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 住宅宅地審議会答申「21世紀の豊かな生活を支える住宅・宅地政策について」

                                  平成12年 6月21日  


 はじめに
 
(目指すべき経済社会の方向性)=「豊かな成熟社会」
 現在、我が国は高い経済成長、地価上昇、人口増加・移動に特徴づけられる成長社会から、「成熟社会」への入り口にある。
 成熟社会は、経済の安定成長、地価の安定、人口減少、少子・高齢化、環境との共生に特徴づけられる社会である。
 成熟社会への移行は、成長社会に見られた経済の右肩上がりが保証されなくなった半面、地価上昇圧力や人口集中圧力が減少し、資産、知識、経験を備えた個人がより自由で伸び伸びと生きることができる絶好の機会ととらえることができる。多様な価値観の下、若者は夢をかなえ、勤労者、高齢者は将来の安心を手に入れる。
 −そんなことが実現できる「豊かな成熟社会」として我が国を新生させるべきである。

 
(住宅宅地の位置付け)=「成熟社会を支える豊かな生活空間」
 住宅宅地とは、個人にとっての極めて重要な健康・生活の基盤であると同時に、家族を育むかけがえのない生活空間である。この意味において住宅宅地は、各々の国民がその多様な価値観に基づいて、自らの努力で手に入れ、利用していくものとして位置付けることができる。そして、こうした国民一人一人の努力が、我が国の活力の源となることが期待される。
 これを社会全体としてみれば、全ての国民が自らの努力に応じて良質な住宅宅地を確保することができる環境を整えることは、若年者の夢や勤労者、高齢者の安心に支えられた安定的な経済成長や健全で活力にあふれた社会につながるものである。この意味において、住宅宅地を我が国の経済社会にとっても重要な基盤として位置付けることが可能である。
 また、良好な住宅宅地ストックは、そこに住む人だけのものではなく、地域のコミュニティ活動の主たる基盤であると同時に、長期に亘り地域の環境、安全、文化、市街地景観等の重要な要素となるなど、その周囲にさまざまな影響を与える外部性を有する財でもある。
    
 
(住宅宅地政策の意義)=「国民の自助努力」と「住宅宅地政策」は車の両輪
 以上に鑑み、住宅宅地の取得、利用は国民の自助努力で行われるべきという原則に立った上で、良好な街なみを誘導し、広くて質の高い住宅宅地を確保しやすいようにする。その一方で、努力しても自力では望ましい居住を確保できない者には的確な支援を行う。
 このような住宅宅地政策は、適正な資源配分や所得分配を達成するとともに、中長期的に安定的な成長を持続する上で重要な要素として位置付けることができる。
 現在欧米諸国でも、住宅宅地の取得、供給等を支援する政策が講じられているのは、このような点に関して、国民の間に一定の合意があることの証左と考えることができる。

 
(成熟社会における住宅宅地政策の課題)=「市場重視」「ストック重視」
 成熟社会においては、生活の質の向上や経済社会活動の基礎となる「人」の育成が重要であり、その人の生活空間である住宅宅地を豊かにすることが豊かな成熟社会を実現する上で不可欠である。そのために以下の二点に留意したい。
 市場は万能ではないが、人々のニーズを最も良く映し出す鏡である。住宅宅地についても市場がうまく機能するように環境を整えるとともに、その誘導を行い、また、時として市場ではなしえない役割を公的部門が補完する。こうして、市場と調和した「市場重視」(注)の政策展開を行うことによって、効率的に豊かな生活空間を創造できるチャンスが広がるのである。
 成長の右肩上がりが終わった今、求められるのは「良いものを長く、効率的に利用する」という発想である。豊かな成熟社会を支えるカギは、個々人の価値観に基づいた居住を実現しうる社会全体のストックの「質」とその「流動性」を高めることである。このため、「ストック重視」(注)の政策展開を行うことで、さまざまな制約の下においても、国民の多様なニーズに応じた居住の選択が可能となるシステムを構築すべきである。 

(注)
 :「国民の多様な居住ニーズを効率的に満たすシステムを構築するため、市場における選択を原則とし、外部性等を配慮して市場の環境整備、誘導、補完を行い、市場との関わりにおいて政策を構成するスタンス」

 「ストック重視」:「住宅宅地ストックが量的には充足してきている現状、成熟社会がもたらすさまざまな制約を背景に、耐久性の高い良質な住宅宅地ストックを形成し、それを維持管理、循環させていく等、住宅宅地ストックの質、流動性との関わりにおいて政策を構成するスタンス」

 T.新たな政策体系への転換の背景
 
1.これまでの住宅宅地事情をめぐる背景と政策の変遷
 
(1)住宅宅地事情をめぐる背景の変遷
 終戦直後の我が国は、住宅戸数の絶対的不足状況にあったが、さらにベビーブームの到来、その後の産業構造転換による都市部への人口流入により、大都市圏を中心に深刻な住宅難が発生した。
 昭和48年頃までには住宅戸数の絶対的不足は解消したが、大都市圏では人口及び世帯数は一貫して増加したため、土地需要は堅調であり続け、地価が著しく上昇した。そうした中にあっても多くの国民は一戸建住宅の取得を目指した。「宅地さえあれば」という考えの下、どんな宅地についても資産価値が認識され、これが地価上昇を助長し、歪んだ土地神話が定着したが、こうしたことは戦後殊に高度経済成長期以降に特有なものであり、戦前は東京、大阪等でも一戸建持家に固執する層は必ずしも多くなかった。
 昭和60年以降のバブル発生により、大都市圏の一般勤労者の住宅宅地難は従来以上に深刻になり、戦後続いた住宅宅地に関する特異な事情を強調・拡大してみせる時期となった。

 
(2)住宅宅地政策の変遷
 終戦後から相当の間、住宅政策の中心課題は、公的主体による直接供給を中心とした住宅の量的拡大であった。
 宅地に関しては大量供給の方針の下、用地確保が容易で素地価格が安い遠隔地での宅地開発が中心的施策となった。公的主体による直接供給の他、土地税制や金融等の手段も積極的に活用され、グリーンベルト構想の地域も順次宅地化された。こうした新規の大規模開発地区を中心に、比較的良好な住宅宅地が大量供給されたが、これによる人口急増を必ずしも歓迎しない地方公共団体も多く、その調整も宅地政策の重要な課題となった。
 昭和50年代に入ると住宅の量的充足を背景に、住宅政策の主な課題は質の向上に移ることとなる。さらに、第七期住宅建設五箇年計画(平成8〜12年度)において、住宅政策は、公的主体による直接供給、支援を中心とするそれまでの体系から、民間、公共併せた住宅市場全体を対象として捉えることが強く打ち出された。
 この間、バブル期の急激な地価上昇下にあっては、需要サイドの住宅の取得能力の向上と供給サイドの大量供給促進という二つの方針が打ち出され、宅地の大量供給促進のための法令の制定・改正が行われた。地価高騰にもかかわらず住宅宅地市場は活況を呈したが、ほどなくバブルの終焉を迎えるに至った。

 
2.住宅宅地政策に関する現状と課題
 
(1)持家を中心に着実に向上している床面積等
 我が国の住宅は、特に持家を中心にその平均床面積は着実に向上している。新規に建築される持家の平均床面積は、昭和48年に104.0uであったものが、平成11年には139.3uと大きく拡大している。この結果、住宅ストック全体としても、持家の一戸当たりの平均床面積は、昭和48年の103.1uから平成10年には122.7uまで拡大しており、その水準はほぼヨーロッパ諸国並みの水準に達している。
 住宅の質についても、その水準の向上が図られている。例えば、耐震性という観点から見てみると、昭和56年に改訂された建築基準法の新しい耐震基準については、平成7年の阪神・淡路大震災において、その有効性が確認されており、高い耐震性を持つ住宅の整備が進んでいる。
 しかしながら、賃貸住宅について、そのストックの状況を見てみると、一戸当たりの平均床面積は昭和48年の39.5uから平成10年には44.5uと多少の拡大は見られるものの、依然持家の半分以下である。また、新たに供給される賃貸住宅についても、平成11年度に新設された賃貸住宅の戸当たり平均床面積は53.2uであり、持家(139.3u)に比べ低い水準となっており、狭小なものの供給が多い現状となって いる。

 
(2)国民の居住ニーズの高度化、多様化
 国民の居住についての不満の状況を見てみると、住宅需要実態調査(平成10年)によれば、住宅そのものに対する不満(51.5%(昭和63年)→47.5%(平成10年))や住宅の広さに対する不満(44.3%(昭和63年)→36.5%(平成10年))の割合は減少する傾向にある。
 しかし、持家、借家別に住宅に対する不満を見てみると、持家に住む世帯の住宅に対する不満は42.9%であるのに対して、借家に住む世帯の住宅に対する不満は56.8%と高い水準となっている。
 一方、「住環境」に対して不満と答えた人の割合は昭和63年の33.2%から平成10年には35.8%へと増加している。また、住宅の各要素に対する評価の状況を見てみると、「高齢者等への配慮」に対して不満と答えている人の割合は66.4%、「遮音性・断熱性」については57.6%と「広さ」に対して不満と答えている人の割合(36.5%)より、かなり高くなっている。
 このように、借家については、住宅そのものに対する不満の割合が依然高い現状にあるものの、住宅に対する評価は、総じて住宅の床面積よりも住宅の性能・設備、住環境に対する不満が高まっており、国民の居住に対する関心は、住宅の広さからその性能・設備、住環境等も含めた分野に広がっていることがわかる。

 
(3)大都市圏の劣悪な住宅宅地ストック・居住環境
 @大量の高度経済成長期ストック等の存在
 平成10年の住宅・土地統計調査によれば、終戦後から昭和55年までに建築された住宅ストック数は約1,957万戸、全住宅ストックの44.6%となっている。この終戦直後とそれに引き続く高度経済成長期の住宅不足の時代に建築された住宅ストックは、質よりも量が重視されたこともあって、老朽化が進むと同時に、床面積等が生活水準の向上に対応できず陳腐化が進んでいるものも少なくない。
 また、同調査によれば、終戦から昭和55年までに建てられた住宅の6.8%が最低居住水準未満、54.2%が誘導居住水準未満となっており、昭和56年以降に建てられた住宅ストックに対するそれぞれの割合3.8%、50.8%と比べて住宅の質が劣っていることが明らかである。
 特に大都市圏の借家については、平成5年の住宅統計調査によれば、三大都市圏の終戦から昭和55年までに建てられた借家で最低居住水準未満のものが25.1%、誘導居住水準未満のものは84.6%となっており、その傾向が顕著である。
 持家の床面積については着実に増加しているが、特に大都市における一戸建住宅の敷地面積は依然改善されていない。例えば、平成10年の住宅・土地統計調査によれば、敷地面積100u未満の一戸建住宅の全一戸建住宅に占める割合は、全国平均で17.2%であるのに対して、東京都で43.9%、大阪府で50.3%となっており、著しく水準が低いことがわかる。

 A大都市圏を中心とした低水準な居住環境
 住宅不足の時代に無秩序な市街地拡大が行われたこともあって、大都市圏を中心に防災上危険な密集市街地が多く存在していることが指摘されている。阪神・淡路大震災の経験から見れば、被害の多くが老朽木造家屋に集中するとともに、火災による延焼地区の多くが都市基盤未整備地区であった。このような老朽木造住宅が集中し、都市基盤が未整備の密集市街地は、三大都市圏に集中して存在していると推計されている。こうした市街地を更新することにより、防災性、耐震性の観点から基礎的安全性が確保されている住宅・住環境を確保することが重要な課題である。
 また、経済発展と都市への人口の急速な流入により地価が上昇し、都心部での住宅地取得が困難となる一方で、鉄道等の公共交通機関の整備とともに都市郊外での住宅開発が進められ、ファミリー世帯の都心部からの転出等居住地が遠隔化してきた。この結果、平成7年には東京都心3区に通勤通学する者の約4分の1の者が、1時間30分以上の通勤通学時間となっている。

 
(4)地価下落と宅地需要への影響
 これまでは需給状況に応じ、郊外部の遠隔地に次々と新規宅地開発がなされてきた。大規模開発事業の場合、着手から宅地の実際の販売まで長期間のラグがあることから、短期的均衡を常に達成する必要はなく、地価の着実な伸びを前提に、関連する公共公益施設整備や先行投資、地権者はじめ関係者間の調整等の負担を事業者が担いつつ、事業が成立してきた。人口・世帯数の一貫した増加により需要が常に堅調であり、特に持家一次取得層の中核である30歳代・40歳代の勤労者を世帯主とする世帯が大量に存在していたことが需要を支え、宅地需給に逼迫感をもたらしてきた。バブル期の地価高騰やバブル崩壊をはさみながら、最近十数年間の宅地供給量は全国的に年間約1万ha、三大都市圏がそのうちの約2分の1という極めて安定した状況が続いてきた。
 バブル崩壊による地価の下落は、東京都区部、大阪市、名古屋市の都心部の商業・業務地及びこれに隣接する周辺、近郊部の一部を加えた地区(以下「都心・周辺地区」という。)において特に大きい。この地区でも、オフィスビルから住宅系への転用を目指す動きが見られ、また大企業がリストラに伴い社宅用地等として確保してきた稀少な宅地を市場に放出する動きがある。地価の下落により需要者の住宅取得能力が増したことと併せて、こうした土地の市場への供給により、都心・周辺地区での住宅供給・購入が近年増加している。その結果、例えば東京都区部の分譲住宅の着工はバブル以前と同じく1都3県全体の3分の1程度までに増加し、これまで人口流出一辺倒だった都心部において人口増加の兆しが見られるが、このようにして供給された住宅の敷地面積は、取得希望者の取得能力内に収まるようにする ため、減少傾向にある。
 郊外部の宅地はバブル期においても都心部ほど地価が上がらなかった反面、バブル崩壊後の下落率は小さいものに止まり、この地域で供給される住宅宅地には割高感が生じている。従来大規模開発事業が享受してきた地価の長期的上昇が見込めなくなったため、リスク回避を図るべく事業の小規模化が顕著となっている。
 近郊部の市街化区域内農地では、バブル期以降もインフラが比較的整備されているところを中心に、農家による貸家建設を主体とする宅地供給が進んだが、そのペースの鈍化と宅地化が容易な適地の減少が見られる。農地が部分的に転用される際に小規模宅地の供給がなされることも一般的である。

 
(5)宅地ストックの劣化と整備・改善の遅れ
 既存の中規模の個人住宅敷地が相続等を契機として分割され、敷地の細分化が進行することは頻繁に見られる。建替えの際にも、建築主は専ら狭小な宅地の最大限の活用を追求することが多く、住宅の水準は向上しても居住環境の水準が低下するという傾向もある。こうした事例が、開発当初は良好な規模が保たれていた住宅市街地で発生することで、それが一部ではあっても市街地の劣化の契機となると考えられる。
 大都市圏に多い老朽木造密集市街地の状況、近郊部の市街化区域内農地等の近年の宅地化動向は上に述べたとおりであるが、そうした地区の住環境の整備・改善は遅れている。形状・規模等に関して問題の少ない郊外部の宅地に関しては、長時間通勤と交通手段の不十分さ、生活利便・文化施設の不十分さ等の課題がある。一度宅地化された土地及び大都市の中心部・近郊部において宅地化が比較的容易と期待される土地、即ち宅地のストックともいうべきものに関わる諸課題が依然として残されている。
 ストックに追加投資等を施すことで、環境負荷やコストを抑制できる場合があり、また、それ以外に個々の宅地や住宅市街地全体の改善がなされない場合があるにもかかわらず、その取組みは遅れていた。

 
(6)土地取得に強い関心を置いた住宅取得中心の住宅市場
 取り壊された住宅の平均耐用年数を算定すると我が国では26年程度であり、米国の44年、イギリスの75年に比べて著しく短くなっている。このように住宅の耐用年数が短くなっている理由としては、高度経済成長の中での生活水準の向上に伴い床面積の広い住宅が求められるようなったこと、人口の都市への流入による都市構造の急激な変更による住宅の建替えが必要であったこと等の理由のほか、住宅取得の様式が大きく関わっていると考えられる。
 これまでの住宅取得は、「住宅双六」と言われるように、経済成長が続き、年功序列型の賃金体系のもとで毎年賃金が上昇する中で、地価の継続的な上昇によるキャピタルゲインをも活用しつつ、借家からマンション、そして最終的には新市街地における戸建住宅の取得を目指すのが一般的であった。
 こうした住宅取得は、地価が継続的に上昇していく中で、資産形成の手段として土地が非常に有利性の高い資産であったことから、必要な居住サービスを得るための住宅確保という観点よりも、土地取得に強い関心を置いたものであったと考えることができる。このため、住宅取得のための限られた資金の多くが土地取得に充てられてきた。また、地価が継続的に上昇する中、一定期間が経過すれば相当のキャピタルゲインが期待でき、これを活用してより良質な住宅への買替えが可能となった。このため、上物としての住宅を重要な資産と考え長期的な視野に立ってより高い質を求めたり、適切な維持管理によりその質の維持を図ることに対するインセンティブに乏しかった。
 これらのことから、我が国においては、資産価値の高い土地取得に強い関心を置いた住宅取得を行い、必要に応じ住宅の建替えを図る新築・建替え中心の住宅市場が形成されており、既存の住宅を有効に活用するための中古住宅市場、賃貸住宅市場、リフォーム市場が未発達であった。こうした住宅取得の様式が、住宅耐用年数を短くしている主要な理由の一つであると考えられる。

 
(7)少子・高齢化の急速な進行と居住に関する不安
 住宅宅地は、国民の生活を支える基盤であり、ゆとりある住宅に安心して住むことが生活の豊かさを確保する上で重要な要素となっている。一方、現在我が国においては、少子・高齢化が急速に進行しつつあるが、この人口構成の変化は子育て等をめぐる居住に関する不安を背景としているとともに、老後の住まい方等居住に関する新たな不安をもたらしている側面がある。
 戦後の経済発展に伴い、都市へ流入した人々は新たな核家族を都市で形成したが、現在進行している高齢化は、核家族という家族文化が初めて経験する高齢化である。先行する参考事例が全くない中で、高齢期の新たな住まい方が模索されている現状にあり、高齢期の住生活に多くの人々が不安を感じている。例えば、平成12年の「国民生活に関する世論調査」(総理府)によると、国民が感じている悩みや不安の約半分が老後の生活設計に関するものとなっている。
この背景として、我が国の住宅ストックは民営借家を中心にバリアフリー化が遅れていることや(全住宅ストックのうち、広い廊下、手すりの設置、段差の解消が図られているストック数は2.7%、民営借家は0.3%(平成10年住宅需要実態調査))、一部の民間借家等において指摘されている高齢者敬遠傾向など、高齢者が安心して快適に住生活を送り、老後を謳歌することができるような状況が整っているとは言い難い状況にあることがあげられる。
 個々の家庭ばかりでなく、新規に開発された郊外ニュータウン等においては、一斉高齢化により、バリアフリー性の不足、ニュータウン内の社会福祉施設の不足等やコミュニティの危機の発生が指摘されている。
 また、近年、少子化が問題となっているが、都市における居住環境と少子化の間には何らかの関係があるとの指摘がある。大都市圏においては、住宅が狭いこと、ローン返済や家賃が家計を圧迫していること、良質なファミリー向け賃貸住宅が不足していること等の住宅事情のほか、例えば、都市部の地域社会においては共同体意識が低く、地域住民間での自発的な子育て支援が受けられず、子育てが母親と学校だけで担うものとなっているという事情が存在する。また、長い通勤時間と子育てを両立させることは困難であり、郊外への住宅地の展開による職住分離は、女性の社会参加が進む中で、少子化の要因となっているとの指摘もある。

 
3.住宅宅地政策をめぐる経済社会環境の変化
 現在、我が国は、社会的に見れば大都市圏への人口流入の沈静化、人口減少社会の到来、少子・高齢化の進行、環境問題への関心の高まり、経済的に見れば安定成長への移行、土地神話の崩壊、日本型の雇用慣行の見直し等さまざまな点から、成長社会から成熟社会への移行という大きな変革期にある。
 こうした中で、新しい経済社会の条件に適合した住宅宅地政策の仕組みづくりが求められている。
 
(1)経済社会の変化による住宅宅地需要構造への影響
 @住宅需要構造の変化
 将来人口推計によれば(「日本の将来推計人口(平成9年1月推計)」国立社会保障・人口問題研究所)、我が国の人口は2007年に約1億2,800万人でピークを迎え、それ以降は減少に転じ、人口減少社会となることが予想されている。また、世帯数の将来推計を見てみると、普通世帯数は2014年に4,929万世帯でピークを迎え、2015年までの15年間で約300万弱の世帯数の増加が推計されている。しかし、昭和60年から15年間の世帯数の増加が942万世帯であることと比べれば、増加数は3分の1となっている。
 また、その内容を見てみると、高齢者世帯については、世帯主が65歳以上の高齢者世帯数は、2000年の1,096万世帯から2015年までの15年間で約560万世帯の増加が推計されている。したがって、今後の世帯数の増加は高齢者世帯数の増加であり、それ以外の世帯は減少に転じることが推計されている。
 人口の移動についてみると、産業構造の成熟化に伴い大都市圏への人口流入が沈静化し、逆にUJIターンに対する関心の高まりが見られる等地方への定住傾向が強まっている。
 こうしたことから、世帯増加の鈍化、人口移動の安定化等を背景として、今後、新規住宅建設に対する需要はマクロ的には次第に減少していくものと考えられる。

