平岡 久のホームページ>
|
A1 自治体の例規 |
A2 自治体の情報 |
B1 国の法令類 |
B2 国の情報 |
C 行政関係判例 |
最高裁(第三小法廷)昭和43年12月24日判決
=行政判例百選U[第四版]bQ10〔訴えの利益−放送局免許拒否処分/東京12チャンネル事件〕
昭和40年(行ツ)第73号・テレビジョン放送局の開設に関する予備免許処分・同免許申請棄却処分並びにこれが異議申立棄却決定取消請求上告事件
棄却
第一審 東京高等裁判所昭和40年 6月 1日判決
上告人 (被告) 郵政大臣 代理人 板井俊雄 外五名
被上告人 (原告) 中央教育放送株式会社(設立中) 代理人 中村弥三次
最高裁判所民事判例集22巻13号3254頁、訟務月報15巻1号42頁、判例タイムズ230号189頁
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告指定代理人板井俊雄、同山口智啓、同高田希一、同太原幹夫、同松沢経人、同秋沢弘の上告理由第一について。
論旨は、要するに、(一)本件異議申立て棄却決定が取り消されたとしても、上告人は訴外財団法人日本科学技術振興財団(以下訴外財団という。)に対する免許を取り消すべき拘束を受けるものでなく、しかも、係争の周波数は一波のみであるから、すでに訴外財団に免許が付与されている以上、被上告人は、上告人のした本件棄却決定の取消しを求める利益を有しない、(二)かりに然らずとしても、訴外財団に付与された予備免許(のちに本免許)は、昭和四〇年五月三一日その免許期間を満了したから、その後において、被上告人は、右予備免許が自己に付与されるべきであつた旨を主張して、本件棄却決定の取消しを求める利益を有しない、と主張する。
しかし、(一)訴外財団と被上告人とは、係争の同一周波をめぐつて競願関係にあり、上告人は、被上告人よりも訴外財団を優位にあるものと認めて、これに予備免許を与え、被上告人にはこれを拒んだもので、被上告人に対する拒否処分と訴外財団に対する免許付与とは、表裏の関係にあるものである。そして、被上告人が右拒否処分に対して異議申立てをしたのに対し、上告人は、電波監理審議会の議決した決定案に基づいて、これを棄却する決定をしたものであるが、これが後述のごとき理由により違法たるを免れないとして取り消された場合には、上告人は、右決定前の白紙の状態に立ち返り、あらためて審議会に対し、被上告人の申請と訴外財団の申請とを比較して、はたしていずれを可とすべきかその優劣についての判定(決定案についての議決)を求め、これに基づいて異議申立てに対する決定をなすべきである。すなわち、本件のごとき場合においては、被上告人は、自己に対する拒否処分の取消しを請求しうるほか、競願者(訴外財団)に対する免許処分の取消しをも訴求しうる(ただし、いずれも裁決主義がとられているので、取消しの対象は異議申立てに対する棄却決定となる。)が、いずれの訴えも、自己の申請が優れていることを理由とする場合には、申請の優劣に関し再審査を求める点においてその目的を同一にするものであるから、免許処分の取消しを訴求する場合はもとより、拒否処分のみの取消しを訴求する場合にも、上告人による再審査の結果によつては、訴外財団に対する免許を取り消し、被上告人に対し免許を付与するということもありうるのである。
したがつて、論旨が、本件棄却決定の取消しが当然に訴外財団に対する免許の取消しを招来するものでないことを理由に、本件訴えの利益を否定するのは早計であつて、採用できない。
