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 最高裁(第三小法廷)平成15年10月28日判決

   〔情報公開−千葉県知事交際費支出関係文書〕


 平成13年(行ヒ)第83号・第84号公文書非公開決定処分取消請求事件
 一部棄却、一部破棄自判

   第一審・千葉地方裁判所平成12年04月07日判決(平成11年(行ウ)第5号)
 判例時報1840号9頁


 主 文
 1 原判決を次のとおり変更する。
 第1審判決を次のとおり変更する。
 (1)第1審被告が第1審原告に対し平成10年11月25日付けでした非公開処分のうち,現金出納簿中の第1審判決別表番号8ないし13,26ないし31,57ないし62の情報が記録されている部分を非公開とした部分を取り消す。
 (2)第1審原告のその余の請求を棄却する。
 2 訴訟の総費用は,これを4分し,その3を第1審原告の負担とし,その余を第1審被告の負担とする。


 理 由
 第1 本件の概要
 1 本件は,千葉県内に事務所を有する権利能力なき社団である第1審原告が,千葉県公文書公開条例(昭和63年千葉県条例第3号。以下「本件条例」という。)に基づき,本件条例の実施機関である第1審被告に対し,知事交際費に係る公文書の公開請求をしたところ,その一部につき非公開処分を受けたので,その取消しを求める事件である。
 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1)第1審原告は,平成10年11月11日,同年6月1日から同年8月31日までの間に支出された知事交際費に関する公文書(支出日と支出金額が分かる書類)の公開を請求した(以下「本件公開請求」という。)。これに対し,第1審被告は,同年11月25日,上記期間の知事交際費に係る現金出納簿(以下「本件文書」という。)が本件公開請求に対応する公文書に当たるとした上,本件文書のうち摘要欄中の第1審判決別表(以下「別表」という。)において伏せられている部分(以下「本件非公開部分」という。)について,そこに記録されている情報が本件条例11条8号に該当し,このうち別表番号2,8ないし14,16,18,22,24ないし31,33,36,37,43,48,49,51,54,56ないし64,67ないし69,71及び72の情報については同条2号にも該当するとして,これを非公開とする旨の処分(以下「本件処分」という。)をした。
 (2)本件条例11条は,「実施機関は,次の各号の一に該当する情報が記録されている公文書については,公開しないことができる。」と規定しており,同条2号は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって特定個人が識別され,又は識別され得るもの。ただし,次に掲げる情報を除く。イ 法令等の定めるところにより,何人でも閲覧することができる情報 ロ 実施機関が作成し,又は収受した情報で,公表を目的としているもの ハ 法令等に基づく許可,免許,届出等の際に実施機関が作成し,又は収受した情報で,公開することが公益上必要であると認められるもの」と,同条8号は,「実施機関が行う交渉,取締り,立入検査,監査,争訟,入札,試験等の事務事業に関する情報であって,当該事務事業の性質上,公開することにより,実施機関と関係者との信頼関係が損なわれると認められるもの,当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の実施の目的が失われるおそれがあるもの又は当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずると認められるもの」と規定している。
 (3)本件文書は,年月日,摘要,受,払,残の各欄から成っており,摘要欄には,支出項目(御祝い,激励金,香典・仏前,生花代,見舞い,賛助,懇談費,会費,購読料),知事・副知事の別,支出の相手方,使途等が記載されている。本件非公開部分は,本件文書の摘要欄中の交際の相手方の個人名,役職名,続柄又は団体名,行事名,祝賀要因等が記載されている部分である。
 (4)本件非公開部分に記録されている交際費に関する情報は,いずれも交際の相手方が識別され得るものであり,支出項目ごとにみたその内容は,次のとおりである。そのうち本件処分において同条2号に該当するとされた別表番号2,8ないし14,16,18,22,24ないし31,33,36,37,43,48,49,51,54,56ないし64,67ないし69,71及び72の情報は,特定の個人が識別され得るものである。
 ア 御祝い
 別表番号1,4ないし6,14ないし18,24,34,43ないし45,53ないし55及び70ないし72の御祝いは,各種の祝賀会,絵画展,記念レセプション,総会,定例会,祭等に際し,交際の相手方との信頼,友好等の関係の維持,向上を願う趣旨で支出されたものである。
 イ 激励金
 別表番号38及び39の激励金は,スポーツ選手の大会出場に際し,選手を激励し,スポーツ界の振興を図る目的で支出されたものである。
 ウ 香典・仏前
 別表番号2,22,48,49及び56の香典は,葬儀に際して支出されたものである。エ 生花代
 別表番号8ないし13,26ないし31及び57ないし62の生花代は,葬儀又は通夜に際して支出されたものである。
 オ 見舞い
 別表番号25,36,37,63,64,67及び68の見舞いは,病気見舞いとして支出されたものである。
 カ 賛助