 A地価動向と宅地需給の逼迫感の緩和
 地価公示によると地価は平成4年公示以降下落しており、土地需給の構造的変化とともに、地価は景気動向に左右される面があることから、21世紀初頭における地価動向を誤りなく予測することは困難である。しかしながら、近年の地価下落は、宅地の需要・供給の両サイドの行動に大きな影響を与えてきていることも事実である。この結果、消費者・生活者にとって取得能力が増大し、長らく大きな制約となってきた都心業務地近接性と住宅宅地の広さとのトレードオフの関係が緩和されつつある一方で、供給者サイドにとって完了までに長時間を要する大規模事業の支えとなってきた地価上昇が姿を消し、事業環境を厳しいものとしている。この状態がいつまで続くかは分明ではなく、今後とも宅地政策を具体に立案するに当たっては、地価動向の及ぼす影響について最大限の注意を払う必要がある。
 しかし、これまで新規の宅地需要は世帯増を主たる要因として発生するものと捉えてきており、前述の今後の世帯増の鈍化の見通しに加え、高齢者のみの単身及び2人世帯の増加のほか、少子化に伴う住宅宅地の相続による取得の蓋然性の増大等により、従来に比べ需要が減少し、需給の緩和が続く可能性が高いとみられる。
 将来世帯数の動向を踏まえた宅地需要量の長期の概算推計によれば、1996年から2015年までの20年間の全国の宅地需要量は約13万haとなる見込みであり、前回の概算推計のベース(1991年から2010年までの20年間で約19万ha)よりも低いものとなる。これまでは毎年約1万haの新規宅地需要が生じることが想定され、実際にもほぼその想定どおりの供給がなされてきたが、約19万haが約13万haへと約30%減少することは、単純には年間約6,500ha程度となることを意味する。実際には1996年から2015年までの間でも、前半部のウェイトが大きく、後年度になるほど宅地需要量は急激に減少することとなる。このうち全国の約半分を占める三大都市圏においても、全国とほぼ同様な傾向となるものと見込まれる。さらにその中では、郊外部においても依然相当の宅地需要が生じるものの、都心・周辺地区での住宅立地が従来より進むものと予測される。

 
(2)土地神話の崩壊等による住宅宅地取得行動の変化
 これまでのような土地取得に強い関心をおいた住宅宅地取得は、継続的な地価の上昇、高い経済成長、年功序列型の賃金体系等の日本型雇用慣行が前提となり成り立っていた仕組みであると考えられる。
 しかしながら、土地は値上がり続けるという土地神話は崩壊し、土地は必ずしも有利性の高い資産ではなくなっている。また、経済成長の安定化や年功序列型賃金体系の見直しが進む中で、継続的な賃金の上昇は必ずしも期待できず、さらには失業の不安等従来の住宅宅地取得を支えていた経済社会条件には構造的な変化がみられる。
 これらのことを背景に、「今宅地を買わなければ将来も買えなくなる」あるいは「宅地さえあれば」という考え方自体は減少している。
 また、住宅の位置付けに関する国民の意識をみた場合、「人生の各段階に応じて必要な住宅が確保されれば良く、資産価値にこだわらない」という者や、「資産価値が維持されれば、住宅の転売や賃貸住宅としての活用により自分は住替えてもかまわない」という者が約7割を占めている一方で、「住宅は親から子供に引き継がれるもの」とする者は約2割にすぎないという調査結果がある(「住宅・宅地政策に関する意識調査(平成12年1月)」建設省)。すなわち、自分のライフステージやライフスタイルに応じた住宅選択を肯定する者が、住宅の所有を前提とする世代間相続を強く意識する者を上回っている状況にある。
 これらの状況を総合的に考え合わせれば、従来の住宅宅地取得を中心とした居住水準の向上システムに限界が生じ、土地取得に強い関心を置いた従来の住宅宅地取得から、今後は上物の住宅そのものの資産価値にも関心を移すとともに、消費者が所得の制約の中で、必要な居住サービスを生み出すものとしての住宅宅地の確保に重点が移行して来ることが予想される。

 
(3)居住ニーズの多様化
土地神話の崩壊は、居住の選択に当たっての居住サービスの質の重視という観点、土地のコストの低下に伴う選択可能なメニューの増加という観点双方から居住ニーズの多様化とその顕在化をもたらすものである。このため、郊外の一戸建住宅のみならず、職住近接のニーズを実現する都心住宅、個人のライフスタイルに応じた居住ニーズを満たす文化施設等に近接した住宅等多様なタイプの住宅に対する需要が生じてくることが予想される。
 世帯構造に目を向けても、先に述べたとおり高度経済成長期に住宅を必要とした世帯は主として新たに形成された核家族世帯であり、夫婦と子供という画一的な家族の形態であった。しかしながら、本格的な高齢化の到来に伴い、高齢者の単身、夫婦世帯が増加している。また、女性の社会参加の進展に伴う共働き世帯の増加や晩婚化による未婚率の上昇等家族の姿が多様化している。
 また、いわゆる「会社人間」のように会社のみを帰属先とする価値観から脱却した個人の帰属先として、今後、「家庭」「地域コミュニティ」のウェイトが増大することを勘案すれば、国民生活における「居住」(住宅とそれを取り巻くコミュニティ)の果たす役割の重要性が高まることが予想される。
 さらに、今後、趣味を同じにする集団、コンピューターネットワークでつながった集団等「好みの縁で繋がった集団(好縁共同体)」も個人の生活に重要な意味を持つことが予想される。こうして、一人の人間が会社、家庭、地域コミュニティ、好縁共同体等のさまざまな社会集団に多元的に帰属することが一般的となることが予想される。こうした個人と社会集団の新たな関係の確立は、「居住」に対するニーズの多様化となって現れてくるものと考えられる。例えば、情報通信技術の活用により、職場と住宅とを統合させたSOHO、血縁関係の無い友人同士で共同生活をするコレクティブハウジング等新しい居住のニーズが拡大しつつある。
 価値観、人生観の多様化の中で、自然との触れ合い、家族との触れ合い等に対するニーズが高まること等も考え合わせれば、職場生活向けの都市住宅とゆとりある家族生活向けの田園地域におけるセカンドハウスを使い分けたり、郊外の一戸建住宅と都心部の賃貸マンションを使い分けるなど1つの世帯で複数の住宅を使うマルチハビテーションに対するニーズが高まってくるものと考えられる。3分の1の人が複数居住を魅力的と捉え、やってみたいと考えているとの世論調査の結果があるが、こうした一つの住宅にとらわれない居住形態は生活にゆとりをもたらし、豊かな生活を可能とするものと考えられる。

 
(4)環境制約の増大等
 近年、建設廃棄物等廃棄物処理の問題や地球温暖化に住宅宅地の与える影響等環境問題に関心が高まっていることから、環境制約という観点に配慮する必要がある。また、消費者・生活者の良好な居住環境に対する関心はますます高まっていくものと予想される。
 このため、宅地内及び周辺の植生、日照、通風やゴミ処理等の問題にとどまらずに、太陽光等自然エネルギーの活用を図る等、住宅宅地供給、居住及び解体・処理の各段階における環境負荷の軽減に配慮する必要がある。
 また、土砂災害への対策はもちろん、阪神・淡路大震災での経験に鑑み、震災に対する防災対策の実施による住宅宅地の安全性の確保がますます必要となる。

 
(5)都市構造の再編と地方の課題
 平成9年の都市計画中央審議会基本政策部会の報告によれば、都市への人口流入の沈静化に伴い、人口、産業が都市へ集中し都市が拡大する「都市化社会」から、都市化が落ち着いて産業、文化等の活動が都市を共有の場として展開する成熟した「都市型社会」へ移行していくことが指摘されている。こうした中で、都市の拡張への対応に追われるのではなく都市の中に目を向け直して「都市の再構築」を推進すべき時期となっていることが指摘されている。こうした変化を踏まえれば、首都圏整備計画等において定められている業務核都市等の整備に資する良好な市街地の形成、交通基盤施設の充実を図るとともに、既存の住宅市街地の再整備を重視していくことが必要となっている。
 また、地方に目を向ければ、高齢化の一層の進行や中心市街地の空洞化、農山漁村地域における過疎化の進行が大きな問題として認識されている。こうした問題に対応するため、中心市街地の活性化や都市との交流による地域活力の維持、増進が必要となっている。

 
(6)行政のあり方の変容
 自己責任と市場原理の二つを理念とし、中央省庁再編と地方分権を具体的現れとする行政改革が進められている。後者に関しては、機関委任事務の廃止等の措置が採られ、平成12年4月から実施に移されている。地方公共団体が自主的・自立的に都市計画を定め、まちづくりを進めることが望まれる。

 
4.住宅宅地政策の新たな方向
 
(1)成熟社会における住宅宅地政策の課題
 新しい経済社会環境の下においても、国民の居住ニーズに適切に対応した住宅宅地の実現を図ることができるよう、成熟社会における新しい住宅宅地政策の確立が求められている。
 今後の住宅宅地政策の方向を考えるに当たって、次のような要素が重要である。
 @ これまでは土地取得に強い関心を置いた住宅宅地資産の形成が行われてきたが、成熟社会においては、居住サービスを生み出すものとしての住宅宅地、そして良好な街並みを形成する集合体としての住宅宅地の確保の側面が強調されること
 A 国民の価値観、家族形態の多様化に対応して「居住」ニーズが多様化すること
 B 成熟社会への移行、環境制約等を背景に限りある資源を有効に活用していく必要性が高まること等から良質な住宅宅地ストックを適切に維持管理し、長く使っていくという視点が必要となること

 こうした点を踏まえると、現在の住宅宅地ストックを、長期耐用性、環境との共生、長寿社会への対応等に配慮されたものへと再生を進めるとともに、地域の居住者のニーズを的確に反映した住宅宅地ストックの整備を進めることにより、「居住」に関する多様な選択肢を用意することがまず必要である。その中から自立した個人がその自己実現を支えるニーズに最もふさわしい「居住」を無理のない負担で安心して選択できるようにしていくことが必要であり、住宅宅地政策をこうした選択を可能とする政策体系へ転換することが求められている。
 以上のような政策の転換を図るに当たっては、次の二つの視点が重要である。

 @市場重視
 国民の価値観、家族形態の多様化に対応して、国民生活の基盤である「居住」についても、競争を通じた適正な価格の下で多様な選択が可能となるようにしていくことが必要である。これらの多様な選択は市場機能の活用により実現することが最も効率的である。その際、外部性等への配慮が要請されることはもちろんであるとともに、市場の歪みにより自由な選択が阻害されている場合には、その阻害要因を除去し選択の幅を拡げることや、住教育の充実を通じて国民が適切に判断し安心して選択できるようにしていくなど市場環境の整備のため必要な施策を講じていくことが必要である。また、国民の支出能力と住宅宅地価格の動向、民間の供給動向等市場の状態を的確に把握した上で、住宅宅地取得に対する支援、良質な住宅宅地供給及びそれに対する支援等市場の誘導や補完に関する施策を講じていくことが必要である。

 Aストック重視
 従来、住宅宅地は、個々の家族等が生涯所有し続けたり、その直系家族に引き継がれていくことが多かった。しかし成熟社会においては、自由に住替えを行うことによって、ライフスタイル、ライフステージに応じた適切な住宅宅地を選択したいという要求が強まるものと考えられる。こうした選択を可能にするためには、社会全体に備わっている住宅宅地ストックを有効に活用していくことが必要であり、住宅宅地ストックを有効に活用したり、適切に維持管理された住宅宅地ストックが高い評価を得られるような仕組みを構築することが求められる。
 このように、住宅宅地ストックは、社会全体として使用される「社会的資産」としての側面が強まり、このような意味での「社会的資産」としての住宅宅地ストックを国民が最大限に活用できる制度の整備・活用を図ることが、重要な政策課題となる。

 
(2)新たな住宅政策の基本的方向
 今後の住宅政策の基本的方向は、「市場を通じて国民が共用しうる良質な住宅ストック(社会的資産)を形成し、管理し、円滑に循環させることのできる新しい居住水準向上システム」の確立を目指していくことである。
 このため、
 @ 我が国の成長社会から成熟社会への移行を踏まえて、現在の住宅ストック・居住環境を、長期的な視点から良質なものに如何にして再生していくか
 A 既存ストックを活用しつつ国民の多様なニーズに対応するため、ストックの流動化を如何にして実現するか
 という課題について、本格的少子・高齢社会の到来、市場の機能を最大限に活用するための公民の役割分担に特に意を用いて解決していくことが必要となっている。
 以上のことから、
 @ 良質な住宅ストック・居住環境の再生
 A 既存ストック循環型市場の整備による持続可能な居住水準向上システムの構築
 B 少子・高齢社会に対応した「安心居住システム」の確立
 C ストック重視、市場重視の住宅政策体系を支える計画体系の再編
 によって住宅政策体系の再編を進めていく必要がある。

 
(3)新たな宅地政策の基本的方向
 今後は都市構造の再編とコンパクト化を進める中で、大都市圏の都心部や臨海部の低未利用地の土地利用転換に伴う住宅宅地の供給、業務核都市等の育成に資する住宅宅地の供給等を促進する必要がある。
また、消費者・生活者は自己のライフスタイル、居住ニーズに基づく住宅宅地の取得等を行い、その意識は所有から利用へと変化しているので、「利用の優先」が中心的な思想となると想定される。
 さらに、宅地の大量供給から質の重視へと方向を転換する中にあって、新たな開発は良質なストック形成に資するものとしつつ、既存ストックの劣化も防ぐ必要がある。宅地規模拡大、宅地ストックの安全性・防災性の向上、高齢社会への対応等を図りつつ、その再生と循環を図ることが国民経済的にも求められている。
 こうしたことから、新たな宅地政策は、まちづくりの一環として宅地供給を促進し、消費者・生活者のライフスタイル、ニーズに応え、良好な居住環境と安全性を備えた住宅宅地に係る選択肢を豊富で多様なものとするために、
 @ まちづくりと連動した職住近接やゆとりある居住空間実現に資する宅地供給
 A 「所有」から「利用」へのニーズの転換に伴う消費者・生活者の住宅宅地の取得等への支援
 B 良質なストック形成と既存ストックの再生・循環
という、3つの項目を基本的方向とすることが妥当である。この他に宅地政策における税制・金融のあり方についても具体的方向として掲げる必要がある。
 宅地政策の基本的使命は、土地基本法の理念も踏まえつつ、国民生活や経済活動の基盤となる宅地を良好な形で提供することにある。消費者・生活者の居住に関する価値観は、職住近接やゆとりある居住空間の実現を基本的なニーズとしながらも、変化し多様化しつつあり、今後は、上記の3つの基本的方向に即して消費者・生活者重視の具体的な宅地政策の展開を図ることで、消費者・生活者のニーズに最も適した住宅宅地の供給と取得等への支援を促進すべきである。

 
U.新たな政策体系への転換の具体的方向
 
1.住宅政策体系再編の具体的方向
 
(1)良質な住宅ストック・居住環境への再生
 成熟社会における豊かな居住は、経済社会の潮流の変化に対応した良質な住宅ストックが社会全体として備わっていることが大前提であり、ストック循環型市場の構築を通じた多様な居住ニーズの充足も、このことなくしては成立しえない。
 しかし、一方で我が国では、賃貸住宅を中心とした劣悪な住宅ストックや防災上危険な密集市街地が存在する等未だ良好な居住を確保するために必要な本格ストックが形成されていないほか、終戦直後から高度経済成長期に形成された住宅ストックの老朽化、陳腐化が進行する可能性がある。
 このため、今後我が国の住宅ストック、居住環境を、少子・高齢化の進行、環境問題の重要性の増大、安全性、快適性等に関する国民の居住ニーズの高度化、多様化等経済社会の潮流の変化を踏まえた21世紀の本格ストックとして早急に再生することが重要である。
 @21世紀に向けた良質な住宅ストックの新規形成方策
 住宅ストックの再生のためには、新規に形成される住宅ストックの質を持家、借家にかかわらず良質なものとしていくことが不可欠である。このため、持家については、その質の誘導に一層の力を注ぐとともに、国際的にみてもその面積が著しく狭小なものとなっている借家については、広くて良質な借家が供給される市場環境を早急に整える必要がある。また、住宅全体について、環境問題の顕在化、情報社会の進展等経済社会の潮流の変化に対応したストックの形成を誘導する必要がある。
  @)高度化・多様化した国民の居住ニーズに応えうる新築住宅市場の環境整備
   ア)良質な住宅の健全・確実な取得支援
     国民が自らの努力に応じて良質な住宅を取得できる環境を整えることは、若年者の夢や勤労者、高齢者の安心に支えられた安定的な経済成長や健全で活力にあふれた社会につながるものである。また今後良質な住宅ストックを社会全体として利用する傾向が強まることを勘案すれば、税制、融資等各種施策により、無理のない負担での国民の住宅取得の下支えを行うことはもちろん、良質な持家ストック形成に関する質的な誘導機能の充実を図るべきである。

   イ)良質な賃貸住宅の供給促進
     持家と比較して著しく狭小な賃貸住宅については、健全な賃貸住宅産業の育成とともに、定期借家制度の普及、定着、消費者、供給者が主体的に適切な判断を行いうる情報の提供、賃貸住宅の市場ルールの確立等の市場活性化のための環境整備を行うことを基本としつつ、公共賃貸住宅の供給促進、税制、融資等の施策による民間事業者による良質な賃貸住宅ストック形成の促進を図るべきである。

   ウ)住宅品質確保促進制度の着実な実施
     新築住宅市場における良質な住宅の供給を確保するため、住宅品質確保促進制度の着実な実施が重要である。その際、中小住宅生産者による住宅性能表示制度への対応及び瑕疵保証の導入を円滑化することを通じその普及を促進することが必要である。

   エ)住宅のライフサイクルを通じたコスト削減
     住宅の建設、維持管理、建替え等各段階におけるコストを削減するとともに、多世代が住み継げる耐久性の高い住宅の整備を促進することは、国民の住宅取得、保有に関する負担を軽減し、居住の質を向上させることにつながる。このため、長期耐用住宅に関する技術開発を行うとともに、消費者への情報提供、良質かつ低コストな資材・部品の普及促進など、適正な市場競争を通じたコスト削減が行われるための環境整備を図ることが必要である。

  A)経済社会の潮流の変化に対応した新たな住宅ストックの形成
    住宅は中長期的に国民生活を支え続ける基盤であるという性質から、住宅ストックの新規形成に当たっては、今後の経済社会の潮流変化を十分に勘案したものとする必要がある。このため次のような新たな住宅等について、リーディングプロジェクトの実施、官民の技術交流を推進することにより、市場の環境整備、誘導を図ることが必要である。

   ア)環境問題の重要性の増大に対応した住宅ストックの形成
     近年、地球温暖化等の地球環境問題、廃棄物問題等の地域環境問題が深刻化するとともに、シックハウス問題に関する指摘がなされている。住宅分野においても、これらの問題を重要な課題として位置付け、廃棄物発生の抑制、リサイクルの推進、省エネルギー対策、自然環境との調和等に対応し、健康で快適な居住空間を確保した住宅ストックの形成を誘導する必要がある。
    a)スケルトン住宅等長期耐用住宅の整備
      建設廃棄物の問題等環境問題の重要性が高まる中、高い耐久性を有し、かつ居住者のニーズに応じて改変可能なスケルトン住宅等の長期耐用住宅の整備に対する支援措置を講ずる必要がある。
    b)住宅分野でのリサイクル等廃棄物対策の推進
      建設廃棄物対策としては、廃棄物発生抑制のための住宅・建築物の長寿命化、再生利用を促進するための分別解体への配慮、リサイクルの推進等を図ることが重要である。特に住宅分野におけるリサイクルに関しては、リサイクル材の供給、活用を適切に行いうるリサイクル市場の整備を促進する必要がある。
    c)環境共生住宅の整備及び室内環境対策の推進
      省エネルギーのみならず、自然・未利用エネルギーの活用、リサイクル等による省資源、自然環境との調和など地域の資源を活かしつつ環境への負荷を軽減する環境共生住宅の普及を促進する必要がある。
      また、室内において建材等から発生する化学物質等による人体への健康被害が指摘されており、健康で快適な居住環境を確保する住宅に関する基準、指針等を整備するとともに、それを踏まえつつ住宅金融公庫融資の活用による健康に配慮した住宅整備を促進する必要がある。また、住宅の化学物質対策に関する相談体制を充実するとともに、改修技術の研究開発や化学物質濃度の簡易測定器の利用を促進することが必要である。

   イ)情報化技術を活用した新しいコミュニケーションを支える情報化住宅の整備の推進
     高度情報社会が進展する中で、高齢者等の安全性・利便性の確保や、在宅勤務、在宅学習等の円滑な実現に向けて、情報化住宅の仕様や設計指針等に関する検討を通じて住宅の情報化を推進することが必要である。

 Aストック社会、循環型社会にふさわしい住宅ストックの新たな更新、維持管理のあり方
 今後の国民の居住水準の向上を支える良質なストックの再生を図るためには、我が国の住宅ストックにおいて大きなウェイトを占め、今後の老朽化、陳腐化が懸念される高度成長期ストックの更新を推進することが重要である。特に昭和40年代ストックのウェイトが高い公共賃貸住宅ストック、技術的、制度的対応の困難性が高いマンションストック、ストックの質が著しく劣っている民間賃貸住宅ストック等については、ストック更新における重点的な取組みや新たな制度的な検討を行うことが求められている。

  @)公共賃貸住宅ストックの新たな活用方策
    国民共通の資産である300万戸余りの公共賃貸住宅を今後良質なストックとして維持し、改善・更新していく上で最も重要なことは、少子・高齢社会の社会的ニーズに対応したストックとして再生していく視点である。
 特に公共賃貸住宅ストックの約4割を昭和40年代のストックが占め、今後一斉に建替え時期を迎えることが予想されており、少子・高齢社会にふさわしい住宅ストックへと再生する手法の充実、活用が重要な視点である。

   ア)ストック活用に係る総合的計画策定の推進と計画に基づく的確な改善・更新
 近年のストック改善・更新に係る取組みは建替事業を中心に展開されてきたが、今後40年代ストックの改善・更新を円滑に進めるためには、ストックの特性や地域のニーズを踏まえた手法の選択を行い、効率的なストックの活用を図ることが必要である。このため、各都道府県、事業主体が、住宅マスタープラン等において公営住宅等公共賃貸住宅ストックの総合的活用のための計画を策定し、的確な整備と管理を実施することが重要である。

   イ)多様な手法の選択によるストックの総合的な活用
     公営住宅をはじめとした公共賃貸住宅ストックの効率的な更新を図るため、ストックの総合的な活用計画に基づいて、建替え、長期間管理することを前提とした全面的な改善を行うトータルリモデル事業、個別改善等各種手法を、住宅ストックの耐用年限等の物理的特性、住戸規模、費用対効果等を勘案しつつ、総合的に展開することが必要である。
     また、改善事業を効果的に実施するために、工期を短縮させる技術、居住者が入居したまま改善を進める技術、エレベーターの効果的設置に係る技術等の開発、普及を推進すべきである。
     さらに、改善事業は、居住者の移転の問題や耐用年限を残している部材、部品の廃棄などにより費用がかさむ側面もあるため、費用対効果を適切に評価するための手法を開発することが必要である。