また、(二)免許期間の満了に関する所論について考えるに、訴外財団に付与された予備免許は、昭和三九年四月三日本免許となつたのち、翌四〇年五月三一日をもつて免許期間を満了したが、同年六月一日および同四三年六月一日の二回にわたり、これが更新されていることが明らかである。もとより、いずれも再免許であつて、形式上たんなる期間の更新にすぎないものとは異なるが、右に「再免許」と称するものも、なお、本件の予備免許および本免許を前提とするものであつて、当初の免許期間の満了とともに免許の効力が完全に喪失され、再免許において、従前とはまつたく別個無関係に、新たな免許が発効しまつたく新たな免許期間が開始するものと解するのは相当でない。そして、前記の競願者に対する免許処分(異議申立て棄却決定)の取消訴訟において、所論免許期間の満了という点が問題となるのであるが、期間満了後再免許が付与されず、免許が完全に失効した場合は格別として、期間満了後ただちに再免許が与えられ、継続して事業が維持されている場合に、これを前記の免許失効の場合と同視して、訴えの利益を否定することは相当でない。けだし、訴えの利益の有無という観点からすれば、競願者に対する免許処分の取消しを訴求する場合はもちろん、自己に対する拒否処分の取消しを訴求する場合においても、当初の免許期間の満了と再免許は、たんなる形式にすぎず、免許期間の更新とその実質において異なるところはないと認められるからである。また、免許申請者たる原告(被上告人)自身に対する拒否処分(異議申立て棄却決定)の取消訴訟において、右棄却決定が取り消されて被上告人に予備免許が付与された場合には、以後法定の期間(昭和二五年六月一日から起算して三年ごとの期間)内において免許人たる地位を保有し、免許期間満了にあたつては再免許を申請しうるのであつて、本件において被上告人が申請し、訴外財団に付与された免許期間が、たまたま前記法定期間の定めにより昭和四〇年五月三一日に満了するからといつて、所論のように、本件免許申請を右同日までの免許人の地位の取得のみを目的とするものとして捉え、その申請の対象となるべき免許の有効期間が満了した以上本件異議申立て棄却決定の取消しを求める訴えの利益が失われるとする見解は、原免許者に再免許の申請が許されることを無視した形式論にすぎない。
要するに、本訴について訴えの利益を否定する論旨(一)、(二)は、いずれも採用し難い。
同第二について。
論旨は、要するに、(一)本件異議申立てについて上告人のした決定は、電波法九四条二項が、郵政大臣の決定書に電波監理審議会の認定した事実の記載を要求する趣旨にかなうもので、原判決は同条項の解釈・適用を誤つたものであり、また、(二)電波法には、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、独禁法という。)八一条、八二条一号または土地調整委員会設置法(以下、設置法という。)五三条、五四条一号のような規定がないにもかかわらず、原審がみずから事実を認定することなく、上告人の棄却決定を取り消したのは、実定法上の制度に反して、電波法九九条の解釈・適用を誤つたものである、と主張する。
しかし、(一)電波法九四条二項が、郵政大臣のなすべき異議申立てについての「決定書には、聴聞を経て電波監理審議会が認定した事実を示さなければならない。」とする理由は、郵政大臣の行なう異議決定が、司法手続に準ずる争訟手続によつて行なわれるからであつて、かかる手続においては、提出された証拠によつて事実を認定し、認定した事実に基づいて法を適用すべきであるから、法適用の根拠となつた認定事実を表示することはこの種の手続に内在する必然的な要請であるといわなければならない。
そして、審議会の認定すべき具体的事実の内容は、原判決の指摘するように、(イ)科学技術教育放送事業の実施の確実性の優劣については、これを比較するに足りる「例えば保有資金の量及び外部からの資金獲得の能否、程度、これに伴う工事費支弁能力についての保障の有無、業務運営に関する収支見積の現実性及び継続性の存否、程度等に関する事実」、(ロ)放送の公正かつ能率的普及への適合の度合の優劣については、これを比較するに足りる「例えば、予定された放送の内容、編成、当該地域への結合の程度、他のラジオ、テレビ、新聞等の事業からの支配介入の有無、これらの事項を綜合したチヤンネル・プランへの適合の仕方等に関する事実」であると解すべく、これなくしては競願関係にある両者の優劣の比較考量はありえない。しかるに、上告人のした本件異議申立て棄却決定書の記載は、原判決添付決定書写しのとおりで、これを必ずしも、一般的、抽象的な見解の表明にすぎないとはいえないとしても、なお、前記のような法の要請にかなうものとはいい難い。
