3条第4号により、小学校、中学校の通学区域の設定並びに変更に関する事務は、区長に委任されている。
本市教育委員会は、小学校、中学校の通学区域について区長から報告を受け、毎年、大阪市全域の「通学区域一覧」を作成するとともに、区長に送付し、各区にあっては、これに照らして住所地に基づく学校指定を行っている。
本件文書を公開すると、知り得た通学区域をもとに転居することにより学校を選択することが可能になるが、一方で、経済的理由等により居住地を変更することができない者は、学校を選択することができず、就学条件の平等性の確保という適正就学の目的を損なうこととなる。
いわゆる「越境入学」「越境通学」が教育の機会均等、人間尊重という教育本来の目標を歪めることから、本市教育委員会では昭和43年に「越境入学防止対策基本方針(昭和43年11月15日決定)」を策定し、越境者への勧奨指導を行う他、学校の施設、設備面の整備や教職員の人事交流等を進め、学校間格差の解消を図ってきたところである。
本件文書をもとに居住地を変え、希望する学校へ就学することは、必ずしも「越境入学」とはいえないが、特定の学校の通学区域内への転居が集中するという現象が起きると、それぞれの通学区域の居住実態等を勘案し、計画立案している学校の施設整備、学級編成等に影響を及ぼし、適正な学校規模と教育内容の保障が困難になると考えられる。
また、同じ大阪市立の学校にもかかわらず「学校間格差」を生ぜしめることにもなり、教育内容の維持向上を図るうえで好ましくない影響を及ぼし、教育の機会均等、人間尊重という教育本来の目標を歪めるおそれがある。
さらに、本件文書は、本来、住所地による学校指定のための資料であるが、公開すると特定の学校、地域を避けるための資料として利用されるおそれがあり、当該通学区域の住民に対する差別意識を助長することにもなり、本来の目的を大きく逸脱することとなる。
以上の理由により、本件文書を公開すると、本市の就学事務の公正かつ円滑な執行に支障が生じると認められる。
第4 異議申立人の主張
異議申立人の主張はおおむね次のとおりである。
学校の通学区域一覧は、多くの自治体で条例に定めている種類の文書であり、非公開にする根拠はない。
大阪府内でもほとんどの自治体が条例、規則等に定めており、一般に閲覧や複写ができる資料である。大阪市だけが、この情報を公開することで著しく執務に支障が出るとは考えられない。
「越境入学、越境通学」については、それが発生したときに罰すればよいことであり、当該文書非公開の理由にはならない。
「特定の地域を避けて住所地を設定しようとする資料となるおそれ」については、通学区域の公開如何にかかわらず存在するものであり、通学区域の公表により著しくその可能性が高まるものではない。よって文書非公開の根拠にはならない。
「学校間格差を生ぜしめる」ということについては、教育の質(教育内容、教師の質、設備等)の格差はなくさなければならないが、このことと通学区域の公開とは関係がない。
学校間の生徒数の格差は現状でもかなり見られるが、これは通学区域の線引の問題であり、通学区域の公開により住居の移転が起こり生徒数が現状から大きく変わるとは考えられない。
第5 審査会の判断
1 基本的な考え方
条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に公文書の公開を求める具体的な権利を保障することによって、市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ることにある。したがって、条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から行われなければならない。
しかしながら、条例はすべての公文書の公開を義務づけているわけではなく、第6条本文において、同条各号のいずれかに該当する情報が記載されている公文書については、実施機関は公開しないことができる旨定めている。もちろん、この第6条各号が定める、公開しないことができる文書のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、各号の定めの趣旨を十分に考慮しつつ、条例の上記理念に照らし、かつ公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から、厳正になされなければならないことはいうまでもない。
2 対象文書について
通学区域の設定については、各区長から実施機関が報告を受け、それをもとに実施機関において本市全域の通学区域一覧を作成しているところであって、本件文書は、当該通学区域一覧を各区長に送付する際に作成された決裁文書である。
3 争点
実施機関は、本件文書について、条例第6条第8号を理由に本件決定を行ったのに対して、異議申立人は、この決定を取り消し、本件文書を全面的に公開すべきであるとして争っている。
したがって、本件異議申立てにおける争点は、本件文書の条例第6条第8号の該当性の問題である。
4 条例第6条第8号該当性について
条例第6条第8号は、本市の行う事務事業の目的を達成し、公正、円滑な執行を確保する趣旨から、「本市の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、入札、交渉、争訟、許可、認可、人事等の事務事業に関する情報であって、公開することにより当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的を損ない、又はこれらの事務事業の公正若しくは円滑な執行に支障が生じると認められるもの」は、公開しないことができると定めている。
ところで、通学区域の設定及び変更については、大阪市教育委員会の事務の委任等に関する規則第3条第4号の規定により、教育委員会から区長に委任されており、区長が通学区域の新設及び変更を決定することになるが、その際、区長は、事実上その内容を告示してきており、区庁舎前の公示場所に告示文書が掲示されていることが認められる。そして、これら告示文書は、要望があれば情報提供されていることが認められるが、そういった告示文書をたどっていけば通学区域を把握することが可能であるといえる。
確かに、通学区域の公開によって越境入通学や差別意識の助長といった支障が生じることを、実施機関が懸念するのは理解できなくもないが、条例の原則公開の趣旨に鑑みれば、通学区域を非公開とすることで対処するのではなく、実施機関が既に策定し実施している越境入学防止対策基本方針等、別途の諸施策によって対処することが適当である。
したがって、本件文書を公開しても、実施機関が主張するような支障が生じるとは考えられず、条例第6条第8号には該当しない。
5 結論
以上により、第1記載のとおり、判断する。
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