平岡 久のホームページ>
|
A1 自治体の例規 |
A2 自治体の情報 |
B1 国の法令類 |
B2 国の情報 |
C 行政関係判例 |
最高裁(大法廷)昭和41年02月23日判決
=行政百選T[第四版]bP19〔強制執行−行政執行可能な場合の民事執行の許容性〕
昭和38年(オ)第797号・農業共済掛金等請求事件
棄却
第一審・水戸地方裁判所昭和37年11月29日判決(昭和37年(行)第3号)
控訴審・東京高等裁判所昭和38年04月10日判決
上告人(・控訴人・原告) 茨城県農業共済組合連合会 代理人 大谷政雄
被上告人(・被控訴人・被告) T
最高裁判所民事判例集20巻02号0320頁、判例時報441号30頁
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人大谷政雄の上告理由について。
農業災害補償法八七条の二によれば、農業共済組合は、農作物共済もしくは蚕繭共済にかかる共済掛金又は賦課金を滞納する者がある場合には、督促状により期限を指定してこれを督促することを要し、その督促を受けた者が指定期限までにこれを完納しないときは、市町村に対し、その徴収を請求することができ、市町村は、右請求に応じて地方税の滞納処分の例によりこれを処分すべく、若し市町村が右請求を受けた日から三〇日以内にその処分に着手せず、又は九〇日以内にこれを終了しないときは、農業共済組合は、都道府県知事の認可を受けて、自ら地方税の滞納処分の例により処分することができることになつており、右徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとされる等、その債権の実現について、特別の便宜が与えられている。また、きよ出金の滞納についても、農業共済基金法四六条により、前示農業災害補償法八七条の二の規定が準用され、右と同じ取扱いが認められている。かように、農業共済組合が組合員に対して有するこれら債権について、法が一般私法上の債権にみられない特別の取扱いを認めているのは、農業災害に関する共済事業の公共性に鑑み、その事業遂行上必要な財源を確保するためには、農業共済組合が強制加入制のもとにこれに加入する多数の組合員から収納するこれらの金円につき、租税に準ずる簡易迅速な行政上の強制徴収の手段によらしめることが、もつとも適切かつ妥当であるとしたからにほかならない。
論旨は、農業災害補償法八七条の二がこれら債権に行政上の強制徴収の手段を認めていることは、これら債権について、一般私法上の債権とひとしく、民訴法上の強制執行の手段をとることを排除する趣旨でないと主張する。
しかし、農業共済組合が、法律上特にかような独自の強制徴収の手段を与えられながら、この手段によることなく、一般私法上の債権と同様、訴えを提起し、民訴法上の強制執行の手段によつてこれら債権の実現を図ることは、前示立法の趣旨に反し、公共性の強い農業共済組合の権能行使の適正を欠くものとして、許されないところといわなければならない。
論旨は、また、農業共済組合連合会がその会員たる各農業共済組合に対して有する保険料債権に関しては、法は何ら特別の徴収方法を認めておらず、したがつてその徴収は、民訴法に基づく以外方法がないものとし、第一審判決を引用する原判決が公法上の金銭債権である共済掛金等の実現は民訴法に基づく強制執行によることは許されない旨判示したのは矛盾であるというが、この点につき原判決の引用する第一審判決は、法が特に行政上の強制徴収を認めた債権について、右の判示をしたものであることその判文上明らかであるから、所論の非難は当らない。
ちなみに、本件は、農業共済組合連合会が、その会員たる農業共済組合に代位して、農業共済組合の組合員に対し、右各債権を訴求したものであるが、元来、農業共済組合自体が有しない権能を農業共済組合連合会が代位行使することは許されないと解すべきである。 なお、その余の論旨は、何れも本件各債権に関する法条の趣旨を正解したものとは認めがたく、採用することができない。
論旨は、何れも理由がない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見により、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横田喜三郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 長部謹吾裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎 裁判官松田二郎 裁判官 岩田 誠 裁判官 下村三郎)
上告代理人大谷政雄の上告理由
原判決は法令の解釈を誤つた違法がある。
(1)農業災害補償法は公法、私法の二領域に亘るものである。農業災害補償法は農業者が不慮の事故によつて受けることのある損失を、保険方式を基本とした農業者の相互扶助組織により填補して、その生産活動の助長育成と私益を保護すると共に、ひいては農業生産力の発展に資することを目的とするもので、その内容は民事的な生活関係と公共的社会関係の二領域に亘るものである。これは同法中に任意共済として家畜、建物等の共済制度が設けられていることよりみても明らかである。
(2)農業共済掛金等の滞納処分は私法上の救済措置(強制執行)も排除されるものではない。農業災害補償法第八七条の二、第二項は「農業共済組合は督促後の共済掛金等の滞納者が完納しないときは、市町村に対しその徴収を請求することができる。」とし、又同条第四項は「市町村が第二項の請求を受けた後一定期間内にその処分に着手又は終了しないときは、農業共済組合が知事の認可を受けて、地方税滞納処分の例によりこれを処分することができる」と規定しており、これ等は所謂許容規定であつて、同条第七項において適用する地方自治法第二二五条第四項「普通地方公共団体の分担金等の滞納者が督促又は命令後の指定期限内に完納しないときは、国税滞納処分の例により、これを処分しなければならない」とする命令規定とは相違するものであり、同法が(1)の公法、私法の二面性をもつものである点とも関連し、農業共済組合の組合員が共済掛金等を滞納しているときは、公法上の行政措置(強制徴収)が認められると共に、私法上の救済(強制執行)も排除されるものではない。又、農業共済組合連合会は会員である農業共済組合の組合員の掛金が源泉をなしている保険料の徴収手続及び債権保護については同法に何等の規定がなく民事訴訟に基く以外方法がないものであり、原判決で指摘する「公法上の金銭債権である共済掛金等は行政上の強制徴収の方法によつて債権の実現を図るべきであり、民事訴訟法に基く強制執行によることは許されない」とすることは矛盾するものである。
|
A1 自治体の例規 |
A2 自治体の情報 |
B1 国の法令類 |
B2 国の情報 |
C 行政関係判例 |