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 和歌山地裁妙寺支部昭和45年06月27日判決

   〔国賠法2条−道路管理の瑕疵/和歌山県故障車放置事件・第一審〕


 昭和41年(ワ)第6号・損害賠償請求事件
  一部認容、一部棄却(原告控訴)

   控訴審・大阪高等裁判所昭和47年03月28日判決(昭和45年(ネ)第1122号)
   上告審→最高裁第三小法廷昭和50年07月25日判決(昭和47年(オ)第704号)

  原告 M 外一名 被告 和歌山県
 最高裁判所民事判例集29巻06号諸1141頁、交通事故民事裁判例集3巻3号954頁


 主 文
 被告大谷および同神倉は各自原告Mに対し金五五万五、五九四円および内金四五万五、五九四円に対する昭和四〇年一〇月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
 被告大谷および同神倉は各自原告森本スミエに対し金五五万五、五九四円および内金四五万五、五九四円に対する昭和四〇年一〇月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
 原告両名の被告大谷および同神倉に対するその余の各請求ならびに被告和歌山県に対する請求はいずれもこれを棄却する。訴訟費用は、原告両名と被告大谷および同神倉との間に生じたものはこれを六分し、その五を原告両名のその余を被告大谷および同神倉の各負担とし、原告両名と被告和歌山県との間に生じたものは全部原告両名の負担とする。
 この判決は第一、二項に限り仮りに執行することができる。


 事 実
 一、当事者の求める裁判
 (一) 原告
 1 被告らは各自原告Mに対し金二八三万八、九八五円および内金二六三万八、九八五円に対する昭和四〇年一〇月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
 2 被告らは各自原告森本スミエに対し金二八三万八、九八五円および内金二六三万八、九八五円に対する昭和四〇年一〇月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
 3 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決ならびに仮執行の宣言
 (二) 被告大谷および同神倉
 1 原告らの各請求をいずれも棄却する。
 2 訴訟費用は原告らの負担とする。
との判決
 (三) 被告和歌山県
 1 原告らの各請求をいずれも棄却する。
 2 訴訟費用は原告らの負担とする。

 二、請求原因
 (一) 原告Mは訴外亡森本肇の父、原告森本スミエは右肇の母である。
 (二) 訴外森本肇は、昭和四〇年一〇月二一日午前六時二五分頃原動機付自動二輪車を運転し橋本市小原田の菱田産業石油倉庫前附近国道一七〇号線を時速約四〇粁で道路左側を南進中、後記の如く道路上に放置してあつた大型貨物自動車を発見しハンドルを右に切つたが及ばず右貨物自動車の後尾右側部分に衝突して転倒し、脳底骨折によりその場で即死した。
ところで、右貨物自動車は、被告大谷が同月一七日午後三時頃同車を運転し前記国道を南進し、本件事故現場手前の同市小原田一一七番地山下弥七方前道路にさしかかつた際前方注視を怠つた過失により右山下方倉庫に衝突するに至り、同人方板塀を破損するとともに、右自動車自体も故障したため、これを約八〇米移動させた後、前記事故現場に駐車し、爾来前記事故の日まで放置してあつたものである。
 (三) ところで、右の如き故障車を道路上に相当時間放置することは、道路の人車の交通の障害となることは勿論、同所は秋十月から十一月にかけて早朝霧が発生し前方の見透しも困難な程深くかかることも度々ある場所であるから、自動車運転者の故障車に対する措置としては、できるだけ自動車を附近の空地等の適当な場所に移動するか、できるだけ道路端に寄り道路に平行に駐車するか、それができない場合には一見して障害物であることが明確に判別できる標識等を設置して事故の発生を防止する注意義務があるのにかかわらず、被告大谷は右の措置に出ることなく漫然前記貨物自動車を道路左端より一米余り中央に寄せ、車体後尾を道路中央部寄りにし、道路に平行することなく、交差点内に駐車し、かつ右の如き注意標識を設置することなく国道上に放置したものであり、前記事故を惹起せしめるにつき過失がある。
 (四) 被告大谷は、民法第七〇九条により本件事故のため原告が蒙つた損害を賠償すべき義務がある。
 被告神倉は、大型貨物自動車による土砂等の運搬を業とするもので、被告大谷を自動車運転者として使用していたものであるが、本件事故による損害は被告大谷が右事業の執行につき惹起せしめたものであり、同法第七一五条により賠償の責任がある。
仮りに右主張が認められないとしても、被告神倉は自動車損害賠償保障法第三条により、事故車の保有者として賠償責任がある。すなわち、同条にいう自動車の運行とは、エンジンによつて駆動して走行している状態だけでなく、自動車の故障等のため道路上に一時駐停車している場合をも含むと解すべきことは常識上からも当然だからである。
 (五) 被告県は、左記理由により本件事故により発生した損害を賠償すべき義務がある。すなわち、和歌山県知事は、道路法第一三条、第四二条により本件事故現場の存する国道について管理責任を有するものである。
そして、右道路上には前記の如く交通の障害となる故障車が放置されたままになつていたため本件事故を惹起するに至つたものであるが、右の如き障害物たる故障車が道路上に放置されているということは、道路に穴があいているとか隆起があるのをそのままにしておいたのと同様に道路管理の瑕疵に当るというべきである。
 しかして、道路法第四九条、第五〇条によれば被告県は、県知事の道路管理につき費用負担者であるから国家賠償法第二条、第三条により本件事故により惹起した損害を賠償すべき義務がある。
 (六) 本件事故による損害は次のとおりである。
 1 訴外亡肇の喪失利益
訴外肇は、本件事故当時年令二三才三月であつたので、平均余命は四七・三九年もありその間の就労可能年数は四〇年と考えられる。
しかして、訴外人は、本件事故当時国鉄和歌山機関区に勤務し月平均二万二、七七一円の収入を得ており、当時の生活費は一月一万四、〇〇〇円を越えなかつたから、一月当り八、七七一円の純収入があつたものである。
右純収入を基礎として向後四〇年間に得られるべき利益をホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して現在価を求めれば、二二七万七、九七〇円(ただし、円未満の端数は切上げる)となる。すなわち、訴外人は同額の得べかりし利益を喪失したものである。
 2 原告両名は、訴外肇の右損害賠償請求権をそれぞれ二分の一宛相続した。従つて各自一一三万八、九八五円の損害賠償請求権を取得した。
 3 原告両名の慰籍料
原告らは、杖とも柱とも頼む一人息子の肇を本件事故により喪つたものである。
原告らは、いずれも病弱であり、かつ、さしたる資産とてなく迫りくる老年を前にして生活の方途を見つけることもできず途方にくれている有様である。
原告らが肇を喪つた悲しみと苦痛は筆舌に尽し難く金銭に評価して償いうるものでもないが、原告らの将来の扶養の必要状態をも考慮して原告ら各自一五〇万円宛をそれぞれ請求する。
 4 原告らは、本訴の提起を原告ら訴訟代理人に委任し、弁護士費用として着手金は一〇万円、成功報酬は判決認容額の二割を支払う(ただし、三〇万円を下らないこと)旨の約束をした。
このうち着手金の一部として金五万円を支払ずみであるが、残三五万円以上は一審判決後直ちに支払わねばならない。
これらは、いずれも被告らの不誠実な示談交渉等の結果生じたものであるから、被告らにおいて損害賠償金として負担すべきものである。
さしあたり原告ら各自二〇万円宛を請求する。
(七) よつて、原告らはそれぞれ被告ら各自に対し損害金二八三万八、九八五円および内金二六三万八、九八五円(弁護士費用を除く)に対する本件事故の翌日である昭和四〇年一〇月二二日から完済に至るまで年五分の割合による遅延利息金の支払を求める。