また、(二)所論独禁法八一条、設置法五三条の規定は、委員会が正当の理由なくして当該証拠を採用しなかつた場合、または委員会の審判に際して当該証拠を提出することができず、かつ、これを提出できなかつたことについて過失がなかつた場合にかぎり、当事者に新たな証拠の申出を許したものにすぎず、しかも、この場合、裁判所は、みずから新たな証拠の取調べをすることはできず、その取調べの必要があると認めるときは、当該事件を委員会に差し戻さなければならないことにしているのである。また、所論独禁法八二条一号、設置法五四条一号が、審決または裁定の「基礎となつた事実を立証する実質的な証拠がない場合」に、裁判所が審決または裁定を取り消すことができるとするのも、委員会の事実認定の拘束力を規定した独禁法八〇条、設置法五二条等と対比すれば、むしろ当然のことを規定したものというべく、所論のように、電波法に独禁法八一条、八二条、設置法五三条、五四条に相当する規定がないことの故をもつて、裁判所が、郵政大臣のした異議申立て棄却決定の取消訴訟において、みずから自由に事実を確定し、これに基づいて右決定に表示された電波監理審議会の判断の適否を審査しうるものと解することは、原判決説示のように、「事実については専門的の知識経験を有する行政機関の認定を尊重し、裁判所はこれを立証する実質的な証拠の有無についてのみ審査し得るに止めようとする規定の趣旨を没却」するものといわなければならない。
以上、原判決には所論(一)電波法九四条二項および(二)同法九九条の解釈・適用に関する違法はなく、論旨は、いずれも採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄)
上告指定代理人板井俊雄外五名の上告理由
第一、被上告人は、本件訴えを維持する利益を有しない。
一、本件訴訟において争われている周波数は第十二チヤンネルの一波のみであつて、右一波をめぐつて被上告人外四者から免許申請がなされ、右競願者のうち訴外財団法人日本科学技術振興財団(以下「訴外財団」という。)に対し予備免許がなされ、被上告人外三者の申請は拒否せられたのである。
そして、被上告人は右拒否処分を不服として異議申立てをなしたところ、該異議申立ても棄却せられたので、これが取消しを求めて本訴に及んだものであるが、被上告人のなした異議申立てに対する棄却決定が取り消されたからといつて、訴外財団に対する免許がこれに伴なつて当然失効するものでないことはもとより、郵政大臣として訴外財団に対する免許をば取り消さねばならない拘束をうけるものでもないから、郵政大臣としては改めて被上告人よりなされた異議申立てを認容し、被上告人に対して免許を与えるに由ない。けだし、割当て可能な周波数は第十二チヤンネルの一波のみで、これについてはすでに訴外財団が適法に免許をうけている以上、被上告人に割当てうる周波数はないからである。
そうすれば、被上告人の本訴請求はその主張自体からして訴えの利益を欠く不適法なものであることは明瞭であるから、これを看過してなされた原判決は破棄を免れない。
二、電波法(以下「法」という。)第十三条第一項は、「免許の有効期間は、免許の日から起算して五年(放送を目的とする無線局については、三年)をこえない範囲内において郵政省令で定める。但し、再免許を妨げない。」と規定し、その委任をうけた郵政省令(電波法施行規則)において、放送局の免許の有効期間は、原則として一律に昭和二十五年六月一日から起算して三年ごとの期間(当該期間の中途に免許を与えられた放送局については、当該期間の満了の日までの期間)とするものと定められているから(第七条ないし第九条、第五十三条)、昭和三十七年十一月十三日に予備免許、昭和三十九年四月三日に免許を与えられた本件第十二チヤンネルの放送局の免許の有効期間は、昭和四十年五月三十一日に満了することとなる。
