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今後の地方自治制度のあり方に関する答申
平成15年11月13日 地 方 制 度 調 査 会
平成15年11月13日
内閣総理大臣 小泉 純一郎 殿
地方制度調査会 会 長 諸 井 虔
今後の地方自治制度のあり方に関する答申について当調査会は、今後の地方自治制度のあり方について検討を重ねました結果、別紙のとおり結論を得ましたので、答申します。
今後の地方自治制度のあり方に関する答申
目 次
前 文
第1 基礎自治体のあり方
第2 大都市のあり方
第3 広域自治体のあり方
前 文
我が国の地方自治制度は、平成12
年の地方分権一括法の施行により、そのありようを一新し、次なる新たなステージを迎えようとしている。市町村は、基礎自治体として地域において包括的な役割を果たしていくことがこれまで以上に期待されており、都道府県は、経済社会活動が広域化、グローバル化する中で、広域自治体としてその自立的発展のために戦略的な役割を果たすべく変容していくことが期待されている。
また、地域においては、コミュニティ組織、NPO等のさまざまな団体による活動が活発に展開されており、地方公共団体は、これらの動きと呼応して新しい協働の仕組みを構築することが求められている。
基礎自治体と広域自治体が21 世紀においてそれぞれの役割を十分に果たしていく上で、どのような制度に変革していくべきかが問われている。
当調査会は、平成13 年11 月19
日に内閣総理大臣からの「社会経済情勢の変化に対応した地方行財政制度の構造改革」についての諮問を受け、現地での関係者との意見交換会なども行って調査審議を重ねてきたが、当調査会設置以来7回の総会と34
回の専門小委員会にわたる議論の結果として、「基礎自治体のあり方」、「大都市のあり方」、「広域自治体のあり方」について、今回一定の結論を得たので、ここに答申する。
なお、憲法第8章の地方自治の本旨の内容を具体化し、分権型社会を制度的にも確固たるものにすることが、さらなる分権改革に託されるべき重要な課題となるものである。このような課題については、地方自治に関する基本的な法制のあり方を含め、当調査会としても引き続き検討していくこととしたい。
第1 基礎自治体のあり方
1 地方分権時代の基礎自治体の構築
(1) 地方分権時代の基礎自治体
機関委任事務制度の廃止等により国と地方との役割分担を明確にした地方分権一括法の施行で、我が国における地方分権改革は確かな一歩を踏み出した。
今後の我が国における行政は、国と地方の役割分担に係る「補完性の原理」の考え方に基づき、「基礎自治体優先の原則」をこれまで以上に実現していくことが必要である。
このためには、今後の基礎自治体は、住民に最も身近な総合的な行政主体として、これまで以上に自立性の高い行政主体となることが必要であり、これにふさわしい十分な権限と財政基盤を有し、高度化する行政事務に的確に対処できる専門的な職種を含む職員集団を有するものとする必要がある。これを踏まえると、一般的には、基礎自治体の規模・能力はさらに充実強化することが望ましい。
基礎自治体に対しては引き続き国として積極的な事務や権限の移譲を進めるべきである。都道府県も、条例による事務処理の特例の活用等により、規模・能力に応じて事務や権限を移譲するなど、可能な限り基礎自治体が住民に身近な事務を処理することができるようにしていくべきであり、少なくとも、福祉や教育、まちづくりなど住民に身近な事務については、原則として基礎自治体で処理できる体制を構築する必要がある。その結果、国民がこのような地方分権の担い手として十分な経営基盤を有する基礎自治体の住民となり、住民の自己実現を可能とするような豊かな地域社会を形成していくことができるようにすることが望ましい。
(2) 住民自治の充実
地方分権改革が目指すべき分権型社会においては、地域において自己決定と自己責任の原則が実現されるという観点から、団体自治ばかりではなく、住民自治が重視されなければならない。
