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地方分権推進委員会第3次勧告−分権型社会の創造−
平成9年9月2日 地方分権推進委員会
目 次
はじめに
第1章 地方事務官制度の見直し
I 社会保険関係事務について
II 職業安定関係事務について
第2章 駐留軍用地特別措置法に基づく土地等の使用・収用に関する事務及び駐留軍等労務者の労務管理等に関する事務の区分
I 駐留軍用地特別措置法に基づく土地等の使用・収用に関する事務
II 駐留軍等労務者の労務管理等に関する事務
はじめに
当委員会は、第1次勧告において、機関委任事務制度を廃止することとした。従前の機関委任事務の取扱いに際しては、第1次・第2次勧告を通じて、事務そのものを存続する必要性についてまず検討し、その必要がなくなったものは廃止することとするとともに、例外的に法定受託事務とするものを除き、原則として自治事務と区分することとし、個々の事務についてその区分を明らかにしてきた。また、国と地方公共団体の役割分担に関する原則からみて国の役割に属し、かつ、その事務の性格や事務処理の現状からみて国が直接執行すべき事務については、この際国が直接執行すべきものと勧告したところである。
しかしながら、一部の機関委任事務については、第2次勧告においてもなお引き続き検討することとしたところであるが、このたびの勧告は、このうち、地方事務官制度に関連する事務並びに駐留軍用地特別措置法に基づく土地の使用・収用に関する事務及び駐留軍等労務者の労務管理等に関する事務の取扱いについて勧告するものである。
第1章 地方事務官制度の見直し
地方事務官制度は、その経緯及び法文の規定からも明らかなとおり、日本国憲法下の地方自治制度において都道府県が完全自治体化したことに伴う暫定的な制度である。この地方事務官制度は、任命権と職務上の指揮監督権が、国(主務大臣)と都道府県知事に分かれて属するという変則的な制度となっていること、知事の指揮監督権が形骸化し責任の所在も不明確となるといった問題があることから、これまでも様々な提言が行われてきたものの根本的な解決をみるに至らなかったものである。
今回、機関委任事務制度の廃止に伴い、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度は存続し得ないこととなるため、国と地方公共団体の新たな関係にふさわしい仕組みとなるよう、従前の機関委任事務の取扱い及び地方事務官制度について、以下のとおり整理することとする。
なお、地方事務官制度は、暫定的な制度とはいえ、過去50年にわたって継続してきたことに鑑み、これを廃止するに当たり、職員の処遇等について十分な配慮が必要である。
I 社会保険関係事務について
1 従前の機関委任事務の取扱い
地方事務官が従事することとされている地方自治法施行規程第69条第2号に規定する事務(健康保険法、厚生年金保険法、船員保険法、厚生保険特別会計法及び船員保険特別会計法並びに国民年金法及び国民年金特別会計法の施行に関する事務(児童手当法の規定による拠出金の徴収に係る事務を含む。))は、国が保険者として経営責任を負い、財政収支の均衡確保のために不断の経営努力を行うことが不可欠であること、また全国規模の事業体として効率的な事業運営を確保するためには一体的な事務処理による運営が要請されていること等から、国の直接執行事務とする。
関連する事務の区分等
上記の機関委任事務に関連する都道府県知事の機関委任事務については、次のとおり整理するものとする。
社会保険診療報酬支払基金法に基づく、審査委員会の委員(学識経験者)の推薦(14条3項)、診療担当者に対する出頭・説明・報告・書類提出の承認(14条の3第1項)、診療報酬の支払の一時差止の承認(14条の4)の事務は、国の直接執行事務とする。
国民健康保険法に基づく、保険医療機関、保険薬局、保険医、保険薬剤師及び特定承認保険医療機関(以下、「保険医療機関等」という。)に対する都道府県知事の指導監査事務(46条、114条)は、都道府県の事務とし、国と都道府県が保険医療機関等の指定等や指導監査に当たり相互に必要な情報を交換し、連携して事務を処理する観点から、保険医療機関等の指定等の取消を都道府県が厚生大臣に求めることができる旨等相互の連絡調整に関する規定を設けることとする。
