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 大阪高裁昭和58年09月30日判決

  〔事情判決・土地収用法−収用裁決取消訴訟と事情判決/和歌山県〕


 昭和54年(行コ)第31号、第34号・土地収用裁決取消請求控訴事件
 変更(上告)

   第一審 和歌山地裁昭和54年05月07日判決(昭和48年(行ウ)第1号)
  第三一号事件控訴人、第三四号事件被控訴人(以下「原告)という) 橋本恒太郎 第三一号事件控訴人(同) 橋本文枝 外一〇名 右一二名訴訟代理人 赤木淳
  第三一号事件被控訴人第三四号事件控訴人(以下「被告」という) 和歌山県収用委員会 右代表者会長 山本光弥 右訴訟代理人 月山桂 谷口昇二 被告補助参加人(以下「参加人」という) 関西電力株式会社 右代表者 小林庄一郎 右訴訟代理人 田中章二

 判例タイムズ515号132頁


 主 文
 1 原告ら及び被告の控訴に基き、原判決を次のとおり変更する。
 2 原告らの請求を棄却する。たゞし、起業者関西電力株式会社の新田辺変電所新設工事及びこれに附帯する工事に関して被告が昭和四四年三月三一日付でした権利取得裁決及び明渡裁決のうち、別紙第三図面記載イ・ロ・ハ・ニ・ホ・ヘ・イの各点及びチ・リ・ト・チの各点を順次直線で結んだ各範囲の土地に係る部分は違法である。
 3 訴訟費用中補助参加によつて生じた分は、参加人の負担、その余は第一、二審を通じ五分しその一を被告の負担、その四を原告らの負担とする。


 事 実
 第一 申立
 一 原告ら
 1 原判決中原告ら敗訴の部分を取消す。
 2 起業者間関西電力株式会社の新田辺変動所新設工事及びこれに附帯する工事の裁決申請並びに同明渡裁決申請事件につき、被告が昭和四四年三月三一日付でした権利取得及び明渡裁決を取消す。
 3 被告の本件控訴を棄却する。
 4 訴訟費用は第一、二審とも被告の負担とする。
 二 被告〈省略〉
 第二 主張
 当事者双方の主張は、次のように訂正、削除、付加するほか原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。〈中略〉
 三 原告らの主張〈中略〉
 4 土地所有権に関する争いで、私企業の利益が公共の福祉に転化することはありえず、本件裁決を取消したとしても参加人に損失が生ずるだけで公共の利益とは関係がない。そもそも変電所敷地と関係のない擁壁を作ることは可能であるとともに電力事情にも支障を与えないから、原告らの請求を認めない理由はなか。したがつて本件に行政事件訴訟法三一条は適用されない。
 仮に適用があるとしても、全部地番が間違つている本件収用地の地番を確定し本件裁決を取消すことは、公共の福祉に合致するのであつて、これをしないで事情判決をするのは裁判の拒絶であり、適正手続によらない土地収用を容認し、法の支配を損い、憲法二九条三二条に違反する結果となるから、本件は、事情判決を相当としない事案に該当する。
 四 被告、参加人の主張〈中略〉
 6 本件は、田辺市及び白浜町を中心とする紀南地区電力需要の急激な増加に応えるため参加人が新田辺変電所を建設する緊急の必要に迫られ、その敷地として本件土地の収用裁決を申立てたもので、その後裁決に基き土地所有権を取得の上、大規模な造成工事を行い、巨額の資材を投入して変電所の諸施設を完成し現在所期の機能を果している。したがつて万一、本件裁決が無効とされ又は取消されると、その上に成立つ事実上、法律上の効果が覆滅され、公の利益に著るしい障害を生じるのに対し、本件裁決によつて被る原告らの損害は、軽微で窮局においては金銭的賠償をもつて満足しうべき性質のものである。そこでもし本件裁決に瑕疵があるとされるときは,公共の福祉のための行政事件訴訟法三一条を適用して原告らの本訴請求を棄却すべきである。
 〈以下、省略〉


 理 由
 当裁判所は、原告らの本訴請求を棄却し、主文第2項表示のとおり本件裁決の一部違法宣言をすべきものと判断するが、その理由は下記のとおりである。
 一 当事者間に争いのない事実および本件裁決の取消事由に関する主張についての認定判断は、次のように訂正、付加、削除するほか原判決の理由一、二の説示(一八枚目裏九行目から四九枚目裏一行目まで)と同一であるから、右記載を引用する。〈中略〉
 二、三 〈省略〉
 四 本件裁決には、前叙のように起業地の範囲外および使用部分の土地を収用した点において違法があるが、右部分に関する裁決を取消すか否かについては、なお被告ら主張の事情判決を考慮する必要があるので、この点について判断する。 
 〈証拠〉を総合すると、本件は、前記のように、田辺市および白浜町を中心とする紀南地区電力需要の急激な増加に応えるため、参加人において新田辺変電所を建設する緊急の必要に迫られ、その敷地として本件裁決により収用された土地を含む一帯の土地所有権を取得の上、総工費約二億七〇〇〇万円を投じて送電用変圧器二台、配電用変圧器二台、電力用コンデンサー二台、断路器四七台、遮断器一八台等を設置して昭和四五年四月完成させ、更に現在七万七〇〇〇ボルトの内原新田辺線の新設工事を続行中であり、この変電所は、田辺市、白浜町、上富田町、中辺路町、日置川町及び大塔村の約六〇〇平方キロメートルの地域の一般需要家約三万軒、高電圧で供給する特高需要家国鉄変電所三個所に電力を供給する重要拠点として機能しているものであつて、前示違法部分の土地は、変電所敷地の土手、擁壁の一部として利用されており、これを返還することになると大規模な改修工事が必要であるうえ、工事期間中の変電所の保守管理及び変電所を稼働させたまゝ工事を行うことに大なる困難が予想されるのに対し、原告らはすでに本件裁決に基く補償金を取得しているだけでなく、右部分の土地の返還によつてうける利益はわずかと推測されることを合わせ考えると、右土地部分につき本件裁決を取消すことは公共の福祉に適合しないと認めるのが相当であるから、行政事件訴訟法三一条を適用し右取消請求を棄却すべきであり、同条の適用が憲法二九条三二条に反するものとは認められない。
 五 〈省略〉
 (石川恭 仲江利政 蒲原範明)


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