基礎自治体は、その自主性を高めるため一般的に規模が大きくなることから、後述する地域自治組織を設置することができる途を開くなどさまざまな方策を検討して住民自治の充実を図る必要がある。また、地域における住民サービスを担うのは行政のみではないということが重要な視点であり、住民や、重要なパートナーとしてのコミュニティ組織、NPOその他民間セクターとも協働し、相互に連携して新しい公共空間を形成していくことを目指すべきである。
2 市町村をめぐる状況
(1) 市町村の役割の変化
我が国の近代的な市町村制度は、明治初期に、地域の公共事務及び法令に基づく事務の処理のため、以前から存在していたいわゆる「自然村」を基盤として、「行政村」を編成したことに由来する。その後、小学校事務の処理等のため300
戸から500戸を標準として「明治の大合併」が行われ、中学校事務の処理のため人口8千以上を標準として「昭和の大合併」が行われた。
今後、基礎自治体は、一層厳しさを増す環境、住民ニーズの多様化の中で、住民との協働の下に、質的にも高度化し、量的にも増大する事務を適切かつ効率的に処理することが求められている。
(2) 市町村を取り巻く厳しい財政事情
近年我が国の財政は、税収が落ち込む中で、国・地方ともに巨額の債務残高を有するなど極めて厳しい状況にある。地方においても毎年巨額の財源不足を生じており、その借入金残高は平成15
年度末で約199 兆円にのぼると見込まれている。
このような状況を踏まえると、今後地方財政全般にわたり歳出の抑制が求められ、各地方公共団体は、コスト意識を持って事務・事業に取り組み、地域における郵便局との連携をはじめ、多様なサービスの提供方法の検討など、より一層効果的かつ効率的な行財政運営を行うことが必要となる。こうした観点から、市町村の規模等に対応して行われてきた各種の財政措置等についても見直しを図ることが避けられない状況にある。
(3) 少子高齢化の進行
今後、国全体の人口が2006 年をピークに減少する中で、全国的に高齢化がさらに進んだ地域社会が出現するものと見込まれる。また、このまま推移すると、2030
年には人口5千未満の市町村が現在の約700 団体から1,200 団体近くに増加すると予想されている。
少子高齢化の進行への対応は、我が国の行政全般に関わる大きな課題であるが、特に小規模な市町村に与える影響は深刻であり、これまでのような行財政基盤を維持できない状態に陥ることが予想される。これにより、地方自治法第1条の2第1項に規定する住民福祉の増進を図るという基本的役割を担うことが困難となることを想定せざるを得ない。
(4) 市町村合併の位置づけ
このような状況の中で、今後の基礎自治体のあり方を展望すると、市町村の規模・能力の拡充を図る市町村合併を引き続き推進していくべきである。
現在全国の市町村の約半数において市町村の合併の特例に関する法律(以下「合併特例法」という。)に基づく法定協議会が設置されており、当調査会としても市町村合併に向けての関係者の真摯な努力に敬意を表するとともに、大きな期待を寄せている。昭和40
年の制定以来、10 年毎に延長されてきた合併特例法の期限は平成17 年3月31
日までとされており、それまでにできる限り成果があがることが必要である。特に住民に対して合併による新しいまちづくりの可能性等合併に関するさまざまな具体的な情報を提供することが必要であり、住民自身が地域の基本的な課題として合併について真剣に考えることが重要である。国及び都道府県としても、さらにさまざまな方策を展開し、自主的合併が進展するように取組を進めていくことが肝要である。
現在進められている市町村合併は、「昭和の大合併」後の生活圏や経済圏の拡大等をはじめとする経済社会の変貌、著しい少子高齢化の進行等の状況も踏まえつつ、地方分権改革により明らかにされた地域において包括的な役割を担うにふさわしい行財政基盤を有する基礎自治体を形成するために、市町村を再編成するものと位置づけることができる。
また、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全等の機能を維持するため、自治体経営の単位を再編成し、都市と農山漁村が共生する新しい基礎自治体を形成する動きともとらえることができる。
3 合併特例法期限到来後における分権の担い手としての基礎自治体
(1) 平成17 年4月以降の合併推進の手法
@ 現行の合併特例法の失効(平成17 年3月31