社会保険労務士法に基づく、開業社会保険労務士がその事務所を2以上設ける場合の許可(18条)、開業社会保険労務士に対する報告徴収・立入検査(24条1項)、社会保険労務士会の設立認可、会則の変更認可、報告受理、総会の決議の取消命令・役員の解任命令(25条の6第1項、25条の7第2項、25条の12、25条の20)、社会保険労務士会に対する報告徴収・業務改善勧告・検査(25条の21第1項)の事務は、国の直接執行事務とする。
農業者年金基金法に基づく、農業者年金事業(19条1項1号)及び福祉施設の設置・運営(相談サービス事業)(19条2項)に係る市区町村及び農協の受託業務の指導監査事務(93条1項)は、国の直接執行事務とする。
なお、農林水産省所管の農業者年金基金業務の一部の受託者からの報告徴収、立入検査(94条)は、都道府県の法定受託事務である(メルクマール(7))。(第2次勧告で整理済み)
社会保険医療協議会法において都道府県に置くこととされている地方社会保険医療協議会は、これを国の組織として位置づけることとして廃止し、併せてこれらに関連する機関委任事務(1条2項、2条2項、3条、5条、6条、7条、8条)は廃止する。
国民年金法に基づく市町村長の機関委任事務
市町村における社会保険関係事務である国民年金法に基づく市町村長の機関委任事務については、I 市町村における国民年金保険料の徴収手続の実態が印紙による収納手続ではなくなっているにもかかわらず、形式的には依然として印紙による収納手続が維持されていること、II 現況届に伴う受給者の生存証明は、受給者である高齢者本人にとって負担であるばかりか、市町村の事務量も大きいこと、III 被保険者からの資格取得の届出が市町村の窓口でなされた後、社会保険事務所への報告、社会保険事務所が作成した年金手帳の受領、受領した年金手帳の被保険者への交付など市町村における年金手帳の交付に伴う事務手続が繁雑なこと、さらに IV 法令上の位置づけが不明確なまま、未適用者に対するいわゆる適用促進事務、現年度保険料の納付案内書の送付の事務等が行われている等の問題もあり、市町村の定員管理2,000人)、平成11年度に行われる予定の年金制度改革の際に、個人情報保護及び市町村事務の簡素効率化に十分配慮し、次のとおり見直すこととする。
現在市町村において行われている国民年金印紙の検認の事務及びこれに伴う現年度保険料の納付案内書の送付の事務は廃止する。
国民年金手帳及び年金証書は国が直接被保険者に交付することとし、市町村の交付事務は廃止する。
年金受給者の現況届に係る市町村の生存証明事務は廃止する。
現在市町村において行われている未適用者に対するいわゆる適用促進事務は、国における20歳到達者を把握するための仕組みの検討を踏まえ、廃止する。
被保険者、受給権者等から資格の取得及び喪失並びに種別の変更等、任意脱退、任意加入、老齢基礎年金等を受ける権利の裁定、障害基礎年金の額の改定、保険料の免除等に関する届出、承認の申請、申出、請求、申請等を受理し、これらに係る事実を審査する事務(国民年金法12条、105条、同法施行令2条)等は、市町村の法定受託事務とする。(メルクマール(7))
なお、これらの事務については、できる限り市町村の事務負担を軽減する方向で見直すこととする。
健康保険法及びこれに基づく政令の定めるところにより指定する地域に居住する日雇特例被保険者に係る日雇特例被保険者手帳の交付、受給資格者票の発行等に関する事務(69条の10、令4条)は、市町村の法定受託事務とする。(メルクマール(7))
2 地方事務官制度の廃止
地方事務官制度は廃止し、地方自治法施行規程第69条第2号に規定する事務に従事する職員は厚生事務官とする。
社会保険事務所は、厚生省の地方支分部局とする。
II 職業安定関係事務について
1 従前の機関委任事務の取扱い