  ウ)住宅性能の水準の設定等を踏まえた公営住宅家賃の算定方法の検討
  居住水準における住宅性能の水準の設定や住宅ストック改善の推進など新たな住宅政策の課題に配慮した公営住宅の家賃算定方法について、各事業主体の家賃の設定状況等を踏まえて検討を行うべきである。

   エ)地域整備との連携による地域に融合した団地の再生
     公営住宅をはじめとした公共賃貸住宅団地は、比較的大きな敷地規模、ゆとりある土地利用等地域のコミュニティ形成に活用しうる空間資源を有しており、今後、公共賃貸住宅団地の再生に当たっては、地域のまちづくり等への貢献の視点を重視していくことが重要である。このため、公営住宅と公団、公社住宅、特定優良賃貸住宅等の併設による、年齢等居住者属性のバランスのとれたコミュニティの形成や地域特性を勘案した商業施設、福祉施設、図書館等の文化施設の導入、透水性舗装の採用、植栽の充実等環境問題への対応など、地域に融合した団地の再生を目指すべきである。

   オ)公団既存賃貸住宅ストックの活用等
     公団、公社の既存賃貸住宅ストックは、国民共通の財産であり資源であることから、その有効活用を図っていく必要がある。このため、建替えに加え、既存賃貸住宅においてバリアフリー化、間取りの改善等を行うリニューアルや、同一団地での建替えとリニューアルの実施等により、効果的なストック活用を推進するとともに、公団、公社の既存住宅ストックの建替えに当たって、土地の適正利用を図り、社会福祉施設等との併設や公営住宅、民間住宅等の敷地として一部敷地を譲渡し、多様な住宅供給を促進する必要がある。

   カ)公営、公団、公社の各事業主体間の連携強化と統合的運用による居住者属性に応じた住替え促進
     公共賃貸住宅ストックを効率的かつ的確に活用し、真に必要とする者に供給する観点及び入居希望者による適切な住宅の選択を可能とする観点から、公営、公団、公社の各事業主体間の連携を強化するとともに、募集に係る情報提供や募集業務等の統合的運用について検討を進める必要がある。
  A)マンションストックの新たな更新・維持管理方策
    いわゆるマンションには、我が国の人口の約1割が居住しており、2000年に築後30年を超えるものが約12万戸、築後20年を超えるものが約93万戸となるなど、今後、築後相当の年数を経たものが急激に増大していくものと見込まれている。一方、マンションストックの維持管理、更新については、多数の世帯が集住するという特性から、さまざまな技術的、制度的課題を抱えており、現状のまま何ら対策を講じなければ、老朽化したマンションストックの増大に伴う区分所有者自らの居住環境の悪化のみならず、周辺の住環境や市街地環境の広域的な悪化をもたらしたり、都心部をはじめとした合理的な土地の有効利用の隘路となる可能性がある。
 このような状況を踏まえ、マンションの適切な維持管理、建替えの円滑化を図るための制度構築、公的支援を実施していくことが必要である。

   ア)マンションストックの適切な維持管理に関する支援の充実
     マンションの質・価値をできる限り長く保持するため、適切な維持管理がなされるよう以下の仕組みを構築、推進すべきである。
    a)適切な維持管理が評価される仕組みの整備
     管理組合の運営状況、修繕や耐震診断・改修の実施状況、建築基準法に基づく定期検査の報告状況等の情報開示を行い、適切に維持管理されているマンションが市場において評価される体制を整備すべきである。
    b)計画的な修繕の実施
      修繕積立金の不足をはじめとする課題に対応するため、マンション修繕積立金を住宅金融公庫が受け入れる制度の活用を図るとともに、長期修繕計画策定の促進、リフォーム技術の開発等の施策を実施するほか、マンションの修繕に対する支援のあり方の検討を行うべきである。
    c)総合的な相談・支援体制の整備
      マンションの維持管理等については、技術的・法律的な専門知識が必要であることを踏まえ、相談窓口の設置、管理や修繕に関するアドバイザーの派遣等による情報提供等の措置を講じるとともに、管理組合が自ら管理会社を選別できるように、管理会社の情報開示や、マンション管理業に関する制度的な検討を進めるべきである。
    d)管理規約の整備
      居住者の高齢化、ストックの賃貸化・事務所化等の居住実態や小規模マンション、等価交換方式のマンション等の分譲形態に即した管理規約の見直しを促進すべきである。

   イ)建替えに対する支援
     建替えが必要なマンションについては、建替えが円滑になされるよう以下の仕組みを構築すべきである。
    a)建替え方針決定等の合意形成支援
     技術的・法律的な専門知識の不足、区分所有者間の意見調整の難しさ等から、マンション建替えの前提となる建替え方針の決定が困難である現状を踏まえ、準備組織の活動支援や専門的相談システムの整備等建替え方針決定までの合意形成が円滑にできるための支援を行うべきである。
      特に築後経過年数が長いマンションにおいては、高齢者や低資力者など多様な属性の世帯が混住し、合意形成が困難な状況となっていることから、こうした者の居住の安定、建替え期間中の仮住居等に対する支援施策を実施すべきである。
    b)事業実施支援のための制度スキームの検討
     建替えの事業面について、事業実施主体の確立や権利の保全等事業の安定的かつ円滑な実施のための制度的枠組みを検討すべきである。その際、融資・補助の活用などの総合的支援方策を講ずることを併せて検討すべきである。
    c)公庫融資の活用等
     老朽マンションの建替えをスムーズに推進するため、住宅金融公庫融資の優遇措置の活用や、高齢者の継続的な居住を支援する建替え費用に係るリバースモーゲージ的融資等を検討すべきである。

  B)賃貸住宅のストックの更新
    住宅ストックの更新に当たっては、持家に比して著しく狭小な賃貸住宅ストックの面積バランスを改善していくことが重要な課題である。また都市において多数存在する老朽木造密集市街地は、都市への急速な人口流入を背景として、十分な基盤整備なしに低質な賃貸住宅が多く建設された地域であり、賃貸住宅と市街地の一体的改善が不可欠である。

   ア)広くて良質な賃貸住宅への建替え促進
     定期借家制度の普及促進をはじめとした各種市場環境整備や不動産の証券化手法の開発を通じて、土地を保有している者のみならず、企業によっても賃貸住宅供給が行われる競争的な市場を通じた良質なストックへの更新を促進することが重要である。これらの民間賃貸住宅事業者のストック更新を促進するため、税制上の措置、住宅金融公庫の融資や特定優良賃貸住宅制度の活用等を行う必要がある

   イ)老朽木造密集市街地等における賃貸住宅ストック更新
     老朽木造密集市街地等における賃貸住宅ストックの更新に当たっては、賃貸住宅と市街地の一体的改善が必要である。このため、密集市街地等における計画的な老朽住宅等の共同協調建替え等を支援する都市居住再生融資の活用と、これと連携した各種面的整備事業の推進が図られるべきである。

  C)リフォームの推進を通じた持家住宅ストックの再生
持家住宅についてリフォームの推進を図ることは、既存住宅ストックの活用を通じた良好な居住を効率的に確保するという観点からも、良質な住宅ストックの増大という観点からも重要である。
 このため、住宅金融公庫を活用してバリアフリー、省エネルギー化、耐震化等のリフォームを推進する等、リフォーム投資に関する支援のあり方を検討する必要がある。

 B都市の居住地再生
 従来の成長社会に対応して形成されてきた都市構造・地域構造を、これからの成熟社会における持続的発展と充実した国民生活を支え、国民の居住環境に対するニーズの高度化・多様化に対応する都市構造・地域構造へと再編していく必要がある。
 また、我が国の都市における居住環境は、防災上危険な密集住宅市街地や通勤時間の長時間化等のさまざまな課題を抱えている。成熟社会における豊かな都市居住を実現するためには、住宅ストックの再生を図るのみならず、安全で快適な住宅市街地環境の改善を図ることが急務である。

@)都心居住の推進と密集市街地の整備等による快適で安全な住宅市街地の形成
   ア)都市居住の快適性の確保
     大都市圏等においては、都心空洞化等の都市構造の問題を改善し、良好な居住環境の形成を図るため、都市機能の更新を図りつつ、都市居住の再生を推進していく必要がある。
     このため、工場跡地等の低・未利用地の有効利用を図りつつ、職住近接型の良質な住宅供給や良好な居住環境を備えた住宅市街地の整備を総合的に推進することが必要である。その際、少子・高齢化、環境問題、コミュニティの形成等の課題に対応しつつ、安全、安心で快適に暮らすことができる魅力ある地域社会の形成に努めることが重要である。
     特に都心地域については、都心部での良質な住宅供給を促進し、居住に関する機能の向上、都心空洞化の改善等を図ることが必要である。
     また、地方都市等においては、中心市街地の活性化に資する住宅市街地整備を推進する必要がある。

   イ)都市居住の安全性の確保
 都市に多くの密集市街地が存在する現状を踏まえ、国民の安全な都市居住の確保を図るため、地方公共団体が策定する住環境整備方針に基づき、各種の面的整備事業の推進、機動的な住宅地区改良事業の導入の検討、建ぺい率制限を緩和する制度の活用による狭小な敷地における建替えの促進などの方策を講じる必要がある。
その際、賃貸住宅、非住宅用建築物が混在している地域においては、住宅金融公庫の都市居住再生融資の活用によりこれらの建替えの促進を図ることが効果的である。
また、このような地域においては、その実情を踏まえたきめの細かい対応が必要であり、地域になじみが深い公的機関である地方住宅供給公社と地域住民とが一体となった取組みなどを推進することが必要である。
     さらに、住宅の耐震性の向上を図り、地震に強いまちづくりを進めるため、新耐震基準以前に建設された住宅について耐震診断、耐震改修を推進するとともに、住宅の耐震性能を地震保険の保険料率に一層反映させることについて検討を進めるべきである。


   ウ)公共施設等との一体整備による居住環境の向上
 住宅供給と一体となった公共施設の整備については、これまでは住宅の供給に主眼をおいて新市街地の開発に伴うものの計画的整備が図られてきたところであるが、今後既成市街地の再整備を住宅市街地整備の重点分野とすることから、都心居住、密集市街地の整備改善等の政策目的に対応して、都市基盤整備公団の制度の活用も含め、既成市街地における居住環境の向上に資する公共施設等の整備を総合的に推進することが重要である。

   エ)都市基盤整備公団を活用した住み良いまちづくりの推進 
 都市居住の再生に当たっては、都市圏全体を視野に入れた広域的な取組みが求められる。そこで、都市基盤整備公団を活用し、大都市地域の都心地域等において、低未利用地等を活用した都市構造の再編に寄与する住宅市街地整備を推進し、民間住宅事業者と連携を図りつつ、賃貸住宅供給を重点的に実施することが必要である。その際、特に都心地域等の利便性の高い地域において、賃貸住宅の供給に取り組む場合には、中堅所得層を中心としつつ、事業内容に応じて幅広い所得層も対象として、良質な賃貸住宅ストックを形成することが重要である。
 また、地域の実情を踏まえたまちづくりを推進するため、都市基盤整備公団をはじめとした公的主体がこれまでに培った信用とノウハウの積極的な活用を図るべきである。

   オ)住民、NPOと連携した修復型の住宅市街地整備の推進
 零細な地権者が多く権利関係も複雑である地域における修復型の住宅市街地整備においては、地域住民とNPOの活動との連携を推進することも有効である。そこで、既成市街地における再開発に必要な権利調整に関わるコーディネーター等を育成するとともに、NPO等の活動を活性化するためその支援のあり方を検討する必要がある。

  A)経済社会の新たな潮流に対応した住宅供給と居住環境整備
   ア)高度化多様化する国民の居住ニーズに対応した住宅供給、居住環境整備
     都市居住の快適性を向上させるためには、在宅勤務、コーポラティブハウジング等の新たな居住ニーズに対応することにより、職住近接に対するニーズや、ライフスタイルに応じた多様な住まい方を実現していくことが必要である。特にSOHOは、今後多様化することが予想される国民のワークスタイルを居住面で支えるものであり、例えば女性の在宅勤務を支援することを通じて、少子化対策としても有効であることから、住宅の面からその普及に応えられるようにする必要がある。
     また、国民の居住環境の質に対するニーズの高度化を踏まえ、地域の文化等を反映した良好な景観等を有する街並みを保存し育てる観点から、例えば地区計画、建築協定等の活用とともに、地方公共団体や各地域の良好な街並み形成のための主体的な取組みを積極的に支援すべきである。

   イ)都市基盤整備公団による先駆的な技術の普及
     都市基盤整備公団において環境、景観、長期耐用性等先導性の高い集合住宅プロジェクトや、先駆的な技術の普及を実施することにより、都市における新たな住まい方の定着を推進することが必要である。

   ウ)人にやさしいまちづくり
     高齢者・障害者の安心居住を実現するためには、住宅自体のバリアフリー化を図ることのみならず、アプローチや住宅周辺のアクセス整備、全ての人が安全かつ円滑に移動できる道路、公園等の生活基盤整備、高齢者・障害者に配慮した建築物の整備を図る必要がある。また、商業、文化機能等がコンパクトに集約された歩いて暮らせるまちづくりを推進する視点も重要である。

   エ)証券化手法等を活用した再開発の推進
     良好な住宅市街地の形成を推進するためには、公共施設等の基盤整備と一体となった再開発を進めることが重要であるが、その際、信託、不動産特定共同事業、証券化等地権者の参画方法や保留床の処分方法の多様化を図ることを検討していくべきである。

 C交流居住等多様なニーズに応えた新たな地域居住の創造 
  @)地域活力の活性化に資する住宅供給の促進やまちづくりの支援
    中心市街地、中山間地域等活力低下が懸念される地域の活性化を図るため、地域の産業政策や地域振興策と連携した定住用住宅等の整備や地域の文化、景観を含む地域資源を活用した個性豊かなまちづくりを支援する住宅の供給促進を図ることが重要である。
    また、地方部の深刻な高齢化に対応するため、高齢者の生活、介護を支える住宅、居住環境の整備と近隣社会コミュニティの再生を図ることが重要である。このため、例えば、住宅と福祉・医療施設等とを情報通信網で結び、効率的な在宅介護等を実現するためのモデル団地の整備方策を検討すべきである。

  A)都市と地方の連携を促進するマルチハビテーション等への支援促進
国民の居住ニーズが多様化し、マルチハビテーションの普及が予想される中で、特に豊かな自然環境を有する地域で家族とともにゆとりある生活を過ごす田園居住に対するニーズが増大するものと考えられる。このため、田園地域の中に生活の本拠を持ったり、週末をそうした地域の住宅で過ごすなどの居住形態を選択する人々も今後増加するものと考えられる。こうした動きは、そこに住まう者の豊かな居住のみならず、都市と地方の交流を通じた地域活力の維持、増進にも寄与するものであり、融資、税制上の措置等の活用に加え、田園住宅への支援措置のあり方について検討を行う必要がある。
 また、勤労者がサテライトオフィス勤務や在宅勤務を行うテレワークの普及は、こうした動きを加速するものと考えられ、地方での在宅勤務を可能とするSOHO等への支援を行う必要がある。


 D良質なストック誘導型税制・融資の構築
 住宅は、国民生活、子育て、教育等の場であるとともに、良質な住宅ストックは、一種の資本蓄積として中長期的な経済発展の基礎となるものである。
 特に持家政策の推進による良質な住宅ストックの形成促進はその中核であり、無理のない負担の下で国民自らの努力による良質な住宅ストックの形成を促進することは、国民の豊かな居住を確保するとともに我が国の中長期的な発展基盤を形成する観点からも重要である。また、ストックの質の面から立ち後れている民間賃貸住宅については、良質なストック形成を民間事業者が円滑に行いうる環境整備を早急に行う必要がある。

 i)税制のあり方
 住宅に関する税制は広範にわたっているが、過去の厳しい住宅事情への応急的対応や土地神話の下で形成されてきた側面もあり、今後の良好な住宅ストックの形成・流通を促進する政策的方向に沿ったものとなるよう、新たな住宅政策に即した視点でそのあり方を検討していく必要がある。

   ア)持家ニーズに対応した住宅の取得等に対する安定的かつ効果的な支援のあり方
良好な住宅ストックの形成促進に当たっては、自助努力を前提としつつ、無理のない負担の下で国民が住宅の取得等が可能となるよう、住宅取得能力の向上を図ることが住宅政策上の課題である。
     この場合、税制上の支援策は、返済のための自助努力を前提とした借入者支援の形をとるという、民間活力型の支援策として意義がある。
     かつての住宅取得促進税制や現行の住宅ローン控除制度については住宅の取得促進のほか、経済対策としての側面があることは否めないが、今後、良好な住宅ストックの形成を誘導するための税による支援方策として安定的で効果的な仕組みの確立が必要である。
     また、贈与税全体のあり方が見直される場合には、過度に借入金に依存せずに住宅資金の円滑な確保を図る観点から、親世代の資金贈与によって住宅の取得等を行った場合の支援のあり方についても併せて検討すべきである。

   イ)良好なストックの流通を促進するための税制のあり方
     住宅の流通に関する税は多くの税目があるが、税の負担水準、課税対象の重複などの問題が指摘されている。これらの税制は、良質な住宅ストックの流通を阻害しないよう検討が必要である。
     また、住宅に関する付加価値税については、税率の高い欧州諸国等では、住宅の譲渡に関する非課税、ゼロ税率、軽減税制、税額還付の制度や住宅の賃貸借に関する非課税制度が広範に存在している。
     我が国においても、住宅の賃貸借は非課税とされているが、住宅の譲渡は課税とされており、中長期的な見地から、消費税が見直される場合には、諸外国の動向も参考に、住宅の譲渡について、住宅ストックの円滑な流通や国民の住宅取得能力を低下させないよう、十分な配慮が必要である。

   ウ)不足している良質な賃貸住宅の供給を支援するための税制のあり方
     良質な賃貸住宅の供給促進という観点から、賃貸住宅供給者への支援のあり方について検討が必要である。特に、高齢者向け住宅など、従来の市場では十分な供給が期待できない賃貸住宅の供給促進策が重要である。

   エ)住宅の譲渡に関する税制のあり方
 多様なライフサイクルに応じた買換え、住換えによってさまざまな居住ニーズを満たそうとする人々が増えるものと考えられ、このような住換えが円滑に行えるよう検討を行う必要がある。

   オ)リフォームに関する支援のあり方
 住宅のリフォームは、わが国の住宅政策において、今後、ますます重要な意義をもってくると考えられるので、リフォームのニーズと今後の市場拡大の動向を見極めつつ、その支援策を検討していく必要がある。また、マンションの修繕に対する支援策についても検討していく必要がある。

  A)良質な住宅ストックの形成を促進するための住宅金融公庫融資の活用
成熟社会における豊かな居住を実現するためには、景気動向や金融情勢にかかわらず、長期、固定、低利の住宅資金を安定的に供給し、良質な住宅の健全・確実な取得の支援を行うことが基本的に重要であるが、住宅金融公庫について、今後の住宅政策の方向性、金融環境の変化等を踏まえ、良質なストックの形成、都市の居住環境整備等の分野において、その役割を一層強化することが必要である。

   ア)良質な住宅の健全・確実な取得の支援
社会的資産としてふさわしい住宅ストックを形成するという観点から、住宅金融公庫融資の活用により耐久性の高い住宅ストックの形成と適切な維持管理を促進する必要がある。この際、従来のような右肩上がりの所得や地価の上昇が見込まれない中で、住宅宅地債券制度の活用等により、健全・確実な住宅取得支援を的確に実施する必要がある。

   イ)新築・中古及び持家・借家のバランスのとれた住宅市場の整備
     適切な維持管理やリフォームに関して大きなインセンティブを与えることによりストック循環型市場を構築するため、良好な状態に維持された住宅に対して新築並みの融資条件で貸し出す住宅金融公庫の中古住宅購入融資や中古住宅購入とリフォームの一体融資の活用を図る必要がある。
     また、我が国の賃貸住宅ストックの質の改善を図るため、専門的な経営ノウハウを持った主体によるファミリー向けの賃貸住宅供給を促進する賃貸住宅融資における土地・借地権取得費融資の積極的活用が期待される。

 
(2)既存ストック循環型市場の整備による持続可能な居住水準向上システムの構築
 今後の住宅政策において極めて重要な視点は、良質な住宅が循環することにより、国民の多様な居住ニーズに応じた選択肢を適正な価格の下で提供でき、消費者が安心して選択できる住宅市場の環境を整備することである。
このために、新築住宅市場のみならず、中古住宅、賃貸住宅等ストックの流通に関する市場において、多様な選択肢が十分に提供されるとともに、競争的でアクセスしやすいリフォーム市場において、住宅ストックの質の維持、改善を容易に行いうる環境が整っていることが不可欠である。このような住宅ストックの維持、改善と流通によって支えられた「既存ストックを活用した居住水準向上システム」は、住宅の利用者側には、「より多様な選択肢が競争を通じて形成された適正な価格の下で提供されるシステム」を意味するものであり、一方で、住宅の所有者にとってみれば、「現時点での「居住」サービスを享受する一方で、将来的には中古住宅として売却したり賃貸化して活用するという選択肢の確保を可能とするシステム」を意味するものである。
 こうして、勤労期に住宅資産として投下した資金が市場を通じて回収する手段が確保されれば、個人の生涯を通じての住宅関連支出の負担の軽減につながることも期待される。
このため、新築住宅市場において良質な住宅ストックの形成を促進する環境整備を行うとともに、市場の機能が十分に発揮されていなかった中古住宅市場、リフォーム市場、賃貸住宅市場の活性化を図る必要がある。
 その際には、適切で十分な情報の提供、安心して良質な居住を確保できるルールの確立など消費者が安心して適切な選択を行えるよう特に意を用いる必要がある。特に高齢者の安定的な居住の確保、賃貸住宅への入居、ニーズに合致したリフォームの実施等のため、各市場に係る相談機能を地方公共団体や各種専門家との連携の上、充実することが必要である。
 なお、これらの取組みについては、その内容、スケジュールを記したアクションプランを策定し、これに基づいて公民連携の下で計画的に行う必要がある。