 三、被告大谷および同神倉の答弁ならびに主張
 (一) 請求原因(一)は認める。
 (二) 同上(二)のうち、訴外亡肇が原告主張の日時場所において駐車中の大型貨物自動車に衝突する事故を起し、そのため死亡したことは不知。被告大谷運転の大型貨物自動車が、原告主張の日時、その主張の訴外山下方倉庫に衝突し板塀を破損した後、原告主張の場所に右自動車を移動し駐車したことは認めるが、放置したとの事実は否認する。
 (三) 同上(三)は否認する。
 (四) 同上(四)のうち、被告神倉が本件事故当時大型貨物自動車による土砂等の運搬を業としていたこと、被告大谷が被告神倉に自動車運転者として雇傭されていたこと、本件事故車が被告神倉の保有にかかるものであることは認めるが、その余の被告両名の賠償責任に関する主張はいずれも否認する。
 (五) 同上(六)の損害の発生に関する主張はすべて不知。もつとも、原告らが訴外亡肇の相続人である事実は認める。
 (六) 被告大谷は、原告主張の如く同年一〇月一七日午後三時頃訴外山下方倉庫に衝突したため自己の貨物自動車も故障して運行不能となつたので、直ちに他車の援助によりこれを右事故現場より移動させ道路左側に寄せ、尾灯を点け、かつ車体の後部の先端に取り敢えずタオルをたらして停車中の自動車であることを明示する標識を施し、自動車修理業山口モータースこと訴外山口勇に修理を委頼した。
ところが右山口は早急に現場に来てくれなかつたが、同月一九日午前八時頃被告神倉において山口を連れて現場に臨み右事故車を修理のため同人に引渡したところ、該修理は同月二二日完了したので再び同車の引渡しを受けた。従つて、その間は事故車の管理は山口モータースにあり被告大谷および同神倉の占有管理から離脱していたものである。被告らは、本件事故の発生ならびに損害につき何ら責任はない。
原告らの被告らに対する請求は失当である。
 四、被告県の答弁
 (一) 請求原因(一)の事実は、不知。
 (二) 同上(二)の事実は、不知。
 (三) 同上(五)の主張は、否認する。
道路法第一三条によれば、道路の維持、修繕および管理は建設大臣が行い、いわゆるその他の部分については都道府県知事が行なうことになつている。ここに都道府県知事とあるのは、地方公共団体の長または機関である知事でなく、国家の事務を委任によつて掌理する都道府県知事である。従つて、本件事故の責任の一端を被告和歌山県に帰するのは失当である。
 (四) 同上(六)の事実は、争う。
 三、証拠関係(省略)


 理 由 <省略>

 (和歌山地方裁判所妙寺支部
 裁判官 諸富吉嗣


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