地方事務官が従事することとされている地方自治法施行規程第69条第3号に規定する事務(職業安定法、雇用保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律及び労働保険特別会計法の施行に関する事務(雇用保険法施行令第1条第2号に掲げる事務を除く。))は、国の地方出先機関である公共職業安定所の指揮監督に関する事務であり国の組織の内部管理事務であるため、国の直接執行事務とする。
なお、国及び地方公共団体の経費の支出に係る職業安定法第55条の規定は廃止する。
関連する事務の区分等
上記の機関委任事務に関連する都道府県知事の機関委任事務については、次のとおり整理するものとする。なお、市町村長の機関委任事務である職業安定法に基づく、求人求職の申込の取次、求人求職者の身元調査等に関する事務(11条)については、市町村の法定受託事務(メルクマール(7))とし、当該事務は国が指定する地域において行うものとする。
看護婦等の人材の確保の促進に関する法律に基づく、都道府県ナースセンターの指定等に関する事務(14条、17条、18条、19条)は、都道府県の自治事務とする。(第2次勧告で整理済み)
介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律に基づく、改善計画が適当である旨の認定等に関する事務(8条、9条、12条)は、都道府県の自治事務とする。(第2次勧告で整理済み)
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に基づく、都道府県高年齢者雇用安定センターの指定等に関する事務(40条、42条、43条、44条、令3条)は、国の直接執行事務とする。
障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく、市町村等の任命権者が作成する身体障害者等の採用に関する計画及びその実施状況通報の受理、その適正実施勧告等に関する事務(12条、13条、17条、令4条、令6条)は、国の直接執行事務とする。
中小企業における労働力の確保のための雇用管理の改善の促進に関する法律に基づく、改善計画の認定に関する事務(4条、5条)、認定を受けた事業協同組合等からの改善事業の実施状況についての報告徴収(17条)は都道府県の自治事務とし、改善計画に事業協同組合等が行う労働者募集に関する事項(4条2項5号)を記載する場合においては、都道府県は、当該改善計画の認定に当たり、当該事項について国と事前協議(合意を要する)を行うものとする。(第2次勧告で整理済み)
同法に基づく改善計画の認定を受けた事業協同組合等が行う労働者の募集時期等に関する届出の受理等の事務(13条)は、国の直接執行事務とする。
関連する規定の整備
国と地方公共団体の雇用に関する施策が地域において密接な関連の下に円滑かつ効果的に実施されるよう、次のとおり法律上の規定を整備するものとする。
雇用対策法において、国と地方公共団体の雇用施策に関する役割分担とその位置付けを明確にし、地方公共団体がその区域における雇用機会の着実な増大及び地域間における就業機会等の不均衡の是正を図るために必要な施策を実施する旨の規定を置くこととする。
雇用対策法において、国と地方公共団体との連携と相互の情報提供が円滑かつ効果的に行われるよう、国と地方公共団体は、公共職業安定所の行う職業紹介の事業と地方公共団体が講ずる雇用に関する施策について密接な関連の下に相互に連絡・協力するとともに、国が有する雇用に関する情報と地方公共団体が有する地域の産業経済等に関する情報とを相互に提供する旨の規定を置くこととする。
2 地方事務官制度の廃止
地方事務官制度は廃止し、地方自治法施行規程第69条第3号に規定する事務に従事する職員は労働事務官とする。
第2章 駐留軍用地特別措置法に基づく土地等の使用・収用に関する事務及び駐留軍等労務者の労務管理等に関する事務の区分
駐留軍用地特別措置法に基づく土地等の使用・収用に関する事務及び駐留軍等労務者の労務管理等に関する事務については、日米安全保障条約等に基づき我が国が負っている義務の履行に直接関係するとともに、関係地方公共団体にとっても影響の大きい事務であることに鑑み、関係省庁とのグループ・ヒアリングに加え、関係地方公共団体からもヒアリングを行うなど、特に慎重に調査審議を行ってきたところであるが、検討の結果、以下のとおりとする。