 @中古住宅市場の活性化のための取組み
  我が国の中古住宅市場の活性化のためには、
  ・(新築供給時)流通も想定した良質な住宅ストックの形成の促進
  ・(住宅保有時)履歴情報活用システムの構築による適切な維持管理、リフォームの促進による既存住宅ストックの質の維持・向上
  ・(中古流通時)性能評価・履歴情報等を活用した市場の評価の実現、中古住宅に係る保証体制の整備
を進めることにより、良質な住宅ストックが適切に維持管理されるとともに、流通市場において円滑に循環するための環境整備を行うことが必要である。

  @)良質な住宅ストックの形成の促進
 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(平成11年法律第81号)を適切に運用するため、当面、新築住宅を対象とした日本住宅性能表示基準及び評価方法基準の策定並びに評価体制等の整備を行い、住宅の新築時における性能表示制度等の普及等を図るべきである。
また、リフォームのしやすさを考慮した住宅設計の普及等により、流通も想定したストックの形成を促進することが重要である。

  A)履歴情報活用システムの整備
 住宅の適切な維持管理・リフォームを促進するためには、維持管理・リフォームの状態が建物の耐用年数や市場価値に与える影響を評価し、適正に反映できる体制を構築することが求められる。
 このため、中古住宅に係る性能表示制度について、評価技術の開発を行い、その表示項目、表示方法につき検討を行うとともに、リフォーム実施時に、その工事箇所、工事内容、工事時期、施工業者等の情報を記載した「リフォーム実施記録」を履歴情報として蓄積し、それを活用しうるシステムを構築することが必要である。
   具体的には、
・ 履歴情報として必要な事項の範囲とリフォーム実施記録の標準的な書式
・ 専門家の工事検査等によるリフォーム実施記録の客観性・信頼性を担保するための措置
・ 所有者による記録の保管に加えて、履歴情報を設計図書、仕様書、内訳書、登記簿、保証書等と併せて管理・保管するための体制整備
・ 中古住宅の検査・性能評価や売買時の評価に活用するための方策
等の検討を行った上で、これを公表し、民間機関、事業者団体等を活用したシステムの整備を促進することが必要である。

  B)分譲マンションの管理に係る登録制度の構築
 分譲マンションにおいては、その管理組合の活動を支援するとともに、適正な管理体制を備えたストックが市場で評価、流通しうるよう、管理規約、共用部分の長期修繕計画の策定状況、大規模修繕の実施状況など一棟全体に係る情報を専門的ノウハウを有する第三者機関に登録し、その内容の開示を促進し、中古マンション取引においてその活用を図ることが必要である。

  C)性能評価・履歴情報等を活用した市場の評価の実現
 流通市場における中古住宅の価格は現在、市場の需給状況、周辺での取引事例を踏まえて形成されているが、今後は履歴情報活用システムの整備、性能評価体制等の整備を踏まえ、多様で潤沢な情報の下で、適正な価格形成を促すことが基本である。このため、関連制度の整備を踏まえて、宅地建物取引業者、売主、買主、金融機関等を含む全ての取引関係者に対して、それら制度の周知徹底を講じていく必要がある。
 また、こうした周知徹底の一手段として、性能評価・履歴情報の提供の方法の標準化を行う等により、中古住宅の売買時における売主による情報提供を促進するとともに、宅地建物取引業者が媒介に際して行う価格査定のマニュアルについてもこれらの情報を適切に反映しうるよう見直しを行うべきである。さらに、中古住宅売買における専門職業家による建物評価制度との連携のあり方についても検討を行っていくことが重要である。

 A賃貸住宅市場活性化への取組み
定期借家制度の創設により、賃貸住宅の契約関係が明確になることが期待されるが、その効果が十分に発揮され、賃借人の多様な居住ニーズに対応した幅と厚みのある透明な賃貸住宅市場を構築するためには、定期借家制度の十分な普及、定着を図るとともに、
  ・ 賃貸住宅に係る相談機能の充実と市場ルールの明確化
  ・ 賃貸住宅経営・管理の適正化・多様化
  などの環境整備を行う必要がある。

  @)定期借家制度の導入等を踏まえた相談機能の充実と市場ルールの明確化
   ア)地方公共団体における相談窓口の充実
 定期借家制度の円滑な普及を目的に、現在地方公共団体に設置されている賃貸住宅に関する相談窓口において、「定期賃貸住宅標準契約書」や「原状回復」「リフォーム」等の各種ガイドラインの周知を含めた賃貸住宅市場の各種ルールの普及を図ることが必要である。また、弁護士等の各種専門家との連携により、賃貸住宅に関わる広範な問題に対応できる相談体制を整備することが必要である。
 また、賃借人と賃貸人・不動産業者との間に当たってトラブルの解決に資する第三者的な機能の強化についても検討する必要がある。

   イ)原状回復、リフォームなど賃貸住宅に関するルールの明確化
 賃貸住宅市場のルールの明示を一層推進するため、従来は賃借人に必ずしも認識がなされていなかった「原状回復」「リフォーム」等のルールについて、法律的な根拠も含めて明確化することが重要である。
 このため、「原状回復」については、平成10年3月に策定したガイドラインの普及促進を図ることが必要である。また、賃借人がリフォームを行う場合のルールが明確でないため円滑なリフォームの実施が阻害されている可能性があることから、必要費、有益費、造作買取請求権の対象の明確化、賃借人のリフォームの承諾の内容、範囲等の基準化、リフォームの技術的基準の明確化等を踏まえたガイドラインの策定を行い、その普及を図るべきである。

  A)賃貸住宅経営・管理の適正化・多様化
   ア)賃貸住宅の適正な管理・計画的な修繕の促進
 賃貸住宅の家主による計画的な修繕を促進するため、計画修繕マニュアルを策定し、その普及を図る必要がある。さらに、賃貸住宅の管理や修繕の状況についても、その管理体制等に関する情報の開示を促進することにより、賃貸住宅の維持管理や修繕の状況についても、市場での評価を受ける仕組みを構築する必要がある。
 また、賃貸住宅標準契約書の普及とともに、賃貸人が賃借人から預かる敷金や一時金等の保全措置など賃借人に対する保護を充実するべきである。
   イ)総合的なアドバイスを行いうる事業者・専門家の育成
 賃借人の求めるニーズの多様化に対応するため、賃貸住宅の家主の大部分を占める個人経営者に対して、的確にアドバイスできる事業者・専門家を育成する必要がある。
 この場合、賃貸住宅管理業者が従来の入居管理にとどまらず、例えば、賃貸住宅の商品性を高めるための、長期の使用に耐え、その間の維持管理や修繕の実施が容易なハード面での「設計施工」から、医療、介護、セキュリティ事業者との連携など市場性を重視したソフト面での「企画管理」までを対象にしてトータルにアドバイスを行うことができる事業者・専門家を育成する取組みを促進する必要がある。
   ウ)賃貸住宅管理業の適正化
 賃貸住宅の管理業については、その機能の多様化、役割の増大が期待されるところであるが、その大前提として賃貸住宅管理業の透明性、適切性の向上を図る必要がある。このため、その業務内容の明確化を図るとともに、現在、管理業者が一時的に預っている場合がある敷金、家賃等の保管ルールや保全措置について検討する必要がある。
 また、事業者に関する情報は、各企業・団体が自主的に情報を開示し、利用者の自由な選択を確保することが基本であり、今後もこれを促進することが必要であるが、一方で、利用者が多くの事業者を共通の表示によって比較することが可能となるよう、情報提供方法の標準化を行い、一般に公表することにより、事業者による自主的な情報開示を促進する必要がある。
   エ)サブリース等に係るルールの明確化
 賃貸住宅管理業者が賃貸住宅を一括して借り上げ、家主に対して一定割合の家賃収入を保証する「サブリース契約」は、家主にとってみればさまざまなリスクが回避でき、専門事業者による一体的な管理が期待できるものであり、その普及が予想される。このため「標準契約書」を策定し、契約関係の適正化を図るとともに、管理業者が貸し主として転借人から預る敷金や預り一時金等の保全措置などにより、家主・転借人に対する保護を充実するべきである。
 また、定期借家制度の導入に伴い、賃借人の事情による転居の際の第三者への転貸等についてのルールの明確化等を行うことが必要である。

  B)企業による賃貸住宅事業の推進
 賃貸住宅の供給は、土地所有者が資産活用として手掛けることが大半であるが、特に不足しているファミリー向け賃貸住宅については、不動産の証券化スキームの整備、定期借家制度の導入といった賃貸住宅をめぐる環境の変化を踏まえ、企業によっても良質な賃貸住宅の供給が行われるよう、賃貸住宅市場の整備を図ることが必要である。

 Bリフォーム市場活性化への取組み
 円滑な循環が可能な良質な住宅ストックの維持、改善を実現するため、また、居住者のその時々の身体状況や家族構成等に対応したリフォームの実施により、適切な居住サービスの享受が可能となるよう、
  ・ 施工の合理化、部品の標準化などによる技術の向上
  ・ リフォーム市場へのアクセスの向上のための体制整備
などによるリフォーム市場の環境整備を行う必要がある。

  @)施工の合理化、部品の標準化などによる技術の向上
   ア)リフォームのしやすさを考慮した住宅設計の普及
 リフォーム工事のコスト低減に資する住宅部品等の標準化を進めるほか、間取り、内装等の設計の自由度が高く、また更新も行いやすいスケルトン住宅の技術開発及びその普及を促進することにより、居住者のライフスタイル、ライフステージに的確に対応したリフォームを可能とすることが重要である。
 なお、部品の標準化を行うにあたっては、国際的な標準化の動向を参考にしつつ、適宜対応することが重要である。

   イ)多能工などによる合理化施工の推進
 現在、住宅部品等の規格の不統一、新築を対象とする既存の専門工事の細分化の傾向が、リフォーム工事における追加工事の発生を招き、リフォームの割高感、価格の不透明感をもたらす一因となっていることが指摘されている。この状況を解消するため、新築を中心とした設計・施工に関わる技術者に対して技術講習等を実施することにより、既存住宅の劣化状況等も的確に診断でき、居住者に適切な生活提案も併せて行うことのできる実践的な技術者を育成する必要がある。
 さらに、部品施工に関わる多職種をこなせる多能工を育成するほか、標準化部品やリフォーム合理化工法の開発を促進し、公共賃貸住宅における優先的な採用等により、その普及を促進する必要がある。

   ウ)個人でも取扱うことのできるリフォーム部品の開発、流通体制の整備
 自らの住宅は自らの手で維持管理、改善を行うことによって適切な居住環境を実現し、資産価値の維持を図る住意識を普及し、それを可能とする環境を整備する必要がある。
 このため、標準化され簡単な交換や施工器具により、リフォームできる部品等の商品化を進めるとともに、DIY店舗への住宅部品の大量供給に向けた製品モデルの開発及び住宅部品の取り付けマニュアル、仕様書等の整備等によるDIYショップ、ホームセンターを通じた一般への直接流通のシステムを拡充するべきである。
 その際、リフォームだけではなく、個人や家庭向けに住宅の維持管理に関する教育啓発を含めた住教育を充実していくことが重要である。

  A)リフォーム市場へのアクセスの向上のための体制整備
   ア)標準書式の整備
 リフォーム工事に伴うトラブルを未然に防止するため、リフォーム工事の内容を発注者である住宅の所有者が十分に理解でき、かつ、発注者と事業者がリフォーム工事の内容について認識の相違を生じさせないよう、契約書、保証書、見積書等について標準的な契約関係書類の整備・普及を図ることが必要である。
 また、リフォーム工事の手順や標準工事仕様書、参考設計図集など、リフォーム工事に係る情報を、技術者だけではなく広く一般にも提供し、発注者と事業者における情報基盤の共有化を行うことで、トラブルの未然防止を図るべきである。

   イ)リフォームに関連した保証・検査制度の整備
リフォームにおける消費者保護の充実を図るため、リフォーム工事についても、新築住宅と同様に、リフォーム工事保証、リフォーム工事瑕疵保証、リフォーム工事検査に関し、企業グループや保証機関による保険制度や指定性能評価機関の活用による体制の整備のための検討を行うべきである。

 ウ)リフォームに関する適切な相談・情報提供体制の整備
    a)相談体制等の整備
 これまで地方公共団体の相談窓口や、地域の公益法人において、リフォームに関する情報提供が行われてきたが、よりきめ細かな相談体制を確立するため、建築士、弁護士等の専門家、消費者団体、業界団体が連携し、住宅の所有者からの、リフォームを行うときの手続きの進め方、依頼先、コスト等の相談や、リフォームに係るトラブルの相談にまで応じられるような体制について検討すべきである。
 また、リフォーム工事に発生したトラブルを円滑、迅速に処理するためのノウハウの蓄積を行い、周知を図るほか、紛争の未然防止体制の充実について検討すべきである。
    b)事業者に関わる情報の提供
 賃貸住宅市場における取組みと同様に、各企業・団体が自主的に情報を開示し、利用者の自由な選択を確保することを基本としつつ、利用者が多くの事業者を共通の表示によって比較することが可能となるよう、情報提供方法の標準化を行い、一般に公表し、事業者の情報提供を促進する必要がある。
    c)リフォームに関するアドバイザーの育成
 今後のリフォーム実施の重要性に鑑みると、単にリフォーム工事を実施するだけではなく、適切な維持管理、住宅の性能の向上、各種制度の活用までをアドバイスできる人材の育成を図ることが必要である。このため、設計・工事監理に精通した建築士や、法的知識、紛争処理に通じた弁護士との連携を検討すべきである。

 C市場を通じた住環境の向上方策
 市場を通じた住環境の改善・向上のための条件整備の一環として、国民の適切な判断を促進するため、居住地の選択に当たっての住環境に関する適切な情報提供が必要である。このため、市場における住環境の各要素に対する居住者の評価状況を踏まえ、住環境に対する「居住地選択時の参考指標」を明示し、その普及を促進すべきである。この場合、住環境の各要素間には通勤時間と敷地規模などトレードオフ関係になるものも多いことから、国民の適切な判断を助ける参考データとして、例えば、住宅市街地の類型別に平均像を提示することが望ましい。また、当該指標の普及に当たっては、地方公共団体における住環境の現状や施策の方針に係る情報の提供等についても検討すべきである。

 D総合的な住宅サービス関連市場の育成
 今後、住宅市場においてストック重視の傾向が強まれば、住宅関連産業は新規の住宅建設といった短期的な視野に立ったものに加え、住宅の維持管理・リフォーム、検査、マンション管理、賃貸住宅管理といった長期的な視野に立った事業の展開にも重点を置いていくことが必要になるものと考えられる。こうした状況は、住宅産業と住宅をベースとして展開されるさまざまなサービス事業、例えば介護ビジネス、家事・育児支援などの子育て関連ビジネス、ホームセキュリティサービス、資産運用に関するコンサルティングビジネス等との連携を強め、住宅を中心とした総合的なサービス事業へ展開されていくことが期待される。
 国民の多様な居住ニーズに応えるとともに、今後の我が国経済を支える新たな産業創出を図るという観点から、これらの新たな産業活動に関する将来像の提示、支援等を検討する必要がある。

 
(3)少子・高齢社会に対応した「安心居住システム」の確立
 我が国では、今後、高齢化が急速に進行することが見込まれている。高齢化の進行には、身体機能の低下した者の増加、所得の低い者の増加等のマイナス面が指摘されているが、反面、高度な技術、経験を有する者、これまで蓄積した資産を活用しながら生活を楽しむことのできる者の増加等、高齢社会には、我が国の経済社会全体としてもプラスの側面があることを積極的に評価すべきである。
 しかしながら、我が国の住宅ストックは、特に民営借家でバリアフリー化が遅れているなど、高齢者が安心して快適に住生活を送ることができるような状況が整っているとは言い難い状況にある。また、一部の民営借家等において指摘されている高齢者敬遠傾向など、高齢者がそのニーズにあった居住サービスを選択できる環境が整えられていないのが現状である。
 今後の住宅政策の検討に当たっては、高齢化の負の側面を必要以上に大きく捉え、弱者という視点のみから政策を講じるのではなく、高齢者が末永く元気に社会活動を営むことができる環境を整備するという視点が重要である。このため、高齢者の自助努力、高齢社会の進展をビジネスチャンスとして捉える民間活力を十分に活かしつつ、市場を通じた高齢者の安心、快適、自立居住を確保することを、以下の視点を重視しながら目指す必要がある。
・ フローの所得のみならず、蓄積された資産の有効活用を図る政策の推進と、政策的支援が必要な者に対するセーフティネットの構築
・ 住宅の広さのみならず、住宅の性能や生活支援サービス等のソフト面に目を向けた政策の推進
・ 65歳以上の者を一括りに「高齢者」(=弱者)として取扱うのではなく、前期高齢者、後期高齢者等加齢に伴う身体機能の低下等に応じたきめ細かな政策の推進

 また、近年、合計特殊出生率は低下の一途をたどり、人口を維持するのに必要な水準を大幅に下回っている。こうした急速な少子化は、労働力人口の減少などを通じ、経済成長へのマイナス効果や地域社会の活力の低下など、将来の我が国の社会経済に広く影響を与えることが懸念されている。こうした少子化問題の基本的な背景としては、晩婚化、女性の社会進出、養育費の問題等の構造的要因が重なり合って生じているものと考えられるが、住宅が狭い、ローン返済や家賃が家計を圧迫していることなどの厳しい住宅事情も一つの要因となっていると考えられる。
 このため、住宅政策においても、仕事と子育ての両立に係る負担感や子育ての負担感を緩和・除去し、安心して子育てができるような環境整備を積極的に推進していくことが必要である。

 以上を踏まえ、少子・高齢社会に対応した好ましい居住環境を整備し、21世紀の豊かな成熟社会を実現するためには、「高齢者の安心、快適で自立した生活を支える住宅・住環境整備の推進」、「高齢者の多様なニーズに応えた居住選択の支援」、「福祉と連携した高齢者の生活環境の整備」、「家族の子育て負担を軽減する良好な住宅、居住環境整備」という方向に沿った「安心居住システム」を創り上げることが急務である。
 @持家住宅のバリアフリー化等の促進
  @)きめ細かなバリアフリー改修相談体制の構築
    今後、介護保険の導入を期に、バリアフリー改修に対するニーズが増加することを踏まえ、高齢者の身体状況に応じたきめ細やかなバリアフリー改修を支援する相談体制等を整備するため、地域住民、ケアマネージャー等の要請に応じて、建築士、作業療法士等の専門的知識を有するアドバイザーを派遣し、きめ細やかな相談に応じうる体制整備を福祉部局と連携して整備することが必要である。

  A)持家住宅のバリアフリー化を一層推進するための融資の活用
    持家住宅について、バリアフリー化が遅れていることを踏まえて、社会全体として高齢化に対応した良質な住宅ストックを形成する観点から、住宅金融公庫のリフォーム融資等の優遇制度を積極的に活用して、持家のバリアフリー化を推進すべきである。

  B)リバースモーゲージを活用したリフォームの促進
    高齢者が自らの持家資産を活用して、生活資金等を確保するリバースモーゲージについては、その普及のため、中古住宅市場の活性化が図られることなどが基本的に重要である。その普及のための一方策として、住宅資産を有する高齢者が、リバースモーゲージにより資金を借り入れてバリアフリーリフォーム又は建替えを行う場合についての支援を検討するとともに、改修資金等に関するリバースモーゲージの導入について、住宅金融公庫融資をモデルに、その負担のあり方も含めて検討すべきである。

  C)高齢者の住替えに係る支援
    定期借家制度の導入を期に、高齢者等が現に居住している持家資産を活用して高齢者向けの賃貸住宅に入居する等、今後、ライフサイクルに合致したより自由な住替えパターンが増加するものと考えられる。このため、高齢者が、住宅を売却等した上で高齢者向け賃貸住宅に住替える場合等の支援や、住宅金融公庫融資を受けている高齢者が一定の条件の下その持家を賃貸する場合の融資要件の弾力化を検討すべきである。

 A高齢者対応型民間賃貸住宅ストック形成のための制度構築
  @)高齢者対応型民間賃貸住宅等供給支援システムの構築
    急速な高齢社会の進行に対応した、今後の住宅の標準的仕様となるべき高齢者対応住宅ストックの形成を早急に進めるため、対象層を所得によって限定することなく、バリアフリー化、高齢者の入居の確保(例えば、賃貸住宅の一定割合を高齢者に割り当てる等)、適正な管理運営等に関して一定の基準を満たす住宅(グループ居住型の住宅も対象とする)の供給を促進する必要がある。このため、これらの高齢者対応型住宅を建設・改良により供給しようとする民間事業者等を支援するシステムについて検討すべきである。
    なお、高齢者を対象とした賃貸住宅については、高齢者の居住安定のため、その死亡により終了する借家契約(生涯借家契約)のあり方について検討すべきである。
    また、既存ストックの更新の観点から、公団、公社のノウハウ、技術力を活用した民間賃貸住宅の建替えについても促進すべきである。

  A)高齢者が敬遠されない民間賃貸住宅市場の環境整備
    民間賃貸住宅市場における高齢者の入居、住替えの円滑化による、高齢者の居住改善、住宅ストックの有効活用等を図るため、高齢者入居住宅の情報提供システム及びそれを支える大家不安解消システムを構築することを検討すべきである。

   ア)高齢者入居住宅登録システム等による情報提供体制の整備
  高齢者の入居が可能な民間賃貸住宅について大家、仲介・管理業者による登録を広く推進し、入居希望者への希望に合う物件の情報提供を行うシステムの整備に関する民間事業者団体等の取組みの促進を検討すべきである。

   イ)大家不安解消システムの構築
     高齢者のスムーズな入居が可能な民間賃貸住宅の供給を促進するため、例えば以下のような身体状況の変化や保証人がいない高齢者に対する大家の不安を軽減する仕組みを検討する必要がある。
・ 保証人がいない高齢者を受け入れ易くするための家賃保証システムの整備の促進
・ 成年後見の活用(高齢者の入居契約の際に、公益法人、NPO等と連携し、身体条件変化時の対応等を取り決める等)
・ 在宅介護支援センター等との連携( ア)のシステムに登録された住宅の入居高齢者について、同センターでの巡回、24時間相談、ケアマネージャーの紹介等の一定のサービスを提供する仕組み)