日)後は、新しい法律を制定し、一定期間さらに自主的な合併を促すこととする必要がある。この法律は、合併に関する障害を除去するための特例を中心に定め、現行法における合併特例債等のような財政支援措置はとらないこととすべきである。
なお、現行の合併特例法は延長しないことを前提に、平成17 年3月31 日までに関係市町村が当該市町村議会の議決を経て都道府県知事への合併の申請を終え、平成18
年3月31日までに合併したものについては、合併特例法の規定を引き続き適用する旨の経過規定を置くことが適当である。
A 新法においては、自主的な合併を推進するため、必要に応じて都道府県が市町村合併に関する審議会等の意見を踏まえて市町村合併に関する構想を策定することとすべきである。
上記の構想は、現行の合併特例法の下で合併に至らなかったが、基礎自治体の規模・能力の充実を図るため、なお合併を行うことが期待される市町村を対象とすべきである。具体的には、生活圏域を踏まえた行政区域の形成を図るための合併、指定都市、中核市、特例市等を目指す合併、小規模な市町村に係る合併等がこの構想に定められるものとすべきである。
なお、都道府県が構想を策定するに当たっての小規模な市町村としては、おおむね人口1万未満を目安とすることとするが、地理的条件や人口密度、経済事情のほか、現行合併特例法の下で合併を行った経緯についても考慮することが必要である。
B 都道府県知事は構想に基づき、合併協議会の設置や合併に関する勧告、合併に取り組む市町村間のさまざまな合意形成に関するあっせん等により自主的な合併を進めることとすべきである。
なお、現行の合併特例法においても、合併の是非を含め合併に関するさまざまな協議を行う場である合併協議会の設置について、一定の場合に市町村長の請求や有権者の6分の1以上の署名による請求によって住民投票を行うこととされている。このような場合と同様、都道府県知事が合併協議会の設置を勧告したとき、一定の場合には市町村長が合併協議会の設置について議会に付議するか、あるいは住民投票を行うこととする制度を設けることを検討する必要がある。
(2) 市町村合併に関連する多様な方策
@ 合併後の基礎自治体における地域自治組織制度の活用
合併後、総じて規模が大きくなる基礎自治体内において住民自治を強化する観点や、住民に身近なところで住民に身近な事務を住民の意向を踏まえつつ効果的に処理するという観点から、基礎自治体の事務のうち地域共同的な事務等を処理するため、下記4(1)の地域自治組織(仮称。以下同じ。)の制度を活用することが考えられる。
なお、合併に際して地域自治組織を活用するときは、合併後の一定期間、下記4(2)Aの法人格を有する地域自治組織を旧市町村単位に設置することができる等の特例を設けることが適当である。
この制度を活用することにより、合併後の基礎自治体は、合併前の旧市町村のまとまりも活かした包括的な基礎自治体ともいうべき形態をとることが可能となる。併せて、地域自治組織に旧市町村の名称を冠することによって、合併前の名称を残すことも可能となる。
市町村は、前述のとおり、その自主的な判断により、基礎自治体内の地域自治組織を設置できることとするが、都道府県知事も合併に際して、一定の場合に小規模な市町村等を対象として、その市町村を単位とする地域自治組織を設置することを勧告することができるものとすべきである。
A 合併困難な市町村に対する特別の方策
ア 市町村合併については、地域の特性等を踏まえた上で推進していく必要があるが、例えば自らは他の市町村との合併を希望していてもさまざまな事情により合併協議が整わず、都道府県知事が上記の構想に位置づけて合併に関するあっせん等の調整を行ってもなお合併に至らないような事態が生じることがあり得る。
このような事態において、市町村が基礎自治体として必要な経営基盤を有しないという自らの判断により合併を求めた場合に、適正な住民サービス確保の観点から看過し得ないと認めるときは、都道府県が関わる手続によって市町村の合併を行う新たな仕組みを引き続き検討していく必要がある。
イ 合併に関する新たな法律の下でも当面合併に至ることが客観的に困難である市町村に対して、合併の進捗状況や市町村の具体的ニーズを踏まえ、基礎自治体のみによって構成される広域連合制度の充実等の広域連携の方策により対応することについて検討を進める必要がある。