 別表番号33の賛助は,遺児育英の趣旨で支出されたものであり,別表番号42及び47の賛助は,社会的弱者を支援する団体やボランティア団体等の非営利的な活動をする各種団体等から協力要請等があった場合に,その活動の趣旨に賛同していることを示す意味で支出されたものである。
 キ 懇談費
 別表番号3の懇談費は,知事等が県政の推進に必要な各方面の理解と協力を得ることを目的として,意見交換の場を設けるために支出されたものである。
 ク 会費
 別表番号35の会費は,知事等が会員となっている団体の年会費として支出されたものであり,別表番号51及び69の会費は,個人の祝賀会等に出席した際の会費である。
 ケ 購読料
 別表番号7,19ないし21,23,32,40,41,46,50,52,65及び66の購読料は,交際の相手方が発行する新聞,雑誌,機関紙等の購読料として支出されたものである。
 3 原審は,上記事実関係等の下において,本件非公開部分に記録されている交際費に関する情報のうち,〔1〕購読料に係る情報は本件条例11条8号に該当しないが,その余のものは同号に該当する,〔2〕別表番号2,8ないし14,16,18,22,24ないし31,33,36,37,43,48,49,51,54,56ないし64,67ないし69,71及び72の情報は,いずれも同条2号に該当すると判断した。
 第2 平成13年(行ヒ)第83号上告人,上告代理人廣瀬理夫,同石川知明,同藤代浩則,同永嶋久美子,同菅野亮の上告受理申立て理由について
 1 論旨は,原審の上記判断のうち御祝い,激励金,香典・仏前,生花代,見舞い,賛助,懇談費及び会費に係る情報が本件条例11条2号又は8号に該当するとした判断について,法令の解釈適用の誤り等をいうものである。
 そこで,検討すると,所論の点に関する原審の上記判断のうち,御祝い,激励金,香典・仏前,見舞い,賛助,懇談費及び会費に係る情報が本件条例11条2号又は8号に該当するとした部分は是認することができるが,生花代に係る情報が上記各号に該当するとした部分は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1)前記事実関係等によれば,御祝い,激励金,香典・仏前,生花代,見舞い,賛助,懇談費及び会費に係る情報は,いずれも交際の相手方が識別され得るものであるというのであるから,原則として本件条例11条8号に該当するというべきである。もっとも,知事の交際事務に関する情報で交際の相手方が識別され得るものであっても,相手方の氏名等が外部に公表,披露されることがもともと予定されているもの,すなわち,交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に関するものなど,相手方の氏名等を公表することによって交際の相手方との間の信頼関係あるいは友好関係を損ない,ひいては交際事務の目的が損なわれたり,知事の交際事務の公正かつ円滑な執行に支障が生じたりするおそれがあるとは認められないようなものは,例外として同号に該当しないと解するのが相当である。
 また,上記各情報のうち本件処分において同条2号に該当するとされた別表番号2,8ないし14,16,18,22,24ないし31,33,36,37,43,48,49,51,54,56ないし64,67ないし69,71及び72の情報は,特定の個人が識別され得るものであるというのであるから,原則として同号に該当するというべきである。もっとも,本件条例の趣旨,制定経緯等に照らせば,同号ただし書ロにいう「実施機関が作成し,又は収受した情報で,公表を目的としているもの」とは,公表することを直接の目的として作成し,又は収受された情報に限られるものではなく,公表することがもともと予定されているものを含むと解するのが相当である。そうすると,その交際の性質,内容等からして,交際内容等が一般に公表,披露されることが予定されているもの,すなわち,交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に関するものについては,同号ただし書ロにより同号に該当しないというべきである。
 (2)以上の基準に従って,上記各情報が本件条例11条8号又は2号に該当するか否かにつき検討する。
 ア 御祝い,激励金
 前記事実関係等によれば,本件における御祝いは,各種の祝賀会,絵画展,記念レセプション,総会,定例会,祭等に際して支出された祝金であり,激励金は,スポーツ振興等の激励金であるところ,これらについては,いずれもその性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。したがって,本件非公開部分に記録されている御祝い及び激励金に係る情報は,本件条例11条8号に該当し,別表番号14,16,18,24,43,54,71及び72の御祝いに係る情報は,同条2号にも該当するというべきである。
 イ 香典・仏前
 香典・仏前は,その性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。したがって,本件非公開部分に記録されている香典・仏前に係る情報は,本件条例11条2号及び8号に該当するというべきである。
 ウ 生花代
 前記事実関係等によれば,本件における生花代は,いずれも葬儀又は通夜に際して支出されたものであるところ,葬儀又は通夜に際して贈られる生花は,知事の名を付して一般参列者の目に触れる場所に飾られるのが通例であり,これを見ればそのおおよその価格を知ることができるものである。そうすると,これらの生花贈呈の事実及びその内容は不特定の者に知られ得るものであったということができるから,本件非公開部分に記録されている生花代に係る情報は,本件条例11条2号及び8号のいずれにも該当しないと解するのが相当である。