 B)民間事業者等の取組みに対する支援体制の整備
    @)、A)の動きを促進・補完する体制のあり方や、高齢者住宅に関する総合的な情報提供、福祉サービスの提供のために必要な各種団体との連絡調整、相談を行う仕組みのあり方について検討する必要がある。
    また、要支援、要介護者を含めた高齢者居住の安定の確保のため、その資産を活用しつつ民間を補完して公的なケア付き高齢者住宅の供給を行う体制を整備することが必要である。

 C)バランスのとれたコミュニティの形成等
    居住者相互のコミュニティ活動等の互助的な生活支援を確保するため、少子化対策として、多子世帯に対する賃貸住宅の供給を積極的に推進するなど、多様な住宅の一体的整備等によるソーシャルミックスに配慮したコミュニティの形成を図ることが必要である。
 また、民間賃貸住宅や公団賃貸住宅、公社賃貸住宅と地域開放型の利便施設との効果的な組合せわせにより、入居者にとってサービスの選択性が高い、フレキシブルな高齢者等の居住のしくみを構築すべきである。
    さらに、入居開始から数十年が経過した公団等のニュータウンについて、居住環境を更新していくための方策について検討すべきである。

 D)ニーズに応じた高齢者との同居・近居の支援
 高齢者とその家族の多様な居住ニーズに応える観点から、高齢者世帯と子供世帯等が、お互いに交流・援助しながら生活できる同居・近居をそのニーズに応じて実現できる環境を整えることが重要である。このため、高齢者等との同居に対応した住宅ストックの形成を公庫融資を通じて支援するとともに、公共賃貸住宅の入居者の選考等に当たって、高齢者世帯とその子供世帯等が近居を希望する場合には、地域の実情に応じ倍率優遇を実施する等の施策を充実・推進することを検討すべきである。

 B高齢化に対応した公共賃貸住宅政策の充実による適切な市場の補完の実施
 @)公共賃貸住宅の役割の明確化と積極的供給の推進
    今後の高齢者の急速な増加に対応しつつ、真に公的支援を必要とする者に対する的確な住宅供給を実施するため、自らの住居支出能力のみでは適正な居住を確保することが困難な低所得高齢者で、政策的支援が必要な者等を的確に選定し、その者に対する公共賃貸住宅供給を公営住宅及び都市基盤整備公団、地方住宅供給公社、民間事業者等を活用した高齢者向け優良賃貸住宅の的確な役割分担の下で推進することが必要である。

 A)エレベーターの設置等公共賃貸住宅ストックの計画的かつ効果的な改善・更新の推進
 公共賃貸住宅ストックについて、総合的な活用計画に基づき活用を図ることとし、建替え事業に加え、トータルリモデル事業(全面的な改善)など多様な手法を選択することにより計画的かつ効果的な改善・更新を推進し、少子・高齢化への対応等良質な公共賃貸住宅ストックの形成を図ることが重要である。
 あわせて、階段室型中層住宅を含む公共賃貸住宅へのエレベーターの設置等のバリアフリー化を積極的に推進すべきである。

 B)公共賃貸住宅におけるグループ居住推進のためのストック形成
 これまで、公共賃貸住宅の供給は、家族世帯に対する住戸の提供を中心に進められてきたが、高齢化を背景に、単身高齢者等がグループで互いに協力し合って共同生活を行うという新たな居住形態が生じている。そこで公共賃貸住宅においても、こうしたグループ居住に対応するため、福祉サービスとの連携を踏まえつつ、整備、管理に係る制度的対応を図るよう検討を進めるべきである。

 C)地域における福祉居住基盤の連携整備のためのアクションプランの策定等
 立地に優れた公共賃貸住宅の新設、建替に当たって、社会福祉施設等の整備と連携し、福祉居住基盤の拠点形成の一環としての公共賃貸住宅団地の整備の推進及び地域福祉サービスの効率的実施を図ることが必要である。このため、地域における公共賃貸住宅供給と社会福祉施設その他の福祉サービス拠点の施設整備との連携方針や概ね5年以内に着手する重要な連携プロジェクト等を内容とするアクションプランの策定を、各地方公共団体の住宅部局、福祉部局及び公共賃貸住宅事業者等とが連携し推進することが必要である。

 D)在宅介護の場として活用可能な公共賃貸住宅ストックの形成
   ア)単身要介護者を公共賃貸住宅で受け入れるための入居体制の整備
     介護保険制度による在宅介護体制の充実を踏まえ、福祉との的確な役割分担の下、要介護者であっても、在宅介護サービスを受けることにより単身入居が可能な場合には、できる限りその希望に応じて公共賃貸住宅への入居が可能となるよう、ケアマネージャーとの連携強化、介護保険制度に連動した公共賃貸住宅の単身入居に係る新たな基準の策定等により、要介護者の入居体制の整備を行うことが必要である。

   イ)特別養護老人ホームの退所者の公共賃貸住宅での受入れ
     介護保険の実施に伴い特別養護老人ホームから退所することとなる要支援者、自立の者(以下「退所者」という。)の一部の公共賃貸住宅での受け入れを、介護利用型軽費老人ホーム(ケアハウス)や高齢者生活福祉センターなどの福祉施設との役割分担を明確にしつつ、積極的に推進すべきである。
その際、施設から在宅への急激な環境変化に適切に対応するため、市町村による配食、軽度生活援助サービス等の提供や在宅介護支援センターによる見守りを行うことにより、退所者の社会的な自立を支援しつつ居住の安定を確保することが必要である。

   ウ)公共賃貸住宅におけるグループホーム事業の展開等
     単身では公共賃貸住宅への入居が困難な痴呆性高齢者の居住の安定に資する痴呆性高齢者グループホーム事業を、速やかに公共賃貸住宅において展開できるようにするとともに、これらの事業の公共賃貸住宅政策上の位置付けも含め、必要な制度の検討を行うべきである。 

 E)公共賃貸住宅における生活支援サービスの的確な提供
    現在公共賃貸住宅において提供されているLSA(生活援助員)の業務内容や責任の明確化を図るとともに、LSAを育成するための体制・環境整備を促進し、また、生活支援サービスの内容について、これまでの実態を把握、分析し、単身者、後期高齢者等そのサービスの必要性が高い者に対して的確に提供できる仕組みを検討すべきである。
  また、高齢化率が著しく高く、活力の低下やコミュニティ形成の困難化が懸念される公共賃貸住宅の既存入居者等に対しても、在宅介護支援センターからの職員派遣による生活支援サービスの提供をモデル的に行うことが必要である。

 F)募集情報等の総合的提供体制の整備
    高齢者等が、多様な主体による公共賃貸住宅、社会福祉施設等から自らに最も適した居住の場を選択できるよう、公営住宅等の公共賃貸住宅の募集情報等の総合的提供体制の整備を図るとともに、社会福祉施設に係る情報提供機関との連携を図るべきである。

 C家族の子育て負担を軽減する良質な住宅ストック形成
 @)ファミリー向けの良質な賃貸住宅の供給
 賃貸住宅においては、持家と比較し質の面で大きく劣っており、とりわけ世帯人員が増加するほど居住水準が悪化していることを踏まえ、ゆとりある住生活の実現により子育てしやすい環境整備を図る観点から、賃貸住宅の質の向上、特にファミリー向けの良質な賃貸住宅の供給が必要である。

 A)仕事や社会活動をしながら子育てしやすい環境の整備
 女性の社会活動の活発化に対応し、夫婦が仕事や社会活動をしながら子育てしやすい環境整備を進めることが重要である。そのためには、都心部における賃貸住宅供給により、職住近接のための都心居住の推進、地域に必要な保育所等と賃貸住宅の併設、学校の活用等福祉施策、教育分野との連携を積極的に図るほか、まちづくりにおける子供の遊び場の確保等誰もが住みやすい住宅宅地を目指すべきである。
 また、子育て期にある多子世帯が良質な住宅にゆとりをもって居住できるよう、公共賃貸住宅供給の仕組みについて検討すべきである。

 
(4)ストック重視、市場重視の住宅政策体系を支える計画体系の再編
 今後の住宅政策がストック重視、市場重視の観点から展開されることを踏まえ、これを支える計画体系においても、公的な住宅の供給に関する計画のみならず、市場メカニズムの活用を基本とし、市場との関わりを通じて居住水準の向上を図るという観点からの施策プログラムを重視していくべきである。
 また、今後の住宅計画体系においては、既存ストックの改善、円滑なストック循環による住替え等を含む住宅政策の内容とその目指すべき具体的な姿に関する明確なメッセージを市場に対して送ることによってその誘導を図るとともに、国民への十分な説明責任を果たすものとしていかねばならない。
 さらに、計画体系に掲げる施策について、国民の意見を聴きつつ評価を行い、それを将来の政策の企画立案に活かしていくことが求められる。

 @住宅計画体系のあり方
 住宅計画体系のあり方を考える上で、現在の我が国の「居住」の問題点の第一は、住宅建設計画法に基づく住宅の計画的整備が始められて以後30年以上経過しているものの、現状としては、ストック循環による居住水準向上の前提となるような本格的ストック形成が遅れていることである。
 この間、1人当たり住宅床面積やストック全体の面積バランスは改善されてきているが、借家が持家に比べ著しく小規模であるといういびつな構造は変わらず、世帯人員に応じた十分な規模の住宅が国民の多数に確保されているとはいえない状況が続いている。
 また、国民の住まいへの関心が規模のみならず性能や住環境を重視するようになっている中で、急速な高齢化に対応したバリアフリー化されたストック形成をはじめとした住宅ストックの質的な改善は緊急に取り組まれるべき課題となっている。
 第二の問題点としては、良質な住宅ストックの形成及び循環が行われるための、市場環境の整備が十分でないことである。
 今後、これらの問題点を解決するため、長期的視点に立ち、良質ストックの形成・維持及び円滑なストック循環を実現していくための施策を計画的に推進していくことが必要である。
 以上のような観点から、今後の住宅計画体系においては、
  ア 新築、建替え、リフォーム等の「ストック整備」に係る施策プログラムとそれによって目指す「住宅ストックの姿」の想定
  イ 市場の環境整備等「ストックの循環」の推進に係る施策プログラム
  ウ アとイによって目指す「居住水準の姿」の想定
  を明らかにしていく必要がある。

 A住宅・住環境の整備目標等
  i)整備目標等のあり方
 住宅建設計画法に基づき、住宅建設五箇年計画においては、計画期間内における住宅建設の目標量、公的資金による住宅の建設の事業量と、中長期的な居住水準等の目標を定めてきた。
 今後の住宅建設計画においても、我が国の経済社会の変化に伴う多様な住宅需要を的確に把握して計画期間内の目標量・事業量の設定を行うべきであるが、その際には、セカンドハウス等複数居住の増加など新たな需要動向に留意するとともに、既存住宅ストックの改善と、円滑なストック循環を実現するため、新築等と併せ、リフォームの推進についての目標を明示し、その実現のための施策プログラムを盛り込む必要がある。
 また、現行の第七期住宅建設五箇年計画における誘導居住水準の目標は、第五期住宅建設五箇年計画において、2000年を終期とする15年後の目標として設定され、以後の計画において引き継がれたものである。
 今後の住宅建設計画においては、現行計画の居住水準目標、住環境水準目標について、現状における達成状況を分析し、評価を行った上で、経済社会情勢の変化等を踏まえ、将来を見通し、全国レベルでの世帯数のピークである2015年を目標として、成熟社会の住宅ストックにふさわしい新たな目標を設定する必要がある。
 その際には、居住に対するニーズの高度化・多様化を踏まえた生活の基盤としての本格的な居住の場を実現することが求められていることから、ゆとりある住宅の規模はもちろんのこと、基本的な住宅性能を備え、良好な住環境を備えることを目指すべきである。
 また、居住水準・住環境水準の充実に当たっては、国民にとっての充足度に関する成果指標(=居住する世帯と住宅・住環境との関係による相対的な水準。住戸面積については、世帯人員別の必要住宅面積を満たす住宅に住む世帯の割合。)と、その達成のためのストック自体の姿(=居住する世帯の属性によらないストックの絶対的な水準。住戸面積については、住宅ストックの面積の規模別の構成。)を区分し、わかりやすい体系に整理していくことが適切である。

  A) 新たな居住水準のあり方
 現行居住水準の達成率は着実に向上してきているが、大都市圏、借家居住世帯、共同建住宅、3人以上の世帯等では相対的に低い状況に止どまっており、地域や世帯属性等によって達成率にかなりの差がみられる。一方、誘導居住水準以上の居住状況にある世帯の約8割が現住居の広さに満足しているなど、住宅の広さに対する居住者の満足度と現行居住水準の達成状況との間には強い相関が認められることから、現行の居住水準は広さに対する各世帯の要求を概ね的確に表していると考えられる。
 したがって、誘導居住水準については、今後さらに広い水準を新たに設定してこれを追求することよりも、現行水準を成熟社会における本格居住のための標準ととらえ、より多くの世帯がこの水準を享受できるように、達成率を高めていくことが適切である。最低居住水準についても、健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠な水準であることから、引き続き、すべての世帯が達成できるように努めるべきである。
 また、居住者の関心が住宅の規模だけでなく住宅性能等に広がっていること、住宅性能に対する社会的要請が高まっていること等から、住宅性能に係る水準をできる限り明示し、基本的性能を備えた本格的な住宅ストックの形成を図るべきである。

   ア)誘導居住水準及び最低居住水準
 誘導居住水準については、2000年時点で全国で約半数の世帯が達成するという現行計画の目標はほぼ達成される見込みである。今後、世帯数の増加が少なくなるため、新築(ストック形成)に伴う居住水準の向上が従来ほどには見込まれないが、住替え(ストック循環)による居住水準の向上等を含む2015年における誘導居住水準の達成率は、ファミリー世帯や共同住宅居住世帯においても半数程度が達成できるように、概ね全世帯の2/3が達成することを目指すべきである。また、東京圏及び大阪圏においては、全国に比べて居住水準の改善が遅れていることから、当面は、2010年において半数の世帯が達成することを目指すべきである。
 最低居住水準については、全国では未達成世帯は平成10年時点で約5%まで解消してきたが、大都市地域の借家居住世帯を中心になお相当数が存在していることから、引き続きこれに重点を置いて、未達成世帯の早期解消に努めるべきである。

   イ)住宅ストックの規模別構成
 現在の住宅ストックの構成は、小規模な借家と比較的大規模な持家が多く、その中間がやや少ない形に2分化している。今後、国民の居住水準の向上を図るためには、ストック循環型市場の整備を進めるとともに、それぞれの世帯ニーズに応じたスムーズな住宅選択が可能となるよう、バランスのとれたストックを誘導していくことが必要である。
 この場合、ファミリー世帯(3人以上の世帯)の居住水準の改善が遅れているが、少子化対策上も重要であることから、ファミリー向け住宅の必要数を確保することが必要である。また、中高齢の単身・夫婦世帯の増加等を考慮すれば、小規模世帯(1・2人世帯)向け住宅の質的充実が重要である。
 そこで、世帯人員別に誘導居住水準を満たす住戸面積を基本とし、以下のような小家族向け(単身・2人世帯に対応)とファミリー向け(3人以上の世帯に対応)の住宅ストックの構成の想定を明らかにしながら各般の施策を講じることによって、総体として2015年における誘導居住水準の目標の達成が図られるべきである。なお、この住戸面積の区分は、地域性等を考慮し幅を持って解すべきである。

     <住宅ストックの規模別構成>
 @ ファミリー向け住宅の確保のため、100u(共同建80u)以上の住宅の割合は、全ストックの約5割
 A 小家族向け住宅の充実のため、50u(共同建40u)以上の住宅の割合は、全ストックの約8割(ファミリー向け住宅を含む)
 B これに満たない小規模な住宅は、約2割以下

   ウ)住宅性能の水準
 住宅性能については、客観的な情報提供等により、居住者の選択を通じたストックの質の向上を図ることが基本であるが、@外部性の存在等から市場における対応だけでは限度があるもの、A今後ストックの増加を重点的に促す必要があるもの、については政策的に誘導する必要性が高い。このため、今後の本格的なストック形成・循環を前提に、住宅ストックが普遍的に備えるべき基本的性能を明示した上で、確保すべき水準やストック構成の目標をできる限り明確に示して質の向上を図るべきである。
 そこで、技術的、社会的条件を考慮しつつ、本格ストックとして備えるべき基本的性能について、建築基準法の規定や省エネルギー法の基準、住宅品質確保促進法に基づく日本住宅性能表示基準、長寿社会対応住宅設計指針等を踏まえ、以下のような項目で定めることが適切である。

    <住宅性能の指標及び水準(骨子)>
     a)多くの住宅において達成すべき共通の水準を示すもの
   ○耐久性、○高齢者等への配慮、○省エネルギー性、○耐震性、○防火性
     b)達成すべき共通の水準までは示さないが、項目を明示して向上を促すもの
   ○遮音性、○保健性、○開放性、○維持管理への配慮、○その他
      (技術的、社会的に水準の明示が可能になれば、上記a)へ移行)

 特に、高齢者等への配慮については、高齢者世帯数及び比率の急激な増加が予想される一方、加齢等による身体機能の低下が生じても基本的にそのまま住み続けられるような性能を備えた住宅(バリアフリー化された住宅)のストックは非常に少なく、これに対する不満も世代を問わず高い状況にある。このため、バリアフリー住宅に居住する高齢者の割合の引き上げ、特に身体機能が低下した高齢者への適切な居住の確保を念頭に置きつつ、ストック循環を考慮し、高齢者のいる世帯の数(2015年時点で全世帯の約4割)に見合う十分な量のバリアフリー住宅のストックを社会全体として備えることを目指して着実にストックの増加を図るべきである。なお、2015年において主として新築により「手すりの設置」「段差の解消」「車椅子で通行可能な廊下幅」等一とおりの基本的なバリアフリー化がなされた住宅ストックの割合は、現状では約3%であるのに対して、公民合わせた努力が講じられ、バリアフリー化が順調に進展することを前提に、全ストックの約2割とすることを目指し、このほか、居住者の個別の事情等に応じバリアフリーリフォームがなされた住宅を全ストックの約2割とすることを目指すべきである。
 なお、住宅性能表示制度の普及の促進及びこれに伴う住宅性能に係る定量的データの収集等を進めるとともに、住宅性能に係る水準値の設定、水準を満たすストック数の統計上の把握等が現時点で困難なものについては、調査の方法、データの蓄積等を早急に検討すべきである。

  B)新たな住環境水準のあり方
 住環境に関しては、大都市圏を中心に多く存在する防災上危険な密集住宅市街地についての早急な対策が求められるとともに、住環境に対する居住者の関心の高まりに対応し、地域の実情に応じた住環境整備の取組みを促進していく必要がある。一方、現行の住環境水準は、指標が多岐にわたるとともに定性的な記述が多く、住環境改善のための取組みを進めるための指標として必ずしも有効に機能していないという側面がある。このため、住宅市街地の基礎的な安全性を早急に確保するための、地方公共団体等による地域の実情に応じた主体的な取組みの有効な指標となるように、現行水準を抜本的に見直し、住環境に関する新たな指標を再構築すべきである。

   ア)基礎的な安全性等の確保
 住宅市街地の基礎的な安全性・防災性等を確保するため、緊急・重点課題として、大規模地震や市街地大火時の延焼危険性、避難・消火の容易性等の観点から、統計上の制約を考慮した上で「緊急に改善すべき密集住宅市街地」の基準を設定する必要があり、具体的には以下のとおりとすることが考えられる。

    <「緊急に改善すべき密集住宅市街地」の基準>
     一戸当たりの敷地面積が著しく狭小(65u未満)な住宅が大半(2/3以上)を占める密集住宅市街地のうち、次のいずれかに該当する地区
     ・ 倒壊危険性が高い住宅が集合している地区
       (地震による倒壊危険性の高い住宅が過半を占めている地区)
     ・ 延焼危険性が高く避難・消火が困難な地区
       (幅員4m以上の道路に適切に接していない敷地に建つ住宅が過半を占めており、かつ、耐火性能の低い住宅が大半(2/3以上)を占めている地区)

 具体的な密集住宅市街地の改善に当たっては、総合的に市街地の状況を勘案し、即地的に非耐火住宅や老朽住宅等の建て詰まり状況のほか、道路・公園等防災上有効な公共施設の整備状況、地域の特性をも把握した上で整備すべき市街地の設定に努め、緊急に改善すべき密集住宅市街地の速やかな解消を目指すべきである。
 また、自然災害の危険性が高い住宅市街地について、災害の防止、住宅の移転促進等の措置を講ずるべきである。

   イ)地方公共団体等による施策の展開
 住宅市街地全体について、地域の実情に応じた住環境の改善・向上や保全等を図るため、地方公共団体による住環境整備に関する基本方針の策定及び当該方針に基づく主体的な取組みを推進すべきである。このため、国としては以下の骨子を基本に、地方公共団体による施策展開の方針となる「住宅市街地の改善・向上等の指針」を定め、明示すべきである。

    <「住宅市街地の改善・向上等の指針」(骨子)>
     a)住宅市街地全体について、指標項目(安全性・保健性、利便性、快適性、持続性)に基づき、住環境の現状・課題等を把握し、整備・誘導等の方向性を示すこと。
     b)住宅市街地の類型別に、指標項目に沿って住宅市街地の目標像を明らかにすること。その際、少なくとも以下の住宅市街地については、住宅・住環境の整備の方向・手法、関連する公共・公益施設の整備方策、規制・誘導方策等を定めること。また、「緊急に改善すべき密集住宅市街地」については、整備のプログラムについても定めること。
      ・安全性・防災性等の観点から整備を要する地区
       (緊急に改善すべき密集住宅市街地、自然災害の危険性が高い区域等)
      ・先導的・重点的な整備を行うべき地区
       (職住近接の都心居住を可能とする住宅市街地、住宅を中心とした拠点的開発等が期待できる工場跡地、建替期の公的住宅団地・マンション等を核とした住宅市街地等)
      ・良好な住環境を保全すべき地区
       (新規開発住宅市街地、良好な住宅市街地等)
     c)事業・施策の実施に当たっては、@都市計画、福祉施策等の関連施策との連携、A地域住民・地権者等の意向の反映や住民等による自主的な取組みとの連携に留意すべきである。