ウ また、そのような状況にある市町村については、組織機構を簡素化した上で、法令による義務づけのない自治事務は一般的に処理するが、通常の基礎自治体に法令上義務づけられた事務については窓口サービス等その一部のみを処理し、都道府県にそれ以外の事務の処理を義務づける特例的団体の制度の導入についても引き続き検討する必要がある。この場合において、都道府県は当該事務を自ら処理することとするほか、近隣の基礎自治体に委託すること等も考えられる。
4 基礎自治体における住民自治充実や行政と住民との協働推進のための新しい仕組み
(1) 地域自治組織の制度化
基礎自治体には、その事務を適切かつ効率的に処理するとともに、住民に身近なところで住民に身近な事務を住民の意向を踏まえつつ効果的に処理するという観点が重要である。
また、本格的な少子高齢社会が到来しつつある今日、安全で住みやすい快適な地域づくりに資する地域のセーフティネットの構築が喫緊の課題となっている。このため、行政と住民が相互に連携し、ともに担い手となって地域の潜在力を十分に発揮する仕組みをつくっていくことも、これからの基礎自治体に求められる重要な機能のひとつである。
こうしたことから、基礎自治体内の一定の区域を単位とし、住民自治の強化や行政と住民との協働の推進などを目的とする組織として、地域自治組織を基礎自治体の判断によって設置できることとすべきである。
地域自治組織のタイプとしては、当調査会の「今後の地方自治制度のあり方についての中間報告」(平成15 年4月30
日)で示したように、a)行政区的なタイプ(法人格を有しない。)とb)特別地方公共団体とするタイプ(法人格を有する。)が考えら
れるが、一般制度としては、基礎自治体としての一体性を損なうことのないようにするということにも配慮してa)行政区的なタイプを導入すべきである。ただし、市町村合併に際しては、合併前の旧市町村が果たしてきた役割を踏まえ、合併後の一定期間、従前のまとまりにも特に配慮すべき事情がある場合には、合併前の旧市町村単位にb)特別地方公共団体とするタイプを設置できることとすることが適当である。
なお、地域の状況がさまざまであることから、法律で定める事項は最小限にとどめ、地域の自主性を尊重し、地域において活用しやすいものとなるような制度とする必要がある。
(2) 地域自治組織の仕組み
地域自治組織は、区域内に住所を有する者が当然にその構成員となるものとし、具体的な仕組みは以下のとおりとすることが考えられる。
@ 一般制度としての地域自治組織の仕組み
ア 基本的な機能と組織
一般制度としての地域自治組織は、住民に身近なところで住民に身近な基礎自治体の事務を処理する機能と住民の意向を反映させる機能、さらに行政と住民や地域の諸団体等が協働して担う地域づくりの場としての機能を有するものとし、基礎自治体の一部として事務を分掌するものとする。
地域自治組織の機関として、地域協議会(仮称。以下同じ。)及び地域自治組織の長を置くこととする。また、地域自治組織には事務所を置き、支所、出張所的な機能と地域協議会の庶務を処理する機能を担わせることとする。
なお、区域をはじめ各地域自治組織の基本的な事項は、基礎自治体の条例で定めることとするが、市町村合併に際して地域自治組織を設置する場合は、条例に代えて、あらかじめ合併協議によって定めることができることとする。
イ 地域協議会
(ア) 役割
地域協議会は、住民に基盤を置く機関として、住民及び地域に根ざした諸団体等の主体的な参加を求めつつ、多様な意見の調整を行い、協働の活動の要となる。また、地域協議会は、地域自治組織の区域に係る基礎自治体の事務に関し、基礎自治体の長その他の機関及び地域自治組織の長の諮問に応じて審議し、又は必要と認める事項につき、それらの機関に建議することができることとする。
なお、基礎自治体の判断により、地域自治組織の区域に係る基礎自治体の予算、基本構想、重要な施設の設置及び廃止等一定の事項については、基礎自治体の長に必ず地域協議会の意見を聴くよう求めることが考えられる。
(イ) 構成員の選任等
地域協議会の構成員は、基礎自治体の長が選任する。
(ア)で述べた地域協議会の役割から、構成員の選任に当たっては、自治会、町内会、PTA、各種団体等地域を基盤とする多様な団体から推薦を受けた者や公募による住民の中から選ぶこととするなど、地域の意見が適切に反映される構成となるよう配慮する必要がある。