したがつて、本件第十二チヤンネルに係る放送局の免許申請は、昭和四十年五月三十一日までの第十二チヤンネルの放送局の免許人の地位の取得を目的としているものというべきであるから、かりに被上告人の申請に対する拒否処分が違法であるとの理由で取り消されるとしても、すでにその申請の対象となるべき免許の有効期間が満了した現在、被上告人は、本件異議申立ての決定の取消しを求める利益を有しないものといわなければならないなお、第十二チヤンネルに関しては昭和四十年六月一日付でもつて訴外財団に対し再免許されているものである。
第二、原判決は、電波法の解釈、適用を誤つた違法がある。
一、法第九十四条第二項の解釈、適用の誤りについて
(一) 法第九十四条第二項において、決定書には電波監理審議会(以下「審議会」という。)の認定した事実を示すことが要求されているが、審議会において認定すべき事実の範囲は異議申立人の不服申立ての事由に対応する範囲、すなわち異議申立ての当否を判断する前提として必要欠くべからざる事実の範囲に限られ、これをもつて足りるというべきである。
審議会は行政庁のなした処分の当否を審判する準司法的作用を任務とする機関である。その審判手続において、異議申立人その他利害関係者はそれぞれ自己の主張を裏付ける証拠を提出する権能を認められている反面、審査機関としては、これらの者の主張に対する判断とその挙証にかかる事実についての認定を明示することを義務づけられているものである(最高裁判所昭和三十七年十二月二十六日判決、民集一六巻一二号二五五七頁参照)したがつて審査庁としては原処分を維持する場合にあつては原処分の適法妥当なることをすべての点にわたつて説示する要あるものではなく、異議申立人の主張する限度において、その判断とそのために必要とされる事実の認定を示せば足りるものである。
それでは異議申立人である被上告人は、本件異議申立ておよび聴聞の過程において如何なる事項を主張したかというと、決定書の事実および争点に記載されているようにきわめて抽象的であり、しかもこれに対する何らの証拠をも提出しようとしなかつたものである。そうすれば審議会のこれに対する判断ならびに事実の認定も勢い抽象的、一般的となるのは已むを得ないものがあるといわねばならない。
しかるに、原判決は、「電波法及びこれに基づく省令、規則の規定によつて基準となるべき事項についての原告と訴外財団の双方についての具体的事実、すなわち、事業の実施の確実性については、これを比較するに足る、例えば、保有資金の量及び外部からの資金獲得の能否、程度、これに伴う工事費支弁能力についての保障の有無、業務運営に関する収支見積の現実性及び継続性の存否、程度等に関する事実、放送の公正かつ能率的普及への適合の度合については、これを比較するに足る、例えば、予定された放送の内容、編成当該地域社会への結合の程度、他のラジオ、テレビ、新聞等の事業からの支配介入の有無、これらの事項を綜合したチヤンネル・プランへの適合の仕方等に関する事実は、なんら確定されていない。従つて、右判示は、その基礎となる事実を掲げず……その個々について或は綜合的に比較検討した理由を明示することなく、結論的に、訴外財団の計画が優れていると一般的、抽象的な見解を表明しているに過ぎない。」と判示するのであつて、これは審議会に難きを強いるものといわざるを得ないのである。
これを要するに、異議申立人の主張が抽象的であり、かつ、これについての立証もない場合には、原判決指摘のような事項についての事実認定が欠如しているからといつて、異議決定はそれがために違法となるものではないのである。