 地方公共団体等においては、「住宅市街地の改善・向上等の指針」を参考としつつ、住宅マスタープラン等の一環として地域の実情を踏まえた「住宅市街地整備方針」を策定することによって、住環境の着実な改善・向上・誘導・保全等に関する施策を総合的かつ計画的に推進することが期待される。

 
2.新たな宅地政策の具体的方向
 
(1)まちづくりと連動した職住近接やゆとりある居住空間実現に資する宅地供給
 消費者・生活者(以下「消費者」という。)の基本的ニーズである職住近接とゆとりある居住空間の実現は、宅地の需給が緩和しつつある中でも、依然トレードオフの関係に立つ面がある。基本的ニーズの充足のための住宅宅地供給は、まちづくりの一環あるいはまちづくりそのものであり、その目標又は結果である都市構造とも密接に関係するが、市町村マスタープラン等と整合した計画的なものとなる必要がある。
 戦後長く続いた都市の拡大の時期においては、住宅宅地が都市の外延部へ外延部へと供給されることが当然視されていたが、21世紀においては大都市圏・地方部を問わずコンパクトな都市構造の(再)形成が不可避となる。
 三大都市圏では、都心部や臨海部等の低未利用地等の土地利用転換を図る住宅宅地等の供給、業務核都市等の育成に貢献する住宅宅地等の供給を重視していく必要がある。「大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法」(昭和50年法律第67号)に基づく供給基本方針が定められているが、宅地の供給量は今後の需給緩和に応じて減少が予想されることから、宅地需給の推移を注視しつつ、今後の宅地関連施策について所要の検討を行うことが必要である。
 三大都市圏以外でも、中核市以上の都市においては職住近接とゆとりある居住空間実現とのトレードオフの関係や都市の外延化が緊要な課題であり、それより小規模の都市においては中心市街地の空洞化等の問題があることから、これらの問題の解決に資する宅地供給の支援策を講じることが必要である。

 @職住近接に資する宅地供給支援
 消費者の基本的ニーズである職住近接の実現とは、通勤利便性にとどまらず、都心部等に所在する商業・文化等の高度な利便施設へのアクセスの容易さも内容となる。
 今後宅地需給は緩和の方向に向かう見通しであり、この機を生かして、大都市圏の都心・周辺地区や業務核都市等での宅地供給に対する支援策を講じ、職住近接に資する宅地供給を促進する必要がある。
 具体的には、都心・周辺地区の虫食い状の土地・工場跡地等の低未利用地の活用や駅前等における再開発等の推進を図るとともに、業務核都市等の中心業務地区の近接地での宅地供給を支援する必要がある。

  i)虫食い状の土地の集約化・流動化等
 都心部には、業務用ビル用地とするためバブル期に一部地上げされたまま放置された、いわゆる虫食い状土地が多く存在し、残存居住者にとっての居住環境悪化、地区荒廃を招いているが、多重抵当権の存在、開発意向を持つ事業者の不在のために、権利関係の調整、集約化が進んでいないものが多い。また、このような地区の残存居住者は居住する宅地以外の資産を持たない高齢者であることが多く、居住者の地区外移転も地区内での共同ビル建築も困難となっているケースが多い。
 こうした土地については、都市基盤整備公団の土地有効利用事業等による土地の集約化に加え、住宅建設等の開発事業の実施が期待されており、そのためのノウハウを有する公的主体の事業参画を推進する必要がある。
 事業遂行の円滑化のため、土地所有者に対する買い戻しオプション制の創設、外部の投資家等の参加手法の整備について検討する必要がある。また、虫食い状の土地に関しては、その有効利用促進のための交換等に係る特例措置が設けられているが、さらに土地の集約化を促進するため、流通税の軽減措置について拡充を検討する必要がある。
 
  A)再開発の推進、円滑化
 都心・周辺地区の駅前等における再開発事業の実施は住宅の供給に効果をあげてきたところであるが、権利関係が複雑であること等から、事業の立ち上げ時期における計画の策定・調整等のコーディネートが事業の着手に関し重要な鍵を握っている。
 このため、既成市街地における再開発に必要な、権利調整等に関わるコーディネーター等の育成・活用を推進するとともに、都市基盤整備公団等の公的主体がこれまでに培った信用とノウハウの積極的な活用を行うべきである。

  B)工場跡地等の土地利用転換
 都心・周辺地区にある工場跡地等のうち、比較的都心に近く、関連インフラもある程度備わっている小規模物件については、中高層住宅用地として近年利用転換が進むようになっている。こうした土地においては、各種面的整備事業等の活用により、住宅宅地等の供給を促進すべきである。
 臨海部等の大規模跡地で都心と連絡する鉄道・街路等の交通インフラの整備が不十分なもの、ことに隣接地で重厚長大産業が依然操業している地区の場合、生活環境確保の面からも住宅宅地等への転換は困難となっている。こうした地区では一定の水準の基盤整備と環境対策が不可欠なため、公的主体の参画のもと、市街地開発事業等の活用による骨格的な基盤施設の整備と併せ、再開発地区計画等の制度を活用して土地利用転換を円滑に進め、住宅宅地の供給等を促進する必要がある。

  C)郊外部の宅地の職住近接性の向上
 郊外部のニュータウンで、都心部又は業務核都市等の中心業務地区への時間的近接性確保のため鉄道整備、新駅開設等が進められている地区については、早急な事業進捗が求められている。鉄道事業者のほか、宅地供給事業者、地元地方公共団体等が協力して、利用者増加に資する施設誘致、パークアンドライド駐車場の整備、バス事業者との連携等の取組みが行われている地区では、さらに多様な協力関係の構築が要請される。
業務核都市等内のニュータウンにおいては、業務・商業等の諸施設の整備・充実も課題であり、宅地供給事業者が施設用地販売と立地促進を積極的に行う必要がある。こうした施設をニュータウン居住者の就業の場とすることで職住近接性は著しく向上する。

 Aゆとりある居住空間実現に応える宅地供給支援
 住宅取得によるキャピタルゲイン期待は消滅し、また、大都市圏郊外部での人口の伸びが安定化し、都心居住が進んでいる。その中で、「住宅双六の上がり」という意味での一戸建持家志向は減少しているものの、周辺環境の良さ、建替えの自由度等の点で優れた郊外持家で実現されるゆとりある居住空間に対するニーズは、依然として根強い。また、ファミリー向け賃貸住宅へのニーズも同様に強い。
 大都市圏の中心部における諸機能の過度の集中を是正し、効率的で適正な機能の分散を図るため、業務核都市等の育成・整備による都市構造の再編が急務である。郊外部でのゆとりある居住空間実現に応える宅地供給はそれに寄与するものでもあることから、その促進が急務であり、供給に対する支援策の重要性は依然として高い。しかしながら、支援に際しては、その宅地供給が必要な区域を限定したコンパクトなもの及び都市の無秩序な外延化を防ぐものであることが要請される。 

  @)郊外住宅地における生活関連サービスの水準向上
 郊外部においてはゆとりある居住空間の実現ニーズが相対的に達成しやすいが、それに止まらず生活関連の利便施設の整備が極めて重要である。
 郊外ニュータウンでは、宅地供給事業者が大規模な商業・医療・福祉等の利便施設を計画的に誘致・整備し、生活関連サービスの提供の役割を果たしている。消費者はそれについて相応の評価はしているが、既存の商業、文化、医療、福祉等の施設・サービスが利用可能な都心・周辺地区での居住の方を選好する傾向が確かに存在する。郊外ニュータウンの居住人口増加の遅れと施設整備の遅れとが相互に悪循環となって、サービス水準の向上を遅らせている例があることもその一因となっている。
このため、引き続き商業・医療・社会福祉施設等の諸機能の充実を図る必要があるが、商業施設誘致については事業用借地権の活用が有用と考えられ、売り上げ連動型の地代について検討することが必要である。
 医療・社会福祉施設の計画的整備が遅れている場合、中高年齢者の間に将来の要介護状態を想定しての不安感が生じやすいことから、介護関連等の各種施設を整備するほか、面的なバリアフリー化施策を講じて、高齢社会への対応を図る必要がある。
 また、少子化社会にあって子育て世帯に対する社会的な支援策を進める上で、育児負担を担う就業者に不可欠な保育所等の整備も緊急な課題となっている。地方公共団体の協力も得てニュータウンにおけるこうした施設の整備を積極的に推進することが必要である。
 こうした消費者にとっての利便性を重視した郊外部のまちづくりに際しては、事業の計画段階から、将来居住者、将来居住者等の集合体であるNPO、利便施設・業務施設等の進出予定者、地元地権者等を糾合し、その連携を図ることが、従来以上に重要なものとなっており、宅地供給事業者の取組みが必要である。

  A)定期借地権付住宅等の供給
 住宅取得に係る初期負担を軽減し、質の高い居住スペースの確保を可能とする定期借地権付住宅は、平成4年以降2万5,000戸以上が供給され、税
制・融資等の面でも相応の整備がなされたが、さらにその供給を促進すべきである。((2)AA)ア)参照)

  B)宅地化農地の計画的宅地化
三大都市圏の都心周辺地区から郊外部にかけて、市街化区域内農地のうち宅地化すべきもの(以下「宅地化農地」という。)が広く展開している。この地区は、ゆとりある居住空間確保の可能性と緑地に恵まれた良好な周辺環境の点で住宅地として優れ、一戸建持家、分譲及び賃貸の中高層集合住宅、定期借地権付住宅等豊富なバリエーションの住宅供給が可能である。
 これまで「特定市街化区域農地の固定資産税の課税の適正化に伴う宅地化促定める措置により宅地化が進められ、中でも農地所有者によるファミリー向け賃貸住宅供給の適地となっていた。このファミリー向け賃貸住宅は面積・構造等が比較的良質で居住水準の向上に資するとともに、量的にも大都市圏での賃貸住宅中相当な割合を占めている。この地区では職住近接性が比較的あること、地価の下落、根強い一戸建住宅志向等を背景に、一戸建分譲が増加しているが、開発事業、個別の住宅敷地ともに小規模化が顕著である。
 しかし、ファミリー向け賃貸住宅について、総体的な賃貸住宅の空室増加が新たな供給を抑制するようになっているほか、開発行為で農地所有者自らが行うものの基盤整備負担が大きいことや、宅地化農地の宅地化の結果、無接道の開発困難地が多く発生していることは、住宅宅地供給の抑制要因となっている。こうした開発行為の中には、新規に旗竿状の敷地を設定して行うものが多く、出来上がった敷地の規模・接道が既存密集市街地ほど低質ではないものの、密集市街地の拡散ともなることが懸念される。
 以上のことから、次の施策を展開する必要がある。
   ・ 計画的一体的開発の推進
 宅地化農地の集約化を図り、街区単位で一体的開発を推進するため、市町村マスタープランやこれと整合した市街化区域内農地の宅地化に関する整備プログラムの策定を推進し、土地区画整理事業等の積極的な活用と支援の充実を行う。
 地区計画の策定により計画的なまちづくりを推進するとともに、地区施設整備への支援を検討する。
 平成17年度末まで延長された宅地化促進法による固定資産税の軽減、住宅金融公庫融資の特例をはじめとする優遇措置、地権者による一体的開発の計画の提案をサポートする制度を活用する。
 早急に整備が必要な地区については、良好な市街地を形成するため、面的整備事業、生活道路等の整備、地区計画、税制、融資等の制度を組み合わせた取組みを推進する。
 大都市圏内で基盤整備が遅れているこうした地区において、都市基盤整備公団等がノウハウと人的能力の提供により、住宅市街地の整備に貢献する。
・ 小規模な宅地開発事業を良質なものへ誘導
 今後は既成市街地や周辺地域における小規模な宅地開発が、従来以上に多くなることから、関連公共施設整備に対する公的補助についても適用条件の見直しの検討を行うことにより、基盤の整った良好な環境の宅地が供給されるよう誘導する。
・ 一戸建賃貸住宅等の供給
 宅地化農地は低層の住居系地域として指定されていることが多く、この地域での良質な一戸建賃貸住宅に対する消費者の需要が強いことから、その方向での宅地化を推進する。
 土地の有効活用や良好な宅地環境の形成等の点で、共同化が望ましい場合があることから、テラスハウス等の供給促進に資する宅地化の推進を図る。

 B地方部における宅地供給支援
 中核市以上の規模の都市での問題は大都市圏のそれに類似するが、それ以下の人口5〜30万人程度の規模の地方都市では宅地需給の逼迫感は少なく、深刻な住宅宅地問題は生じていなかった。近年、これらの都市では中心市街地の衰退に伴う、住民の居住に係る問題が生じていることから、まちづくりの観点から都市の整備改善の一環としての所要の宅地供給の支援策を講じる必要がある。

  @)中心市街地居住の推進
 地方都市の中心市街地は、商業機能の低下、街としてのにぎわいの喪失等空洞化の危機に直面している。
 こうした都市では、中心部に住んでいた人が転出する傾向が強いことも中心市街地空洞化の一因となっている。この結果、高齢者が中心部に取り残されるという傾向が見られるが、市街地再開発事業等の土地利用の再編・流動化・高度利用を行うには、敷地が狭小で複雑な権利関係が存在していることや、高齢者の多くに投資余力がないこと、中心部への新規投資需要がないことなどからその実施が困難となっている。併せて公共公益施設等の不足も問題となっている。
こうした事態等が発生している中心市街地を活性化させるため、「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律」(平成10年法律第92号)が制定され、これにより、全国で200以上の地方公共団体が中心市街地活性化基本計画を立て、うち半分以上の地方公共団体が中心部の居住者増加を施策の柱の一つとしている。この計画に沿ってバランスのとれた整備を行うため、商業等の活性化のための事業との連携に配慮しつつ、市街地の整備改善等に資する事業を重点的に推進することが重要であるが、中でも中心市街地における居住の推進を図る上では、再開発の促進、特定優良賃貸住宅等の供給の促進、公的主体を活用したまちづくり等多様なメニュー方式による支援を行う必要がある。地方都市の中心市街地居住者は同時に中心市街地での営業者であることも多く、居住促進も商業振興策と併せて行われる必要がある。その活動の中で、まちづくりに関するNPOの活動の余地、機能は大きく、地方公共団体、営業者、居住者間のコーディネーターとしての役割が期待されていることから、その活動に対し支援を行う必要がある。
 中心市街地の活性化に資する施設整備に関しては、住宅の他、事業用借地権を利用して利便施設を整備するとともに、空家、空室、空き店舗及び空地の有効活用を図るために、定期借家権・定期借地権の活用を行うべきである。

  A)自然環境等と調和した宅地供給の実現
 地方都市では、これまでは人口・世帯数の伸びが比較的小さいながらも、それに応えて計画的な開発がなされてきた。さらに、国土全体の過密過疎のアンバランスを防ぐため、地方都市にゆとりある住まいと職場を求めるUJIターン希望者等が定住できるよう環境整備を進めてきており、特に計画的開発地区については、UJIターン希望者を潜在的需要者としていた。
 大都市圏に比べ今後の地方都市の世帯数の伸びが相対的に低いことから、地方都市へのUJIターンが活発化しても、急激に人口や市街地が肥大化することは考えにくいが、その場合でも宅地需要は一定程度発生する。しかし、計画的開発が行われにくくなることの結果として、緩やかなスプロール化が進行することが懸念される。
 地域の特色を活かした農村環境、自然環境との調和のとれたまちづくりにつながる住宅宅地供給、マルチハビテーションの推進やUJIターンの支援のため、優良田園住宅の一層の普及を図るとともに、地域振興整備公団等による公的供給、公的融資等による支援策についてさらに検討を行うべきである。

 
(2)『所有』から『利用』へのニーズの転換に伴う消費者の住宅宅地の取得等への支援
 現在の消費者は、居住に関する自己の価値観の変化・多様化に応じ、ライフスタイルに即した居住ニーズに基づき住宅宅地の取得・買替え・住替えを行っており、住宅宅地についてのニーズは既に「『所有』中心のもの」から「『利用』重視のもの」へと転換していると言うことができる。
 地価が下落し住宅価格が低下したと言っても、取得等の費用は依然高額である。消費者が利用に関わるさまざまなニーズを実現できるようにするためには、利用価値が高く良好な居住水準のものであって、かつ、住居関連支出割合が低い住宅宅地の取得・買替え・住替え(以下「アフォーダブルな住宅宅地の取得等」という。)に係る選択肢を豊富にするとともに、市場においてこれらを容易に選択できるようにすることが望まれる。
消費者による『利用』重視のニーズは、住宅の周辺環境について、住宅宅地の価格、広さ、通勤利便性等に優るとも劣らぬ位置付けをするようになっており、ことに近年は地球市民としての環境意識を持つ人が増加している。そのことが宅地の選択にも影響を与えており、供給側としてもこうした環境意識に積極的に応えることが求められている。

 @時代の変化とニーズの多様化への対応
 『所有』から『利用』へのニーズの転換は、現代における新たな就業およびライフスタイルの発生の結果でもある。また、『利用』重視の住宅宅地の選択は、宅地関連情報を十分に得られることが前提となることから、その収集・提供体制の整備も必要となる。

 @)新たな就業及びライフスタイルへの対応
 消費者の居住に関する価値観の変化・多様化に伴う新たなライフスタイルへの対応として、宅地供給にあたっては、多世代居住や親自然のライフスタイル等の実現を可能とする大画地の供給、大都市圏の都心居住と郊外居住をセットとしたマルチハビテーション、趣味を生かしたゆとりある居住・コーポラティブ居住等のニーズを取り込んだ宅地の供給等、新たなライフスタイルへ対応した多様な取組みが必要である。
 就業スタイルの中で特筆すべきSOHOやテレワーク等の就業者は、週に1日以上行う人のベースで、現在100万人〜200万人程度と推計される。SOHOやテレワークの場合、都心部でも郊外部でも居住に関する地理的ハンディキャップは生じないことから、豊かな自然環境の中でのゆとりある居住と効率的な仕事とを両立するライフスタイルの追求が可能となる。こうした就業とライフスタイルに対応するため、情報インフラの整備を伴いインテリジェント化に対応した宅地供給を推進することが必要である。

 A)宅地に関する総合的な情報提供
 住宅の敷地に関して消費者が求める情報は、地盤の安全性や洪水危険性、周辺環境の水準等多岐にわたるが、現実に十分に提供されているとは言い難く、情報入手が不十分なまま消費者が物件を取得し、トラブルが生じた事例も稀ではない。消費者に対する情報の提供の充実を図る必要がある。((3)CC)参照)

 Aアフォーダブルな住宅宅地取得等への支援
 消費者の利用に即したアフォーダブルな住宅宅地の取得等への支援が重要であるが、市場において容易に選択できるようにするため、流通を円滑に進めるべきであり、定期借地権付住宅の取得支援を進める必要がある。

  @)流通費用の低減・適正化による流通の促進
 消費者は居住用の不動産の取得を一生に1、2回しか行わないことが普通であるが、仲介の際に提供されるサービスと手数料とについて消費者に対し十分な説明がなされない例があると言われているから、あらかじめ提供するサービスの内容と手数料について消費者に対して十分に説明し、その納得を得られるように趣旨を徹底すべきである。
 また、多様化する居住ニーズへの対応、既存ストックの有効活用が求められる中で、宅地の円滑な流通を促進する観点から、不動産取引に係る流通税負担のあり方について検討すべきである。

  A)定期借地権付住宅の取得支援
 一戸建の定期借地権付住宅で床面積125u、敷地面積200uのものについて、平均的な勤労者世帯を想定した試算では、生涯収入に占める住居関連支出が2割程度で、かつ、最も住居関連支出の割合が高い取得当初においても2割程度となっていることから、これはアフォーダブルな住宅宅地取得等の一つの典型である。定期借地権付住宅の普及を図り、その供給促進に関し支援策を講じる必要がある。

   ア)定期借地権付住宅等の供給の促進
 定期借地権付住宅等の供給促進に関し、以下の事項等について改善、検討する必要がある。
    ・ 多様な供給スキームの創設
 建物譲渡特約付借地権と定期借家権とを組み合わせた住宅の供給等を促進するとともに、定期借地権を定期借家権と組み合わせることによって、低廉で良質なファミリー向け賃貸住宅の供給を促進する。また、最低存続期間の短縮とそれによる定期借地権付住宅供給の活発化との関係について基礎的な検討を行う。都市基盤整備公団等による定期借地権方式による宅地供給を先導的に促進するとともに、市場の自立的な発展を助長するため、公的主体が定期借地権付住宅等のあっせん・普及活動等を行ういわゆる定借バンクの普及を促進する。
    ・ 税制・金融上の措置
 定期借地権付住宅の普及促進を図る観点から、これまでも融資、税制等の措置が講じられてきているが、定期借地権付住宅の普及はアフォーダブルな住宅宅地取得の一つの有力な手段であることに鑑み、今後、現行措置の一層の活用を含め、効果的な助成措置のあり方を検討していく必要がある。
    ・ 共同事業の推進
 定期借地権の活用による共同事業等、地主の土地保有志向に合致した宅地開発の促進方策を検討する。

 イ)定期借地権付住宅の市場における流通の促進
 定期借地権付住宅の中古物件の売買実績は未だ非常に少なく、市場が成立しているとは言い難い。その評価方法が確立されておらず、評価が一般の住宅にまして低いことも、買替え・住替えをためらわせている一因となっていると考えられる。
 このため、定期借地権付住宅に関する住宅金融公庫融資について検討するとともに、中古物件の価格評価に関して、適正妥当なマニュアルを作成し、これにより売り主買い主双方に開かれた中古市場の育成を推進すべきである。
 特に保証金の返還の確実さについて買い受け人から不安感をもたれることがあるので、確実さを担保するため、地主負担により返還を保証する制度や保証金を信託して地主が運用利益のみを受け取るシステムについて検討すべきである。