なお、地域協議会は、住民の主体的な参加を期待するものであることから、その構成員は、原則として無報酬とする。
ウ 地域自治組織の長
(ア) 役割
地域自治組織の長は、地域自治組織を代表し、地域協議会との緊密な連携の下、地域協議会によりとりまとめられた地域の意見を踏まえ、地域の実情に応じたきめ細かな事業・施策を実施する役割を担うものとする。
(イ) 選任
地域自治組織の長は、基礎自治体の長が選任する。
エ 財源
地域自治組織が、地域協議会の意見を尊重しつつ必要な事業が実施できるよう、必要な予算を確保するなど、基礎自治体において地域自治組織の財源について所要の措置を講じることが期待される。
A 合併に際して設置される地域自治組織(法人格を有する。)の仕組み
市町村合併に際しても、@の一般制度としての地域自治組織を設置することはできるが、合併後の一定期間、合併前の旧市町村のまとまりにも特に配慮すべき事情がある場合は、特別地方公共団体である地域自治組織(法人格を有する。)を設置できることとすることが適当である。
このタイプの地域自治組織についても、@の地域自治組織と同様の役割が期待されるところであり、その組織についても、@と同様、地域協議会と地域自治組織の長を置くほか、事務所を置くこととする。
@との相違点を中心とした制度の仕組みは以下のとおりである。
ア 設置
合併協議により規約を定め、合併後の一定期間、合併前の旧市町村単位に設けることができることとする。
なお、法人格を有することから、設置に当たって都道府県知事が認可等所要の関与を行う必要がある。
イ 事務の考え方
地域自治組織は、法令により処理が義務づけられていない基礎自治体の事務のうち、その地域自治組織の区域に係る地域共同的な事務であって規約で定めるものを自らの事務として処理する。
また、地域自治組織の機関が基礎自治体の補助機関の地位を兼ねることなどにより、法令により基礎自治体が処理することが義務づけられている事務を地域自治組織において処理することもできるものとする。
ウ 組織等
地域協議会は、地域自治組織の予算等を決定するほか、必要と認める事項につき基礎自治体の長その他の機関に建議することができることとする。
地域協議会の構成員の選出方法は、地域の自主性を尊重する観点から、規約で定めることとする。なお、構成員は、@と同様、原則として無報酬とする。
地域自治組織の長は、基礎自治体の長が選任するものとする。
地域自治組織の事務局の職員は、基礎自治体からの派遣又は兼務を原則とし、必要な場合には、臨時の職員を採用できることとする。
エ 財源
基礎自治体の事務の一部を処理するための財源は、基礎自治体からの移転財源によることとし、基礎自治体は地域自治組織の円滑な事務運営のための財源を確保するよう配慮するものとする。
課税権と地方債の発行権限は有しないこととし、地方交付税の交付対象団体ともしないこととする。
なお、地域自治組織が上記の移転財源による財源見合いの事務以外の事務を実施することを認める場合には、何らかの住民の負担によることができることとすることを検討する必要がある。
B 指定都市への適用について
指定都市については、行政区その他の一定の区域(出張所単位等)をもって地域自治組織を設置することができることとする。
第2 大都市のあり方
1 大都市に関する制度の現状と課題
大都市に関する制度としては、昭和31 年には指定都市制度が、平成6年には中核市制度が、そして平成11
年には特例市制度が設けられ、今日に至っている。高次の都市機能が集積する都市地域においては、多様化する住民ニーズに即応して機動性の高い行政サービスの提供が求められており、大都市である基礎自治体に対する一層の権限の移譲をはじめとした権能の強化が求められている。
一方、大都市は一般に人口が稠密で、多様で高度な都市機能が集積し、その社会実態的機能が一般の都市以上に広くかつ大きく周辺地域に及んでいるため、周辺地域との一体的整備が不可欠であり、大都市に特有の行政サービスの提供とともに、大都市を含む広域的なネットワークによる行政課題への対応が求められている。