(二) 次に本件異議申立てにおいて争われているところは、異議申立人の事業計画が免許人である訴外財団の事業計画より優れているか否かの判断であつて、右判断の前提となつている事実については、異議申立人とその相手方である原処分庁(以下「当事者」という。)の間に争いはない。すなわち異議申立人が如何なる形態の事業を計画し如何なる内容の運営を計画しているか、それに対して訴外財団が如何なる形態の事業を計画し、また如何なる内容の運営を計画しているかは、それぞれの事業計画書に記載されているとおりであつて、当事者間には争いのない事実に属する。問題は、この争いのない事実の上に立つて、果して、どちらの事業形態の方が将来確実に事業を継続できるか、またどちらの事業運営方法の方が放送の公正かつ能率的な普及という行政目的に適合するかの判断が争われているにすぎないのである。
このように判断の適否のみが争われているにすぎなくて、その判断の前提となつた事実については当事者間に争いがない場合においては、審査庁としてはあえて事実の認定を要しないことはいうまでもないから、かかる争いのない事実についてはこれを決定書に摘示することなく単に判断のみを摘示しても違法となるべき理はない。
しかるに原判決は、異議申立人は訴外財団との間の優劣の比較判定に不服があつたから、前項において引用した判示事項については個々具体的に事実の認定をなすべきだつたとするのであるが、これは法第九十四条第二項にいう「認定した事実」なるものの解釈を誤つたものと評せざるを得ない。
(三)ところで、本件異議棄却決定においては何らの事実の認定の記載もないというものではない。事実といつても認定者の判断作用によつて認識された事実なのであるから、認定者の判断の表示の中に事実の認定が含まれていることが往々にしてあるのであつて、原判決のごとく、異議決定書の理由の項に記載されている事項をすべて一般的、抽象的な見解の羅列であるとすることは早計である(原判決は、異議決定書に審議会の認定した事実の記載がないことについて上告人はこれを自認したとするが、昭和三十九年九月八日付準備書面第一(6)、昭和四十年一月十六日付準備書面第四、同年三月十六日付準備書面(一)(2)においては、仮定的にかかる事実認定についての表示の不完全なことを認めたに止まる。)。たとえば、郵政大臣の指定職員が「本件財団の場合、ともかく不利を克服して科学技術教育放送を実施することの確実性につき寄付金による保障その他の具体的な方策があり、またその決意を誓約書によつて示し、年年の寄付金の継続性についても相当の配慮が行なわれているという趣旨を述べ、よつて財団に優位性を認めたのであると主張し」たのに対して審議会が「思うに、異議申立人の計画する事業にせよ、財団の計画する事業にせよ、その実施の確実性はいずれも予測に関することであつてその絶対的な確実性は断言しえないところであるが、予測に立つて優劣を論ずるに当つては、いずれが確実性の根拠を具体的に示しているかが問題である。特に重要なことは、問題の焦点が科学技術教育放送というきわめて採算性の乏しい事項の確実な実施にあるということである。かかる観点からみるとき、郵政省が財団の申請内容に対し、異議申立人のそれよりも相対的な優位性を認めたことは、理由があるといわなければならない。」と説示している個所等は単なる見解の表明に止まらず、右見解を裏付ける事実の認定をもあわせて表示しているものとみるべきである。
しかるに原判決が、これらの諸点に意を用いることなく、本件異議決定書には審議会の認定した事実の記載がないとして、これを違法ときめつけたことは、経験則に反するとともに、法第九十四条第二項の解釈適用をも誤つたものといわなければならない。
二、法第九十九条の解釈、適用の誤りについて
かりに、本件異議棄却決定書に、審議会の認定した事実の摘示が全然ないとしても、そのこと自体によつて該決定が直ちに違法であるとして取り消さるべきものではない。