I 駐留軍用地特別措置法に基づく土地等の使用・収用に関する事務
駐留軍用地特別措置法(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法)に基づく土地等の使用・収用に関する現行の機関委任事務は、日米安全保障条約等に基づき我が国が負っている土地等を提供する義務を履行するため、国が提供しようとする土地等の使用・収用の権原を取得するための手続の一部である。
機関委任事務制度は、第1次勧告でも述べたとおり、知事・市町村長に地方公共団体の代表者としての役割と国の地方行政機関としての役割との二重の役割を負わせるものであるが、これらの事務は、国が国際的に負っている安全保障上の義務の履行に直接関わるものであるとともに地域社会や住民生活にとっても大きな影響をもたらすものでもあることから、これを引き続き地方公共団体の担う事務とすることは、機関委任事務制度と同様に、知事や市町村長の立場を困難なものとするおそれが大きい。むしろ、国と地方公共団体との役割分担を明確にする観点からすれば、国は国が国際的に負っている安全保障上の義務の履行に全責任を負い、知事や市町村長は地方公共団体の代表者としての役割に徹することとすべきである。
したがって、駐留軍用地特別措置法に基づく現行の機関委任事務は、以下のとおり整理することとする。
土地・物件調書への署名押印の代理、裁決申請書等の公告・縦覧、土地等を引き渡すべき者等がその義務を履行しないとき等における代執行(駐留軍用地特別措置法14条により適用される土地収用法36条4項及び5項、42条2項、102条の2第2項)等の事務は、国の直接執行事務とする。
防衛施設局長の申請に基づく使用・収用の裁決等(駐留軍用地特別措置法14条により適用される土地収用法47条、47条の2、48条、49条)の事務は、土地収用に関する独立の専門機関として都道府県に設置され、地方の実情に通じた委員によって構成される収用委員会により処理されることが適当であることから、都道府県の法定受託事務(メルクマール(7))とする。
ただし、この場合において、公共用地の取得に関する特別措置法の仕組みに準じて、収用委員会による緊急裁決の制度を設けるとともに、緊急裁決期間を経過してもなお裁決が行われないときには、防衛施設局長の請求により、内閣総理大臣が収用委員会に代わって裁決を行うことができるものとする。また、収用委員会が却下の裁決を行った場合には、当該裁決の取消を求める審査請求に対する裁決と併せて、防衛施設局長の請求により、内閣総理大臣が収用委員会に代わって使用・収用の裁決を行うことができるものとする。
なお、内閣総理大臣が収用委員会に代わって裁決を行う場合には、公共用地の取得に関する特別措置法に定める手続に準じて、補償金額の算定について審議するための諮問機関の議を経なければならないものとする。
II 駐留軍等労務者の労務管理等に関する事務
防衛庁設置法に基づく駐留軍等労務者の雇入れ、提供、解雇及び労務管理、給与の支給並びに福利厚生に関する事務(防衛庁設置法5条35号、36号、37号)並びに駐留軍関係離職者等に対する特別給付金の支給に関する事務(駐留軍関係離職者等臨時措置法15条)は、日米安全保障条約等に基づき我が国が負っている労務提供義務を果たすための事務であることから、国と地方公共団体との役割分担を明確にする観点から、国の直接執行事務とする。
この場合において、第2次勧告第7章においても示したとおり、国は、新たに直接執行することとなる事務を処理するための事務執行体制の整備など所要の措置を講ずる必要がある。また、関係都県は、暫定的な人事交流等の手法により、事務処理主体の変更を円滑に進めるための必要な協力を行うとともに、現在これらの事務に従事している職員の他部門への配置転換を進め、全体として、適正な定員管理に努める必要がある。
国及び関係地方公共団体は、駐留軍関係離職者の雇用対策について、引き続き相互に協力して対応するものとする。
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