また、大都市地域においては、住民と行政との距離が大きいという指摘があり、また人口の集中や合併によって都市の規模が拡大するにつれ、このような傾向が一層助長される可能性も否定できない。個々の住民の意見を大都市経営に反映し、より多くの住民の行政への参画を促す仕組みが必要である。
2 今後における大都市制度のあり方
(1) 大都市に共通する課題
基礎自治体の権能の強化は重要な課題であり続けてきた。多くの国民が居住する大都市地域において、身近な行政を基礎自治体が担えるように制度改革を行っていくことは、地方分権の実を多くの国民が実感できる方途である。このような見地から、これまでも、中核市制度・特例市制度の創設、地方分権一括法等による市町村への権限の移譲などが行われてきたところであるが、引き続きこのような都市の規模・能力に応じた一層の事務権限の移譲を進める必要がある。特に、三大都市圏の既成市街地、近郊整備地帯における都市計画権限をはじめとした都道府県と市町村の都市計画制度に係る役割分担のあり方や農地転用のあり方については、その早急な見直しが必要である。また、義務教育、産業振興の分野を中心に一層の権限移譲が進められるべきである。
このほか、大都市をはじめとした市町村に共通の課題として、都道府県においては、条例による事務処理の特例の活用等により、基礎自治体の規模・能力に応じて権限を移譲するなど、可能な限り基礎自治体が住民に身近な事務を自立的に処理することができるようにしていくべきである。
条例による事務処理の特例は、都道府県の判断により都道府県の事務権限を基礎自治体に配分することを可能とする制度であるが、現行制度では基礎自治体の方から事務権限の移譲を求めることができないことから、基礎自治体が自らの判断により事務権限の移譲を都道府県に積極的に求めていくことができることとする必要がある。すなわち、都道府県知事の権限に属する事務の一部を処理することを求める基礎自治体は、都道府県に対し、事務処理の特例に係る条例の制定等を要請する旨の申出をすることができることとし、都道府県知事は、この申出を受けたときは、遅滞なくその申出を行った基礎自治体の長と協議しなければならない仕組みを導入することが適当である。
(2) 指定都市制度
指定都市は、一般の市町村よりも幅広い事務権限を有しているが、指定都市を含む大都市地域においても、環境保全、防災、交通ネットワ−クなど区域を越える広域的な取組を必要とする行政分野が存在している。また、沿革的には、当初制定された地方自治法に都道府県から独立した特別市の制度が設けられたが、実際には指定されることなく、昭和31
年の地方自治法改正により同制度は廃止され、これに代えて指定都市制度が創設されたという経緯がある。
このような状況や経緯を踏まえれば、指定都市については現行制度の大枠の中で、その権能を強化するという方向を目指すべきである。その上で、大都市圏全体で行政課題を解決することが求められる分野については、指定都市と周辺市町村との連携を強化するとともに、都道府県がこれに対応した調整の役割を果たすことが求められる。
また、現在、指定都市の人口は合計で2千万人を超えており、我が国人口の約6分の1を占める住民が各行政区に居住し、日常の行政サービスの多くを各行政区から受けている。住民サービスを充実するという観点からは、大都市における行政区がより住民に身近なものとなり、住民の意向が一層反映されるよう、地域内分権化を図る必要があると考えられる。このため、各指定都市における実情に応じ、前述の地域自治組織の活用を図ることが期待される。
(3) 中核市制度・特例市制度
中核市制度・特例市制度については、基礎自治体の規模・能力に応じた権能の充実強化に積極的な役割を果たしており、また、制度の定着をみているところである。基礎自治体への一層の権限の移譲を推進していく見地からは、その指定のあり方等についてさらなる要件の見直しを行っていくことも考えられるが、市町村合併が進展する中で、各都市の規模・能力が合併特例法の期限である平成17
年3月までの間に変動していく可能性が高いことを考えれば、少なくとも合併特例法の期限内においては、現行の中核市・特例市の指定要件を維持することとし、その後における要件緩和について、引き続き検討すべきである。
第3 広域自治体のあり方
1 変容を求められる都道府県のあり方
都道府県の制度は、戦前の広域的地方制度である府県制から地方自治法の体系へ、そして地方分権一括法による機関委任事務制度の廃止による自立した広域自治体へと変遷してきたが、現実の都道府県の姿を見ると、明治21