 エ 見舞い
 前記事実関係等によれば,本件における見舞いは,病気見舞いとして支出された見舞金であるところ,見舞金は,その性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。したがって,本件非公開部分に記録されている見舞いに係る情報は,本件条例11条2号及び8号に該当するというべきである。
 オ 賛助
 前記事実関係等によれば,別表番号33の賛助は,遺児育英の趣旨で支出されたものであり,別表番号42及び47の賛助は,非営利的な活動をする各種団体等に対する協賛金として支出されたものであるところ,これらについては,いずれもその性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。したがって,本件非公開部分に記録されている賛助に係る情報は,本件条例11条8号に該当し,別表番号33の賛助に係る情報は,同条2号にも該当するというべきである。
 カ 懇談費
 前記事実関係等によれば,本件における懇談費は,知事等が県政の推進に必要な各方面の理解と協力を得ることを目的として,意見交換の場を設けるために支出されたというのであり,懇談費支出の事実又はその具体的な金額等が不特定の者に知られ得るものであったとは通常考えられない。また,記録によっても,本件における懇談費が,他の地方公共団体の長等との間で公式に開催する定例の会合や公の表彰の際の祝宴等のように,交際の相手方及び内容が明らかにされても,通常,これによって相手方が不快な感情を抱き,当該交際の目的に反するような事態を招くことがあるとはいえない懇談に関するものであったことをうかがわせる事情は見当たらない。したがって,本件非公開部分に記録されている懇談費に係る情報は,本件条例11条8号に該当するというべきである。
 キ 会費
 前記事実関係等によれば,別表番号35の会費は,知事等が会員となっている団体の年会費として支出されたものであり,別表番号51及び69の会費は,個人の祝賀会等に出席した際に支出されたものであるところ,記録によっても,知事等がポスト指定として団体等の会員となっている場合やその会合に出席する場合等,知事等の団体等への加入や会合等への出席が不特定の者に知られ得るものであったことをうかがわせる事情は見当たらない。したがって,本件非公開部分に記録されている会費に係る情報は,本件条例11条8号に該当し,別表番号51及び69の会費に係る情報は,同条2号にも該当するというべきである。
 2 以上によれば,原審の前記判断中,御祝い,激励金,香典・仏前,見舞い,賛助,懇談費及び会費に係る情報が本件条例11条2号又は8号に該当するとした部分は,正当として是認することができ,この部分に関する論旨は採用することができない。しかしながら,原審の前記判断中,生花代に係る情報が上記各号に該当するとした部分には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決中上記判断に係る部分は破棄を免れない。この部分に関する論旨は理由がある。そして,以上説示したところによれば,本件処分のうち生花代に係る情報が記録されている本件文書中の部分についてこれを非公開とした部分は違法であるから,この部分については第1審判決を取り消して第1審原告の請求を認容すべきである。
 第3 平成13年(行ヒ)第84号上告代理人滝田裕,同川戸淳一郎の上告受理申立て理由第2について
 1 論旨は,原審の前記判断のうち購読料に係る情報が本件条例11条8号に該当しないとした判断について法令の解釈適用の誤りをいうものである。
 そこで,検討すると,所論の点に関する原審の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 前記事実関係等によれば,本件における購読料は,交際の相手方が発行する新聞,雑誌,機関紙等の購読料として支出されたものであり,いずれも交際の相手方が識別され得るものであるところ,一般に,交際費から購読料が支出される機関誌等については,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして購入の要否及び購入部数が個別に決定されるものであり,知事等が機関誌等を購読して購読料を支出している事実又はその具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。したがって,本件非公開部分に記録されている購読料に係る情報は,本件条例11条8号に該当するというべきである。
 2 以上によれば,原審の前記判断中,購読料に係る情報が本件条例11条8号に該当しないとした部分には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決中上記判断に係る部分は破棄を免れない。この部分に関する論旨は理由がある。そして,以上説示したところによれば,本件処分のうち購読料に係る情報が記録されている本件文書中の部分についてこれを非公開とした部分に違法はないから,この部分については第1審判決を取り消して第1審原告の請求を棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田宙靖)


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