原判決は、「電波監理審議会及び郵政大臣にこのような事実認定を明らかにすべきことを要求している理由は、形式的にはそれが前記のごとく準司法的な手続によつているものであるから、一般の行政処分とは異り、判決に準じさせる趣旨であり、実質的には、左記の二点にある。すなわち、(1)電波に関する事項は公共的であつて国民に影響するところが大であるから、その公平かつ能率的な利用を確保することによつて公共の福祉に合致するよう、公正に処分が行われたことを、国民一般にも競願者にも十分なつとくさせる必要があること、(2)裁判所の審査を受ける関係においては、裁判所の審査の範囲を法律的なものに止め、専門的技術的な電波監理審議会の知識経験に基づく事実認定と判断を尊重しようとすること、これである。」と判示し、したがつて、「裁判所は専門家によつて構成されている電波監理審議会の事実認定を尊重しなければならず、実質的証拠の有無のみを判断し得るに止まり、自ら証拠調をなして自由に事実の確定をなすことを得ないものである。」とする。
しかしながら、右の判示は、電波法における審議会の議決による決定に関する本件の場合について、実定制度に反して、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)における公正取引委員会の審決や土地調整委員会設置法における土地調整委員会の裁定に関する場合と同様に理解しようとする誤りを犯しているものといわざるを得ない。後者の場合においては、独禁法第八十一条、第八十二条第一号または土地調整委員会設置法第五十三条、第五十四条第一号の規定からも明らかなように、訴訟の段階において新たな証拠の提出を制限し、実質的証拠を欠く場合には審決または裁定を取り消すべきものとしているのであるから、この場合には原判決の判示するとおり、裁判所は実質的証拠の有無のみを判断し得るに止まり、自ら証拠調をなして自由に事実を確定することはできず、したがつて審決または裁定において所要の事実の認定を欠くときは、当然当該審決または裁定を違法として取り消すべきこととなるのは当然であろう。しかるに電波法の場合には、右の独禁法や土地調整委員会設置法のような規定は設けられておらず、ただ電波法第九十九条において審議会の適法に認定した事実は、実質的証拠がある限り裁判所を拘束するとのみ規定しているにすぎないのであつて、したがつて当事者は訴訟の段階で新たな証拠の提出が制限されるいわれはなく、また裁判所は自らの証拠調によつて新たな事実の認定をするに毫も妨げがあるはずはないわけである。しかも前記のように電波法には独禁法第八十二条第一号や土地調整委員会設置法第五十四条第一号のような規定もないのであるから、審議会の議決において事実認定が不備不足であるか、あるいは欠如するというその一事によつて取り消さるべき筋合いのものではないのである。
換言すれば、電波法の場合においては、審議会が積極的に認定した事実については実質的な証拠がある限り裁判所を拘束するが、それ以上の意味を有するものではなく、審議会の認定していない事実を裁判所が自ら自由に認定することは妨げないのであつて、それらの点については一般の審査請求に対する裁決の場合と毫も変りはないはずである。
以上のことは、単に電波法における規定の存否という法形式の面から妥当するのみでなく電波法における審議会の審議手続の性格からもいい得ることである。すなわち、独禁法や土地調整委員会設置法においては、厳格な審理手続が法定されているのに比して、電波法の場合は、比較的に規定が整備されているものの聴聞手続が要求されているにすぎず、この間の差異を無視して解釈されるべきものではないのである。
これを要するに、本件において原審裁判所が異議決定書に認定事実の記載が不足すると解するならば、すべからく自ら自由に証拠調を行なつて事実を認定し、異議決定そのものの当否を判断すべきであつて、審議会が適法な事実の認定をしていないとの故をもつて異議決定を取り消すべき筋合いのものではない。なお、本件異議決定書においてかりに事実認定の記載が不備不足または欠如していると解するとしても、異議申立人において裁判所に出訴するに当り支障のない程度に異議申立人の主張に対する審査庁の判断理由は表示されているのであるから、この点においても本件異議決定を違法として取り消すべきものではないと思う。
以上述べたとおり、原判決は、法第九十九条の解釈、適用を誤つたものといわざるを得ない。
|
A1 自治体の例規 |
A2 自治体の情報 |
B1 国の法令類 |
B2 国の情報 |
C 行政関係判例 |