 B環境意識の高まりに応える環境施策の実施
 近年、国民の環境に対する関心は著しく高まっており、宅地政策を環境重視の方向で展開することが緊要となっている。都心部における緑地の重要性についての認識が一層高まっていることに加え、宅地開発行為は近郊部及び郊外部の里山を事業地とすることが多く、都市住民にとって身近な環境問題として関心をもたれやすいことから、環境意識の高まりに応える環境施策の実施が求められている。

  @)都市中心部における緑地・オープンスペースの確保と環境対策
 都市の中心部では緑地や公園が不足し、緑地・水面の減少や風を遮る高層建築物の密集によりヒートアイランドの形成が懸念されるとともに、自動車交通量の増加による環境負荷の増大、住環境の悪化が現実の問題となっている。
 この観点から、この地区においては、既存の緑地の適切な保全を図る他、低未利用地等の積極的な活用による公園の確保を推進するとともに、市街地整備等に当たりオープンスペースの創出を重視し、それに対するさまざまなボーナスを提供すること等が、業務・商業系の利用者のみならず、居住者の生活の上でも必要である。また、屋上緑化や生け垣の設置、保全等に関し、地方公共団体等による促進、支援策等の充実を行うべきである。

  A)近郊部での良好な都市環境の形成
 市街化区域内農地には、生産緑地地区として指定されたもの等良好な都市環境の形成に現実に寄与していると思われるものが多い。生産緑地については保全に関する制度的措置がなされているが、宅地化農地の非計画的な宅地化により、虫食い的に農地が失われることで、残存する生産緑地についても営農環境が損なわれる状況が生まれている。
 良好な都市環境の形成に資する市街化区域内農地については、その緑地的機能に着目し、適切な保全を行うことが必要であることから、区画整理事業、交換分合の活用等による集約化による機能向上について検討・実施すべきである。 また、同じく良好な都市環境の形成に資する市民農園の整備が消費者から望まれ、かつ、この地域における住宅の付加的価値ともなっていることから、住宅整備と連携性を保った市民農園の整備等を促進すべきである。
 同様の観点から、良好な一戸建住宅地として開発された地区においては、地方公共団体等による生け垣の設置、保全等に係る支援策の充実を行うべきである。

  B)大規模開発における環境対策と緑地保全
 郊外部では開発による緑地の減少、ゴミの不法投棄等による自然環境の悪化、雨水の流出量の増加等が懸念される。また、軌道系の公共交通基盤整備を欠き過度の自家用車依存を強いられるような開発については、環境負荷の増大が懸念される。
郊外部の里山を対象とする大規模な宅地開発事業については、既に「大都市地域における優良宅地開発の促進に関する緊急措置法」(昭和63年法律第47号。以下「優良宅開法」という。)の平成8年改正の際に、緑被率の確保等の環境配慮条項を盛り込んだところである。こうした優良な事業への支援をさらに進めるとともに、事業実施中及び完成後の樹木伐採の最小化、CO2 の発生量の抑制等環境への負荷を最小限に抑える事業手法を選択するよう配慮すべきであり、併せて猛禽類等稀少生物の棲息環境保全にも注意を払う必要がある。
宅地開発等の意図で取得された山林等のうち、近年の宅地開発動向から、今後数十年以上にわたり開発行為がなされないと見込まれるもので、都市近郊に残された貴重な自然環境として保全すべきと考えられるものについては、環境保護NPO、地方公共団体等の協力により、保全の方向で対策を講ずるものとし、その中で土地の保有コストの負担のあり方、負担者等についても環境保全上の観点に重きを置いて検討すべきである。
また、開発の際に緑地等の自然環境の保全を行うことに加え、住民、地方公共団体、開発事業者等が協力して地域の本来の植生に従った形で復元に努め、本来の豊かな自然環境を創造する取組みについて支援する必要がある。

 
(3)良質なストック形成と既存ストックの再生・循環
 大都市圏を中心とした従来の宅地政策の眼目は、高地価、宅地需給の逼迫を背景とした宅地の大量供給であったが、今後は、消費者のニーズに応えられる宅地の質を重視した政策への転換が求められている。
 宅地のストック中には、敷地規模・接道・建ぺい率や周辺住環境等の点でさまざまな水準のものがあるが、総じて言えば大都市の都心部から周辺地区にかけては良好とは言えないものが多く、それと反対に郊外部の大規模開発事業により供給されたものには比較的良好なものが多い。後者の増加が宅地ストック全体の向上、改善に寄与してきたと言えるが、今後は宅地需給の緩和も予想されることから、従来のような宅地水準の上昇は期待しにくい面がある。
 したがって、引き続き良好な宅地ストックを形成し、とりわけその安全性・防災性の向上と高齢社会への適合性の強化に努める一方で、敷地規模の維持・拡大等ストックの劣化防止と宅地及びその集合体の再生を図ることが重要な課題となる。そのための契機となるよう、宅地の規模・接道等に関する目標設定を検討すべきである。 良質な宅地ストックについて再生と流通の円滑化を図ることにより社会的に循環させることは、有限な公共投資の効率的利用の方策であるとともに国民経済的に有益であり、かつ、都市構造のコンパクト化にも寄与するものとなることから、積極的に推進する必要がある。

 @良質な宅地ストックの維持・形成
 良好な宅地環境を形成するためには、市場メカニズムだけでは達成困難な場合がある。土地利用計画の策定、道路・公園等の基盤整備等に関し、公的主体の関与が行われてきている。宅地の規模確保等は本来所有者の自由と権利に属することであり、敷地が狭小なことが直ちに劣悪な居住環境を意味するものではないが、次のような実情により、公的関与が要請される。
まず、既成市街地における最低敷地規模規制は、土地所有者の理解が得られない場合が多く、建築物が建築基準法上の既存不適格とはならないよう法的措置がなされているにもかかわらず、地区計画等を既成市街地に適用したケースは必ずしも多くない。その場合でも、敷地規模がかなり小さめに設定されることが多い。
 次いで、宅地化農地について相続等を機に売却や貸付が行われる際、住宅の敷地が小さい方が有利であることが多く、敷地細分化の一因ともなっているが、宅地化農地を転用して一戸建分譲を行う際に、最低敷地規模規制が導入された事例は殆どなく、低水準の住宅市街地が続々と形成されることが危惧されている。
 さらに、一般の宅地は隣地買い増しによる規模拡大よりも、相続等を機に分割・縮小の方向に向かうものが多い。開発当初、良好、適正な敷地の規模で揃っていた良好な住宅地区であっても、時間の経過により宅地ストックが劣化するのが通常であり、大規模な敷地ほどその傾向が顕著である。
 加えて、敷地細分化を防ぎ良好な街並み・景観形成の基礎となる、まちづくりのビジョンや将来像が不明確であることが現実には多い。
したがって、次のような施策を講ずる必要がある。

  ・ まちづくりの方針の充実
 良好な街並み・景観を形成していくためには、その地区の将来像を示すマスタープランが不可欠である。住民に最も身近な市町村レベルで策定が進められている市町村マスタープランを活用し、街区の状況に応じた共同住宅化推進地区、一定規模の宅地が連なる一戸建住宅の街並み・景観を確保する地区等のまちづくりの方針の作成等により今後の街並み・景観の形成を進めていく。
  ・ 宅地細分化の防止と街並み・景観保全
 従来から良好な居住環境が保たれていた地区については、コミュニティによるまちづくりを積極的に支援するとともに、地区計画・建築協定等による最低敷地規模規制の導入を行い、敷地分割の進行を防止する。また、街並み・景観を悪化させないよう必要な公共施設整備を行う。
 特に新市街地や分譲住宅地区においては、地区計画・建築協定等により良好な居住環境の維持が必要である。平成12年の都市計画法改正で、開発許可の基準について条例による最低敷地規模規制の付加が可能となった。今後、これを活用して敷地規模の確保を図り、建て込み感の少ない、整然とした街並み・景観を備えた宅地供給を実現する。
さらに進んで、今後は宅地規模拡大を図ることも重要な課題であり、税制等を含む効果的な誘導方策を検討する。

 A既存住宅地の再生と循環
 郊外ニュータウンの中には、入居開始後、居住人口の定着とサービス水準の充実が見られたものの一斉高齢化や転出者増加による住民の購買力低下等が生じた結果、高齢社会への対応不足や商業施設の陳腐化などをはじめ、まち全体が陳腐化し、まちとしての魅力を失うようになったものが出現している。
 このようなニュータウンの持続的な発展、街としての成熟化を図るためには、地元の地方公共団体をはじめとして、開発事業者、公共施設の管理者、住民をベースにしたNPO等が調整、協力して、商業施設・公益施設の再活性化にもつながるような公共施設の再整備のための推進体制を構築していく必要がある。
 また、例えば、ニュータウンにおいて中高年齢者向けに供給された宅地を居住者の状況に応じて循環させるなど、良質な宅地が、住替えの対象に好適な、循環するタイプの一種の社会的ストックとして活用されるよう、公的主体等による供給と循環のコーディネートを推進すべきである。
 一方、既成市街地・近郊部での職住近接の良好な住宅地の供給と再生を推進するため、こうした地区において重点的に関連公共施設整備を促進するとともに、良好な居住環境の形成を図りつつ段階的宅地供給を誘導する公共公益施設等の整備に対しても、包括的に、かつ、きめ細かな支援を図る必要がある。

 B宅地に関する質の目標の設定
 敷地の規模・接道・建ぺい率に関し一定の水準にあることは良好な宅地であるための必要条件である。しかし、これまでは既存の宅地ストック全体については敷地面積等の分野別のデータはあるものの、一つの宅地が全体として良好なものなのかどうかについてのデータが不足しており、良好な水準の宅地を増加させるという目標の把握自体が困難であった。
 これまでの宅地政策における目標とは、専ら新規開発地に関する量的目標であったが、良好な水準を持つ新規開発宅地の供給が従来より相対的に少なくなることは避けられないこともあり、既存宅地の水準の維持・向上を含む、より広範な質に関する目標を設定することが必要となっている。したがって、敷地規模・接道・建ぺい率等に関するデータを十分に把握した上で、宅地政策上の目標となるべきものについて、その設定方策を講じるべきである。

 Cストックとなる宅地の安全性の維持・向上
 宅地は、地震、火災、洪水、土砂災害等のさまざまな災害の危険にさらされる可能性があるが、開発段階においてこうした災害に見舞われない位置・構造のものであるようにするとともに、ストックとなった段階においても防災性の向上を図ることが必要である。加えて、平常時の不同沈下等の欠陥についても、情報提供の充実により消費者の不測の被害の発生を防止する必要がある。

  @)密集市街地の防災性の向上
 大都市の中心部から周辺部にかけて広範に展開する、老朽木造住宅・老朽集合住宅の密集市街地については、火災・震災時の防災性が低く、迅速な建替えが進まない状況にある。密集市街地における防災性向上のため、所要の建替え促進施策を講ずる必要がある。

  A)土砂災害のおそれのある地域における防災性の向上等
 平成11年6月末の梅雨前線豪雨による広島県の災害に見られるように、住宅地に隣接する急傾斜地の崩壊や土石流といった土砂災害を原因として、住宅地に甚大な被害が発生しており、このような土砂災害のおそれのある地域での宅地開発時における立地抑制など防災上考慮すべき点が見られる。
「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(平成12年法律第57号)に基づき、土砂災害のおそれのある地域における住宅等の立地抑制方策の導入を推進するとともに、宅地の土砂災害に対する防災性の向上等の支援を推進すべきである。

  B)軟弱地盤における不同沈下の防止等
 近年、住宅の瑕疵について消費者から数多くの報告・クレームがなされているが、その原因として、建物自体の構造上の問題だけではなく、地盤、特に軟弱地盤による不同沈下が原因となっていると考えられるものもある。また、宅地擁壁等の老朽化に伴う防災機能の低下のおそれ等も指摘されている。
 平成12年4月から「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行され、新築住宅の基本構造部分(基礎、柱、屋根など)については、瑕疵担保責任が10年間義務づけられているが、地盤そのものについては、安全性の把握手法自体が確立されていないこともあり、今後の検討が必要である。
したがって、技術的基準のあり方等について安全かつ安心できる宅地の供給誘導方策を検討することが必要である。
既存擁壁の老朽度の診断、その危険度等に係る指標を明らかにするとともに、その積極的な活用等により、既存宅地の安全性の程度を把握するシステムの構築を行うべきである。

  C)宅地の安全性等に関する情報提供の充実
 住宅の敷地に関する情報のうち安全性に関するものは、地盤等敷地そのものに関するものも、洪水危険性等敷地の位置によって定まるものも、住宅の構造等に関するものと比べ、消費者に対して明快に示されにくいものとなっている。中には軟弱地盤に関する情報のように、一つの手法による調査は可能であるが、採用される手法が確定したものとなっていないものもある。
 宅地建物取引業者にとってもこうした情報は入手しにくく、まして消費者に対して十分に提供されているとは言い難い。
したがって、宅地取引に関連して、まず宅地の安全性に係る情報提供の内容・手法等に関する枠組みの構築についての検討・構築が求められており、事後も含む消費者に対する苦情処理等の相談体制の充実・整備と消費者教育の充実が必要である。
 取引以前の段階に関しては、レインズ(不動産流通標準情報システム)の情報の充実、業界団体独自の情報ネットワークの構築の検討、売り主が直接自己所有物件の情報を提供するシステムの構築の検討、情報のデータベース化等の検討、不動産コンサルティング業の確立による他、GIS活用による情報提供体制の構築、地盤の安全性等に関するインターネット上の自主的な情報提供主体の情報の整理・解析、情報の真贋の判定に資する対消費者バックアップサービスの提供について検討すべきである。
 インターネットで提供される広範な宅地関連情報は、大半が取引以前の段階で利用されるべきものと考えられるが、上に述べた安全性に係るもの、中でも造成された宅地が長期間建物の構造上の機能を維持できる安全性を確保したものであること等宅地の安全性を客観的に判断することに資するものについては、消費者が取引時に利用できるようにすることが必要であり、取引時の情報提供の一環としても利用可能なものとなるよう検討がなされるべきである。
 また、宅地建物取引業法の適用を受けない公的宅地供給事業者にあっては、むしろ率先して自己の供給する宅地の安全性等に関する情報について、開示していくことが求められる。

 D高齢社会への対応
 我が国は既に高齢社会に突入しており、高齢者は全人口の6分の1を占め、2,000万人以上に達している。高齢者が永く元気に社会活動を営むことができる環境を整備し、高齢社会に対応したコミュニティの維持・形成を図るとともに、高齢者の生活実態に即した、安心、快適な居住空間を実現されるよう、居住状況改善のための支援策を講じることが急務となっている。

  @)高齢社会に対応したニュータウン内のコミュニティの維持・形成
 新たな宅地開発の際には、高齢者が安心して快適に生活できるようバリアフリー化が求められ、実行されているが、入居開始以来20数年以上の年月が経過した郊外ニュータウンは林地を開発したものであって斜面が多く、高齢者の歩行上不都合な面がある。そうしたニュータウンにおいては、一斉高齢化が進展し、入居開始時に意識されなかったまち自体のバリアフリー性の不足とデイ・サービスセンター等の社会福祉施設の不足とが顕在化している。このようなニュータウンの多くは、コミュニティ維持の観点からも年齢階層のバランス維持の配慮が必要となっている。
 こうした流れを踏まえ、次の施策を展開すべきである。
 ・ 面的なバリアフリー化
 平成8年に優良宅開法を改正した際に、同法に基づく認定の基準に、高齢者の居住に関する配慮条項を追加しているところであり、ほとんどの都道府県・政令市において、道路等のバリアフリー化についての条例が制定されている。しかし、生活道路も含む全面的なバリアフリー化の実現は未だ不十分である。こうした状況に鑑み、平成11年にバリアフリー化に対応した歩道の構造基準が定められ、平成12年度に鉄道駅等に関する「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(平成12年法律第68号。以下「バリアフリー法」という。)が制定されたところである。住宅単体における対策に加え、バリアフリー法の対象となって整備される地区と歩調を一にして、まちづくりの観点から面的なバリアフリー化施策について検討する。
   ・ 介護関連等社会福祉施設の立地促進等
 ニュータウンの業務関連施設用地において、介護関連等社会福祉施設の立地促進を図ることで、入居者の介護に対する不安を解消することが必要である。少子化による児童の減少で廃校になる学校用地等の社会福祉施設等への円滑な更新が可能となるような仕組みについて検討する。
   ・ 入居者の年齢階層の多様化
 住宅地及び地域の一斉高齢化によってまちの活力が低下するのを回避するため、常に年齢階層のバランスのとれた世帯が居住しうるような住宅宅地の供給が必要である。そのため既存ストックの建替えを含め供給する住宅宅地について、均一なものではなく、さまざまな年齢階層が入居可能となるような宅地供給上の配慮が必要である。加えて子供の遊び場の確保、高齢者や学童用の農園の整備等生活機能を充実し、これらにより誰もが住みやすい住宅宅地を目指す必要がある。

  A)高齢社会における住宅宅地の有効利用と循環
 高齢者世帯の持家比率は高く、ことに低層住宅系市街地において高齢単身又は2人世帯が持家に多く居住しており、世帯人数と住宅とのミスマッチが生じている場合がある。
高齢者は一般に買替えなどにより住み慣れた家・地域を離れることを望まないことが多く、持家資産の有効活用が図られていないことが多い。地価の下落下では持家を売却しても、円滑な買替え、住替えが困難になっている面もある。
 地方公共団体によりリバースモーゲージが以前から行われ、また、リバースモーゲージと逆に買い主側にリスクが移転するビアジェの検討もされているが、近年の地価下落により、いずれも進んでいない。
 したがって、高齢者の住替え等の市場の育成、情報の流通を図る。また、住宅宅地に係る資金調達の円滑化の一環としてリバースモーゲージについて検討する必要がある。

 
(4)宅地政策における税制・金融のあり方
 @今後の土地税制のあり方
 既に述べたように、我が国は、大都市圏への人口流入の沈静化、人口減少社会の到来、少子・高齢化の進行等の社会的変化を遂げつつあり、それを反映し、経済面においても、安定成長への移行、土地神話の崩壊等の変化が生まれている。こうした変化の中にあって、宅地需給の逼迫感の緩和、宅地所有重視からの転換、居住ニーズの多様化等、宅地供給をめぐる基礎的条件も変化しつつある。
 これまでの宅地政策は、大都市地域を中心とした著しい住宅地需要に対応するため、郊外部における新市街地の開発を中心として、宅地の大量供給を図ることを主体として進められてきた。しかし、上述したような社会・経済情勢の変化等を踏まえ、宅地政策は、職住近接の実現、「質」を重視した良好なストックの形成、土地の有効利用の推進等の新たな課題に取組むことが要請されるに至っている。
 土地税制は、宅地政策上も重要な役割を果たしてきており、これまでも、宅地供給を促進する等の観点から種々の措置が講じられてきているが、今後、宅地政策が方向転換を求められる中で、土地税制についても新たな視点からの検討が要請されるに至っている。
 以下では、そうした観点から、今後のあるべき土地税制の姿を展望することとする。

  @)住宅宅地供給に直接関わる税制のあり方
 これまでの宅地政策においては、住宅宅地供給を政策的に推進する観点から、種々の税制上の措置が講じられてきた。こうしたいわば住宅宅地供給に直接関わる税制については、今後の宅地政策の方向転換に併せ、次のような視点からその方向性を見直していく必要がある。
 第一に、職住近接へのニーズの高まり等を受けて近郊・都心における宅地供給が求められてくることに伴い、宅地供給事業の規模が小さくなることが想定されることから、各種措置の規模要件の緩和等を検討していく必要がある。
 第二に、これまでのように右肩上がりの地価上昇が想定しにくい現状においては、開発に伴うリスクをキャピタルゲインで吸収することが期待できなくなってきており、開発期間中の諸コストを軽減する観点から、土地保有税等に関する措置が一層求められる。
 第三に、ストックの有効活用の観点からは、完成したストックを良好な状態で維持することも重要であり、敷地細分化を未然に防止するための措置等についても検討が必要である。
 なお、住宅宅地供給に係る政策税制については、制度上は特別措置とされながら、事実上恒久化されているものも多く、また特例自体も複雑化していることから、必要に応じ、税体系の簡素化の観点からの検討も必要であると考えられる。

  A)宅地政策と資産課税制度との関連
 土地については、固定資産税等の保有課税、登録免許税等の流通課税等の資産課税が行われている。資産課税は宅地政策と密接な関わりを持っており、土地の有効利用の促進等が求められるという新たな状況の下で、宅地政策の観点から、議論を深めていく必要があるものと考えられる。この場合、次のような視点が重要であると考えられる。
 第一に、土地保有課税については、地価が下落する中で国民の負担感が高まっていることなどを踏まえ、土地利用にとって過大な負担となることがないよう、適正な税負担のあり方を検討していく必要がある。特に、保有課税の大宗を占める固定資産税については、土地の処分ではなく保有継続を前提とした税であることや、地方公共団体の行政サービスとの関係、土地流動化への影響等も考慮しつつ、土地評価の問題も含めた検討を行っていく必要がある。
 第二に、土地流通課税については、上述したような社会・経済の構造変化の中でさまざまな議論がなされているが、宅地政策においても多様化する居住ニーズへの対応、既存ストックの有効活用等が求められていることに鑑み、より円滑な宅地の流通を確保するためにはどうすればよいかという観点から、検討を行っていく必要がある。

 A宅地開発事業に関する金融の現状
 これまで、宅地供給事業については、専ら事業者に対するコーポレートファイナンスによって資金調達がなされてきた。その中の公的金融である住宅金融公庫融資については、小規模な一戸建分譲事業に民間の大手がシフトすることで、宅地造成融資制度の利用実績が低下する結果ともなっているが、開発事業の小規模化とリスク増大に鑑み、融資対象の小規模化とリスク管理の両立に関し、さらに検討する必要がある。
 一方、民間金融機関による融資については、バブル経済崩壊後の地価下落による土地担保融資を基本とした日本型間接金融システムの機能低下、さらには、景気の低迷等による不良債権増加による償却額の増大やBIS(国際決済銀行)が定める自己資本比率規制への対応、国際的な競争の激化等により、金融機関の貸出姿勢は今後とも厳しいことが予想される。このため、これまでのように金融機関による間接金融に依存した資金調達だけでは限界があり、金融機関を介さずに直接に市場から資金を調達する必要が生じている。
 また、資金を市場から直接調達する途を広げることは、1,300兆円を超えると言われる我が国の個人金融資産をまちづくりに活用することを可能とするものであり、都市整備の観点からその有効な活用を図ることができるとともに、消費者にとっても新たな金融商品の開発により資産運用機会の拡大というメリットがある。