年に47 ある現在の都道府県の区域の原型が確立されて以来、その名称及び区域はほとんど変更されることなく今日に至っている。
近年においては、経済のグローバル化、産業構造の変化などを背景として、広域の圏域における戦略的かつ効果的な行政の展開が求められるようになっており、また市町村の規模・能力が拡大しつつある中にあって、広域自治体としての都道府県のあり方が改めて問われるようになってきている。
2 今後における広域自治体としての都道府県の役割
都道府県のあり方がこのように変容を求められる中で、都道府県が自立した広域自治体として、世界的な視野も持ちつつ積極果敢にその役割を果たしていくためには、高度なインフラの整備、経済活動の活性化、雇用の確保、国土の保全、広域防災対策、環境の保全、情報通信の高度化などの広域的な課題に対応する能力を高めていくことが求められる。都道府県には国から移譲される権限の受け皿としての役割が引き続き期待されており、土地利用、地域交通、産業振興、国土保全などを中心に、国から都道府県へ一層の事務権限の移譲が進められるべきである。さらに、都道府県には、行政サービスの広域的な提供を通じて、バランスのとれた公共サービスの維持に貢献してきた側面があり、このような役割も引き続き必要である。
基礎自治体との関係では、市町村合併の推進等により、今後は基礎自治体が自立的に事務を処理することになると考えられ、都道府県の役割は、規模・能力が拡大した市町村との連絡調整が主となり、これまで事務の規模又は性質から一般の市町村では処理することが適当でないものとして都道府県が担ってきた役割については、縮小していくと考えられる。
3 広域自治体のあり方(都道府県合併と道州制)
規模・能力や区域が拡大した基礎自治体との役割分担の下に広域自治体としての役割、機能が十分に発揮されるためには、まず、都道府県の区域の拡大が必要である。
また、国の役割を重点化し、その機能を地方公共団体に移譲するとともに、真の分権型社会にふさわしい自立性の高い圏域を形成していく観点から、現行の都道府県に代わる広域自治体として道又は州(仮称。以下同じ。)から構成される制度(以下「道州制」という。)の導入を検討する必要がある。
(1) 都道府県合併
現行地方自治法上、都道府県の廃置分合は、国の法律によってのみ行い得ることとなっており、都道府県の発意により合併手続に入ることができないことから、現行の手続に加えて、都道府県が自主的に合併する途を開くことを検討すべきである。その方式としては、市町村合併の場合と同様に、都道府県の自主的合併の手続を整備することとし、関係都道府県が議会の議決を経て合併を申請し、国会の議決を経て合併を決定するといった規定を整備することが考えられる。
(2) 道州制
道州制の導入は、単なる都道府県の合併とか国から都道府県への権限移譲といった次元にとどまらない地方自治制度の大きな変革であり、国民的な意識の動向を見ながら、引き続き次期地方制度調査会において議論を進めることとするが、当調査会としては、今後議論すべき論点について、現時点では次のように考え方を整理することとした。
@ 基本的考え方
道州制は、現行憲法の下で、広域自治体と基礎自治体との二層制を前提として構築することとし、その制度及び設置手続は法律で定める。
ア 現在の都道府県を廃止し、より自主性、自立性の高い広域自治体として道又は州を設置する。
イ 道州制の導入に伴い、国の役割は真に国が果たすべきものに重点化し、その多くの権限を地方に移譲する。
ウ 道州の長と議会の議員は公選とする。
エ 道州の区域については、原則として現在の都道府県の区域を越える広域的な単位とし、地理的、歴史的、文化的な諸条件を踏まえ、経済社会的な状況を勘案して定められるものとする。
A 役割と権限
道州制の導入に伴い、国の役割は真に国が果たすべきものに重点化され、その事務権限の相当部分を地方に移譲する。すなわち、国は、現行地方自治法上、a)国際社会における国家としての存立にかかわる事務、b)全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動又は地方自治に関する基本的な準則に関する事務、c)全国的な規模で又は全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施などの役割を担うこととされているが、道州制が導入された後は、国の役割は重点化され、a)、b)のほかc)のうち限定された一部に縮小することとなる。