 B開発事業への不動産証券化手法等の活用
 Aの背景を踏まえ、政府においても、市場からの直接調達を促すため、不動産の証券化、小口化の仕組みの整備をはじめとする不動産投資市場の整備に取組んでいるところである。
 ・ 「不動産特定共同事業法」(平成6年法律第77号)について、最低出資額の引下げ、持分譲渡の解禁、対象不動産変更型契約の創設、商品設計における自由度を向上させることによって、不動産特定共同事業の活用を推進
 ・ 我が国で初めて不動産の証券化を可能とする仕組みである「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」(平成10年法律第105号。以下「SPC法」という。)を平成10年9月に施行
 特定目的会社設立手続きの簡素化、特定資産取得のための借入れの解禁、資産流動化計画に関する規制の簡素・合理化等を図り、SPC法をより使い勝手のよい制度とするため、平成12年5月に改正
 ・ 「証券投資信託及び証券投資法人に関する法律」(昭和26年法律第198号。以下「投信法」という。)について、投資対象を不動産を含めた幅広い資産に拡大すること等を目的に平成12年5月に改正
 ・ 投資信託、投資法人等から不動産の運用を委託される者が、不動産取引の一任による代理・媒介を行うことが可能となるよう「宅地建物取引業法」(昭和27年法律第176号)を平成12年5月に改正
 制度整備とともに、民間による取組みも積極的に行われており、不動産特定共同事業の実施やSPC法に基づく不動産の証券化、さらに一般の株式会社等を活用した証券化も実施されるようになってきた。これらにより、仕組みのアレンジメントや格付、対象となる不動産の評価、不動産投資インデックス等についてノウハウが蓄積されてきており、制度整備とあいまって、今後ますます不動産の証券化が活発化するものと考えられる。
 このような中で、さらに開発事業への不動産の証券化の活用も行われている。不動産特定共同事業については、法律施行前から共有持分等の事前販売によるマンション分譲事業で活用されていたが、法律施行後には商法上の匿名組合を用いた宅地開発事業やマンション分譲事業が実施されている。一方、SPC等を活用する本来の不動産の証券化については、一般的に既稼動物件を対象とし、開発事業で活用することは困難であると言われていたが、最近ではSPC法を用いてマンション分譲事業を行う事例も出てきており、工夫次第で不動産の証券化によって開発事業を実施することも可能であることが明らかとなっている。さらに、今回のSPC法及び投信法の改正により資産取得のための借入れが解禁されるため、SPC法に基づく特定目的会社や投信法に基づく投資法人を開発事業におけるノンリコース・ローンやプロジェクトファイナンスの受け皿として活用することが可能となり、開発事業の資金調達手段の多様化に資することが期待されている。
 不動産の証券化については、開発事業への活用も含め、今後ともその推進のための環境整備が必要である。その一環として、投資家に対する不動産投資インデックス等の情報の提供が必要であることから、情報提供に対する支援とその活用を行うべきである。

 
3.新たな住宅宅地政策を支える公民の役割分担
 
(1)基本的考え方
  21世紀の豊かな居住は、市場における
 ・ 自由な競争に基づく適正な価格の良質な住宅宅地の供給
 ・ 十分な情報に基づく自立した個人の選択
により実現されることが基本である。
 このため、公の役割は「市場の環境整備」「市場の誘導」「市場の補完」に限定していくことが必要であり、その基本的な意味は以下のとおりである。

 @市場の環境整備 基盤整備と制度的枠組みの整備等を通じた市場機能の最大限の発揮
 A 経済社会状況を踏まえた中長期的視野に立った政策目的を実現するための市場の資源配分機能の活用
 B 社会的弱者に対するセーフティネットの整備による適正な所得再分配や公的主体による資源配分の補完

 また、公の役割の発揮に当たっては、地方公共団体等地域の住民に密着した行政活動を行う機関が主体的、自立的な役割を発揮することが重要であり、今後の住宅宅地政策の展開に当たっては、地方公共団体が自らのビジョンに基づき、地域の実情を反映した施策展開を行いうる環境整備を図ることが必要である。
 以上のように、市場機能、地方の独自性、自主性を最大限活かすという観点から公民の役割を再構成することによって、「新たな居住の姿」「新たな産業活動」等を自立的に生み出す創造的システムを目指す必要がある。

 
(2)公的主体の役割
 @市場の環境整備
 自由な競争により適切な価格で供給される良質な住宅宅地の多様な選択肢の中から、自立した個人が十分な情報に基づいて、自己のライフスタイル、ライフステージに合致した適切な居住を確保できるようにするために、住宅宅地市場が円滑かつ適切に機能するための各種条件の整備を図ることが必要である。
 このため、公共が行うべきことは、民間では供給できない公共施設整備、住宅市街地の安全性や美観を確保するためのまちづくり等の基盤整備に対する政策資源の重点配分であり、また、都市計画、建築規制制度、借地借家制度、消費者保護等市場における安全な取引を支える各種制度、情報提供、相談体制等の個人や民間事業者が市場で行動する際の前提となる制度的な枠組み(制度インフラ)の整備である。

 A市場の誘導
 市場の環境整備等の政策努力を通じてもなお適切な供給がなされないと考えられる、
  ・ 住宅宅地の環境に対する配慮、美しい景観の良好な居住環境の確保、省エネ性、耐震性、耐久性の確保等外部性等が存在する分野
  ・ 高齢者向け、ファミリー向けの良質な賃貸住宅等現在必要量が十分供給されていないため、経済社会の変化を踏まえて、早急なストック形成を図る必要がある分野等については、市場を大きく歪めないように留意しつつ、中長期的な視点に立った政策目的の達成を、市場の資源配分機能を活用した、以下のような対応によって実現すべきである。
  ・ 中長期的な視点に立った各種政策実施プログラムと、それによって目指すべき住宅ストック、居住水準等のビジョンの提示
  ・ 財政、税制、金融上の住宅宅地に対する各種支援措置、政策的ガイドラインの設定、リーディングプロジェクトの実施等

 B市場の補完
 市場において自力では適切な水準の住宅宅地サービスを確保できない者に対しては、セーフティネットの観点から、また民間事業者に対する税制、融資等の措置によっても中長期的観点から適切な住宅宅地ストック形成が行われない場合にあっては資源配分上の観点から、公共賃貸住宅制度の充実や公的主体による宅地供給等によって的確な対応を行う必要がある。
 その際、高齢者に対しては、必要な床面積、設備、機能を備えた住宅を供給するのみならず、身体機能の低下等に対応するため、福祉との連携に基づいて必要なサービスを提供する等の措置を講ずる必要がある。またそれらの施策は、民間賃貸住宅の貸し主側のさまざまな不安を背景に、高齢者に対する賃貸住宅の供給が妨げられているという実態を踏まえ、貸し主の不安を軽減するためのシステム等高齢者居住を安定化するための市場環境整備と併せて講じられることが必要である。
 また、これらの施策を講じるに当たっては、国民の住居費支出の目安を踏まえた上で、国民の支出能力と住宅価格の動向を注視しながら、適時適切な対応を図っていくことが必要である。なお、中堅所得層の家賃支出の目安は、市場における家賃支出の実態を基礎に家計がどの程度の家賃支出を行うことが適当かを検討すると概ね20%程度と考えられ、中堅所得層の持家償還金支出の目安は、市場における実態から判断すると概ね収入の25%程度と考えられる。

 
(3)公共賃貸住宅制度の役割と今後の施策展開の方針
 市場の環境整備、民間事業者に対する税制、融資等に基づく誘導等の施策と併せて公共賃貸住宅は今後とも住宅政策上大きな役割を発揮することが期待されるが、高齢化の進展や各種制約の増大の下で効率的な政策目的の実現を図るために、公共賃貸住宅の供給は成熟社会への移行を見据えた重点化を図る必要がある。このため、高齢者向け優良賃貸住宅等を始め少子・高齢社会に対応した公共賃貸住宅供給に重点をおいた施策の展開を基本としつつ、公営住宅等について以下のような方針に従った重点化を図る必要がある。
 ○ 公営住宅については、市場を補完し、居住に関するセーフティネットとしての役割を担うことが基本である。この機能を効率的に発揮するため、
  ・ 公営住宅ストックの総合的活用の推進
  ・ 新規供給について、需要の大きい大都市地域での供給や地域活性化に資するものの供給等への重点化
  ・ 住宅困窮者に対する的確な供給のための入居者資格、管理等の適正化
  等の方向に従った重点的供給を実施する。
 ○ 特定優良賃貸住宅については、市場を誘導し、良質なファミリー向け賃貸住宅の供給促進を図るための機能を担うことが基本である。この機能を効率的に発揮するため、
  ・ 広く効率的な供給促進を図るための支援の実施
  ・ 都心居住、地方定住等のための住宅に対する重点的支援
等の方向に沿った重点的供給を実施する。
 ○ 公団賃貸住宅については、民間との適切な役割分担のもと、中堅所得層を供給対象の中心として一定規模以上の良質な賃貸住宅の供給を図るための機能を担うことが基本である。この機能を効率的に発揮するため、
  ・ 都心地域等における、基盤整備と一体となった賃貸住宅供給への重点化
  ・ 建替え、リニューアル等による既存ストックの有効活用
  ・ 比較的小規模な住宅については、高齢者世帯、若年世帯等における需要を考慮して、対象層に適切に供給
等の方向に沿った重点的供給を実施する。
 ○ 公社住宅については、地域の住宅事情を踏まえた多様な住宅供給をきめ細やかに行う機能を担うことが基本である。経済社会情勢を踏まえてこの機能を効率的に発揮するためには、公社賃貸住宅の建替えに際して高齢者住宅等への公社住宅ストックの再生、地域活性化に資する住宅ストックの形成等の方向に沿った重点化を図る。

 
(4)宅地政策における公民のルールづくり等
 宅地政策においては、市場の環境整備等の公的主体の役割と宅地開発事業に内在する高コスト構造の是正とを考慮し、以下の点に関する公民のルールづくりの検討・提唱が求められる。
 ○ 事業期間の短縮と金利負担の軽減
 事業のスピードの向上と資金調達コストの削減を図るため、行政手続の迅速化、簡素化の徹底や、宅地造成に対する公的主体による低利融資制度の活用の推進等支援策について検討すべきである。
 ○ 公共公益施設整備費負担のあり方
 地方公共団体の指導要綱等の行き過ぎの是正の徹底、関連公共施設整備の促進を図るとともに計画的開発への誘導等を図るべきである。
 民間事業者においても一層のコスト縮減に努めるとともに、開発者負担、関連公共施設整備促進事業等の制度については、宅地の需給緩和、経済の低成長という構造的変化に対応し、公共施設の整備費に関する事業者と公との負担のあり方について見直しも含め検討すべきである。

 
(5)地方の独自性、自主性の発揮
 市場の環境整備、補完、誘導のため、公共側が適切な機能を担うに当たっては、地方公共団体等地域の実状に通じた機関が、その状況を反映した独自のビジョンに基づいて主体的、自立的な役割を発揮することが最も重要である。特に今後、福祉、まちづくり等の分野と住宅宅地政策との連携が求められることを勘案すれば、総合的な行政主体としての地方公共団体の役割は増大するものと考えられる。このため国と地方公共団体の適切な役割分担の観点から、国は、
 ・ 経済社会の状況を踏まえた全国的、広域的計画の策定
 ・ 市場のルールづくり
 ・ 市場の誘導、補完のための財政、税制、融資制度の構築
 ・ 都市基盤整備(資金、技術面等から国の支援が必要なもの)
 ・ 新技術の開発、先進的技術等の実施
という面で機能を発揮すべきであり、地方公共団体は、
 ・ 地域の実情を反映したビジョン、計画の策定
 ・ 公共賃貸住宅の供給等市場の誘導、補完のための施策の実施
 ・ 地域の実情を踏まえた独自の住宅宅地政策の展開
 ・ 住環境整備
等においてその機能を発揮すべきである。
 特に地方公共団体が主体的な役割を発揮するに当たっては、独自のビジョンを持つことが重要であり、地域の住宅宅地事情等に係る現状の分析、住宅宅地政策の基本的方向、地域特性に応じた具体的施策の展開方針等からなる住宅マスタープラン等を活用することが必要である。また今後設置される地方整備局においては、この地方の独自のビジョンに基づいた地域ごとの住宅宅地政策が円滑に展開されるようにするため、ビジョンの策定、各種事業の展開において、地域の実情を反映した支援を講じることが求められる。

 
(6)総合的な行政領域における政策展開
 市場の機能の十全な発揮、地方公共団体の役割重視に加えて、今後の住宅宅地政策の展開に当たっては、
 ・ 在宅介護をにらんだ住宅宅地政策と福祉政策との連携
 ・ 行政機構の改革を踏まえた通勤時間を含む総合的な居住環境を改善するための、交通政策、国土政策との連携
 ・ 情報通信技術と住宅宅地関連技術の連携等
総合的な行政領域における展開を図ることが重要である。
 これらの住宅宅地政策の新たな展開が、地域の実状を踏まえた「新たな居住像」の提案、賃貸住宅管理業と介護サービス業が融合した新たなビジネスの展開等「新たな産業活動」の創出を自立的にもたらし、21世紀の我が国経済、国民生活の新たな展開を支えるシステムとなることが期待される。

 
(7)住宅宅地政策を担う多様な主体等
 住宅宅地政策は、公的主体のみによって担われるべきものではなく、むしろ絶えざる自らの努力により夢を実現しようとする国民や、創造的で活力あふれた民間事業者、管理業者等を主要なプレイヤーとして認識した上で、公民の適切な役割分担と連携の下で推進することが重要である。
 その際、国、地方公共団体においては、国民が良質な居住を確保しやすく、民間主体が事業等を展開しやすい環境を整備するための政策を展開することや、社会的資産としての住宅宅地、住環境を自ら確保し、自らの努力とコミュニティとの協調の下で維持していく国民の意識を高めるため、住教育の充実に努めることが重要である。
 これに加えて、住宅金融公庫、都市基盤整備公団、地方住宅供給公社等の主体については、住宅宅地政策の新たな展開方向、行政改革、財政投融資改革を踏まえた改革の実施を着実に行っていくことが必要である。また、国民の多様で高度化した居住ニーズに応えたきめの細かい住宅宅地政策の展開を図るためには、NPO、新たな居住サービスを提供する民間事業者等新たな住宅宅地政策の担い手を育成、連携することが重要である。
 以上のような多様な主体によって担われる住宅宅地政策の整合性、効率性を確保するためには、国、地方公共団体、その他のさまざまな主体間の協調体制を作り上げていく必要がある。

 @住宅金融公庫の活用
 成熟社会における豊かな居住を実現するためには、景気動向や金融情勢にかかわらず長期、固定、低利の住宅資金を安定的に供給し、良質な住宅の健全・確実な取得の支援を行うことが重要である。このような観点から、住宅金融公庫融資は、居住水準の向上等の住宅政策の目標実現に多大に寄与し、多くの国民にとって不可欠なものとなっている現状を考慮すれば、我が国の住宅政策において引き続き重要な役割を担っていくべきと考えられる。同時に、国民に対して多様な住宅金融サービスを提供するため、民間住宅ローンの発達を促進することも重要な政策課題と考えられる。
 このため、公庫融資について、良質なストック形成、都市の居住環境整備等への対象分野や支援の重点化を実施するとともに、併せ貸し促進のための融資額の縮減など民間住宅融資との協調体制の確立を促進することとし、このため、住宅融資保険について保険財政の健全性に配慮しつつ民間金融機関にとって利用しやすい制度として改善することを総合的に検討する必要がある。
 また、住宅金融公庫の調達、運用の期間のミスマッチを少なくすることによりできるだけ少ない補給金で安定的に長期固定の住宅ローンを供給するため、ALM(資産・負債管理)の徹底を図り、資金調達の多様化の一手段として有用である公庫住宅ローン債権の証券化を着実に実施するべきである。さらに公庫が自らのローン債権の証券化を通じてノウハウを蓄積し、それを活かして民間金融機関の住宅ローン債権の証券化等の支援を行うことについても将来の課題として検討する必要がある。

 A都市基盤整備公団の活用
  住宅・都市整備公団を廃止し、平成11年に新たに設立した都市基盤整備公団においては、住宅宅地の大量供給から大都市地域等の都市基盤整備に業務の重点を移行する等の改革の趣旨を踏まえ、地方公共団体及び民間事業者との適切な役割分担の下、市街地の整備改善並びに賃貸住宅の供給、管理に関する業務を着実に実施することが必要である。
 その際、大都市地域の都市構造の再編等を図り、都心居住・職住近接の実現に資するため、良好な居住環境を創出する市街地の整備改善に関する事業を推進する必要がある。また、地方公共団体によるまちづくりに対して、公団の有するノウハウ・技術力を活かし、必要な調査、関係者の調整、構想・計画の作成等の技術提供及び事業実施を行うことにより、これを支援することが必要である。
 さらに、大都市地域の都心地域等において、住宅市街地の整備と一体となった賃貸住宅の供給に重点的に取り組むとともに、既存ストックの活用による多様な住宅の供給により、少子・高齢化に対応したバランスのとれたコミュニティの形成を図る必要がある。
 これらに加えて、都市の環境、防災、景観等の外部性の大きい分野において、民間事業等を先導するような集合住宅プロジェクトに取り組むとともに、先駆的な技術の普及を推進する必要がある。
 公団は累計で2万1,000haにも及ぶ都市整備事業の事業地区の施行を完了し、これまでの膨大な宅地需要に対する大量供給の主要部分を担ってきた。その際には、民間事業者の能力の活用にも努め、事業実施の合理化を図ってきたところである。
 今後、大都市圏において宅地需給の逼迫感は緩和するが、良好な宅地を求めるニーズには強いものがあり、その中で高い水準の基盤整備と生活利便施設の充足がなされている宅地を供給する公団の役割は引き続き大きいと考えられる。
 公団は今後、業務核都市等の育成等都市構造再編と連動した宅地供給、大規模公共施設整備と一体の都市整備、スプロール市街地の整序、臨海部の土地利用転換等大都市地域の都市構造に関わる課題に対応するための事業を実施すべきであるが、都心と郊外の居住をセットにしたマルチハビテーション等新たなライフスタイルへの先導的な対応も期待される。
 公団が採るべき事業手法としては、多世代居住も可能な大画地の定期借地供給、里山保全対策、鉄道整備との連携の他に、民間事業者の能力の従来以上の活用等があり、また、医療・介護・育児等の施設整備を地方公共団体、民間事業者、NPO等の多様な主体と連携しつつ行うことが必要である。

 B今後の地方住宅供給公社業務の展開
 これまで、都市部への人口集中に対して居住環境の良好な集団住宅の供給等を行い、地域の住宅事情の改善を行ってきた地方住宅供給公社については、今後とも分譲住宅、賃貸住宅の供給等を通じて自主的に地域の住宅宅地ニーズに対応していくことを基本としていくことが必要である。しかし、一方で、人口移動の安定化した都市型社会の到来、民間住宅市場の拡大等の環境変化、今後の高齢社会の急速な進展等を背景に高齢者用住宅の整備やまちづくりに対するニーズ、地域における住宅宅地へのきめ細かなニーズが増大すること等を踏まえ、担うべき機能の見直しが図られるべきである。その際、これまで個人の積立金を受入れつつ住宅宅地供給を実施してきたことに伴うノウハウの蓄積や、地方に密着した供給主体であることを勘案の上、特に、以下のような方向での見直しが求められる。
 ・ 要支援、要介護者を含めた高齢者について、その資産を活用した居住の安定を確保できるよう、民間を補完し、ケア付き高齢者住宅等を供給する業務を重点的に展開する。
 ・ 老朽住宅ストックの適切な更新、居住環境の整備改善による既成の住宅市街地における居住再生を推進するとともに、マンション建替えに係る枠組みの検討を踏まえつつ、マンション建替えの支援を検討する。
 ・ 地域の実情を踏まえた公社賃貸住宅の供給を図るとともに、他の公的賃貸住宅と連携し、バランスのとれたコミュニティの形成等を図りつつ、公社賃貸住宅の建替え及び公営住宅の建替え支援等を推進する。また、受託等による公営住宅等賃貸住宅の地域レベルでの合理的な管理の支援を行う。
 ・ 地域活性化に資する定住用住宅等地域の特性に応じ必要な住宅宅地について自主的な取組みを行う。

 C民間事業者、NPOの活用、連携
 社会経済状況が大きく変化する中での、国民の多様で高度なニーズに対応した住宅宅地供給は、これらの環境変化をビジネスチャンスとして捉え、柔軟な事業活動を展開する民間事業者、管理業者等の活用、連携によって実現することによって、初めてきめの細かい、効率的な対応が可能となる。今後、新規、建替えが中心であった我が国の住宅宅地市場がストック重視型のものへと変貌していく中で、それ自体をビジネスチャンスとして捉え医療、情報産業等との連携を図りつつ自らを改革していく、アクティブな総合生活産業としての住宅産業を育成し、これらの主体が最も事業活動を展開し易い環境を整えていくことが求められている。
 さらに、コーポラティブハウジング等住民の視点に立った多様な居住ニーズへの対応、修復型の居住地再生を図っていくためには、住民自ら又は住民と建築、法律、金融等さまざまな専門家が参画したNPOによる住宅宅地の供給、まちづくりを推進していく必要がある。特に、零細な地権者等が多く、権利関係も錯綜している市街地においては、長期にねばり強く地権者等の立場に立って働きかけることが合意形成には不可欠である。このため、地域の情報に詳しいことからそのニーズに柔軟に対応できることが一般的に指摘されており、長期にわたる事業等への関与、継続的活動を特徴とするNPOを、住宅宅地政策を担う新たな主体として積極的に位置付け、その連携、支援策について検討を行っていく必要がある。