道州制の導入に伴い、国から地方に移譲される権限のうち基礎自治体に移譲できるものは原則として基礎自治体に移譲するものとする。これにより、基礎自治体は住民に最も身近な総合的な行政主体として、より一層大きな役割を担うこととなる。
道州は、規模・能力が拡大された基礎自治体を包括する広域自治体として、基礎自治体との適切な役割分担の下に圏域全体の視野に立った産業振興、雇用、国土保全、広域防災、環境保全、広域ネットワーク等の分野を担うものとする。また、国の地方支分部局が持つ権限は、例外的なものを除いて、道州に移管する。その際、移管される国の事務権限について、かつての機関委任事務制度の手法が採られることのないようにすべきである。
道州制の導入に伴い、道州に対する国の関与、基礎自治体に対する道州の関与についてはいずれも必要最小限度とする。また、国、道州、基礎自治体相互間の新たな調整手続の整備を図る必要がある。
B 道州の区域及び設置
道州は、現行の都道府県よりも広い区域と権限を有することから、その区域は「国のかたち」と密接に関連する重要事項であり、法律により全国をいくつかのブロックに区分してその区域を定めるという考え方と、道州の区域は、関係都道府県が議会の議決を経て申請し、国会の議決を経て決定するという都道府県側のイニシアチブを重視する考え方とがある。また、道州の設置については、全国一斉に道州に移行する方法と、一定の道州の要件に合致した場合には順次道州に移行する方法とが考えられる。いずれにしても、道州の仕組みや設置手続については、法律で定めることが必要である。
C 税財政制度
地方税財政制度については、道州の権限に応じて、自立性を高めることを原則とする。また、自立性の高い道州制を実現する観点から、自主財源である地方税を大幅に拡充することを基本とし、道州の規模、権限、経済力等を踏まえ、新たな財政調整の仕組みを検討するものとする。
D 連邦制との関係
道州制をめぐって、連邦制、すなわち、憲法において権限(行政権のみならず立法権(又は立法権及び司法権))が国と州とで明確に分割されている国家形態の導入を議論する向きもある。しかしながら、連邦制の下では、連邦政府と州政府の間の立法権の分割、地域代表としての上院(参議院)の創設、違憲立法審査権・立法権分割の審判者としての司法権のあり方など憲法の根幹部分の変更が必要となること、連邦制は歴史的・文化的・社会的に一体性、独立性の高い連邦構成単位の存在が前提となること、といった問題があり、我が国の成り立ちや国民意識の現状から見ると、連邦制を制度改革の選択肢とすることは適当ではないと考えられる。
E 検討事項
道州制の検討を行う際には、上記の観点のほか、a)現行憲法上は公選の長と公選の議員からなる議会を有することが地方公共団体の要件とされているが、広大な区域と大きな権限を有することとなる道州が、現行の地方公共団体と同じく、それぞれ住民の直接公選による二元代表制であることでよいか、b)道州制の導入に伴い、その議決機関、執行機関、補助機関のあり方をどうするか、c)首都圏、近畿圏、中部圏など、人口や経済集積等において他の圏域と著しく異なる圏域についても同じ制度としてよいか、d)道州制の導入に伴い、大都市圏域においては、現行の指定都市制度よりも道州との関係において独立性の高い大都市制度を考えるのかどうか、といった観点についても、併せて検討することが必要である。
なお、道州制の導入については、都道府県も住民に身近な行政を担っており、また、小規模な市町村を補完するような都道府県の機能が引き続き必要であり、従来の都道府県の役割が依然として大きいものであること、また一方で、道州制を議論する前に圏域的なテーマについては既存の制度である都道府県間の広域連合を活用する方法もあると考えられることなどを踏まえ、道州制の導入については慎重な検討を要するとする意見もある。
<出所−総務省HP内>
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